The Rain Bringer Girl 作:うにうにうさぎ
一護は黒崎家の自室で勉強をしていた。
ドンドン、窓を叩く音に、腐れ縁の訪問かと、高揚する気持ちを悟られぬよう、無駄にモデル立ちでポーズを決めてから、カーテンを開いた。
「黒崎くん!!」
美雨が窓に張り付いていた。
「うおおおぅ!!」
一護はのけぞった。
「美雨! オマエなんて場所から来てんだ! 登ったのか!? お嬢様のくせにはしたないことすんじゃねぇよ!!」
隣室の妹たちに気付かれないよう、小声で叱った。
「ごめんなさい。こんな時間に玄関からお邪魔したら、家族のみんなに知られちゃうから……」
一護は後頭部を掻いた。
「……っだからって、やり方があるだろう。どうした?」
「それよ!!」
一護の目の色が変わった。
***
死神になった一護が美雨と織姫のマンションに到着すると、織姫は虚に鷲掴みにされて喰われる寸前だった。
「井上!!」
一護は叫ぶ。
「……ろ…さき、く……」
織姫は呼吸もままならない状態で、一護の名前を呼んだ。
織姫を襲う虚の姿に、一護は動揺していた。
「織姫ちゃん、あの虚をお兄さん、て。織姫ちゃんのお兄さんは尸魂界に導かれたんじゃなかったの?」
美雨の問に、一護は頷いた。
「ああ……俺がこの手で魂葬した。まだ死神になりたての頃だ」
「魂葬!?」
「井上のアニキは、死後井上が心配で成仏しなくて、心を喪い、虚になったんだ。それから井上の魂を喰らおうと、色々な……それで親しくなった」
「……そんな」
「滅却師の弓じゃ、虚を完全に殺しちまう。なんで魂葬した井上のアニキがまた虚になっちまったのかはわかんねーけど、俺がもう一度魂葬すればいいだけだ」
一護は斬魄刀を構えた。
「そうだね。手伝うよ」
「おう!」
二人は宙を蹴った。
美雨が矢で仕掛けて気を逸らし、一護が織姫を助け出す作戦だ。
だが、一護の刃は虚の堅い鱗に阻まれた。
「ち…またかよ…!!」
入れ替わりに美雨が虚の懐に入り、スカートの下から太ももに括り付けた銀の棒を取り出した。
『
高速振動する霊子の刃で、対象の霊子結合を緩め、奪いやすくする霊具。
美雨は血管に霊子を流し、一時的に腕力を上昇させて斬りつけた。
如何に頑強な装甲を持つ虚も、霊子生命体である以上、ゼーレシュナイダーが触れて無傷では済まない。
織姫を掴む腕部を切り落とし、織姫を取り戻した。
「織姫ちゃん!!」
「……みうちゃん…おねがい…おにぃちゃんを……」
美雨は織姫の手を握り、深く頷いた。
「任せて。この人は、私にとっても大事な人。必ず助けるよ!」
織姫は弱々しく微笑んだ。
たつきは階段の昇降口に避難させられ、三天結盾と双天帰盾が掛けられていた。美雨は織姫を眠るたつきの隣に休ませた。
「椿鬼!」
美雨の呼び掛けにハートのヘアピンから妖精が出現する。
「2人をお願い」
「出来ることなんてねーぞ」
「非常時に知らせるとかあるでしょう?」
「へいへい」
美雨は戦場に復帰した。
虚から切り落とした腕は再生し、一護は苦戦していた。
一護の元に駆け寄る。
「前回はどうやって勝ったの?」
美雨の問に一護は首を振った。
「勝ってねぇんだ」
虚から吐き出された体液がコンクリート壁を溶かす。
「魂葬したんでしょう?」
「アニキに喰われかけた井上が、マジで死にそうになって、一瞬正気に戻ったんだ。自分から斬魄刀に斬られてくれた」
「なにそれ!? 不戦勝みたいなモノじゃない」
美雨は呆れた。
「全くだ」
一護の顔はなぜか清々しかった。
「でも黒崎くんは、それから卍解を習得して、虚化も身につけて、完現術も使えるようになった。初めて戦った時より、何倍も、何千倍も強くなったじゃない」
「……俺もそう思ってたんだけど」
一護は顎で虚を指した。
上半身が人・下半身が大蛇の虚は、白い縁取りがある黒い鎧を身に纏っていた。
目を凝らすと、身体を守る鱗の一枚一枚も、薄く黒い装甲が重ねられていた。
美雨は顔をしかめた。
「あんな鎧は着てなかった」
「パワーアップしたってこと?」
「悪い冗談だぜ」
美雨は虚の黒い鎧が一護の手と首を守る装甲のデザインに似ている気がした。
ドクン……心臓が嫌な音を上げる。
「……あの虚、私のせいかも……」
「あん?」
「私が、この世界に来たから……」
美雨は胸元で手を小さく丸めた。
美雨は緊張したり、思い詰めると、すぐにこの仕草をする。癖なのだろう。一護の良く知る少女が、自分の前でよくに似た動作をした。
「心配すんな」
一護は美雨の頭に手を置いた。
「俺が強くなったから、虚も強くなった。オアイコだ。強くてニューゲームは効かねぇだけだ」
「黒崎くん……」
「今度こそ、ちゃんと俺のチカラで倒して、キッチリ魂葬しようぜ」
「うん!」
美雨は一護の隣で新たに長弓を作った。
ゼーレシュナイダーをつがえて撃ち放った。
ゼーレシュナイダーは虚の鎧を火花を散らしながら滑るように掠め、壁に突き刺さった。
鎧の僅かな傷から黒い霊子が漏れ出ていく。
美雨はマーキングした鎧の霊子を集めた。弓の先に黒い鏃が形作られていく。
「黒崎くん!!」
「卍っ解ッッ!!!」
一護の周囲に黒い霊圧の風が巻き起こる。
次の瞬間、黒い細身のロングコートを纏った一護は瞬歩で虚の背後に回り込んだ。今度こそ迷いなく虚を頭から両断した。
美雨のゼーレシュナイダーで若干だが結合が緩んだ黒い鎧が、一護の斬魄刀で砕かれていった。
虚はいつものように霊子の光と化して冥界へ飛ばなかった。ひび割れ、濁った無数のパズルピース状に変形した。黒い風が起こり、砂粒になって消えていった。
「なんだ!?」
一護は驚愕する。
美雨は厳しい表情で見ていた。
残った黒い鏃をポシェットにしまった。
数分後、後始末をしに浦原たちが現れた。
浦原は美雨の姿に「おや?」と呟き、表情が読めない反応を見せた。
「浦原さん、コイツは石田の生き別れの妹の石井――」
一護が紹介しようとすると、美雨は静かに浦原の前に歩み出た。
「石田 美雨です」
「石井は偽名かよ!」
「浦原さん、私の世界の貴方から、言付けを預かっています」
「ほぅ……」
To be Continued