The Rain Bringer Girl 作:うにうにうさぎ
「破道の三十三・蒼火墜!」
ルキアの手のひらから青い炎が発射される。一護の斬魄刀が弾き返した。
「まだまだぁ!!」
一護とルキアは、深夜、浦原商店の地下練習場で特訓をしていた。
いつか再来するかもしれないグランドフィッシャー、ウルキオラとの戦いに備えて。
「黒崎サーン、朽木サーン、休憩しませんか?」
浦原が自らお茶を持ってきた。
一護はまだ体力に余裕があったが、ルキアのこめかみに汗が光るのを見て、霊子の足場から地に降りたった。
ルキアは斬魄刀を鞘に収め、ふぅと息を吐いた。
一護とルキアは近くの岩を椅子代わりにして腰掛けた。
一護は浦原のお茶を喉に流した。
***
「なぁルキア」
「なんだ?」
「美雨の正体なんだけど」
「別の世界の石田の親戚だろう? あそこまで似ているのは驚きだが」
「娘なんだ」
ルキアがぶはっとお茶を吹いた。
「きたねぇな! 養子でも朽木家の令嬢だろ!!」
「たわけ! 貴様が変なことを言うからだ!!」
「お茶の代わりは有りますヨン」
浦原が急須を持ち上げる。
ルキアは頬を染めて、死霸装の懐から懐紙を出して口元を拭った。
「……どういうことだ」
「美雨は30年後から来たんだと」
「30年……」
ルキアは絶句した。
「……母親は?」
「世界の『修正』にかかるって、教えてもらえなかった」
「……そうか」
浦原は答えなかった。
「48かぁ」
一護は空を見上げた。
「美雨の世界で俺、生きてないんだってよ」
ルキアは一護を見上げた。
「未来は現在の結果だ。今から気をつければ、死の未来など、いくらでも変えられよう」
ルキアは胸を叩いた。
「死んでも『代行』から正規の死神になるだけだ。これまで死神の身体で3度ほどマジで死んだ。今更死ぬこと自体はそれ程恐怖じゃねぇんだ。めちゃくちゃ痛ぇけどな。ただ、ヒトとして一度きりの死ぬ時は、目の前で助けを求める誰かのために命を使いたいと思っただけだ」
一護の脳裏に在りし日の母が笑っていた。
幼い一護をグランドフィッシャーから守るために、身代わりに散った美しい人。
浦原は、鎧の虚について調べものを続けると席を立った。
盆に乗った急須が残された。
グランドフィッシャーは討伐された。一護以外の死神によって。
だが、一護は自分の手でグランドフィッシャーを討ちたいと願った。母の仇を自分の手で伐たなければ、一護の中で、永遠に雨は止まない気がした。
これは天が与えたチャンスかもしれない。
一護が知らない間に討伐されたグランドフィッシャーとケリを付けろ。戦って、勝って、雨を止ませろと。
長年鎧の虚と苦しい戦いを続けている美雨には悪いが『護る』ために力を奮い、戦うことを信条にしながら、一護には、ただ強敵と『戦いたい』ために戦いを求める、戦闘狂の一面がある。これまで卍解習得や虚化、完現術を習得する修行の中で、イヤと言うほど思い知らされ続けた。
グランドフィッシャーは、記憶に干渉する虚だ。敵にとって最も攻撃できない対象の姿に擬態する。
3年前の一護は一人だった。
死神としてチカラも経験も未熟だった。
ルキアは戦える状態ではなかった。
「ルキア、昔話を聞いてくれるか?」
一護はルキアを見つめた。
ルキアの紫の大きな瞳に一護が写っていた。
ルキアは頷いた。
ルキアも静かに決心した。
一護に似た面立ちの、尊敬していたあの人の、かつて左腕の副官章の持ち主だった男の話をしよう。
To be Continued