The Rain Bringer Girl 作:うにうにうさぎ
浦原商店、地下練習場。
日が沈まない空間で鍛錬を続ける一護とルキアの間に青い光の矢が飛んだ。
「石田!」
「また学校休んでこんな所に居たとはね」
制服姿の石田が弓を構えて立っていた。
眼鏡のブリッジを押さえる。
「次の新月まで時間ねぇからな」
一護は左腕で額の汗を拭った。
どこかさっぱりした顔だった。
一護はルキアと共に石田の前へ降り立った。
「オメェは、学校帰り?」
「とっくに夜だよ。井上さんの相談乗って、石井さんと一緒に食事した」
「……どうだった?」
「どう、て……普通だよ。石井さんにお兄さんが居るとか、父親が料理上手で母親は料理下手とか」
「お袋さんの話出たのか! どうだった?!」
「井上さんも、そこ食いついたけど、口を割らなかったね」
一護は残念そうに肩を落とした。
「君も興味あるのか」
「おめーはないのかよ?」
「竜弦に双子の兄弟が居るくらい差違がある世界だぞ? 考えるだけ無駄だよ」
「オマエ……結構マトモなんだな」
「今更気付いたのか」
石田はため息をついた。
「どうせ数日後には『世界の修正』とやらで消えてしまう存在と記憶だ。彼女の世界を救いに行く君以外、彼女に振り回されるのは無駄だよ。ただ井上さんは彼女にかなり入れ込んでるみたいで、そこだけ心配」
「井上は優しい子だ。困っている美雨を放っておけなかったのだろう」
「僕もそれだけだと思っていたんだ」
「違うのか?」
「あー…ルキアには言ってなかったな。美雨は初めて井上に会った日に、俺らを棺桶に閉じ込めて、椿鬼で井上を襲ったんだ」
「なに!?」
「石井さんが椿鬼を使役出来る理由と、井上さんを殺そうとした理由は未だに不明」
「死神一人に一振の斬魄刀さえ、日番谷隊長と氷輪丸のような例外があったのだ。井上の盾舜六花はモノに宿った魂を使役する
ルキアは黙り込んだ。
「似ていないか?」
「あん?」
「井上と美雨の霊圧だ」
「彼女は石田の血縁者だ。顔だけでなく霊圧の質も。それくらいは僕にもわかるよ。それに彼女の母親は『
「エピ……? ナンだそれ?」
「古の時代から滅却師のみの間に生まれた滅却師ってこと。滅却師の力は血に宿る部分が大きくて、血が濃いほど霊圧耐性が高く、一度に操れる霊子の量が大きいとされてるんだ。霊的資質がない人間との混血は『
「へぇ。時代錯誤なことしてたんだな。石田の親父さんと婆さんは純血統滅却師てことは、オメーも純血統滅却師てやつなの?」
「僕は混血統滅却師だよ」
石田は薄く笑った。
「僕で石田家の純血統は終わったんだ」
「………そうか」
一護は呟くように相槌した。
「石井さんは純血統滅却師だ。彼女は僕に使えない滅却師のチカラを使いこなしていた。この世界で石田家の純血統は失われたが、別の世界では繋がっていたんだな。少し安堵したよ」
「石田……」
「うむ~…。石田の話は理解するが、井上と美雨の霊圧は似ていると思うんだ。2人の霊圧を採取して尸魂界の機器に掛けなければ確証は取れないが」
「ハイハ~イ! 皆さん~お茶休憩の時間ですよ~」
浦原が狙ったようなタイミングで割って入った。
浦原が出すお茶は霊圧と疲労を回復させる作用があるようだった。
一護は死神体となってから、お茶と傷を癒す風呂以外の休息を取らずに特訓していた。
相手はルキア、夜一、雨とジン太が交代で行った。
石田は岩の上に鞄を置いた。
「僕も相手してやる」
「手加減しねーからな」
「石井さんの世界では無様に負けたようだからね。今度は遅れを取らないようにしないと、」
石田は右手に霊弓を現出させた。
「いくぜ」
一護は斬月を構えた。
***
織姫は放課後、手芸部の部室で石田に手伝ってもらいながらカルトナージュを完成させた。
円柱形の箱に、白地に淡い水色の花柄の布を張り、縁を薄青の飾り紐と白いレースで飾った。
雫型でカットが入った銀色と透明のビーズを縫い、虹色のオーガンジーリボンを結んだ。
内側はピンク色の包装紙を貼った。
「可愛いね」
石田は優しい笑みを浮かべた。
「空にかかる虹なんだ」
「リボンのこと?」
「美雨ちゃんの名前」
織姫はビーズを揺らした。
「雨は交わらない天と地を繋いで、二つの世界を渡すキレイな虹をかかるの。死神と滅却師が力を合わせて現世を守れますように……美雨ちゃんのお母さんの祈りが込められた名前なんだって」
幼い頃の幸せな思い出。師匠は天気がいい日に病院の屋上へ石田を連れ出し、一緒にホットケーキを食べた。
師匠は穏やかな笑顔を浮かべながら、石田に滅却師と死神が協力して現世を守る未来を語った。
交わらない天と地。滅却師と死神。名前に雨を授けられた石田は、両者を繋ぐ存在になれるのだろうか。
美雨の母親は、誇り高い純血統滅却師でありながら、師匠と同じ考えを持ち、滅却師の未来を美雨に託したのか。料理は下手でも素晴らしい女性なのだろう。石田は美雨の母親に会えないのを初めて残念に思った。
織姫は箱に手紙とたつきたちに一言づつ書いて貰ったメッセージカード、包装紙に包んだ小物を詰めた。
石田もメッセージを求められた。小さなカードに「素敵な女性になりますように」と書いた。
織姫は「おじさんみたい」とゲラゲラ笑った。
To be Continued