東方雰囲気録   作:島夢

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お久しぶりです。
待っていた方は申し訳ありません。


第122話

「と、言うことで、今日は博麗の巫女こと博麗 霊夢に来てもらったぞ。普段妖怪について疑問に思っていることとかまぁ、その他もろもろについてたずねてみてくれ」

 

 

 と、俺は心底面倒くさそうにしている霊夢を隣に生徒たちにそういう。

 今回は子供たちに妖怪の恐ろしさを教えるという趣旨で一応知名度だけなら幻想郷トップクラスの有名人であり、対妖怪のエキスパートともいえる霊夢に来てもらっている。

 普段授業している俺や雪那や慧音が言ってもあまり関心が向かないからな。

 参拝客は少なくても一応有名人でさらに妖怪退治の専門家である霊夢なら説得力は抜群だろうということで慧音が呼んだのだ。

 ちなみに報酬は俺と雪那が一週間の間、博麗神社に食糧持参で三食全部用意するというものだ。

 それで釣れる博麗ェ…。

 

 

「ほーら、ガキんちょ共、何か質問は?」

 

 

 霊夢が気だるげにそう言うと寺子屋の子供たちも各々全然違うテンションながらもほぼ全員が手を挙げる。

 

 

「はい!」

 

「はーい! はい!」

 

「は~い」

 

「はッいッ!!」

 

「……はい」

 

 

 こんな感じのバリエーションの声がたくさん、二十三人分くらい聞こえてくるのだ。

 みんな元気がいい、子供はそうでなくちゃな。

 

 

「んじゃあ、取りあえず、一番前の席の一番右の君」

 

「はい! なんで脇出してるんですか?」

 

 

 妖怪のこと質問しろよ!

 確かに霊夢の巫女服は脇が出てるけど! 今それ聞くことか!?

 

 

「先代からこうだったのよ、知らないわ。ということで次、その裏の席」

 

「ずっと気になってたの!! 冬は寒くないの?」

 

「寒い、次」

 

「博麗神社って参拝客少ないのになんで立派なままなの?」

 

「知らないわ、紫が何かしてるんじゃない?」

 

「博麗神社ってなんで参拝客少ないの?」

 

「そんなこと私が知りたいわ!」

 

「なんで博麗神社って山の上にあるの?」

 

「初代に聞け!」

 

「なんで世の中の争いは絶えないのでしょうか?」

 

「哲学者に聞いて!!」

 

「どうすれば神になれますか?」

 

「信仰を得なさい!」

 

「人はいつになったら前へ進むのでしょうか?」

 

「哲学者かあんたは!」

 

「神は死んだのでしょうか?」

 

「ニーチェに聞け!」

 

「一発で女性を口説き落せる魔法の言葉ってないですか?」

 

「あるわけないでしょ!?」

 

「…………完璧な製法で完全に完成されたホムンクルスを作りたいのですが、製法を知りませんか?」

 

「私は錬金術師じゃないから!」

 

「私は何のために生まれてきたのでしょうか」

 

「なんでその年齢でその疑問に至ったの!? 何があったの!?」

 

「我ここにあり!」

 

「何がいいたいの!?」

 

「博麗せんせー、剣を、極めたいです」

 

「どこぞの庭師のもとにでも行ってきなさい!」

 

 

 どうだろう? うちの生徒たちは。

 なんとここまで一人も妖怪のことについて質問しないのだ。

 俺はちゃんと最初に妖怪のことについて質問しなさいと言ったはずなのに…。

 まぁ、想定の範囲内だ。こいつらが普通の質問をするわけがない。

 とはいえ、半数くらいは普通の質問をする子たちもいる。

 キャラが濃いのが多いがちゃんと普通の子たちもいるのだ。

 

 

「妖怪って、怖いものなんですか?」

 

 

 ほら、まともな質問だ。

 この子はとても優しいいい子。子供だから当たり前と思うかもしれないが、人の言うことを何でも信じてしまうくらいの純粋ないい子。

 将来がちょっと心配な少女だ。

 

 

「…まぁ、そうね、人からすれば怖いわね。人間ではありえない力、人を害する精神。貴方達のような子供は遭遇したら生き残るのは難しいわ」

 

「そうなんですか…? ルーミアちゃんとかとはよく遊んでるんですけど…」

 

「まぁ、あいつは単純だしね。妖怪にも色々いんのよ。人だって、色々いるでしょ?」

 

「そう、ですね」

 

「それに、あいつもあれで結構強いから、一緒に遊んでる時は妖怪に襲われることは少ないと思うわよ? 襲われても大概の相手は追っ払えるわ」

 

 

 そういえばルーミアとこいつらが遊んでるところは何度か見たな。

 人を襲うような獣のような妖怪や本能に身を任せるタイプの妖怪程度なら、ルーミアは負けないだろう。

 あれでも中妖怪くらいの実力はあるし、な。

 そういえばルーミアって人食い妖怪って名乗ってなかったか?

 あいつ人食ってるのか? 見たことないけど…。いや、見てたらルーミアとまともに付き合っていけるか微妙だけどさ。

 

 

「はいはーい! ずっと気になってたんだけど!」

 

 

 この寺子屋でキャラがおかしくない方向性で一番元気のある男子生徒が手を挙げる。

 今日も元気いっぱいで大変よろしい。

 

 

「男の子としてはさ! 幻想郷最強って誰なのか気になるんだけど! 巫女さんわかる?」

 

 

 幻想郷最強か…。

 パッと思いつく限りではやっぱり紫かな。幻想郷の賢者は伊達じゃない。普段はあんなだけどさ。藍さんを式にしてる時点で藍さんよりは強いみたいだしな。

 次は永琳だな。一番底が深そうだしな、永琳は。

 あとは幽香だなぁ。理不尽な暴力って感じの、力はもちろん速さも硬さも妖力も格が違う。そもそもの身体的ポテンシャルが違いすぎるというかなんというか。

 他には萃香とか? 鬼ってやばいよな。 幽香が理不尽な暴力ならこっちは圧倒的な力って感じだ。力だけなら幽香よりも強い。

 

 (あいつを幻想郷の住人と判断していいかわからないし、もう死んじまったけど…。)

 そう思いながら脳裏に浮かぶのは雨合羽の若干胡散臭い笑みを一度も絶やさなかったあいつ。

 

 ほかにも色々思いつくが、まずいえることは――

 

 

「さぁね、幻想郷最強なんて知らないわ。けど一つ言えることがあるわ」

 

「それってなに?」

 

「幻想郷最強を決めるために全員が全力で戦ったら幻想郷は消えてなくなるわね」

 

 

 ――どう考えても幻想郷がもたない。ってことだな。

 霊夢の言った通りだ。

 なんのための弾幕ごっこだよ。幻想郷の強者が幻想郷を破壊しないためのセーフティと弱者との圧倒的壁をなくすためだろうが!

 ってことで俺は最強なんて決めなくていいと思う。

 

 

「そ、そんなにか」

 

「そんなによ。幻想郷が壊れないための弾幕ごっこでもあるのよ」

 

「なるほど」

 

 

 

 それからいくつかまともな質問が来て、今日はお開きとなった。

 もうすぐ冬だ。日が沈むのも早い。

 現に今日もちょっと長引かせすぎた。外はかなり薄暗くなっている。

 

 

 

「今日の授業は俺ので終わりだ、お前らー。最近日が沈むのがはやくなったし気を付けて帰れよー」

 

『はーい』

 

 

 今日の仕事が終わり、生徒のみんなに解散を告げる。

 いつも通りの日常だ。

 まぁ、相変わらず個性的な面子がちょくちょくいるこの寺子屋で授業をするとなるとすごく疲れるんだがな。

 今日は霊夢にかなり負担が行って俺はそうでもなかったがな。

 

 元気な声を挙げたみんなは自分の家の方角へ別々に歩いていく。

 

 

「あー、疲れたぁ」

 

「お疲れさん、霊夢」

 

 

 俺がそう声をかけると霊夢はぐでーっとしていたのを突然がばっと起き上がり。

 

 

「あいつらなんなの!? もう将来有望そうだけど性格濃すぎでしょう!? もしかして幻想郷の人里って将来あんなのばかりになるんじゃないでしょうねぇ!?」

 

 

 その言葉を聞いて脳裏に浮かぶあいつらが成長した姿。

 妖怪が畏れられなくなりそうで…紫が動かなきゃならなくなっちまうな…。

 

 

「しかも本当に霊力強い奴多いし、言ってたこと本当に成功しそうで怖いわ」

 

「ホムンクルス作るとかか?」

 

「そう、神になるとか剣術極めるとか…まぁ、普通の子たちもごく一部いたみたいだけどね…」

 

 

 疲れたのかため息を何回も吐きながら霊夢は俺に愚痴ってくる。

 一日くらいいいだろ。俺なんて毎日あいつらを相手してるんだぞ…。

 

 

「個性的な子たちですけど、みんな純粋でいい子ですよ?」

 

 

 雪那が俺の後ろからひょっこり現れる。

 いつも通りのニコニコ顔だ。

 まぁ、確かに純粋だし…いい子? なのか?

 

 

「純粋なのは認めてあげるわ」

 

 

 霊夢は疲れた顔をしながら空に浮かび始める。

 

 

「それじゃあ、またね」

 

 

 そう言って少し手をふったあと博麗神社の方向へ飛んでいった。

 

 

「んじゃあ、雪那。帰ろうか」

 

 

 俺はそう言って家の方へ歩き出す。

 と言っても俺の家じゃなくて雪那の家だがな。

 自分の家と錯覚してしまいそうなくらいに長い間、雪那の家に世話になってるなぁ。

 

 

「はい、そういえば大夢さん、今日の晩御飯なににしましょうか?」

 

「そうだなぁ…」

 

 

 俺は一度言葉を区切り、後ろを振り向きながら言葉の続きを言う。

 

 

「焼き鳥なんかどうだ? なぁ、文」

 

「あやややや? バレてしまいましたか、このまま悪戯でもしようかと考えていたのですが…。鋭くなりましたねぇ大夢さん?」

 

 

 そういうと雪那のすぐ後ろに突然文が現れる。

 本当はもう少し遠くにいたんだが…。やっぱり速いな文は。

 

 

「こんばんは、お久しぶりですね文さん」

 

「こっちもこっちでいきなり出てきたのに驚いていませんし、抱き付かせるとか、そういう悪戯の反応は面白いのに。こういった方面では全然驚かせることができませんねぇ」

 

 

 雪那のすぐ後ろに移動してきたのは驚かすためだったようだ。

 ちなみに雪那はかなりびっくりしているが表情に出さないようにして頑張っていただけだ。

 雪那は割と怖がりだからな。

 冷静な判断、行動はできるけど怖いものは怖い。みたいな感じだな。

 

 文が後ろに移動してきたときほんの少しだけ方がびくって動いてたからな。

 文は気付いてないみたいだけど…。

 

 

「まぁ、いいでしょう。今回は引き下がりますかぁ。楽しくないですねぇ、いや? 鋭くなった分悪戯のし甲斐があるというものかもしれませんがね?」

 

「悪戯って何する気だよ…。いい加減にしてくれよ、あんまりやり過ぎると怒るからな」

 

「ひゃあ怖い、幻想郷で怒らせちゃダメな人のうちの五指に入るかもしれない大夢さんに怒られるのは御免ですね。ではまた今度~!」

 

 

 そういいながらすごい加速で飛ぶ文。

 やっぱり速いな…。あのくらいはやく飛べたら色々便利だろうな。

 

 

「それで、大夢さん」

 

「ん?」

 

「今日の夕ご飯、焼き鳥でいいですか?」

 

「…ああ、いいと思うよ」

 

 

 雪那には悪気はないんだろうけど…そして提案した俺が言うのもなんだけど文と会った後に焼き鳥食べるってなんかあれだな。

 まぁ、いいけどさ。

 

 なんにせよ、今日の夕食は焼き鳥だ。

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