「
「あなたの目的を果たさせるわけには行かないの…いえ、あなたの目的のための過程を果たさせるわけには行かないのよ」
「
「はんっ!『地蔵』に恋をし、人間に憧れた、そして守れなかった妖怪の恥さらしがよく言うわね」
「死にたいのか?スキマ妖怪」
「やってみなさいな、幻想の妖怪」
「わかった、殺してやる」
「行くわよ、藍」
「はい」
「俺は何をしているのだろう…?」
「どうしたんですか?大夢さん」
雪那が俺を見て首をかしげている。
今日は二人で一緒に人里まで出かけてきたんだが…。
?今自分はなぜ疑問に思ったんだ?
まあ、いいか…。
「いや、なんでもないよ。何を買いに来たんだっけ?」
「食料ですよ、そろそろ材料がきれてしまっていますからね」
「そっか…じゃあ、行こうか」
「ええ」
雪那はニコニコしながら俺の隣を歩く。
まずは八百屋さんかなぁ…。
そんなことを考えていると、里の色んな人から挨拶される。
俺と雪那も二人そろって挨拶し返すため、クスクス笑われて、「相変わらず仲がいいわねぇ」的なことを言われたりする。
そのたびに赤くなる雪那も可愛いけど、完全にからかわれるネタになっているな…。
でも雪那はニコニコして俺の隣を歩く。
俺は雪那に聞いてみる。
「どうしてそんなに嬉しそうなんだ?」
「大夢さんと一緒にいることが楽しいんですよ」
あっさりと返されたその言葉に、俺は少し赤面してしまう。
あまりにはっきりと言われ、びっくりしたのもあるだろうが、恥ずかしい…。
赤面してしまう俺を見た雪那も自分が言ったことを思い返したのか顔を真っ赤にする。
「あ、あの!そういう意味ではなくてですね!いえ、そういう意味なんですけど!あぅ…うぅ…」
慌てて弁解しだす雪那。
そんな俺と雪那を見て、「なんだ、いつも通りか」とかいう反応を示す周りの方々。
いつも通りで、本当にいつも通りすぎて…幸せだと感じる…。
けど…俺が今するべきことはここにいて、こうやって…楽しく、甘い時間を過ごすことじゃないと思う…。
己の意思と、雰囲気で…。
でも、この時間が幸せすぎて、甘すぎて…俺は…この時間を終わらせたくない…。
一体…俺は何を…考えているんだ…。
side紫
「クッ!」
私の放った弾幕はすべて
藍の弾幕も…。
だが、だからといって不用意に奴に近づくべきではない…。
前回負けたときは、距離を詰められて、一瞬だったのだから…。
それにしても、やはり永琳の薬は素晴らしい…。
あそこまでの怪我を一瞬で治してしまったのだから…。
「スキマ妖怪、君は弱いよ…。幻想にすがっているくせにその幻想を信じ切れていないのだから…。いや、妖怪は皆そうだ…」
「ずいぶんとよく回る舌ですこと、その舌、すぐにでもふっ飛ばして差し上げますわ!」
あの妖怪の言っていることは正しい、私は幻想を求めて幻想郷を作った。
人間と妖怪の共存、そんな夢物語、幻想だ。
それにすがって、力を得ているくせに、その幻想を信じ切れていない…。
でも、だからといって負けるつもりはない!
「弾幕は効かないようですわね、なら…実弾ならどうでしょう?永琳!」
私が幻想の妖怪と距離を取りながらそう叫ぶ。
「外さない…!」
どこからともなく永琳がいきなり現れ、その永琳が放った矢が幻想妖怪の体を貫く…はずだった。
その矢を受け止めた幻想妖怪は矢を永琳に投げ返す。
「ッ!!」
声を上げる間もなく、永琳のお腹に深々と矢が刺さる…。
だが永琳は蓬莱人、その程度、ダメージにもならない。
「痛いわね」
平然と矢を抜き、幻想妖怪を睨み付ける永琳。
だが、幻想妖怪の雰囲気がおかしい…。
これは…怒り…かしら?
「蓬莱人…人でありながら、人をやめた愚か者が…」
なるほど、人に憧れているから、人をやめた永琳が許せないわけね…。
それにしてもこの殺気…。異常だわ…。
体が震える…。何が大妖怪よ…。同じ大妖怪でもここまで差が生まれるのね…。
月大戦のとき、彼がいたら私たちの勝利だったでしょうね…。
いえ、どうでもいいことかしら…。
永琳に怒りの矛先が向かい、意識が永琳に向いている。
少し怯えてるようにも見えるが行動できないほどでもないようだ…。永琳には悪いけれど…。囮になってもらうわ!
「藍!今よ!」
「はい!」
幻想妖怪の頭上にスキマを開く、中から出てきた藍が幻想妖怪に封印をかける…。
私が時間を稼ぎ、その間に藍が封印を構築し仕掛ける…。そういう作戦だった。
幻想妖怪は封印をかけられたのにも関わらず、平然と藍との距離を一瞬で詰め、首を右手で掴み、持ち上げる。
「封印か…高度な封印のようだが…、こんなもの、幻想に過ぎないさ」
「うっ…ぁ…」
私はスキマを使って幻想の妖怪との距離を詰め、そのまま至近距離で弾幕を放つ。
「藍を離しなさい!」
一瞬で左手が伸びてきて、その手刀が私の腹部を貫きそうになるが、その直前にスキマを開けて攻撃をすり抜けさせた…はずだった。
だが、腹部から赤い鮮血が飛び散り、口の中に生暖かい液体がのぼってくる。
「がはっ!」
こらえきれずに赤い液体が口から吐き出される…。
スキマで防いだはずなのに…!
「幻想を信じ切れていない君では、私を倒すことはできんよ…。ほら、自分の幻想すら信じれぬからそうなるんだ」
左腕が引き抜かれる…。
意識が…遠のく…。
「紫様!」
「紫!」
藍と永琳の声がする…。
藍は首を掴まれながらも私の方に手を伸ばす…。でもその手は届かず…私は地に倒れ伏す…。
視界がどんどん狭くなっていく………こいつは…この妖怪は…強すぎる………。
side大夢
「なぁ、雪那」
「なんですか?」
雪那はニコッと笑って振り向く…。
いつもと変わらなくて、いつもと同じで…だからこそ幸せな時間に感じるのだろう。
雪那がこんな風に笑ってくれるだけで、俺には十分、甘い幻想になる…。
けど、でも心が騒ぐんだよ、今はここにいるべきじゃない、この甘い幻想を続けたいのなら…。
むしろ今はこの幻想を壊して、何かをしなければならない…。
俺はまだこの幻想を味わいたいから…。まだこの幻想に縛られていたいから…。だからこそ、今はこの幻想を壊す。
「雪那…俺、まだやることがあるみたいなんだ」
俺がそう言ったときに雪那の顔は、哀しそうで、泣きそうで…でもどこか嬉しそうで…。
だからこそ…間違っていないと思った。
雪那はすぐに目を閉じ、そしてまた目を開けて笑う。
「はい、わかりました。行ってらっしゃい」
ここは多分、あの雨合羽が俺に見せる幻想なんだろう…。
甘くて、ずっと見ていたくなるような幻想…。
「雪那…」
幻想でも…それでもやっぱり、雪那は…俺の大好きな女の子だ。
俺は雪那に抱き付いて言う。
「やっぱり、雪那は俺にはもったいないくらいいい女だよ」
「大夢さんは、私にはもったいないほど素敵な男性ですよ」
雪那のいつも通り、顔を赤くしながら言った、その声を確かにきいた瞬間、俺は雨合羽に負けた、あの森で目が覚めた…。
近くには霊夢と魔理沙が眠っている…。
霊夢と魔理沙も俺と同じように幻想を見ているのだろうか…?
霊夢の寝言は「お賽銭~お賽銭がいっぱい~」と言っている…。お前の幻想はそれか…。
魔理沙は何も言わずに寝息を立てている…どんな幻想を見ているのだろうか…?
まあいい、さ~てと…
「行くか、そんな雰囲気だ!」
幻想の妖怪、雨合羽…呼び方が二つありますが…。
まあ、幻想の妖怪の回想に出てきた原作キャラの新たなヒント、今は何になっているのか秘密ですが、前世は『地蔵』でした。
これでわかった人は…いるかもしれないね。
幻想郷で前世が地蔵だなんて、そうそういませんし…。
大夢くん、幻想の中からお早い帰還ですね…。
では、感想待ってます!
次回も頑張って編みます!