東方雰囲気録   作:島夢

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 今回は大夢くんより雨合羽がメインになっております…。

 感想ありがとうございました。

 では、ゆっくりしていってください。


117話 『幻想』と『夢』の『願い』

 

 

 

 

 

 

 

「疲れたな…もう体ボロボロだし…。もうすぐ家だけど…」

 

 

 夜道は危ないけどそんなこと言ってられない…。

 もうすぐ日が昇りそうだ…。

 

 あんな大きな異変だったのに、たった一夜で終わった…。

 そういえば、霊夢と魔理沙…放置したままだが…。まぁ、紫も気づいていたみたいだし、永琳も気づいていたし…大丈夫だろう。

 

 

 それよりも…あの雨合羽…。死にたかったのか…。

 そういうやつもいるんだな…。

 

 そういえば、奴は幻想の妖怪だったらしいな…あいつ。

 

 なんで死にたいなんて思ったのかな…?

 俺が見た、あいつの記憶みたいなのじゃ、わかんねぇ…。

 

 いや、わかるか…。

 

 俺が雨合羽だったとして…あそこで亡くなった女性が雪那だったとしたら…。

 

 

「やっぱり俺も…死のうとしたのかな…」

 

 

 いやなこと考えちまったな…。

 雪那がいなくなったら…か。

 

 いやだな…それだけは…絶対。

 

 俺は弱いから…雪那のいない世界なんて生きられない。生きようと思わないだろう…。

 けど…あいつの気持ちはわからない…。

 

 人間に何故あそこまで憧れたのかも…何故あそこまで人に殺されようとしたのかも…。

 

 死にたい…なんて気持ちは、実際にそれほどの…死にたいと思える体験をしたやつにしかわからないのだろう…。

 

 だから、俺はそんな気持ちわからない、わかっていいはずがない…。

 これからもずっと…わからないままでいたい…。

 

 雨合羽は…俺に殺されて「ありがとう」と言った…。礼を言われた…。

 

 いやな『不安』がどんどん膨らむ…いや、これ以上考えるのはよそうか…。

 

 この答えは俺に導き出せるもんじゃない…。雨合羽が、あの誰よりも幻想を求めて幻想を抱いて幻想に憧れた…幻想の妖怪が導き出すはずだから…。

 俺なんかが考えるようなことじゃない…。

 

 そうさ…俺の目の前には俺の守り通したい「幻想」が…いや、『夢』があるんだから…それでいいのさ。

 

 なぁ、そうだろ?

 

 

「雪那」

 

「おかえりなさい、大夢さん」

 

「ただいま」

 

 

 俺の夢は雪那と幸せに暮らすこと…。

 それだけで十分だ。

 

 

「今日は ちょっと疲れたよ」

 

「そうですか…すぐに休んでは貰いたいですが、まずは傷の手当です」

 

 

 雪那はそう言いながら、俺の手を引き、家に入ろうとする…。

 俺は、雪那に握られた手をぎゅっと握る…。

 

 すると、雪那は少しびっくりしたようにこちらを向く。

 俺はほぼ何も考えず、心の中に残る不安を消すために…言う。

 

 

「雪那、ずっと…一緒にいてくれるか?」

 

 

 雪那は少し驚いたように目を開いた。

 

 そして口にする…。

 俺の不安を消すその一言を…。

 

 俺の『夢』そのものを………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side幻想の妖怪(雨合羽)

 

 

 

「三途の川…か」

 

 

 私は目を細め、眼前に広がる広大な河に目を向ける。

 ボーっとしながら周りの景色を眺める。

 

 異常な数の彼岸花が咲き誇る河原だ…。

 

 

「おや?体を持った状態で来るなんて珍しいね」

 

 

 川に舟がつき、それに乗っていた女性が私に向かってそういう。

 そういえば、三途の川に来たというのに私はちゃんと体があるな…。

 

 そう思いながら少し笑い、目の前の女性にかえす。

 

 

「珍しいか…。まぁ、どうでもいいことだけれどね…。名前を教えてくれるかい?」

 

「へぇ!こいつは驚いた!しゃべることもできるのか!本当に珍しいお客さんだねぇ!あたいの名前は小野塚小町、よろしくね」

 

「ああ、よろしく頼む…私には名乗る名前がない…、そうだな、幻想の妖怪とでも呼んでくれ」

 

 

 私は立ち上がりながらそういう。

 こうやってゆっくり誰かと話したのも…久しぶりだ…。

 そう考えながら。

 

 

「さて、じゃぁ、幻想の妖怪さん?乗ってくかい?」

 

 

 小町は少し笑いながら親指で舟を指す。

 なるほど…あれに乗って向こうまで行くのか…。

 

 渡し賃はどれくらいするのだろうか?あまりお金がないのだが…。

 

 

「あぁ、あんたの渡し賃…たった六文だよ」

 

「六文?」

 

 

 六文というのはどういう数字なのだろう?

 渡し賃とはどういう原理で出されるのだろうか?

 

 

「生前に他者が己れに対して使った金額の合計…それが渡し賃だよ、あんた少ないねぇ…」

 

「そうだな…私は誰かの世話になることはなかったな…あのとき以外は…だが」

 

 

 あのとき…彼女と出会ったとき…。

 そうか、そういえばそうだったな…。あれは六文だったな…。

 

 思い出せて少し嬉しい気持ちになり、ほおが緩む…。

 

 

「この合計金額が少なければ少ないほど川幅が伸び、向こう岸に到着する時間も長くなる…だから、あんたはかなり時間がかかりそうだねぇ」

 

「いいさ、久しぶりに他人とゆっくり話ができるんだ…。どれくらいでも会話するさ」

 

「うん、あんたはやっぱり面白い!じゃぁ、行こうか?」

 

「ああ、任せる」

 

「任された」

 

 

 人懐っこい笑みを浮かべた小町は「ぴょんっ!」と舟に飛び乗り、乗れ、と手で促してくる。

 私はそれに従い、ゆっくりとのり、舟の中で座る。

 

 舟は小さく、少しボロボロになっていたが、それが長い間使われている証のように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 舟はゆっくりとこぎ出される…。

 ゆらりゆらりとゆられ、その舟の上で小町と談笑に興じる。

 

 

「うちの上司がねぇ~、ちょっと頭が固くてねぇ~説教好きで、すぐ説教をはじめるんだ」

 

 

 疲れたようにそういう小町…だが、その顔にはどこかその頭の固くて説教好きの上司への信頼が見て取れる。

 

 頭が固くて説教好きで…。どこか憎めない。

 

 

「彼女は元気でやっているようだね」

 

 

 思わず口に出たその言葉。

 驚きに目を見開き、こちらを見る小町…。

 

 

「知っているのかい?」

 

 

 私はその問いに目をつぶって、懐かしむように答える…。

 

 

「ああ、ちょっとした知り合いだよ…」

 

 

 それを聞いた小町は不思議そうな顔をしたが、「まぁ、いいか…」と呟くとまた違う話をし出す。

 小町との話はとても楽しく有意義なものだ。

 かなり長い間話し込んだころ…。

 

 

「もうすぐつくねぇ~いやぁ、久しぶりに会話したから楽しかったよ」

 

 

 少し名残惜しそうに小町はそう呟く。

 私は少し笑いながら返す。

 

 

「そうだな、私の久しぶりにゆっくり話せて楽しかったよ」

 

 

 そういいながら立ち上がり、舟から降りる。

 結構長い間乗っていたな…。そう思いながら舟を見る。

 ボロボロだが、まだまだ人を乗せて動ける感じだ…と思っていると小町がひょいっと飛び降りてきた。

 ?彼女の役目はここで終わりのはずだが…。

 

 

「いやぁ~…ちょっと上司に報告しなきゃいけないことがあってね~。まぁ、そんな大事な話でもないんだけど」

 

 

 笑いながら後ろ髪をかき、小町は歩き出す。

 私もそれに続く。

 

 歩いていくごとに景色も段々変化していく。

 しばらく歩くと、いつの間にか道が階段に変化しており、その階段の一番上には巨大な門があった。

 その先から懐かしい気配がする…。

 

 微笑を浮かべながら歩く…。雨合羽の帽子を取り、顔を見えるようにする。

 

 隣で小町が「おぉ!イケメン」とか言っている気にしない。

 

 扉にどんどん近づいていく、近づくごとに扉は開いていく…。

 どういう仕組みになっているのだろう…あれ。

 まぁ、どうでもいいことか…。

 

 そして、その扉の向こうに入ったその瞬間、小町が前に出て声を上げつつ中にいた少女の元へと走って行く。

 

 

「映姫様~! 報告しにきましったよ~っと」

 

「まったく…小町、あなたは…何度言ったらわかるのですか? そんなに逐一報告はいりませんし、ちゃんと決められた時間に来てくださいと言っているでしょう?」

 

「いやぁ~すいませんね~。いやいや、けっして仕事サボろうなんて考えてませんよ?ええ、微塵も考えてません」

 

「その言葉が何より真実を語っている気がしますね…。はぁ~…そう、あなたは少し仕事をさぼりすぎている」

 

 

 巨大な扉の中の部屋は…広く、奥には少し高い位置に裁判官の机のようなものが一つある。

 その左右には妖しい美しさの桜の木があり、その左右の桜の後ろに二体の大きな金剛力士像のようなものが立っていた…。

 

 そして、さらにその後ろには赤い、朱い、紅い…巨大な鳥居が立っている。

 

 そして、罪人が立つべきだあろう台は少女の立つ裁判官の机の前にあった。

 私は自然とそこに歩を進め、着いた後。まだ私に気づかず小町に説教をしている少女に話しかける。

 

 

「やぁ、映姫…。変わっていないね…説教好きもその姿も…」

 

 

 小町を説教していた映姫は私の声が耳に入ったのか、ピタっと説教をやめ、驚きで見開いた目で私を見る。

 そして震える声で言う…。

 

 

「…あなたは……」

 

「久しぶり、元気にしてたみたいだね」

 

 

 懐かしい声に自然と笑みがこぼれる。

 小町は頭の上に ?マークを浮かべている。

 

 

「さて、判決はわかっている、あの門をくぐればよいのだろう?」

 

 

 私には見えている門を見ながら言う。

 恐怖と絶望が凝縮されたかのような形の門…。

 おそらく、地獄に続く門だろう…。

 

 私がいままでやってきたすべての所業の罰…どこまでのものなのだろうか?

 

 

「はい…その通りです…。私はあなたが道を外すたび、何度もあなたの心に問いかけました…」

 

 

 感情を押し殺しているかのような声で…いや、本当に感情を押し殺している声で映姫は私に告げる。

 

 

「ああ、そのようだな…私には聞こえなかったがね」

 

「聞こえなかったのではなく、聞こえないと思っていただけです」

 

「そうかもしれないね。でも後悔はしていない。私の幻想は間違ってなどいなかったのだから」

 

「人間は素晴らしい…ですか?」

 

「その通りだよ映姫」

 

 

 私と映姫の声だけが響く…。

 地獄の裁判所…。

 

 私は私の人生に後悔などない。人は素晴らしいものだ。自分のやろうとしたことは自分本位ではた迷惑な行為だっただろうが、それでも間違ったとは思っていない。

 自らの幻想、証明できたのだから…こんなに嬉しいことはない。

 

 映姫は感情が抑えられなくなってきているような、震えた声で続ける。

 

 

「…ぇえ、確かに人間は素晴らしいです…。けれど、そう、あなたは少し幻想を信じすぎている…」

 

 

 映姫は俯いてしまう…。なぜだろうか?

 人間は素晴らしい…それがわかったのは彼女のおかげ…。

 私が必要以上に人間に憧れたことに責任を感じているのだろうか?

 

 はぁ…だとしたらそんな必要ないのにな…。私は十分幸せだったのだから…。

 

 

「幻想を信じれぬ幻想の妖怪など、存在意義があるのか?」

 

 

 笑いながら、ふらりと歩き出しながら俺は映姫の言葉に言い返す。

 

 向かう先は地獄の門。

 はてさてここから先の幻想はどんなものなのだろうかな…。

 

 

「待って…!ください!」

 

 

 私があと一歩で門をくぐる…と言ったところで後ろで私を必死で呼び止める映姫の声がする。

 私は振り向きながら映姫を見る。

 

 

「ほら、映姫…泣くなよ…」

 

 

 映姫は泣いていた。なぜだろうか?私にはわからない…。

 その涙は後悔か懺悔か…。

 それとも…。

 

 

「どうして…あなたはいつもそうやって…自分のことを考えないのですか…?」

 

 

 私を心配している涙…だろうか?

 いや、これは都合よく考えすぎだな…。

 

 

「なぜ君が泣く?」

 

「…地獄に行けば…あなたとはもう会えないかもしれない…それは………」

 

「いやか?」

 

 

 映姫はコクっと首を縦に振る…。

 俯いて、涙をこらえようとして…でも全然こらえられていない…。

 

 はぁ…まったく。

 

 

「映姫、私はな…これでも男なのだよ。男というのは好きな女性のためならなんだったできるんだ」

 

 

 地獄の門の前で私は何を言っているんだと思いながら続ける。

 映姫が泣かないように…映姫が笑っていられるように…。

 

 

「だから…そうだな、映姫、また会おう。そのときは今回見せてくれなかった、笑顔を見せてくれよ?」

 

 

 私はそう映姫に言い、地獄の門の先へ…地獄の門をくぐる…。

 その瞬間、憎しみの怨嗟と絶望と悲しみが襲い掛かる。

 

 だが、門をくぐる瞬間、私は確かにきいた…。

 

 弱弱しく震えていた声だったが…私は聞けた…。

 

 

 私の『幻想』そのものを………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 違う場所で、違う境遇で…二人の女性は同じ言葉を発した。

 

 『幻想』と『夢』は『思い』と『想い』を受け取り、『願い』を持った。

 そう、たったそれだけのこと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ええ…必ず…」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 地蔵様、雨合羽の知り合いは映姫様でした。

 夢と幻想、どちらも泡沫…。
 

 感想待ってます。
 次回も頑張って編みます。
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