嫌われの贋作天使(エヴァンゲリオン)   作:カフェ・オーレ

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悲しき決別

 

―君は何故、彼女の元に帰らないんだい?

 

―だって、俺はもう怪物そのものなんだぜ…?おとぎ話に出てくる嫌われ者で悪いヤツで、欲しい物なら何でもする。卑怯なヤツさ。

 

―ふ〜ん。卑怯なヤツ、ね。その割にはキミは奪おうとしないね。それでは、何かい?君は自分にこう思わせてるのかい?『あの子は普通で、自分は異常。全然釣り合わないって』?

 

―当たり前だ。彼女とはもう一緒に入れない。

 

―たとえ、彼女が他の人と付き合っても?

 

―彼女は俺の捜索の為に、自身の学生生活を俺を見つける為に注ぎ込んでくれた。だがそれはまだ『人間だった』俺であって、『怪物』の俺じゃない。それに俺はもう既に付き合っている人がいるんだ。わかってもらわないと。いや、『わからせる』んだ。必ず…。

 

―ふ〜ん、まあ決めるのキミだ。僕は、僕たちはキミに力を授け、使徒を撲滅するだけさ。頼んだよ、『僕』

 

―ああ、任せろ『俺』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アァァァァアアアァッ!!』

 

 獣は叫ぶ。それはまるで嘆き、悲しみ、そしてこれから始まるであろう戦いと悲劇の幕開けに。そして、自分を狩ろうとする者たちを狩る。狩られる前に狩る。まさに猛獣の如くに。

 

「チッ、アイツエヴァシステムのリミッターを一時解除とかトチ狂ってるのかよ…」

「オッサン、それはなんかヤバいのか?」

 

 アザゼルの愚痴に、イッセーが質問する。

 

「エヴァシステムにはリミッターがあるのさ。その理由は使徒殲滅。つまり使徒専用に造られたものだからだ。コカビエルの件でお前たちも見たんじゃねえか?」

 

 アザゼルの言葉に先日に起こったことを思い出す。あの時のリリンも、まるで『使徒を破壊するだけ』に集中して暴れていた。

 だが、それはあくまで使徒がいたからである。では今の状況で考えられることは。

 

「間違いなく『完全な俺たちへの敵対宣言』と見て取れるな。でなきゃリリンは俺たちに、特にソイツに牙なんか向けないんだよ」

 

 アザゼルの視線の先には彼女、姫島朱乃が下唇を噛んでいた。その表情は驚愕を通り越し、まるで後悔しているようだった。

 

『アァァアアァッ!』

 

 そんな状況関係ないとばかりに、エヴァシステムを起動させたリリンが駆けてきた。その視線の先には…。

 

「!」

 

 朱乃だった。

 

「!させるかよ!」

 

 朱乃の前に負傷しながらもアザゼルが立ちはだかり、大量の光の槍を展開する。

 

『ガアッ!』

「オラァ!」

 

 ドスッ! バチッ! 

 

 大量の槍と強化された拳の乱打が交わる。リリンは身体中にかすり傷を負いながらも止めるのを止めない。

 

「体力だけはバカみたいにあるんだな。ガキみてぇだ」

『アァァ……ああ、そうだとも。俺はガキの頃から何も変わっちゃいない』

「!お前、ちゃんと自分の意識が残っているのか!」

 

 アザゼルが驚愕するのも無理はない。過去に、天界でエヴァシステムの実験でシステムを身体に打ち込むとどうなるかしてみたところ。挿入者の意識はエヴァシステムに乗っ取られ、施設も破壊された。その時には被害を最小限にと、ミカエルがその者を殺した。

 

『そうであって、そうじゃ無い。俺は俺であり、僕や私、ワイでボクでもあるのさ』

「一体、どういうことだってんだ…?」

『つまり、俺には複数の人格…今までのエヴァシステムの複合体なのさ』

「エヴァの人格の複合体だと!?有り得ねぇ、今までのエヴァシステムは既に大破して最早動けない。意識なんて残っていない。いや、だとしてもお前の人格が失われていても可笑しくねぇ筈だぞ!」

『言っただろ、アザゼル。俺はもうエヴァシステムそのものなのさ。今までのエヴァシステムの権限は全て俺のだ。彼彼女たちは自分たちの力を俺に託してくれているんだ。なら、それに見合うことを成し遂げるまで』

「チッ、エヴァシステムを取り込んでいるのは知っていたが、まさかエヴァ本体になっているなんてな。だがな、だからといって家族に槍を向けるのは洒落になってないぜ」

 

 アザゼルの言葉にリリンは、諦めた表情をする。チラッとヴァーリの方を見れば何故かボロボロだった赤龍帝が互角に戦っていた。

 

『もういい、拉致があかない。雑魚を狩るのに時間をかけすぎた。ならもう、この一撃に込める』

 

 ロンギヌスを握り、槍先に魔力を限界まで溜める。魔力を向かわせるその先にいるのは…。

 

 

「…カヲルくん」

 

 

 朱乃だった。

 

『ゴメンね、朱乃ちゃん。俺、結局君のことを傷つけることしか出来ないらしい。だから、今から君を殺すね』

 

 リリンの言葉に朱乃は顔を歪めるが、すぐに何かを決意した顔をした。

 

「……わかった。そうあなたが決めたなら、構わないし止めない」

『わかってくれたね。なら―「でもね―」』

 

 朱乃はカヲルの声を遮る。

 

「私は貴方を諦めていない。いや、貴方を無理やりにでも私たち家族の元に戻すわ。私は、貴方を愛して、愛されたいから」

『…ハァ、変わらないね。流石あの二人の娘だ。…でも変える気はない。俺は―』

「私も変える気はない。私は―」

 

 

 獣は槍を、堕ちた天使の娘には『雷光』の光が握られて―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何が何でも君を諦めさせる』

「貴方を絶対に離さないから」

 

 

 

 

 ―衝突する。

 

 

 

 

 




一体、どれだけ長引かせるんだ…
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