Interlude 1.「ココリゼ」
Interlude 2.「千夜」
Interlude 3.「チノ」
Interlude 4.「リゼマヤ」
secret Interlude.「s and m」
Interlude film 1「意」
Interlude 1.「ココリゼ」
--------------------
――天々座家――
ココア「はいリゼちゃん、口あけて?」
リゼ「いや、自分で食べられるから」
ココア「あーん♪」
リゼ「ぅ……あ、あーん…」
ココア「どう、おいしい?」
リゼ「……ああ」モグモグ
ココア「良かった~はやく元気になってね?」
リゼ「ありがとう、毎日すまないな」
ココア「ううん」ニコッ
リゼ「……今日も、雨か」
ココア「あと5日間降り続けるんだって」
リゼ「ラビットハウスの方は大丈夫か?」
ココア「雨のせいでいつも以上にガラガラだよ」
リゼ「なら安心だな」
ココア「明日はお休みだからチノちゃんと一緒に来るね」
リゼ「休みの日くらい二人で遊びに行ってこいよ、わたしのことはいいから」
ココア「それじゃあリゼちゃんのおうちに遊びに来る!」
リゼ「ココア……」
ココア「明日も、明後日も、リゼちゃんが良くなるまで毎日お見舞いに来るから」
ココア「だから早く治って、ラビットハウスに戻って来てね」
リゼ「……ありがとう」
ココア「明日も、きてもいい?」
リゼ「もちろんだ、嬉しいよ」
ココア「……!」パアァ
リゼ「お前のおかげですぐに治りそうな気がする」
ココア「リゼちゃんの病気、早く良くなりますよーに」ギュッ
リゼ「おっと……」クスッ
―――――――――――――――――――――
――2週間後――
千夜「リゼちゃん、すっかり元気になって良かったわ」
ココア「今日からラビットハウスにも復帰するって」
千夜「これで何もかも元通りね」
ココア「うん♪」
千夜「ココアちゃんもお疲れ様、毎日お見舞い大変だったでしょ」
ココア「そんなことないよ~リゼちゃんのためだもん」
千夜「ふふっ、リゼちゃんが聞いたら喜ぶわ」
ココア「チノちゃんとリゼちゃん、ラビットハウスは二人がいないと寂しくて……」アハハ
千夜(相変わらず寂しがり屋さんね、ココアちゃんは)クスッ
ココア「あ、もう4時半だ、そろそろリゼちゃん来る頃だからいくね」
千夜「わたしとシャロちゃんも後で伺うわ」フリフリ
ココア「お菓子と飲み物用意して待ってるから!」
千夜「リゼちゃん復帰パーティーね」
――――――――――――――――――――――――
――ラビットハウス 夜――
ココア「それじゃあいくよ?せーの――」
全「リゼちゃん、おかえりなさいっ!」
リゼ「ありがとうみんな……//」ポリポリ
チノ「見立てよりずっと早く治って良かったです」
シャロ「明日からまたリゼ先輩と一緒に通学……えへへ//」
千夜「リゼちゃんを3週間も苦しめるなんて、余程凶悪な病原菌だったのね」
リゼ「どういう意味だそれ!?」
キャッキャッ ワイワイ
ココア「りーぜちゃんっ」ギュッ
リゼ「ココア、3週間もずっとお見舞いありがとうな。おかげでもう治ったよ」
ココア「えへへ~」ニコニコ
リゼ「そうだ、お礼に今度昼食でもごちそうしよう。何が食べたい?」
ココア「いいよ~そんなの、リゼちゃんに元気になって欲しかっただけだから」
リゼ「ココア……」
ココア「リゼちゃん、おかえりなさい」ニヘラ
リゼ「ああ……ただいま」ナデナデ
ココア「んっ……」ギュッ
リゼ「…………」――スッ
千夜「リゼちゃん、わたしはエビフライが食べたいわ」ダキッ
リゼ「わっ!?」
シャロ「千夜!リゼ先輩病み上がりなんだから……!」
千夜「チノちゃんは何が食べたい?」
チノ「わたしですか?えっと……ではドリアで」
千夜「もちろんわたしたちにも奢ってくれるわよね、リゼちゃん?」
リゼ「うっ……今月は給料も少ないから、ファミレスくらいだと助かる」
千夜「ふふっ、冗談よ。行くならみんなで行きましょう、もちろん自腹で」
リゼ「!……ま、またからかったな千夜!//」バッ
ココア「あっ……」
千夜「きゃー♪」
リゼ「こいつめ!」ガシッ
千夜「おやめになってー♪」
ココア「………………」
シャロ「リゼ先輩も安静にしないとダメですよ」アセアセ
チノ「早くしないと飲み物が冷めてしまいます」
ココア「…………」
ココア「」シュン
―――――――――――――――――――――――
――2週間後――
ココア「♪~♪♪」
ココア「ん……?」
リゼ「…………」
ココア(リゼちゃんだ!)
ココア「リーゼちゃ――」
シャロ「リゼ先輩、お待たせしました」ハァハァ
ココア「!」
リゼ「おおっ、シャロ」
シャロ「遅くなってすいません」
リゼ「わたしも今来たところだ、それにまだ五分前だぞ」
ココア(シャロちゃんと待ち合わせ……?)サッ
リゼ「……?」キョロキョロ
シャロ「どうしたんですか?」
リゼ「いや、さっき誰かに呼ばれた気がしたんだけど……」
シャロ「……?」キョロキョロ
リゼ「空耳かな?まぁいい、行こうか」
シャロ「はい♪」
ココア「………………」
ココア(二人きりでどこか行くのかな……)
ココア「………………」
ココア「……っ」キュッ
―――――――――――――――――――――――
――自室――
ココア「………………」
ココア「…………」ゴロン
ココア(なんで隠れちゃったんだろう……)
ココア(二人に声をかけて、一緒に連れて行ってもらえばよかったのに……)
ココア「………………」
ココア(嫉妬、してたのかな……)
ココア「……みんな、友達なのに」
ココア「………………」パサッ
ココア「シャロちゃん、ごめんね……」
―――――――――――――――――――――――
――ラビットハウス――
ココア「あれ、リゼちゃんは?」
チノ「今日は遅れると言っていました、部活の助っ人を頼まれたとかで」
ココア「……そっか」
チノ「……?リゼさんになにか?」
ココア「ううん、なにも。リゼちゃんが駆け付けるまで二人で頑張ろうねチノちゃん」
チノ「お客さん、一人でも来るといいんですが」チラッ
ガラーン
ココア「あはは……」
―――――――――――――――――
ガチャッ
ココア「!」
リゼ「すまない、遅くなったな」
ココア「リゼちゃん!」
チノ「リゼさん、お疲れ様です」
リゼ「チノ、この間一緒に行ったあのお店だけどな――」
チノ「?」
ココア「――!」
リゼ「ほら、この前探してたのってこれだろう?」スッ
チノ「ストライブのシャーペン……はい、これです…!」
リゼ「昨日の帰りに寄ったら偶然入荷されててな、安いもんだしお金はいらないぞ」
チノ「覚えてくださってたなんて……リゼさん、ありがとうございます。大切に使いますね」
リゼ「ははっ」
ココア「……チノちゃんとリゼちゃん、二人ともどこか行ったの?」
リゼ「んっ?ああ、1週間前くらいかな。買い物帰りに偶然チノと会ってな」
チノ「以前にシャロさんとリゼさんと3人で行った雑貨屋さんに寄ったんです、そこで欲しかったシャーペンが見つからなくて」
リゼ「お店は小さいけど結構面白いものがあるんだぞ、良かったら今度ココアも行かないか?」
ココア「……うん、行きたいな」
リゼ「じゃあ明日の夕方にでも3人でもいこう、チノもいいか?」
チノ「はい、もちろんです」
リゼ「そういえば新しいジグソーパズルも入荷してたぞ」
チノ「それは見逃せませんね」
ガヤガヤ ワイワイ
ココア「………………」
ココア「…………」シュン
―――――――――――――――――――――――
――自室――
ココア「……………………」
ココア(元に、戻っただけなのに……)
ココア「………………」ゴロン
ココア(すごく嬉しいはずなのに……)
ココア(……どうしてわたし、こんなに落ち込んでるんだろう……)
ココア「……リゼちゃん」
ココア(病気だった頃は、あんなに必要としてくれたのにな……)
ココア「……………………」
ココア「…………」ギュッ
――――――――――――――――――――
――数日後 ラビットハウス――
ココア「リゼちゃん遅いね」
チノ「連絡もはいっていませんし……なにかあったんでしょうか」
ココア「また部活の助っ人とかかな?」
チノ「でしたら遅れるくらいの連絡が――」
Prrrrrrr――
チノ「……?シャロさんからです」
ココア「シャロちゃん?」
チノ「もしもし」
チノ「――はい、ココアさんと一緒にラビットハウスですが」
チノ「――っ!?」
チノ「リゼさんが……!」
ココア「……?」
チノ「はい、わかりました。わたしたちも今から行きます……!」
ピッ
ココア「チノちゃん……?リゼちゃんに何かあったの?」
チノ「……ココアさん」
チノ「リゼさんが、病院に運ばれました」
ココア「えっ!?」
チノ「6限目の体育の時、倒れてきたバスケットゴールの下敷きに……重症だそうです」
ココア「――――!」
チノ「千夜さんとシャロさんは既に病院にいるそうです、わたしたちも行きましょう」
ココア「……………………」
チノ「……?ココアさん?」
ココア「………………」
チノ「ココアさん、大丈夫ですか?ココアさん?」
ココア「――……!」ハッ
チノ「しっかりしてください、きっと大丈夫ですから……!」
ココア「……うん」
チノ「いきましょう」
ココア「……………………」
ココア「…………」
ココア「……」
ココア「」
――
――――
――――――
―――――――――――――――――――
――病室――
ココア「はいリゼちゃん、あーん?」
リゼ「あーん……」
ココア「おいしい?」
リゼ「……ああ」
ココア「次はお魚がいい?それとも切り干し大根?」
リゼ「……………………」
ココア「リゼちゃん?」
リゼ「……ココア、ごめんな」
ココア「ん~、なにが?」
リゼ「お前のおかげでやっと完治したのに、今度は入院……しかも骨折とは」
リゼ「またココアやみんなに迷惑かけて……はは、ほんと何やってるんだろうなわたし」
ココア「……そんなこと、ない」
ココア「リゼちゃんは、なにも悪くないよ」
ココア「……ううん、むしろ悪いのは……本当に悪いのは……」
ココア「――わたしだから」
リゼ「え……?」
ココア「リゼちゃん……ごめんね」グスッ
リゼ「!」
ココア「ごめんなさい……」ジワッ
リゼ「ココア……?」
ココア「わたし……わたし……」ポロポロ
リゼ「ココア……!どうしたんだ?どうしてお前が謝るんだ?」
ココア「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」ブルブル
リゼ「しっかりしろ!お前は何もしてないだろ!?ココア……ココア!」
ココア「ごめんなさい…ごめんね、リゼちゃん……」ポロポロ
リゼ「ココア!?ココア!」
ココア「……っ!」ポロポロ
……。
…………。
………………。
――自身が望んだ幸福と結末の相違。そこに起因する自己嫌悪の記録。
-----------------
Interlude 2.「千夜」
-----------------
――学校 お昼休み――
ココア「わぁ、千夜ちゃんのおかず豪華だね!」
千夜「昨日の夕飯の残りなの、おばあちゃんがシャロちゃんのためにって作り過ぎちゃって」
ココア「いいなぁ~さて、わたしのは――」カパッ
ココア「うっ……やっぱり今日も入ってたよ」
千夜「ココアちゃんは野菜ほとんど苦手だから高確率でアウトね」
ココア「千夜ちゃん……今日も食べて?」
千夜「いいわよ。じゃあはい、代わりのベーコン巻き♪」
ココア「千夜ちゃんは天使だよ~!」
千夜「ふふっ」ニコッ
―――――――――――――――――――――
――図書館――
千夜「これは尊敬語になるの、自分をへりくだすと謙譲語になっちゃうから気を付けて」
チノ「なるほど……では、この場合ですと『頂いてください』でしょうか?」
千夜「うーん、悪くはないけど『召し上がってください』の方が自然ね。頂いてくださいだと謙譲語を相手に対して言っていることになっちゃうわ」
チノ「うぅ、難しいです……」
千夜「大丈夫よ、ゆっくり覚えていきましょう」
チノ「千夜さん……ありがとうございます、あと4日間よろしくお願いします」
千夜「良い点取って、ココアちゃんやお父さんを喜ばせてあげましょうね」ニコッ
チノ「……はい//」
千夜(内緒でテスト勉強なんて、なにかココアちゃんと約束したのかな……♪)
――――――――――――――――――――――――
――リゼの部屋――
千夜「おじゃまします」ガチャッ
リゼ「千夜、遊びに来てくれたのか?」
千夜「ええ、ついでにこれも」スッ
リゼ「んっ、これって……」
千夜「今日までに食べないとダメになっちゃうの、お店のあまりものだけど良かったら」
リゼ「ありがとう、頂くよ。千夜も一緒にどうだ?」
千夜「うん……」
リゼ「おっ、アンコ大福か」
リゼ「待っててくれ、熱いお茶でも入れてくるよ」
千夜「ねぇ、リゼちゃん?」
リゼ「ん?」
千夜「やっぱり……和菓子よりも洋菓子の方が好き?」
リゼ「そんなことないぞ、和菓子も大好きだ」
千夜「ほんと?」
リゼ「ああ、確かにウチの家はデザートに洋菓子が多いけど、でも和菓子もおいしいし」
リゼ「特に甘兎庵の栗羊羹は最高の味だな♪」
千夜「良かった……」ホッ
リゼ「でも、どうしてそんなこと?」
千夜「……リゼちゃん、あんまり甘兎庵に来てくれないから」ボソッ
リゼ「え?」
千夜「ううん、なんでもないわ。早くお茶にしましょう、ね?」
リゼ「あ、ああ」
――――――――――――――――――
――夕方 甘兎庵 玄関前――
千夜「♪~♪♪」
千夜「あら、シャロちゃんおかえりなさい」
シャロ「ただいま~」
千夜「今日もアルバイト?お疲れ様」
シャロ「ん、ありがとう」
千夜「お風呂湧かしてあるから先に入っていいわよ」
シャロ「ううん、あとでいい。これからリゼ先輩と買い物に行くの」
千夜「リゼちゃんとスーパーに?珍しいわね」
シャロ「千夜へのお返しを買うって言ってたわ、リゼ先輩になにかしたの?」
千夜「お返し?…あっ、こないだの和菓子かしら。リゼちゃんたら気を遣わなくていいのに」
シャロ「ふーん、あんまりリゼ先輩に迷惑かけないでよ。それじゃあね」
千夜「いってらっしゃいシャロちゃん。お風呂待ってるわ、帰ったら一緒に入りましょう」
シャロ「遅くなっちゃうし先に入ってていいわ、二人だと湯船が狭いし」
千夜「そう?」
―――――――――――――――――――――
――早朝 甘兎庵――
千夜(どうしよう、少し早起きしすぎたわ)
千夜(ラビットハウスまでココアちゃんを迎えに行くにしても早すぎるわね)チラッ
千夜(朝食はおばあちゃんが作ってくれてるし……支度ができるまで大人しくアンコと遊んでましょう)
千夜「アンコー?アンコ?」
アンコ「」ピョコピョコ
千夜「アンコ、遊びま――あら、なにか拾ってきたの?」
千夜「これ……雑誌?」
アンコ「」コクコク
千夜「それも女性誌ね、お客さんが忘れていったのかしら」
千夜「…………」
千夜(暇つぶしに少し読んでみましょう)パラパラ
千夜(ファッションのことばかり……飲食店のことはあまり乗ってないのね)モクモク
千夜「あっ、スイーツ店の特集……」
千夜(もしかしたら甘兎庵のこともちょっとくらい……ふふっ、なーんて)クスッ
千夜(あっ、次は占いだわ)
千夜(1分でできる!願いが叶うおまじない、面白そうね)
千夜「用意するもの、マジックとカラーペン……あったわ」
千夜「えっと、真ん中に星を描いて、その線を青、紫、黄色、桃色、緑で多角形にして……」キュッキュッ
千夜(最後に指をかざして、その中心をなぞりながら、心から真剣に叶えたいことを願う……)
千夜「そうねぇ……」
千夜「…………」ウーン
千夜「どうせならいっぱい願ったほうがお得よね」
千夜「リゼちゃんが甘兎庵にたくさん遊びに来てくれますように」
千夜「シャロちゃんと一緒にいられる時間が増えますように」
千夜「チノちゃんがテストで100点取れますように」
千夜「ココアちゃんの好き嫌いが少なくなりますように」
千夜「みんなが、ずっと優しい気持ちでいられますように」
千夜「これで叶うかしら、ふふっ」ニコッ
お婆「千夜、ご飯だよ。なにグズグズしてるんだい」
千夜「あっ、はーい」
千夜「アンコ、いってきます♪」フリフリ
アンコ「」コクリ
――
――――
――――――
―――――――――――――――――――――――
――1か月後 学校――
ココア「今日のおかずは~…――うっ、またにんじんが」
千夜「きっとチノちゃんのお父さん、二人に苦手を克服してほしいのね」
ココア「千夜ちゃん……今日もお願いしてもいい?」
千夜「もちろん、はい肉団子」
ココア「千夜ちゃん!」パアァ
千夜「チノちゃんのお父さんには内緒にしておくわ」
ココア「ごめんね、いつかは絶対克服するから」
千夜「♪」ニコッ
――――――――――――――――――――
――甘兎庵――
千夜「89点!すごいわチノちゃん、おめでとう」
チノ「ごめんなさい千夜さん、せっかく教えて頂いたのに90点も取れずに……」
千夜「そんなことないわ、苦手な教科で80点以上なら上出来よ」
千夜「よく頑張ったわね、チノちゃん。お疲れ様」ナデナデ
チノ「んっ……♪」
千夜「お祝いに、チノちゃんお気に入りの甘兎庵特製モナカをプレゼントするわ」
チノ「そんな、教えて頂いた上にこんなもの受けとれません」アセアセ
千夜「このモナカ、今日中に食べないとダメになっちゃうの。たくさん余ってるからたべてもらえると助かるわ」
チノ「そうですか……分かりました、そういうことでしたら」
千夜「はいこれ、ココアちゃんの分も♪」
チノ「ありがとうございます千夜さん、今度ラビットハウスにいらっしゃったときはサービスしますね」
千夜「なら今度のお休みにでも伺おうかしら」
チノ「お待ちしています」クスッ
―――――――――――――――――――――――――
――天々座家 正門前――
リゼ「……――ん、あれは……?」
千夜「リゼちゃん、おかえりなさい」
リゼ「千夜、どうしたんだこんなところで?」
千夜「モナカ、たくさん余っちゃったからリゼちゃんにと思って」
リゼ「嬉しいけど……わたしなんかよりもシャロやココアにあげたほうがいいんじゃないか?」
千夜「もちろん二人にも配るわ、これはリゼちゃんの分なの」
リゼ「そうか……すまないな、今度ヘアアクセでも贈るよ」
千夜「ううん、余りものだから気にしないで。もうお返しなんて買っちゃだめよ?」
リゼ「ははっ……」
千夜「約束」スッ
リゼ「んっ……しょうがないな」
千夜「この前リゼちゃんがくれたスーパーのティラミス、すごくおいしかったわ」
リゼ「だろ?あそこのスーパーのスイーツ類はメーカーの手作り品だからおいしいんだよ」
千夜「洋菓子も悪くないわね、一度研究してみようかしら」
リゼ「ああ、今度一緒に食べに行こう。おすすめのお店があるんだ」
千夜「楽しみにしてるわ」
リゼ(体重、気を付けないとな……)
千夜「?」
―――――――――――――――――――
――甘兎庵 玄関前 夕方――
千夜「♪~♪♪」サッサッ
シャロ「………………」
千夜「あらシャロちゃん、おかえりなさい」
シャロ「……ただいま」
千夜「……?どうしたの、いつもよりアルバイト大変だった?」
シャロ「ん……まぁね。今日は疲れたから早めに寝るわ」
千夜「お風呂湧いてるわよ、今日こそ一緒に入りましょうか」
シャロ「……うん」
千夜「えっ?」
シャロ「着替え持ってくる……」
千夜「あっ……」
ガチャッ バタン
千夜「…シャロちゃん……?」
……………………
シャロ「ただいま……」トボトボ
千夜「シャロちゃん……大丈夫?なんだか最近辛そうだけど……」
シャロ「大丈夫よ、ちょっと疲れるだけ……」
シャロ「明日はフルールドラパン……良かった」
千夜「………………」
……………………
千夜「シャロちゃん、ちゃんとご飯食べてる?少し痩せたんじゃない?」
シャロ「そうかしら……気のせいよ」
シャロ「バイト、行かなくちゃ……」フラッ
千夜「待って!」
シャロ「……?」
千夜「お願い、正直に言って。一体なにがあったの?」
シャロ「何もないわ……」
千夜「うそ!ならどうして……!」
シャロ「……大丈夫」
シャロ「みんながいれば、大丈夫だから……」
シャロ「千夜……ありがとう」ニコッ
千夜「待って、シャロちゃん!」
……………………
千夜「………………」キョロキョロ
千夜「……!」
シャロ「…………」フラフラ
千夜「シャロちゃん、しっかりして!シャロちゃん!」
シャロ「……千夜」
千夜「……!」
シャロ「ごめんなさい……できる限り、頑張ったんだけど……」
シャロ「――もう……だめかも」ジワッ
千夜「シャロちゃん……シャロちゃん!」
シャロ「ごめん、千夜……ごめんね……」ポロポロ
千夜「シャロちゃん!……なんで、どうして………」
千夜「いやぁあ!!」
……………………
――
――――
――――――
――学校――
ココア「千夜ちゃんのお弁当、今日も豪華だね」
千夜「……シャロちゃんが作ってくれたの」
ココア「そっか~さすがはシャロちゃん」
ココア「わたしのは…――生姜焼きかな、おいしそう」
千夜「にんじんと玉ねぎ、大丈夫?」
ココア「うん、頑張って克服してみる。シャロちゃんも頑張ってるから」
千夜「…………」
ココア「ラビットハウスが終わったら、またみんなでいくね」
千夜「ありがとう、ココアちゃん……」
ココア「ううん、シャロちゃんのためだもん」
――――――――――――――――
――千夜の部屋――
チノ「見てください、シャロさんのおかげで英語100点取れました」
シャロ「ううん、チノちゃんが頑張ったからよ……」ニコッ
チノ「シャロさんの教え方が上手だからです。ほら、数学も100点でした」
シャロ「良かった……良かったわ、ほんとに」
チノ「シャロさん……」
千夜「…………」
チノ「……っ」キュッ
千夜「チノちゃん、お疲れ様。シャロちゃんもね」
チノ「千夜さん……」
シャロ「わたしは、なにもしてない……」
千夜「……みんなでお茶にしましょう、昨日考えた新作があるの」
チノ「はい……そうですね」
シャロ「………………」
千夜「……持ってくるわ、まってて」
―――――――――――――――――
――深夜 千夜の部屋――
シャロ「千夜……千夜ぁ……」グスグス
千夜「よしよし……大丈夫よ、シャロちゃん」
シャロ「こわい……たすけてぇ……」ブルブル
千夜「ちゃんとここにいるわ、心配しないで……」ナデナデ
シャロ「うぇぇ……」ポロポロ
千夜「……っ」グッ
千夜「だいじょうぶ……だいじょうぶよ」ギュッ
千夜「わたしたちが、シャロちゃんを守るから……」
―――――――――――――――――
――甘兎庵 PM4時半――
ガラッ
千夜「いらっしゃーい――あら、リゼちゃん♪」
リゼ「千夜、遅くなったな」
千夜「ううん、いつもごめんなさいね」
リゼ「……昨夜、またか?」
千夜「うん……明日は、たぶん大丈夫だと思う」
リゼ「そっか……また迎えに来るよ」
千夜「ありがとう、助かるわ」
リゼ「学校にいる間は任せてくれ、帰りもちゃんと送り届けるから」
リゼ「だから、何も心配しなくていいぞ」
千夜「ええ……」
リゼ「千夜……大丈夫か?」
千夜「わたしは平気よ、元気いっぱい」
リゼ「……少し休んでいくか」ストン
千夜「えっ、でもラビットハウスは……」
リゼ「遅れるって言ってあるから大丈夫だ、ココアもチノも分かってくれてるよ」
千夜「……そうね」
リゼ「ぜんざいでも貰おうかな。千夜、良かったらお客さんが来るまで話さないか?」
千夜「………………」
千夜「うん……ありがとう、リゼちゃん」
リゼ「んっ……おいしいな」
千夜「………………」
リゼ「千夜……」
千夜「………………」
リゼ「千夜!」
千夜「!」ビクッ
リゼ「どうしたんだ、ボーッとして?」
千夜「……ちょっと」
千夜「……ねぇ、リゼちゃん?」
リゼ「?」
千夜「神様って、残酷ね……」
リゼ「え……」
千夜「それとも、わたしが欲張りしたからかしら……」ポロ
リゼ「!」
千夜「こんなつもりじゃなかったのに……ふふっ……ふふ……」ポロポロ
リゼ「千夜……?千夜っ!」
千夜「充分……しあわせだったのにね……」ポロポロ
リゼ「……!?」
……。
…………。
………………。
――残酷な因果律にまつわる、無欲で得た不条理な結果。
-------------------
Interlude 3.「チノ」
-------------------
――早朝――
ココア「うぅ~寒いねぇチノちゃん」
チノ「もう1月ですから」
ココア「これだと2月は去年みたいにまた雪が降りそうだね!」
ココア「今年はみんなで雪合戦しようね、青山さんも入れて8人で!」
チノ「雪が降ったら考えます」
ココア「リゼちゃんに教えてもらった魔球を披露してあげるよ」フンス
チノ「結構です」フルフル
ココア「あっ、そろそろお別れだね」
チノ「ココアさん、道が滑るので気をつけてください」
ココア「いってきます!チノちゃんもいってらっしゃい♪」フリフリ
チノ「ふぅ…………」
チノ(寒い……もう一枚着てくればよかったかな)
チノ(…………んっ?)
チノ(あれ……シストの地図?)
チノ「……?」ピッ
チノ(どうしてこんなところに……?)
――――――――――――――――――――
――お昼休み――
マヤ「へぇ~シストの地図みつけたんだ」
チノ「はい、公園の自販機に貼り付けられていました」
メグ「帰りにみんなでやろっかぁ」
チノ「いえ、それが……」スッ
マヤ&メグ「?」
マヤ「なにこれ、破れてるじゃん」
メグ「誰かが破いちゃったのかな?」
チノ「そう思ったんですが、良く見るとここに数字が」
マヤ「3……?あっ、もしかしてバラバラの地図とか!?」
メグ「なるほどぉ、誰かがわざと破いて隠したんだね」
チノ「はい、恐らく残りの地図もあの公園のどこかにあるんだと思います」
マヤ「よーし!今日の帰りにみんなで探そう!」
メグ「シストのシストだね、何枚くらいあるのかな?」
マヤ「完成した地図の先に、本当のお宝が隠されてたりして!」
メグ「ワクワクするね~♪」
キャッキャッ ワイワイ
チノ「…………」クスッ
チノ(……でも、どうしてあんなに見つかりやすい場所にあったのかな……)
マヤ「チノ、どうしたの?」
チノ「えっ?あ、いえ……」
メグ「みんなで頑張ろうね」
チノ「はい」
――
――――
――――――
―――――――――――――――――――――――――
チノ「暗くなってきましたね」
メグ「マヤちゃん、そろそろ帰ろう」
マヤ「え~まだあとちょっと~」
チノ「手がかじかんで動きません……」ブルブル
メグ「風邪引いちゃうよ、ねっ?」
マヤ「ちぇ~しょうがないなぁ」
チノ「これで1と2と3と4が揃いましたね」
メグ「結局4枚しか見つからなかったね、あと何枚あるんだろう」
マヤ「見て、1と2の地図はちゃんと繋がるよ!」
チノ「もし誰かが先に残りの地図を見つけていたらアウトですね」
メグ「そっかぁ、それだといくら探しても見つからないもんね」
マヤ「だったら今度は残りのシストの地図を持った人探しだ!」
メグ「シストのシストのシストだね」
チノ「どんどん遠ざかっているような気がします……」
―――――――――――――――――――――――
チノ「ただいま」ガチャッ
タカヒロ「おかえり、ずいぶん遅かったね」
チノ「すいません、少し寄り道を……」
タカヒロ「お風呂が沸いてるよ、先に入っておいで」キラン
チノ「ありがとうございます……くしゅん……!」
タカヒロ「風邪には気をつけるんだよ」
チノ「ずずっ……はい」
ココア「チノちゃん!」ダダッ
チノ「!」
ココア「心配したよ!これからは寄り道するならお姉ちゃんに連絡してね!」スリスリ
チノ「苦しいです……」
ココア「寒かったでしょ?お姉ちゃんが暖めてあげるよ~!」ギュッ
チノ「お風呂に入るので結構です」
ココア「なら一緒に入ろう、ココア風呂だね」
チノ「まったく……しょうがないココアさんです」クスッ
―――――――――――――――――――――――――――――
――早朝――
チノ「」ガサゴソ
チノ「……ふぅ」
チノ(あと調べてないのは向こう側の2つのエリア)
チノ「この公園は広いですね、おじいちゃん……」ポスッ
ティッピー「公園というよりはマラソンコースじゃからの」
チノ「うぅ、寒いです……」ブルブル
??「――チノちゃん?」
チノ「?」
シャロ「おはよう、朝からお散歩?」
チノ「シャロさん、おはようございます」
シャロ「寒そうね……あっ、良かったらこれ飲む?今朝に千夜からもらったんだけど」
チノ「おしるこ……頂いてもいいんですか?」
シャロ「2本あるから、はい」スッ
チノ「ありがとうございます」
シャロ「シストの地図探し?」
チノ「はい、バラバラに隠されていて……昨日マヤさんとメグさんと一緒に3枚見つけたんですが」
シャロ「今日はチノちゃん一人で探してるの?」
チノ「メグさんもマヤさんも風邪を引くといけないので……」
シャロ「そう、でもこの公園だと一人で全部探すのは大変ね……」
シャロ「いいわ、一緒に探しましょう」
チノ「えっ?ですが……」
シャロ「今日はアルバイト午後からだから大丈夫、それに、ココアが起きてくる前にラビットハウスに帰らないとダメでしょ?」
チノ「!」
シャロ「マヤちゃんとメグちゃんと3人だけの秘密?」クスッ
チノ「……はい、マヤさんが」
シャロ「そう、内緒にしておくわ」
チノ「ありがとうございます」
チノ「ところでシャロさんはこんな早朝からどこへ?」
シャロ「ん……早朝開店セール、なんとか確保したわ」ガサッ
チノ「戦い終えたあとでしたか」
―――――――――――――――――――――――――
チノ「…………」ガサゴソ
チノ「……」ヒョイ
チノ「――!」
チノ「あった……5番……!」
チノ(4の地図とぴったり、間違いないです……!)
シャロ「チノちゃーん!」
チノ「?」
シャロ「向こうで7番見つけたわ!」
チノ「……!」
シャロ「ほら、これよね」
チノ「はい……間違いないです……!」
シャロ「それ5番?チノちゃんも見つけたのね」
チノ「どうやら7番が最後のようですね、ここに印が」
シャロ「ならあとは6番だけね。……でも」
チノ「はい、もう11時ですし、今日のところはこれで切り上げます」
シャロ「寒かったでしょ、家に帰ったら暖かくしてひとやすみしてね」ニコッ
チノ「シャロさん……ありがとうございます//」
シャロ(チノちゃん嬉しそう、よかった……♪)
――――――――――――――――――――――
――夜 自室――
チノ「これで6枚揃いました」
ティッピー「やったの、チノ」
チノ「はい、あとは1枚だけです」ニコッ
ティッピー「楽しいか?」
チノ「なんだかパズルみたいで……6番目の地図が見つかったら、今度は3人でシストですね」
ティッピー「面白いものが見つかるといいの」
チノ「何も無くてもいいんです、ほんとは」
チノ「ただ、マヤさんとメグさんと一緒に探しに行きたいだけで……」
チノ「わたしたちが終わったら、今度はココアさんたちに渡しましょう」クスッ
ティッピー「ふむ」
チノ「おじいちゃん、これなんだと思いますか?木のマークに階段、お店……」
ティッピー(6番目も見つかるといいがの)
――――――――――――――――――――――――
――翌日――
リゼ「チノー?カフェオレとカプチーノひとつだ」
チノ「はい」
チノ「できました、お願いします」ゴトッ
リゼ「おっ、早いな」
ガチャッ
チノ「いらっしゃいませ」
チノ「カフェラテですね、少々お待ちください」
リゼ「チノ、なにかいいことでもあったのか?」
チノ「えっ?」
リゼ「なんだか普段より明るい気がして」
チノ「いえ、そんなことは……」
リゼ「そっか、まぁ良い傾向だな。その調子で頼む」
チノ「は、はい」
チノ(今日は3時まで……あと3時間、頑張ろう)
ココア「二人ともおはよう、遅れてごめんね~」タタタ
リゼ「やっと起きてきたか」
チノ「おはようございますココアさん」
チノ(…………)スッ
1・2・3・4・5・7
チノ(ふふっ……)
―――――――――――――――――――――
――PM4:00 公園――
チノ「ふぅ…………」
チノ(見つからない……誰かに拾われたのかな)
チノ(もう4時……あと1時間だけ探そう)
チノ「今日も寒いですね……」オシルコ カポッ
チノ「……」ゴクゴク
ティッピー「チノや」
チノ「?」
ティッピー「さっきからあの子、ずっと何か探しているようじゃが……」
チノ「あの女の子ですか」
チノ「……本当ですね」
チノ「……もしかしたら」スッ
チノ「探し物ですか?」
チノ「――シストの地図を、やっぱりそうでしたか」
チノ「……これ」スッ
チノ「ほかは全部見つけてあります、どうぞ」
チノ「――はい、いいんですよ」
チノ「寒い中、大変でしたね」
チノ「お宝、頑張って見つけてください」
チノ「」ニコッ
―――――――――――――――――――――
――夜 自室――
チノ「うーん……」パズル
ティッピー「チノや」
チノ「なんですかおじいちゃん?」
ティッピー「シストの地図……よかったのか?」
チノ「はい。あの子、喜んでいましたから」
ティッピー「じゃが……」
チノ「いいんです、わたしたちがするよりずっと楽しんでくれるはずですから」
チノ「マヤさんとメグさんには明日謝っておきます。あとシャロさんにも」
ティッピー「優しいの、チノは」
チノ「ココアさんたち……みんなのおかげかもしれません」
チノ「それに、ちゃんと全部見つかりましたから」
ティッピー「そうじゃな」ピョン
―――――――――――――――――
――学校――
マヤ「結局その子にあげちゃったんだぁ」
メグ「優しいね、チノちゃん」
チノ「すいません、せっかくみんなでやるはずだったのに」
マヤ「いいよ~また途中で飽きるかもしれないしさ。その子にあげて正解だよ」
メグ「ひとりで残り全部見つけたんだ、すごいね」
チノ「いえ、実はシャロさんも手伝ってくださって」
マヤ「わたしたちも呼んでくれればいいのに水臭いなぁ」
メグ「またみんなでやりたいね、お宝探し」
マヤ「そうだ!ねぇねぇ、今度3人で――」
チノ「……♪」クスッ
――
――――
――――――
――――――――――――――――――――
――翌日 甘兎庵前――
チノ「♪~♪♪」テクテク
チノ(あれは)
チノ「千夜さん、おはようございます」
千夜「チノちゃん……おはよう」
チノ「掃除ですか?」
千夜「うん、日課だから一応……」
チノ「……?どうかされたんですか?」
千夜「えっ……?」
チノ「千夜さん、なんだか元気がないような気がして」
千夜「……ちょっと、ね」
千夜「あんなことがあったから、少し怖くて……」
チノ「……?」
千夜「チノちゃん……お父さんから聞いてない?」
チノ「えっと……」
千夜「この近所に住んでいた女の子が、いま行方不明になってるの」
チノ「――!」
千夜「昨日ひとりで遊びにいったきり、まだ帰ってこないらしくて……」
チノ「!!」
千夜「明日から捜索が開始されるみたいよ、もし誘拐だったりしたら……」ブルブル
千夜「無事に見つかってくれるといいわね……」
チノ「………………」
千夜「だから、チノちゃんも気をつけてね。帰り道はマヤちゃんやメグちゃんと一緒に……」
千夜「――……?チノちゃん?」
チノ「…………」
――ガクッ……
千夜「!」
チノ「……っ!」ガクガク
千夜「チノちゃん!?」
チノ「ぁ…………ぁ……」ガクガク
千夜「チノちゃんっ!?どうしたの!?しっかりしてっ!!」
チノ「ちがっ………あ……」ガクガク
チノ「わたし……ぁ…………」ガクガク
チノ「…………っ」ブルブル
千夜「……!?」
チノ「お父さん…おじいちゃん……ココアさん……」ポロポロ
チノ「お母さん……どうして…こんな……」ポロポロ
千夜「チノちゃん……!?チノちゃんっ!!」
チノ「お母さん、助けて……っ!」ポロポロ
千夜「チノちゃんっ!!」
……。
…………。
………………。
――平穏な日常に潜む、恐るべき残酷。幸福の先に待ちうける非情の真理。
--------------------
Interlude 4.「リゼマヤ」
--------------------
――PM4:30 帰り道――
マヤ「メグ、またね~!」
メグ「今日も帰っちゃうの?」
マヤ「チノにも言っておいて!」タタタ
メグ「あっ、マヤちゃん……」
メグ「……いっちゃった」
チノ「二人とも、お待たせしました」ガラッ
メグ「チノちゃん……」
チノ「……?マヤさんは?」
メグ「それが……今日も」
チノ「……そうですか」
メグ「なにかあったのかな?」
チノ「分かりません……マヤさんのことです、また一人で悩んでいるのかも」
メグ「明日それとなく聞いてみよっか」
チノ「いえ、わたしたちが直接聞くよりは……」ピッ
メグ「?」
―――――――――――――――――――――
――2日後 公園――
マヤ「ふぅ…………」
マヤ「……………………」
マヤ「………………」ハァ
??「ずいぶん深いため息だな?」ツンッ
マヤ「あぅ…?――リゼ」
リゼ「どうしたんだ、こんなところで」
マヤ「んー、ただの寄り道?」
リゼ「ただの寄り道、か」
リゼ「――嘘をつけ」ベシッ
マヤ「あいた、上官からの理不尽なムチだ!」
リゼ「チノから聞いたぞ、最近は一人で帰ってるみたいじゃないか」
リゼ「学校が終わったらいつも慌てて帰っていくって」
マヤ「……!」
リゼ「またなにか悩んでいるんじゃないかってチノもメグも心配してたぞ?」
マヤ「……そっか」
リゼ「よっと」スッ
マヤ「あはは、リゼは二人の差し金?」
リゼ「まっ、そんなところだ」
マヤ「………………」
リゼ「………………」
マヤ「何も聞かれないからさ、二人とも気にしてないんだと思ってた」
リゼ「そんなはずないだろう」
マヤ「……そうだよね」
リゼ「…………」
マヤ「よりにもよってリゼか、チノも容赦ないなぁ」
リゼ「理由を聞くまで帰さないから、風邪を引く前に白状しろよ」
マヤ「………………」
リゼ「………………」
マヤ「ねぇ、リゼ?」
リゼ「ん……?」
マヤ「時間ってさぁ、どうやったら長持ちするのかな」
リゼ「長持ち?」
マヤ「ほら、楽しい時間とかってあっという間じゃん?」
マヤ「逆につまんない時とか寂しい時って結構長持ちするからさ……」
リゼ「……………」
マヤ「でも、それだと全然意味無くて」アハハ
リゼ「……なるほどな」
マヤ「ねぇリゼ?楽しい時間を長持ちさせる方法ってないかな?」
リゼ「……そんなものがあれば苦労しない。マヤだって、悩んでないだろう」
マヤ「……そっか……やっぱりか」
リゼ「………………」
マヤ「こうやって一人でボーっとして、長持ちさせるしかないのかな。……チノとメグとの時間」
リゼ「………………」
マヤ「意味が無いけどさ、でも、長持ちするし……また前みたいにふんぎりがつくまでは――」
リゼ「気のせいだ」
マヤ「えっ?」
リゼ「……」スッ
リゼ「時間は長持ちしない。誰にだって平等に、ずっと流れてる」
リゼ「こうしてわたしと話している今でも、時間はちゃんと流れてるんだ」
マヤ「……でも、チノとメグとの時間はあっというまじゃん」
マヤ「一人でこうしていれば、ずっと長く――」
リゼ「全部気のせいだ、お前の」
マヤ「………………」
リゼ「時間はどうあがいても長持ちしたりしない」
リゼ「明日からちゃんと、二人と一緒に帰るんだ」
マヤ「………………」
マヤ「……嫌だよ」
リゼ「マヤ……」
マヤ「長持ちさせたい……たとえ少しだけでも、気のせいでも」
リゼ「良く聞け、そうやって先のことから目を逸らしたって何も――」
マヤ「リゼにわたしの気持ちなんて分からないよ!」
リゼ「!」
マヤ「……っ!」タタタ
リゼ「あっ、おいマヤ……!」
――――――――――――――――――
マヤ「………………」
マヤ「…………」
マヤ「……」
『時間はどうあがいても長持ちしたりしない』
マヤ「……っ」
マヤ「…………」
マヤ「チノ……メグ…………」
マヤ「…………」ウツムキ
――
――――
――――――
―――――――――――――――――――――
――翌日 PM4:30 公園――
リゼ「………………」キョロキョロ
リゼ(やっぱりいない……)
リゼ(今日はまっすぐ家に帰ってしまったのかな……無理もない)
リゼ「………………」
『リゼにわたしの気持ちなんて分からないよ!』
リゼ「…………」グッ
リゼ「ハァ……」
千夜「あら、リゼちゃん?」
リゼ「んっ?千夜……」
千夜「おかえりなさい、今日は遅かったのね」
リゼ「ちょっと寄り道しててな……」
千夜「良かったらウチにも寄っていかない?珍しくマヤちゃんが来てくれてるの」
リゼ「っ!マヤが!?」
千夜「?」
――ガラッ
マヤ「あっ、千夜、この緑茶ちょっとにが――!」
リゼ「…………」
マヤ「……リゼ」
リゼ「公園にいないと思ったら、こんなところにいたのか」
マヤ「……………………」
リゼ「チノから聞いたぞ、今日も一人で帰っていったって」
マヤ「……………………」
リゼ「マヤ……いい加減にしないか。こんなことしてたって何も――」
マヤ「気のせいでも、いい」
リゼ「……!」
マヤ「こうしていたほうが、気が晴れるから……」
リゼ「………………」
千夜「リゼちゃん?」ガラッ
リゼ「……気が晴れるか」
マヤ「………………」
リゼ「そうか、なら確かめてやる」
リゼ「こい」グイッ
マヤ「!」
リゼ「千夜、お勘定ここに置いとくぞ」バン
千夜「リゼちゃん待って!どうしたの?」
リゼ「この分からず屋を借りていく」ガラッ
千夜「あ、マヤちゃん……!」
バタン
千夜(まさか……喧嘩!?)
千夜(どうしよう、ココアちゃんに……いや、先にチノちゃんに!)
千夜(追いかけなきゃ……でも、おばあちゃんもシャロちゃんもいないし)オロオロ
――――――――――――――――――――――――
――天々座家 自宅前――
リゼ「…………」スッ
マヤ「どういうこと?」
リゼ「自転車だ……後ろに乗れ」
マヤ「………………」
リゼ「気のせいでも時間を長持ちさせられるんだろ?わたしも試してみたくなった」
リゼ「早く乗れ、それとも嘘か?」
マヤ「………………」
――スッ
リゼ「……いくぞ」
マヤ「どこに?」
リゼ「さぁな……ただ、誰もいないところだ」
リゼ「ココアもチノも、千夜もシャロも、メグもな」
マヤ「…………」
――
――――
――――――
―――――――――――――――――
リゼ「次はどうする?」
マヤ「みぎ」
リゼ「…………」
――――――――――――――――――
リゼ「次は?左か?まっすぐか?」
マヤ「……まっすぐ」
リゼ「…………」
―――――――――――――――――
リゼ「次は?」
マヤ「…………」
リゼ「何もないならまっすぐ行くぞ」
――――――――――――――――――
リゼ「次は?」
マヤ「……もういい」
リゼ「どうした?」
マヤ「…………」
リゼ「気が晴れるんじゃなかったのか」
マヤ「…………」
リゼ「気が晴れるんならずっとこのままでもいいだろ」
マヤ「もういい。……分かったから」
リゼ「………………」
―――――――――――――――――――
――土手――
マヤ「…………」
リゼ「ほら、カフェオレで良かったか?」
マヤ「ん……ありがとう」
リゼ「ふぅ……ずいぶん遠くまで来てしまった」
マヤ「…………」ズズッ
リゼ「悪かったな、いきなり連れ出して」
マヤ「……ううん」
リゼ「………………」
マヤ「……ねぇ、リゼ?」
リゼ「んっ?」
マヤ「時間を長持ちさせたいって、思ったことある?」
リゼ「……あるよ、何回も」
マヤ「……そっか」
リゼ「そうだな……ココアがこの街にやって来てからは、ずっとだ」
マヤ「!」
リゼ「ココアやチノと働いているときも、千夜と話しているときも、シャロと一緒に帰ってるときも……マヤやメグと遊んでいるときも」
マヤ「…………」
リゼ「でもな、いくら惜しんだって、無駄なんだ」
リゼ「時間はどうやったって流れていくし、遡ることもできない」
リゼ「マヤだって高校生になる。わたしも大学生にな」
マヤ「……うん」
リゼ「わたしだって、ほんとはずっとこのままでいたい」
リゼ「変わらないなら、ずっと今の幸せにすがっていたい」
リゼ「……ずっと、このままで」
マヤ「……リゼ?」
リゼ「小さい頃、あんなに早く過ぎてほしいと思っていた時間が……今は、何より惜しいんだ……」
リゼ「長持ちさせる方法なんてあるなら、わたしが教えてほしいくらいだ」ニコッ
マヤ「っ……リゼ!」
リゼ「?」
マヤ「……あんなこと言って、ごめん」
マヤ「わたしの気持ちなんて、分からないって……」
リゼ「……マヤ」
マヤ「リゼは、わたしよりずっと分かってたのに……」グスッ
マヤ「っく……ごめんなさい……」ジワッ
リゼ「……」クスッ
リゼ「泣くなよ、気にしてないって」ナデナデ
マヤ「グスッ……ヒック……」ポロポロ
リゼ「なぁ、マヤ?」
リゼ「一人ぼっちでいたら、確かに時間は長く感じるかもしれない」
リゼ「『今』の時間が、長引いた気がするかもしれない」
リゼ「でもな……そうやって長引かせても、得られるのは結局後悔だけだぞ」
リゼ「たとえ短く感じても、チノやメグ……みんなと一緒にいれば、絶対後悔なんてしない」
リゼ「どうせ同じ過ぎていくなら、みんなと楽しくしているほうがいい……そう思わないか?」
マヤ「りぜぇ……」ギュッ
リゼ「よしよし……みんなとの時間が無くなっていくのが、怖くなったんだよな……」
リゼ「今を大切にしていればいいんだよ……大丈夫、みんなずっと一緒だって」ナデナデ
マヤ「……っ!」ポロポロ
リゼ「…………」ギュッ
――――――――――――――――――――――
――
――――
――――――
――PM6時30分 ラビットハウス――
マヤ「おじゃましまーす」ガチャッ
チノ「マヤさん……!」
メグ「マヤちゃん!心配したよ!」
マヤ「おっ、チノ!メグー!」タタタ
ココア「リゼちゃんおかえりー!」
シャロ「リゼ先輩、マヤちゃんと喧嘩なんてしてませんよね!?」
リゼ「なんだこの騒ぎは……」
千夜「リゼちゃんが怖い顔でマヤちゃんを連れて行ったから不安で……」
リゼ「千夜か……すまない、心配かけたな」
シャロ「一体どうしたんですか?」
リゼ「話せば長くなる……まぁ、とりあえず解決した」
千夜「なにか悩み事とか?」
リゼ「まぁ、そんなところだ」
ココア「そんな……!お姉ちゃんであるわたしを差し置いて、リゼちゃんに……!」ガーン
シャロ「マヤちゃん、リゼ先輩と仲良いですもんね……本当の姉妹みたいに」
千夜(あら、ヤキモチ……?)
リゼ「チマメ隊に、笑顔が戻って良かったよ」
マヤ「チノ、メグ、わたしたち学校が離れてもずっと一緒だよ!」
チノ「はい、もちろんです」クスッ
メグ「チマメ隊だもんね~」ニコッ
マヤ「明日からは残りの中学生生活を、1秒たりとて無駄にしちゃダメだ!」
チノ「ずっと無駄にしてたのはマヤさんじゃないですか」
メグ「そうだよ~一人で帰っていって。寂しかったよ?」
マヤ「うぅ、ごめんなチノ、メグー!」
キャッキャッ ワイワイ
リゼ「…………」
千夜「リゼちゃん、お疲れ様」
リゼ「ああ」
シャロ「リゼ先輩?」
リゼ「……ほんとに、時間が止まらないかな……」ボソッ
シャロ「えっ……?」
リゼ「さて、掃除だけでも手伝うか」
シャロ「あっ……」
――――――――――――――――――――
――更衣室――
リゼ「…………」
ココア「リゼちゃん?」
リゼ「んっ……ココア?」
ココア「もしかしてマヤちゃん、チノちゃんとメグちゃんのことで悩んでた?」
リゼ「……ああ、二人との時間が過ぎていくのが、怖くなったみたいだ」
ココア「……そっか」
リゼ「気持ちは分からなくもない、わたしも怖くなるときがある」
ココア「リゼちゃんも?」
リゼ「ああ」
ココア「…………」
ココア「リゼちゃん」
リゼ「?」
ココア「――えいっ」ギュッ
リゼ「!」
ココア「大丈夫、リゼちゃんが大学生になっても、わたしたちずっと友達だよ」ニコッ
リゼ「……ココア」
ココア「これからもみんなで、たくさん楽しい思い出作ろうね?約束!」
リゼ「…………」
――ギュッ
ココア「ふぉぇ?リゼちゃん……?」
リゼ「ありがとう……ココア」グスッ
リゼ「ふふっ……お前は、優しいな……」ジワッ
ココア「リゼちゃん、どうしたの?」
リゼ「なんでもないよ……なんでも……」ポロポロ
ココア「泣かないで……よしよし、大丈夫?」ナデナデ
リゼ「ああ……大丈夫だ……」
リゼ「ごめん……もう少しだけ、このままで」ポロポロ
ココア「うん、いいよ……リゼちゃんが泣き止むまで、ずっとこうしてるから」
リゼ「ココア……」ポロポロ
リゼ「……っ」ギュッ
ココア「リゼちゃん……?」
リゼ「……っ!」ポロポロ
……。
…………。
………………。
『幸福な時間』の二律背反、もしくは消ゆる『幸せ』への戦慄。
--------------------
secret Interlude.「s and m」
--------------------
――ラビットハウス――
リゼ「ふぁぁ…………」アクビ
チノ「さっきのお客さんから2時間……誰も来ませんね」
リゼ「夏休みなのは子供だけだもんな」
チノ「しかたないので本でも読んでおきます」パラッ
リゼ「読書か、わたしはどうするかな」
リゼ(あれ……そういえばココアは?)
――厨房――
ガチャッ
ココア「…………」モクモク
リゼ(あいつも読書か、しかし何もこんなところで読まなくても)
リゼ「――おい、ココア」ポンッ
ココア「ヴぇあああぁああ!!?」ビクッ
リゼ「っ!?」
ココア「りり、リゼちゃん!いつからそこに!?」アタフタ
リゼ「ついさっきだけど……すまない、まさかそんなに驚くとは」
ココア「そっか……ううん、わたしのほうこそごめんね」ホッ
リゼ「んっ……?それ、小説じゃなく雑誌か?」
ココア「!う、うん、お客さんの忘れ物で……」ササッ
リゼ「珍しいな、ココアがそういうの読むなんて」
ココア「暇だったからつい、あはは……」
リゼ「?」
リゼ(なにか不自然だな……まぁいいか)
リゼ「読書ならチノの隣でしてきたらどうだ?ここは少し寒いだろ」
ココア「ううん大丈夫だよ、むしろ熱いくらい……」
リゼ「そういえば心なしか顔が赤いな……もしかして風邪か?」オデコ ピタッ
ココア「!」
リゼ「ん~……熱いのは頬だけだな」リョウテ ピタッ
ココア「リゼちゃん……」
リゼ「?――あっ……す、すまない、つい……//」
ココア「ううん、ありがとう//」ニコッ
リゼ「…………っ//」
ココア「……//」モジモジ
リゼ「お、お茶でも飲むか、冷えてるやつ!」
ココア「うんっ」
リゼ「ほら、こぼさないようにな」
ココア「この味……ウーロン茶だね」ドヤッ
リゼ「いや、ただの麦茶だ」
リゼ「ズズッ…………ふぅ」
ココア「………………」
リゼ「クーラー効いた部屋で冷たいお茶を飲むとさすがに寒いな」ブルッ
ココア「……………………」
ココア(リゼちゃんなら……知ってるかも……)
リゼ「少し温度上げるか。ええっと、リモコンは――」
ココア「っ……り、リゼちゃん!」
リゼ「んっ、どうした?」
ココア「あのね……教えてほしいことがあるの」
リゼ(教えてほしいこと?宿題かな?)
ココア「頑張って自分で調べようとしたんだけど、どうしてもわからなくて……」
リゼ「いいぞ、何でも聞いてくれ」
ココア「ほんと?……ありがとう」
リゼ(1年前の課題だし、たぶんまだ大丈夫だよな)
ココア「っ……あのね――」
リゼ「?」ズズッ
ココア「――マ〇ヒストってなに?」
リゼ「ブフッ!!?」
ココア「リゼちゃん!大丈夫!?」
リゼ「ごほっ!げほっ!はぁ、はぁ……!」
リゼ「……ココア、いまなんて?」
ココア「えっ、マ〇ヒストって……」
リゼ(どうやら聞き間違いではないらしい……できればそうあって欲しかったが)
リゼ(……そうか、ココアももう高校生、そういうことに興味を持ってくる年頃だよな)
リゼ(ここは、年上のわたしがしっかりしないと……)
リゼ「……コホン!まずはココア、いったい誰から聞いたんだそんな言葉?」
ココア「えっと、この雑誌に載って――あっ!」
リゼ「なっ……!なんて本を読んでるんだお前は!//」
ココア「ごめんなさい!気になってつい!」
リゼ「これは没収だ!」パシッ
ココア「それお客さんのだよ~」ヴエェ
リゼ「まったく……挙動不審だったのはこのせいか」
ココア「だって……こんなの読んでるの見つかったら絶対リゼちゃんに軽蔑されるもん」グスッ
リゼ「そりゃ驚くかもしれないけど……別にココアのこと軽蔑したりしないぞ」
リゼ「そういうことが気になりだすのは、お前だけじゃなくみんな一緒というか……」
ココア「リゼちゃんも?」
リゼ「わたしの場合は家に男が多いから自然と……いや、わたしのことはいいんだ」
リゼ「それより……ま、マ〇ヒストだっけか?//」
ココア「うん、普通はMって表現するらしいの」
リゼ「意味は……そうだな……//」ゴニョゴニョ
ココア「あっ……や、やっぱり……いけない言葉……?//」
リゼ「……まぁ、そうだな//」
ココア「そっか……やっぱり……//」
リゼ「………………」
ココア「…………//」モジモジ
リゼ「……知りたいか?」
ココア「!……うん//」
リゼ「そっか……なら今夜わたしの家に来い。ここじゃあチノもいるし、な」
ココア「ふふっ、お泊り会だね」
リゼ「勉強会だろ一応」
ココア「リゼちゃん、ありがとう」ギュッ
リゼ「!」
ココア「わたし、パソコンもスマホも持ってないから……リゼちゃんがいてくれてよかった」
ココア「今夜知らないこと、たくさん教えてね」ニコッ
リゼ(……違う、違うぞ!これは変な意味でも無ければ隠語でもない……//)
リゼ(純粋なココアの心を裏切るような邪な気持ちは絶対抱いてはいけないぞ!//)ブルブル
リゼ「汚れたわたしの心、頼むから暴走しないでくれよ……」
ココア「リゼちゃん?」キョトン
――
――――
――――――
――夜 リゼの部屋――
リゼ「つまりだな、マ〇っていうのはいじめられたり叩かれたりすると喜んだりドキドキしちゃう人のことを指すんだ」
ココア「叩かれて喜ぶの……?//」
リゼ「あっ、でも本当のいじめや暴力じゃないぞ?あんなので喜ぶ人はいない」
リゼ「この場合はいじめる側といじめられる側、あくまでお互いの間に信頼関係が無いとダメなんだ」
リゼ「ちなみにいじめる側のことをサ〇ィストと呼ぶ」
ココア「サ〇……あ、Sのこと?」
リゼ「そうだ……Sっ気とMっ気、基本的に人間はどちらの素質も兼ね備えていると言われている」
リゼ「人によってどちらかに大きく傾いてしまうことはあるが、100%傾くことは絶対に無いそうだ」
ココア「そうなんだ……//」
リゼ「他には、何かあるか?」
ココア「……首輪とか、お仕置きって?」
リゼ「またえらく過激だな……//」
ココア「ご、ごめん……//」
リゼ「人間はみんな支配欲や嗜虐心、被支配欲などを心のどこかに持ってるんだ」
リゼ「その気持ちがふとしたことで満たされたり琴線に触れたりすると、その……ドキドキしたりするらしい//」
リゼ「首輪やお仕置きとかは、する側とされる側のお互いがその気持ちを満たすための行為だ」
ココア「…………//」ドキドキ
リゼ「すまないな、こんな理屈っぽいことしか言えなくて」
ココア「ううん、良く分かった」
リゼ「もういいのか?」
ココア「うん。……ふふっ♪」
リゼ「?」
ココア「リゼちゃんって、何でも知ってるんだね//」ニコッ
リゼ「うっ、からかうなよ……わたしだってほんとは恥ずかしいんだ//」
ココア「わたしもだよ、あはは……//」
リゼ「もうあんまりああいった本は読まないでくれよ//」ポンポン
ココア「うん、気を付けるね」
リゼ「よし……さて、まだ8時半だけど眠くなるまでゲームか何かするか?」
ココア「……………………」
リゼ「ココア……?」
ココア「……ねぇ、リゼちゃん?」
ココア「さっき、マ〇って信頼関係が無いとダメって言ってたよね?」
リゼ「えっ……あ、ああ//」
ココア「じゃあ、たとえばね……リゼちゃんとわたしとかだったら、大丈夫なの?」
リゼ「っ!!?」
ココア「わたしとリゼちゃんだったら、お互いにドキドキするのかな?//」
リゼ「……さぁ、どうだろうな//」
ココア「……リゼちゃんは、わたしのこと嫌い?」
リゼ「そんなはずないだろう……好きだよ」
ココア「えへへ、わたしもリゼちゃん好きだよ♪」パァ
リゼ(かわいい……)
ココア「好き同士ってことは、お互い信用してるってことだよね?」
リゼ「まぁ、そうかもしれないが……」
ココア「……一度だけ、二人でやってみない?」
リゼ「!……ココア……//」
ココア「あっ、もちろんリゼちゃんが嫌でなければだけど……//」
リゼ「っ………//」ドクンドクン
リゼ(落ち着け、ここは理性を振り絞って断るんだ……!これ以上目の前の白ココアを汚してはならない!)
リゼ(アブノーマルな世界に踏み込ませてはいけない!欲望に負けるな、頑張れわたしの理性――)
ココア「リゼちゃん……?//」ウワメ
リゼ「」
―――――――――――――――――――――――
リゼ「……苦しくないか?」
ココア「んっ、大丈夫……」
リゼ(赤いリボンで首輪、か……なんだか余計に背徳的だな)
ココア「イヌミミを付けて……これでいいかな?」
リゼ「ああ。……どうだ、ペットの気分は?」
ココア「えへへ……なんだかすごく、変な気持ち//」
ココア「でも、嫌じゃないかも……//」
リゼ「そうか……」
ココア「きっと相手がリゼちゃんだからだね//」ニコッ
リゼ「良く似合ってるよ、そのイヌミミも首輪も」ナデナデ
ココア「リゼちゃんはどんな気分……?」
リゼ「そうだな……今までの人生の中で、きっと一番ドキドキしてる」
リゼ「支配欲とか背徳感とか嗜虐心とか、もうごちゃごちゃになってて……自分でも良く分からない//」
ココア「ということは、お互い大成功だね。ふふっ、わんわん♪」
リゼ「いや、まだだろ?」
ココア「ふぉぇ?」
リゼ「……まだ――」
パシン!
ココア「!?」
リゼ「お仕置きが残ってるだろ」
ココア「…………っ//」プルプル
リゼ「ココア、大丈夫か?」
ココア「うん……ちょっと痛いけど……嫌じゃない、かも……//」
リゼ「……続けるか?」
ココア「…………//」コクリ
リゼ「分かった……ほんとに痛かったら言ってくれよ?」
ココア「わん♪//」
リゼ「ふふっ、いい子だ……」パシン!
ココア「ひゃっ……//」
パシン! パシン! ペシッ!
――――――――――――――――――――――
――IN ベッド――
ココア「………………//」
リゼ「………………//」
ココア「……すごかったね//」
リゼ「ああ……すまない、わたしとしたことがどうかしていた//」
ココア「ううん、わたしも変になってたからお互い様だよ//」
リゼ「頬とかお尻とか大丈夫か?……さすがに強くやり過ぎたな」
ココア「大丈夫、この痛みもリゼちゃんのだと思うと、全然嫌じゃないよ」
リゼ「でも、わたしはもうココアに痛い思いをしてほしくないんだ……だから、もう……」
ココア「……ダメ?」
リゼ「お仕置きは、できることなら。……首輪を付けたり、こうしてベッドに縛られたまま無抵抗になってるお前を見てる方がずっといい」
ココア「リゼちゃん……//」
リゼ「マ〇なココア、最高だ……」ギュッ
ココア「くすぐったいよ……ふふっ//」ニコッ
―――――――――――――――――
――翌日――
リゼ「」ズーン
千夜「リゼちゃんどうしたの?そんなに落ち込んで……」
リゼ(ココアをアブノーマルの世界に触れさせないようにするつもりが、あろうことか一緒に引き込まれてしまった……うぅ、今になって罪悪感が)ギリギリ
千夜「リゼちゃん大丈夫?胃薬飲む?」
リゼ「千夜……すまない、頂くよ」
チノ「――あの、リゼさん、千夜さん?」
リゼ「んっ?」
千夜「なぁにチノちゃん?」ニコッ
チノ「最近本を読んでいて分からない言葉が出てくるのですが……」
リゼ「……?」ゴクゴク
千夜「あら、どんな言葉かしら?」
チノ「――マ〇ヒストってなんですか?」
リゼ「ブフッ!!?」
千夜「まぁ……」
この後、チノちゃんの疑問は千夜ちゃんの説明によってすんなりと解決したそうです。
end.
Special Interlude.「I want to drink milk」
――早朝 ラビットハウス――
リゼ「おはよう」ガチャッ
チノ「おはようございます、リゼさん」
ココア「おはようリゼちゃん♪」
リゼ「チノ、ココア、おはよう」
チノ「今日は珍しくココアさんが早起きしてきました」
ココア「最近早めに寝るように気を付けてるんだ」フンス
リゼ「いや、威張ることじゃないだろ」
チノ「そろそろ開店準備しましょう」
ココア「うんっ!」
リゼ(ココアが早起き、か)
リゼ(そうか……今日は金曜日だもんな)
リゼ(1週間前の――約束の日だ)
リゼ(…………)チラッ
ココア「あっ……えへへ//」ニコッ
リゼ(可愛い)
リゼ(……さて、今夜は何をしてあげよう)
―――――――――――――――――――――――
――お昼 厨房――
リゼ「…………//」モクモク
リゼ「……//」ペラッ
リゼ「わっ……//」
リゼ「な、なるほど……こういうのもあるのか//」
ココア「リゼちゃん?」
リゼ「っ!!?」ビクッ
ココア「なにして――…あ…それ……//」
リゼ「ち、ちがっ!これは……その……!//」
ココア「…………//」モジモジ
リゼ「~~っ……すまない、わたしも詳しくは知らないからつい……//」
ココア「ううん、全然気にしてない。むしろ嬉しいよ//」ニコッ
ココア「リゼちゃんが……乗り気で勉強してくれてるなんて……//」
リゼ「……っ//」
ココア「無理してわたしのわがまま聞いてくれてるのかなって、心配だったから……」
リゼ「そんなことはない!絶対に」
ココア「……!」
リゼ「また……あんなココアが見たい……見せて、ほしい//」
ココア「……リゼちゃん//」
ココリゼ「………………//」
ココア「……今夜、行くね//」
リゼ「ああ……//」
ココア「ふふっ♪……ねぇリゼちゃん、やっぱりその本すごい?」
リゼ「少なくともお前やチノが読むものじゃないな」
ココア「むぅ……また子ども扱いして」
リゼ「いや、子供じゃないから困るんだよ……」ナデナデ
ココア「?」
――夜 リゼの部屋――
リゼ「…………」
リゼ「…………」チラッ
リゼ「…………」ソワソワ
リゼ「………………」ドキドキ
トントン
リゼ「!」
ココア「入ってもいい?」
リゼ「いいぞ」
ガチャッ
ココア「こんばんは……リゼちゃん、お待たせ」ニコッ
リゼ「ドアの鍵、閉めておいてくれ」
ココア「うん」カチッ
リゼ「ほら、ここ座れよ」ベッド
ココア「…………」ポスッ
リゼ「……ココア?」
ココア「昨日はドキドキして眠れなかったよ……//」
リゼ「別に変なことをするわけじゃあ……あ、いや、十分変なことか……//」
ココア「うん……いけないことだよね……?//」
リゼ「……ああ。友達同士で、ほんとはいけないことだ……」
ココア「………………//」
リゼ「……やめておくか?」
ココア「ううん!……してほしい//」
リゼ「そうか……なら、初めはお願いからだ」
リゼ「この前教えた通りにやってみろ」
ココア「うん……ええと……わん、わん?//」
ココア「わたしを、リゼちゃんのペットにしてください……?//」
リゼ「ちゃんと言えたな、いい子だ」ナデナデ
ココア「えへへ、リゼちゃんに褒められた……//」ニヘラ
リゼ「ペットの証だ、これを付けろ」スッ イヌミミ
ココア「んっ……首輪は?」
リゼ「ちゃんと付けるよ……自分からおねだりなんてほんとにマ〇だな、ココアは」ナデナデ
ココア「リゼちゃん……今日は何を教えてくれるの?//」
――――――――――――――――――――――――――
リゼ「繋いだぞ……苦しくないか?」
ココア「平気だよ」ニコッ
リゼ「まずは床でアヒル座りになってみろ」
ココア「こう?」ペタン
リゼ「……どうだ?」
ココア「わぁ……ベッドに座ってるリゼちゃんが飼い主に見えるよ//」
リゼ「同じ目線にいるよりも、こうしてされる側の目線を低くするだけでお互いの支配欲を満たせるらしい」
ココア「すごく変な気持ち……//」
リゼ「ああ、わたしもだ//」
リゼ「さて……」
ココア「…………//」ドキドキ
リゼ「そうだな……今日はミルクでも飲むか?」
ココア「ミルク……?//」
リゼ「ああ、ここに丸皿がある」
リゼ「コップじゃなくて、この丸皿に注いだミルクをココアが飲む」
リゼ「でも、口を付けちゃダメだぞ。……ちゃんと舐めて、綺麗にするんだ」
ココア「ペロペロして……?本当のイヌみたいだね……//」
リゼ「嫌なら他のでもいいぞ。……どうする?」
ココア「ううん……やってみたい//」
リゼ「いい子だな……よし、待っていろ」
リゼ「ほらココア、飲んでいいぞ」スッ
ココア「ええと……こうかな?」
リゼ「四つん這いになってから、伏せて飲むんだ」
ココア「ん……こう?//」
リゼ「いいぞ……さぁ」
ココア「……んっ」ペロッ
リゼ「……どうだ?」
ココア「なんだかドキドキする……//」
リゼ「ちゃんと最後まで飲むんだぞ」
ココア「うん……♪//」ペロッペロッ
リゼ(まずい、ゾクゾクしすぎてめまいがする……//)クラッ
ココア「ごちそうさま//」ニコッ
リゼ「ちゃんと綺麗にできたな……おりこうさんだ」ナデナデ
ココア「えへへ、わんわん♪」
リゼ「ほら、ご褒美だ」スッ
ココア「ふぇ?これって……」
リゼ「あーんは?」
ココア「……あーん//」
――チュポ
ココア「!」
ココア「むごっ……んむっ……ぷはぁ……」
リゼ「ただの棒付きキャンディーだよ、吐き出しちゃダメだろ」
ココア「ごめんなさい……//」
リゼ「持っておいてやるから、ほら」
ココア「……あむっ//」チュパ
ココア「はんっ……んっ……れろっ…//」
リゼ「舌先を使って舐めてみろ……もっと変な気分になれるぞ」
ココア「んっ……こう?//」ペロッ
リゼ「今日はこれを舐め終わったら、おしまいにしようか」
ココア「リゼちゃん……ん……//」ペロッペロッ
――IN ベッド――
ココア「もっと他にも色んなこと教えてほしかったのに」
リゼ「また来週があるからいいだろう」
リゼ(あれ以上続けると理性を保てる自信が無い……)
ココア「リゼちゃん……今日は縛らないの?//」
リゼ「っ…したいけど……分かってくれ//」ナデナデ
ココア「?」
ココア「また来週も教えてね……?約束//」スッ
リゼ「……ああ//」スッ
ココア「ゆーびきーりげんまん♪」
リゼ(こんなに無邪気で可愛いココアを、わたしがアブノーマルにしてしまったのか……)
リゼ(うぅ、今になって背徳感以上に罪悪感が……)ギリギリ
リゼ「うあぁあああ!!」ジタバタ
ココア「リゼちゃんっ!?」
―――――――――――――――――――――――
――3日後 甘兎庵――
リゼ「ふぅ……」
千夜「ねぇ、リゼちゃん?」
リゼ「どうした?」
千夜「わたし、深刻な悩みがあるの……」
リゼ「千夜が?珍しいな」
千夜「聞いてもらえるかしら?」
リゼ「ああ、わたしでよければ力になるぞ」モグモグ
千夜「ありがとう」ニコッ
千夜「あのね……最近、チノちゃんがお年頃なことに興味を持っているみたいなの」
リゼ「っ!?げほっごほっ!げほぉ!」
千夜「リゼちゃん!?お水っ!はい!」
リゼ「んっ……!」ゴクゴク
千夜「ピーとかピーとか色んなことを聞かれるんだけど……はっきり教えてあげたほうが良いかしら?」
リゼ「………………」
千夜「リゼちゃん、どう思う?」
リゼ「っ……千夜!」ガシッ
千夜「!」
リゼ「純粋な天使を汚すのならば、覚悟を決めるんだ……!」
千夜「リゼちゃんから軍人オーラが……!?」
リゼ「罪悪感で押しつぶされそうになるが……それ以上に得られるものもある!」グッ
千夜「で、でも、チノちゃんはまだ中学生だから……」
リゼ「返事は!?」
千夜「ひっ!?サ、サーイエッサー!」
リゼ「よし……これで千夜も戦友だ」テ ギュッ
千夜「戦友というよりも、大罪の道連れ……」
next film...