一撃男、異世界転移。 作:N瓦
【1】一撃男、異世界転移
───日常は一日、また一日と巡る。
「なぁジェノス、このマンガの新刊いつ出るか分かるか?確かそろそろだったよな」
「それでしたら明後日です。俺が買ってきましょうか?」
「え、いやそこまでは…」
『ヒーロー狩りが問題となっていますが───』
『A級ヒーローのみならず、S級のタンクトップマスターもヒーロー狩りに被害を受けており、ヒーロー協会としての今後の対応が───』
『今はヒーローにしか被害が出ていませんが、今後は市民などにも───』
ジェノスが、部屋で過ごすサイタマの何気ない一挙手一投足全てにまで注意を払って観察。
サイタマも、初めはジェノスの態度に慣れなかったが、今となっては気にしておらず。
特に観ない昼のワイドショーを垂れ流しにし、マンガを読み漁る。───に、
「別に俺、自分で買いに行くわ」
「わかりました」
しかし日常も時として崩壊、或いは変異することがある。そのきっかけが進学であったり、転勤であったり。
───99.9999999………%起こりえないことではあるが、まるでファンタジーのような異世界転移であったり。
「ん?」
ザザザ───。突然、テレビにノイズが入り、画面が砂嵐で埋まった。
「おや……接触不良ですかね?」
「ほっときゃ直るだろ」
「それもそうですね」
そんなテレビ画面に注意することなくサイタマはマンガを読み進め、空いている手でポテトチップスを口に運ぶ。
ジェノスも、特に気にした様子はなくノートに熱心に何かを書き込んでいた。
───数秒後。街の喧騒もしっかりと聞こえて来て、テレビも再び電波を受信し始めたようだ。
『最近再び問題となっているヒーロー
「……?」
いち早く異変に気付いたのはジェノス。
(ヒーロー狩りでは死者はまだ出ていないはずだが)
流れている番組は、そしてコーナーで扱っている内容は明らかに見知らぬものだった。
ヒーロー狩りとは少し違う。
かと言ってチャンネルを変えた記憶も無いし、裏番組として放送していたものとも違う。
何より、その番組の出演者のことを誰一人として知らない。
「……!?」
いや、待て。
外から聞こえてくるのはなんだ?───何故、Z市に
サイタマは呑気にマンガを読み続けていたが、ジェノスはその事実に凍った。
窓の外に青空が広がっているのは変わりないが、下を覗けば何か恐ろしい事実が得られる───そんな気がした。
しかし現状、それを確認しない訳には行くまい。恐る恐る窓から顔を出すと───
「………っっ」
絶句。
師であるサイタマと初めて出会った時以来の衝撃。
そこに広がる外の世界は───Z市のゴーストタウンとは全く異なるものだったのだから。
外には子供達やカップル、家族連れなど───街を彩る歩行者が多くいて。
交通機関もしっかりとその役割を果たしており。
Z市という"死んだ街"とは全く異なる光景そのものだった。
驚くべきは突然の状況変化だけでは無い。獣人や類似した存在───例えば獣のような風貌の男や、爬虫類のような顔をしている女───が街中を歩いていても、周りの人間は気にした様子もなく、見向きもしない。
まるでそれが当たり前であるかのように。
「サイタマ先生……緊急事態です」
「……んぁ?」
其れは、戦闘力のみならず頭脳すらもハイスペックであるジェノスですら、処理しきれないイレギュラーだった。
───二人の男の異世界転移。
これは、緑谷出久がオールマイトに出会う前年の