「なぁ、大夢、この後カラオケ行こうぜ」
放課後、ショートホームルームも終わって帰るとき後ろの席のやつに話しかけられる
俺は…二年間ほど行方不明になってた
その間の記憶が無くって、なにがあったかまったくわからない
二年前の最後の記憶は友達を突き飛ばしてトラックに撥ねられたところまで…
気づいたら病室にいた
そんな謎の多くて怪しい俺を、みんな普通に受け入れてくれた
すげぇ嬉しい…
「カラオケかぁ…いいな、行こう」
俺は席を立ってかばんを持ちながら賛成する
「他に何人くるんだ?」
「あと二人だ」
4人か…カラオケかぁ…
まぁ、普通にストレス発散になるし、楽しいし…いいか、行こう
「ああ、灰咲、その腕輪、いい加減にはずしてきてくれないか?」
教室を出ようとしたら先生に呼び止められた
腕輪…なぜかはずそうと思う得ない、寝るときも、風呂に入るときも…
真っ白で、でも銀色にも見えて、雪を思わせる…そんな色
なぜかわからないけど、とても大切なもの…そんな気がする
俺が行方不明になって、気づいたら病室に居て、そしてこの腕輪をしていた
服装は学生服だったらしいが
「すいません、先生、なぜかはずしちゃいけない気がするんです…」
「まぁ、お前には先生も助けられていることもあるし…まあ、教師の職務として注意しているだけで、正直俺個人としては別にいいと思ってる、流石に腕輪はお前以外見た事ないが、ピアスとかならたくさんいるしなぁ」
この先生大丈夫か…
まあいいや、カラオケ行こう
んで、今カラオケ終わって帰って
そしていつも通り風呂入って、家族と話して…
んで俺の部屋だ
時刻はもう夜の1時だ
楽しかったなぁ…楽しかったんだけど…
「なんか忘れてる感じなんだよなぁ…いや、二年間分の記憶がないんだから忘れてるのは当たり前か…なんだろうなぁ…すげぇ…大事なことだったはずなのにな…」
なんだろう、すげぇ大事なこと…
絶対忘れちゃいけないこと…
本当に…なんなんだ…
「あぁ…もう…イライラするなぁ…!」
なぜか自分にイライラする
すごく大切なことを忘れたことにイライラしているのだろうけど、何を忘れたか分からないからもうどうしようもない
人に相談してどうにかあんるもんでもないし…
イライラするなぁ…本当に
他でもない俺自身にイライラする
病室で目が覚めてからずっと…自分自身にキレている
自分自身を許せない…
「なんなんだろうなぁ…本当に…」
今の生活には満足している
みんなと一緒に過ごす日常が楽しいし…
でもさ…なんか足りないんだ
絶対忘れちゃいけないこと…
俺の大切な記憶
この腕輪が関係してるんだろうけどなぁ…
忘れちゃいけない…人…
「あれ…?今…人って…」
自分で思ったことに疑問を抱く
人…忘れちゃいけない人…そして…場所
何故だろう…自分でここは俺の場所じゃない
確かにこの世界に、この日常に俺の座る席は空いていた
紛う方無き俺の席だ
「でも違う」
俺はここにいるべきじゃない
俺に用意されてんのは…席なんていう座ってのうのうとしている場所じゃない
俺は道を歩きたい
幻想でできた道を一緒に歩く…そこが俺の場所
「ああ、もう…自分で考えてて意味がわかんねぇ…なんなんだ?もう…鬱陶しい…!一緒に歩くってなんなんだ?誰とだよ…」
と考えていると戸が叩かれる
だれだ?というか…この時間に来る人なんてあの人しかいねぇ…
「兄ちゃん、なんのようだよ」
扉は開かれてイケメンが出てくる
いいなぁ、あんなイケメンで…
そんなことはどうでもいいんだ
「いやぁ、まだ起きてるなら久々にゲームでもしようかと主ってな、100円賭けて」
「OK、んじゃぁやろうか」
俺は兄ちゃんとゲームをする
兄ちゃんは俺よりゲームが上手い…一度も勝ったことが無い
俺の得意な弾幕シューティングでもだ…
「お前の得意の弾幕シューティングでいいか?」
「ああ」
兄ちゃんの問いに肯定で返す
兄ちゃんは普段は都会に出てるんだが、今は長い休みを貰って帰ってきてる
ちなみに料理人だ
いや、得意なのはお菓子を作ることなんだけど
俺は和風
ちなみに料理の腕は和風でなら負けない…と思いたい
兄ちゃんとリビングに行きゲームを始める
ゲームをしながら兄ちゃんは言う
「なぁ…お前、つまんなそうな顔してるよな…なんか足りないんだろ?なんか違うって思ってるんだろ?」
図星、なんでわかるんだろうなぁ…
「俺も父さんも母さんも気づいてんだよ…姉ちゃんですら気づいてんだぞ?」
兄ちゃんはゲームの画面を眺めているすごく穏やかな目でそういう
みんな気づいてるのかよ…
「なんで…わかるんだ?」
「さぁな…俺がお目の兄貴だからだよ、多分な」
なんだろう…自分としゃべってるみたいだ…
「お前がさ、行方不明になったときな…なんとなく生きてる気がしたんだ、なんとなくだけど普通に楽しく過ごしてる気がしたんだよ。お前のいなかった二年間…お前のことを忘れてた気がするんだよ…それと同じ感覚だろ?」
兄ちゃんはずーっとゲームの画面を見たままそういう
俺のことを忘れてた…か
わけがわかんねぇ
記憶を勝手に弄られたみたいな感覚だ
「俺にはお前の考えてることはある程度わかる、兄弟だからな、でもお前の気持ちはわからない、お前自身ですら気づけてない気持ちだ、俺にわかるわけがない、そういうのは親友ってやつに教えてもらえるんじゃないか?」
親友か…
俺に親友ねぇ…そんなのいたっけかなぁ…
なんか引っかかるけど…
俺とよく喧嘩して、たまには一緒に戦って…
?戦う?
「ほんと…わけわかんねぇ」
つい声が出る
兄ちゃんはニヤッてしたと思ったら
「わかんねぇか、まぁ、俺はお前がどう選ぼうと関係ない、本人が選んだ道に間違いなんざないんだからな、好きに選べよ…っと、自分で言っといて随分臭い台詞だな…」
「ああ、本当に臭い台詞だ…でも…ありがと…そうだな、好きに選べばいいんだよな…」
このもやもやは晴れない
自分で自分にイライラする
それは変わらないけどさ…
もしなにかを選択するときは好きに選択しようって思った
「はい、俺の勝ちだな、100円よこせ」
「ちゃっかりしてるなぁ…」
ゲームで負けた…100円取られた
俺の得意なシューティングゲームなのに…
大夢くんは今めちゃくちゃイライラしてます
自分自身が許せない、でもその許せない理由が曖昧でわからない
そんな不安定なところにいます
ちょこっとだけ思い出してはいますね…
親友でひっかかったのは駆真くんですね
よく喧嘩してたまに一緒に戦って…
次回も頑張って編みます