放り投げた紅い宝玉は形を変え、まるで人の姿に近い形になる。背丈は人間とほぼ変わり無い。変わっているのは顔に白い変な仮面をつけていて、胸辺りに宝玉…『核(コア)』が埋め込まれている事。だが使徒とは人間みたく優しい存在では無い。寧ろ逆の存在だ。
『ちっ、ここで使徒とか巫山戯んなよ』
ここで尤もして欲しくない事をしてくれたコカビエルにイラッとした俺は舌打ちした。こんな狭い場所で使徒を使うなど正気かと疑ってしまう。
『おい戦争バカ。ソイツがどれだけ面倒な奴なのかわかってるのか?』
「当たり前だ。使徒とは天界が悪魔と俺達、堕天使を滅ぼす為に生み出した生物兵器。姿形は異なるが一瞬で多くの命を奪う恐ろしい代物だよ。だが教会から聖剣を奪う際に使徒が形を変えた宝玉があったのでな。盗んで来た訳だ。そしてこの使徒の力を使って俺は!俺達堕天使は三大勢力の頂点に君臨する!」
あーあ、こんなバカに使徒の宝玉を盗まれるなんて教会もなにしてんだか…。そもそもにだ。何で教会なんかに使徒の宝玉なんか置いてあったんだ?あれは俺の中に存在している『奴等』の話だと本来、あの宝玉は天界にある筈だ。だが今の天界の連中でさえも手を焼いて、挙げ句の果てに天界の何処かに封じたと言っていたんだが…まあこの際だ、とっとと破壊しちまえば問題無い。破壊しなければ間違い無く……この町は更地になるぞ。
『まあ、大体合っているな。確かに使徒は悪魔と堕天使を滅ぼす為に創られた天界が創り出した生物兵器だ。戦力に加えれば間違い無くその勢力間違い無くが頂点に立つだろうな。………だがそれは不可能だ、バカ』
「何だと?」
コカビエルは眉を顰め俺を睨む。
『それは何故か?何故なら使徒は−−』
ゴシャッ!!!
「ゴブッ!?」
『!?』
コカビエルが使徒の変化した腕によって握りつぶされる。
−−何故ならば使徒は敵味方など関係無く攻撃するからだ。
天界の連中が手を焼く理由がこれだ。創り出された時から既に暴走状態……いや、これが正常な状態なのかもしれないな。ただ自分の、『自分達の目的』を果たす為なら目の前の奴等を見境なく殺していく……それが使徒の存在する理由だ。
目の前のコカビエル(バカ)を殺した使徒はターゲットを俺…いや『俺達』に変えた、俺達ってのは後ろにいる悪魔達も含まれている。
『面倒な置き土産残していきやがってッ!?全くッ!?……ウォッ!?』
苛立っていると使徒が俺を握りつぶそうと腕を伸ばしてきたので転がって回避する。
あ、危ねぇ…潰れたトマトみたくなるのは流石にゴメンだ。
とはいえこのまま放置する訳にもいかないのでカシウスを片手に対峙する。
『オラッ!』
「!」
カシウスを使徒の核に目掛けて放つ。使徒の唯一の弱点は核を破壊されると行動を停止して自爆するからだ。だがカシウスは使徒に握られ止められてしまう。
長期戦はあまりしない方が良い。下手すると結界が解かれて町が吹っ飛ぶ。
……あ。
『…そういや外に悪魔達が結界を張っていたな、後ろの奴等にはソイツ等の手伝いをさせるか…おい!悪魔共!コイツは俺に任せてお前らは結界を張っている奴等を手伝え!』
「!でも私達も加勢した方が!」
『馬鹿か!コカビエルさえ碌にダメージを与えられなかったお前らにコイツを倒す事なんてまずできねぇよ!だったら結界を張っていた奴等と一緒に防御面を担当してもらった方が俺もやりやすいんだよ!わかったらさっさと行け!』
「…わかったわ、ここはお願い!」
…後ろの悪魔達には防御を担当してもらう。にしても悪魔を助ける人間ね、しかも禍の団英雄派の俺が悪魔の手助けをするなんて、世にも珍しい事があるもんだ。
とはいえ、アイツ等もコカビエルとの戦闘で結界も長くは保たないだろう。
…………仕方ない、『奴等』の力を使うか。俺はシャツのポケットから『紫色』の錠剤を取り出し…口の中に放りこんで噛み、飲み込んだ。
『ッ!グッ!?』
飲み込んだ瞬間に身体が急激に熱くなる。普通の人間ならまず破裂してもおかしく無いだろう。だが俺は化け物だ。これぐらい耐えられる。
急激な熱さに耐えているうちに身体に変化が起きていく、髪は紫に変化し、腕も筋肉が膨張して、口の犬歯も鋭くなる。
「!!」
使徒も俺の変化に危険を感じたのか俺を殺そうと首を締め上げようとしてくる……だがもう遅い。
メキャァ!!
「!?」
『グルァァァァ!!』
使徒の腕を力一杯握り、折る。流石の使徒も驚愕したらしい。
………『EVANGELIONsystem(エヴァンゲリオン・システム)』
それが俺の中にいる奴等の力を使った、いわば使徒殲滅用システムだ。何故かは知らないが聖剣計画から生き残った俺はこれを使い、狂信者共をぶっ殺した。一応理性は保てているが………暴走することも無くは無い。
俺は驚愕している使徒を睨みつけた。
『グルァ!(とっとと破壊されろ!)』
……一体何号機なんだろ〜ね〜?(棒)