ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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長生きしたせいで、メタられまくってかわいそう(こなみ)


変容【増殖の世界樹】

 視点は変わって。

 

 

―――『ネットスラム』

 魔女が作り上げた。戦場と化したガラクタ、ジャンクたちの楽園にて。

 

 修羅場の真っただ中、眩い閃光が引き裂き溶断された鋼の大地である。

 変わらず湧き上がる、禍々しき波の如く波長に満ちた空間と塗り替わっていた。

 

『バウッ』

「ポチが言ってる。ここならばれないって、ささっとやって」

「ん」

【牙獣種の如く】【ハイエナの嗅覚】【はやあし】

 鬚犬の背に乗っての移動した。

 身を隠して、それと別に、襲撃者と同じ方法論で空間に語り掛ける人影があった。

 

解凍完了(デコード)……限定解凍部分と結合」

情報記憶体(キューブ)』【イレギュラー】

 その華奢な手のひらにあるのは四角いキューブ、記憶媒体だ。

 儚紅の少女は目を瞑りながら、情報媒体を己の内海、揺蕩う海に沈めて。

 

(……"関数"機能全掌握。分かり易い。注釈(コメント)が一杯付いてる。私のとは、違う)

 儚紅の少女はその1と0の羅列を、溶かす様に意味を高速で読み取っていく。

 それは確かに言語だ。コメントを理解すれば、全てを読み解かずとも最低軽減動かせる。

 直接読み解くは、"魔女"の言った通り、生まれより設計された"本性"のなせる力業である。

 

 そして、その黄金眼は世界に対して、見開いた。

 

「―――術式、展覧(コード・キャスト)

【円環精霊】【電脳使い】【タッピングエア】=【黒写の天球儀】

 幼子が虚空を叩き、地る炎の花弁を散らしながら虚空に信号を打ち込んでいく。

 途端に、組み立てられる半透明の天球儀、幼子を中心に周囲を回り続けるだろう。

 理論上無限の拡張性を持つ『多目的センサー』の具現である。

 

 儚紅の少女の周囲に仮想の天球儀が浮かんで、その表面を目まぐるしく熱源が躍るだろう。

 それは接続した感覚器(センサー)の多様性のまま、万象天球に写し取る術式である。

 

「音響素子測点5、光学カメラ測点3、安定(オールグリーン)

【ハッキング】【マルチタスク】

 『電子魔術師』は駆体(ハード)の性能に力を大きく影響される。

 おおよそ、これに接続する感覚器(センサー)はそこらに転がっている。

 故に再生品(ジャンク)の集まる『ネットスラム』の環境にて、制御を奪い問題なく全能を発揮する。

 なお、それぞれの互換性を補完するのは手動である。故に人外の手筈だ。 

 

 『増殖』が閃光は、硝子をすり合わせる予兆(ディレイ)、素直すぎる、角度の通りに放たれる。

 地属性の重力歪曲もない、風属性による空気層の歪曲もない。

 "葉の端末"(メイガスリーフ)の角度を計算すれば、標準を容易に予測可能である。 

 

 しかし、これでは観測して伝わるのは、儚紅の少女と半身の双剣士位だ。

 それを埋め合わせる都合のいい助っ人が、偶然か必然かここにいたりする。

 

「ふーん、よくわからないけどやるじゃん」

【ペルソナセット】【精神感応者:テレパス】【メンタルフィールド】(脳波チャンネル)

 男装の少女が杖に地面を叩いて、己のチャンネル切り替える。

 

「こんな風に、チャンネル合わせるのは久しぶり、呟かれても鈍らないでよ冒険者」 

【男装少女】【使役闘争士】【観の眼(偽):視覚的取得】

 世界を写し取る仮想の天球儀、そこに映る情報を言霊に変えて伝播する。

 "使役闘争士"とは、多数の獣を使役する指揮官的な側面も持つ。

 ゆえに状況を観察するは得意である。そういった意味でも相性がいい。

 

 先の若葉の双剣士のスクリーンへの突貫とて、遅れなければと確信があっての突撃である。

 

―――現代では『奏護』(ノア)『預験帝』で通用している。

 "オペレーター"というべき役割(ロール)

 それがこの贈り物の可能性である。

 本来、天性の才覚に加えて膨大な教養、戦術論から心理学を必要とする軍師という役割。

 それを技術を頼りに代替えし、情報処理能力のみで代用させる劣化役職である。

 

 今後、『増殖』(メイガス)はその動向を絵図に描いて(同じ条件)に戦局は進むことになる。

 

 そんな中。

 熱源が動きまわる球体を観察しながら、男装の少女は思う。

 

(昴の為に疵を残して、やれるならやればいいよ)

(翼は隠してる、いざとなってもボクだけでも逃げられる)

【使役闘争士:骨■鷲】【逃走術】【自己中心・逃避】

 少しの間だったが、彼等の徒党(パーティ)は居心地は悪くなかった。

 男装の変人を、踏み込まずゆっくりと歩幅を合わせて歩いてくれる。良い人たち、なのだろう。

 だからといって、ただ自分も仲間の命を懸ける気もさらさらなかった。

 

 全ては、天秤が慈悲深すぎる彼女の為に。

 国の剣である騎士補佐にあるまじき身勝手さに、一人勝手にごちる。

 

(……にしても、凄い。欲しいな)

 儚紅の少女をちらりと見る。

 珍しい精人、特異な技能、どう考えても中精霊に比例せぬ特異な精霊(レア)である。

 精霊術師としてのサガから、少し欲しいと思ったが、おくびにも出さない。

 

(どこで拾ったんだろ、こんな子)

【この糞みたいな世界】

 昴の為に、魅力的な力だ。

 おそらく、精霊術師としては己が格上、そもそも制御下にない強奪は可能ではある。

 思い付きを塗りつぶす。多分、己が嫌う"この糞みたいな世界"と同じになると思うゆえに。

(やらないけどさ)

 やったら首が飛ぶだろうなと、少女には珍しい冗談めいた感傷(思い付き)に戸惑い。

 少女は少女の都合に全力を尽くすのである。

 

 

 

 

●●●

 

 

 

 

 

 場面は切り替わる。

 

 

 

 

――――【増殖】(メイガス)、最前線にて。

 

 

 幾何学文様を浮かべた歪な大蛇に、それぞれの鎧をまとった三様の冒険者の影が迫りくる。

 その怒涛の足音が、行進が半密封されたドームに響きわたる。

 対して。

 

『黄昏ノ碑文』【世界樹ノ喰蛇】【領域作成:禍々シキ波】【超再生】

 そこにあるは魔王級『碑文八相』が特性、"禍々しき波/投影精霊"。

 確固たる効率のいい中心核(コア)を持つ彼らの性質は多少の損傷など、代替えは容易く無視してしかるものだ。

 

先に空戦にて追い詰めた"蒼天"―――

 電脳に刻まれた。"翡翠の天使"を想起させる、この場で一番の脅威を排除せん訴えかける。

 『腕輪の担い手』といえど、地に縛られる羽虫が如く、あの程度の魔法剣がなんだというのか。

 炎刃に引き裂かれた蛇尾を再生し、くねらせて力場に再び飛翔せんとするが……。

 

『飛翔―――不可、半重力場生成、遅延―――』

 機能の通りにマナは集まる、しかしそれが形にならない。

 不純物が混ざったように、喰い合わされるように埋め合わされない。

 

【蒼■】【精霊術:Lv2/5】【呪印術:甲架炎印】

 観測すれば、縄の様な何かが傷痕から伸び廻っていた。

 焼き裂かれた疵痕から鎖の如く伸びる"紋様"が伸び、結ばれているのがわかるだろう。

 そして結び目が増えれば増えるほどに、その炎の熱は増し虫食いは拡がり、封は重くなる。

 

 解析はすぐに済んだ。それは塗布に芽吹いた小精霊の群れ、文字通りの生きた呪い(まじない)である。

 若葉の双剣士の固有魔法、属性値(オド)の精錬に昇華しつつある【蛍火】。

 本来、【精霊術師】にとって小精霊(コモン)は何の役にも立たないのが常識だ。

 それを繋がり燃え続ける"群体生物"として、増える本能を術利へと転化させる。

 

 たかが小精霊の群れ、その気になれば"紋様"は容易に解ける。

 いや『八相』が演算能力で取り込める、ただそれは再構成を還元を伴う疵を拡げると同意である。

 

 

「ぶっつけもいいとこだけど仕込めた、僕の"呪印術"(ウェーブ)……っ!」

 呟いた声が響く。

 若葉の双剣士がその愛剣に手を添え鳴らして、焼き付いた己が炎に"共振"し伸ばして繋げた。

 そして先駆けの勢いのまま最前線、荒ぶった呼吸を引き戻して怨敵の反応に構えている。

 

「知ってる。この手合い、"マナ喰らいの風船野郎"とは何度も何度もやりあってきた」

「純粋さが、周囲に対する支配力がそのままお前らの不死性になる」

 それは精錬においては手軽な『魔具』の発達に廃れてしまった伝統の掘り返しだ。

 本来、"調合塗料"によるマナ誘因、オドを放出する経絡の補助の方法論。

 しかし、同じマナの誘因と言ってもこれは逆、"在るべき"を押し付ける紋様である。 

 

「ただの精霊なら斬り裂いて汚せば死ぬけど、お前らは死なない」

 彼に確信はないが、ふらっと遭遇した野生の"永遠戦姫"(エターナル)にぶち込まれた慣らしだけの『手印』が、彼女の手管に似るのは必然か。

 それとその源流、『高山都市』にて学んだその手段、慣らし実戦でやっと形を結んだ。

 

 現在、"呪印"を真っ当に伝えているのは。

 歴史と伝統に縛られ時代に取り残された部落、文明と科学に淘汰されていくだろう古い人間達。

 マナに染まりやすく、印と呼ばれる指の動きに身体さえ組み替える体質の桜皇人。

 はたまた、人に限らず言えば聖錬北部、根絶しきれぬバケモノ"ビーストマン"。

 『魔具』自体を再現し、人類上位種たるポテンシャルを倍増する、例外たる竜戦姫(テイルレッド)位である。

 

「理屈は分からない。だから、こうやって工夫する」

 汚り、食む、群体小精霊の集まりだ。生きる、成長するという我を押し付ける。

 『精霊巫器』たる奏でる音叉の供に、傷痕から網掛けの青炎が伸びて結ばれていく。それが交わるごとに強制力は強固になる。

 彼は精霊の類を効率的に殺す。虫食いの術、初歩を既に手にした。

 

 驚く事ではない。むしろ遅い位だろう。

 どんな理不尽であっても多少の足がかりがあれば、この世界の逞しき雑草なら適応するものである。

 

 

『―――邪魔ヲ、腕輪ノ担イ手―――!』

「こっちを見たかそれで、いい!」

 碑文八相たる虚ろな仮面が、若葉の双剣士を捉える。

 これでは、せっかくあと一歩までおいやった恐怖に近しき"蒼天"は追えない。

 浮かぶ"葉の端末"(メイガスリーフ)の幾つかが焦点が彼を追う、術師を殺すその簡単な解決を理解した故に。

 

【新緑の雫腕:増殖の波動】【碑文巨体】

 『増殖』(メイガス)は歪な腕に力場を纏い振り下ろした。

 同時に『増殖』(メイガス)に付き従う"葉の端末"が硝子音を響かせ、焦点が双剣士を追う。

 巨体から繰り出される拳に砕かれた鋼の床板が剥がれ散弾に、大地を揺した。

 

「リコ、案内(ガイド)よろしく!」

【舞武】【ダンシングヒーロー】

 対して、若葉の双剣士は全力で後退する(バックステップ)

 呼吸に同期して回す術を知るとはいえ、未だ常に術と技を並行して動かすには未熟である。

 『精霊巫器』の演奏、結び目を編む役割を手放して回避に集中するだろう。

 

【虚空蔵の面】【新緑の閃光】・『相鉄の双剣』【精霊術Lv2/5:デクトーマ(ブリンク)】【狂羅輪廻】

 互いに同じ先々に思い描く、本命は追う視線により放たれる閃光である。

 双剣士は、息を吐く。腕輪による足場を踏み込み。

 そのまま細工籠手越しに滲ませ、腰にマウントされた相鉄の双剣をぶん投げた。

 

 "閃光"が慣性に置いてかれた抜け殻の炎剣を蒸発させる。

 若葉の双剣士は間一髪、余波に辛うじて躱した。

 

 伝心に、その予測線は把握している。閃光は光故速度と直進性にずれに弱い。

 マナに寄って世界を観測している『碑文八相』という存在には、こういう誤魔化しが効くことは散々に知っていた。

 

 言うほど容易くはない。一瞬の躊躇に飲み込まれただろう。

 だが、それでもそんな手妻が通じるは、一手限りである。

 

『回避、次弾修正、三点射ヲ―――』

『黄昏ノ碑文』【適応進化思考】

 その数、三葉、三点射(バースト)。実践にて学習したおおよそ躱しにくいだろうと人の真似事である。

 『増殖』の(あなざ)で示すとおりに手数が違う、次手にて電脳による未来予測に修正される。

 『増殖』(メイガス)にとって、その閃光は手先の一つに過ぎないのだから。

 

 ただ一手、躱す為、馬鹿正直にリソースを吐きすぎなのだ。

 『腕輪の担い手』であるならば、数だけ揃った羽虫を壁に破滅の吐息を撃ち込むタイミングまで身を潜めるべきだった。

 そう評価する。英雄に似て非ずの愚かしい特攻、だから死ぬと嘲笑う。

 

 しかし、そこに割りこむ影があった。

「さすが、こういった類には手が早いな」

「言ってる場合か、明らか仕掛けが早やすぎんだよ!!―――あぁくそもう一歩退きやがれ!!」

『黒蜘蛛の鎧』【暗黒剣】【重■装】

ドっン!

 突き飛ばし、そこに割り込むのは黒鎧をまとった剣士と、金糸髪の槍使いである。

 しかし鎧など関係ない、その閃光は鋼など貫通して余る熱量、それも三点射(バースト)である。

 

「ここで躊躇うなマーロー!気合で、塗り潰せェ!!」

【アラウンドカバー:属性有利限定】【是空】【暗黒瘴気】

 黒剣士は活を入れる。剣を振るったそれは魔法剣か、その動作に溢れ出す漆黒の霧を纏って構える。

 純人種の範囲内の出力、纏めて、死ぬだろう。

 

ュバァ……っ!

 

 しかし、その当然の未来予測は、簡単に覆された。

 あれだけ脅威だった閃光が鈍い音に搔き消された、否、雑に放出されただけの霧に飲み込まれた。

 

『!、解析、類似例を検索』

【アナライズ】

 これがマナによる疑似光であったなら、強制力比べ(塗り合い)が発生しただろうが、これは集積増幅した物理光である。

 相性、純粋な物理現象による光、文字通りの光速実現の反面、非常に干渉されやすい。

 

「あのガキが推測した通りか、ふん、なかなかやるじゃねぇか」

―――【セージ】【魔術知識Lv■/5】【顕学を継ぐ者】

 『黒蜘蛛の鎧』が放つ、"闇・水"という属性、光を喰うには十分すぎる。

 珍しき属性間での相関関係、一度見たそれの性質を分析して、彼らに語ったのは森の調査にて同行した賢者の卵たる幼子である。

 

 この世界におけるマナと呼ばれる資源は"物理法則のルールを捻じ曲げる"。

 "土属性"は重力を捻じ曲げる、"幻属性"は質量の保存を効率的に無視する。

 

 そう、極端な例で行き過ぎた異能者が操る"虚属性"は空間、よもや時間すら意のままに捻じ曲げるのだ。

 恐ろしく歪な、この汚染されつくした金魚鉢の世界である。

 その前に本来、光無きを現すだけの"闇"が容易く光を喰う現象など、当たり前に起こりうる事だった。

 

『闇ノ混合属性と類似―――』

 多少の硬直

 解析に掛かった時間を、それは数秒にも満たないだろう。

 

「呆けてる場合か、"魔王級"」

ダッ!!

【阿修羅姫:修羅の気質】

 黒鎧を追い抜て、強く踏み込む靴音が重なる。

―――それは理不尽に対するこの世界に蔓延る雑草達にとって、きっと夢幻(むげん)の時間だ。

 

【槍舞士】【陰陽術:Lv2/5】【固有術:森】

 金糸の女槍士は、東方の流儀の如く片手に印を結ぶ。

 先に振り降ろされた拳にて、鋼の床板が粉砕され"耕されている"。

 その露出する僅かな土気に成長する樹木、

 そして、突き破らんとばかり成長する勢いに則り踏みつけ、反作用に宙に躍り出た。

 

「滑車を廻そう。私にはお前に恨みなどないが」

『グランシースピア・改』

 槍使い金糸髪の女は、魔力撃の妙手である。

 彼女が使いこなす魔具は、元より人の身にて大海の自由を得んとした機巧槍である。

 それが合さり、水をかき分けるスクリューの如く魔力撃の成型、腕を斬りつける遠心力と反作用と推進に砲弾となる。

 

 浮遊感、刻々と迫る致死と活路が相混じった緊迫に笑みがこぼれる。

 カルデニアという冒険者は、どうしても戦うのが好きだ。

 依存癖という本能を持つ奉納巫女、戦う理由と根を張る場所を得た彼女は止まらない。

 

 カシュン。

 変形と供に、魔力撃の尾に体を弾き出される。

 

「どこまでもやろうか!君に併せるこそ踊りがいがある!!」

【凛として月華の如く】【魔力撃・改】【ダンサエスパレス】=【奥義・桜花参漣(オウカサザレ)

 実現するのは槍使いにとって最威の魔力撃、ただし"三連撃"その全てである。

 魔力撃の成型による推進、波立つ『領域』の負荷を。

 障壁に殺された勢いを遠心力を、連撃に巻き込まれた腕の反作用に都度加速する。

 

 これなるは、修羅の舞。

「桜花―――」

ざんっ。

 遅れて、『増殖』(メイガス)が先に振り下ろした拳が腕が、幾筋も大きく削り飛ばされた。

 

 独楽は止まらない。推進力に不気味な仮面の目前迫る。

 虚ろな目線に映る。羽虫だと思っていた、この世界に根付く雑草の大きさが否応なくねじ込まれる。

「―――参ッ漣!!」

 三連撃の締め、遠心力が乗り切った横薙ぎ、反動に女槍士も大きく後退する。

 障壁(プロテクト)に阻まれながらも、その虚ろな仮面を大きく削り取る。 

 若葉の双剣士より洗練された極集中、機巧槍の変形音、長柄のしなりに、風切り音が合一した瞬撃の極致だった。 それを成したのは純粋な武威(カラテ)

 あと、奉納巫女としての本能と、修羅の気質に上がりすぎたテンションである。

 

「―――ッう、迷惑かけました」

「まったくだ。てか、事前に"閃光"がやべぇから、闇属性(オレ)が壁になるって打ち合わせただろ!ガン無視して、こう一番足の遅い"重装"(オレ)合わせる側なんだ、おかしいだろが!?」

「リコが道を教えてくれたから、行けると思ったら体が動いてた」

【狂羅輪廻】

 黒剣士に突き飛ばされた双剣士が立ち上がり、構える。

 

「いいじゃない。うまくいったんだからやるなら先へ先へ、きっとそれが楽しいわ」

「糞が!山からいい空気吸い始めやがって、ひょっとしてアンタも涼しい顔して脳筋(バカ)の類だろ」

「ふふ、そうかもしれない」

【阿修羅姫】・【孤独者の流儀】

 槍使いは反動に仲間の近くに着地し、余韻に残身にくるりと回り、再びその槍を向ける。

 

「本職じゃねぇんだ。俺のカバーが届く範囲から出てあっさり焼かれても知らねえぞ。言っても聞きやしねぇんだろうがな?!」

「ん、努力する」

 そういいながらも黒剣士は金属鎧を鳴らして、悪態をつきながらどこか詰める位置に付いいた

 

 

 

 対して破損した仮面に手で確認し大きくかけた事を感触に感じ取る。

 余りの事態に『増殖』(メイガス)が一瞬、その電脳の動きが止まった。

『―――』

【虚空蔵の面:損壊】

 痛みはない、そんな機能はない。しかし文字通りに面を食らった。

 仮面裏の虚ろな目がちかちかと明滅し、"理解不能"と言わんが訴えかけんばかりである。

 

 先に散々と蹂躙した地に這う羽虫など、本来脅威ではないそのはずだった。

 しかしこれはなんだ、なんだというのか。

 

 "蒼天"だけじゃなかった。湧き上がる正体不明に、突き動かされる。

 

『―――『苛烈ナル萌芽』(メイガスリーフ)、再度投射防御(スクリーン)展開』

【二十四ノ蛇瞳】【新緑ノ閃光】【常世裂き咲く花】

 弾かれるように防衛本能に動き出す、人に例えれば言えば戦慄というべきだろうか。

 英雄ではない、森でも交戦した己を脅かす雑草の気配だ。

 優越はとうに吹き飛んだ、戦闘経験の蓄積に危機感知に電脳の回路が熱く熱く切り替わる。

 

『一斉射、緊急脱出ッ―――』

 頭上にて展開し廻る増殖の種、それぞれの角度に光閃を放ち、周囲を薙ぎ払う。

 その発振体である"葉の端末"(メイガスリーフ)は力場による浮遊の為、干渉に密集して展開できない。

 故に投射防御(スクリーン)とは"新緑の閃光"、最大限の防御手段として妥当な選択だろう。

 鋼が溶断し、溶けた鉄が噴き出す、『増殖』(メイガス)を中心に渦巻きの如く楕円(サークル)が広がるのである。

 

 その火山の如く、視覚効果も威圧も期待した防壁であろう。

 

 本来に必殺の閃光が不自然なまでに、予測されている。有効的な殺傷手段になっていない。

 その要因を解析には至らずとも―――

 ただ容易に通じないことは学んだ、時間を稼げればいい。

 

 自己保存という、本来備わっていないハズの機能が警鐘を鳴らし続ける。

 『増殖』(メイガス)は変容する、適応する、今を乗り切るただそれだけの愚かしさのまま。

 その尾は、疵を分解して鱗を形どる細やかな動きを取る蛇腹へと変容していく。

 

 それはかつて、『死神』(スケィス)が通った昇華への道である。

 だが、死神に互い、決定的に経験が足りない。恐怖への感化は視野を狭くするだろう。

 

ダッ!!

 勿論、そんなこと知った事かといった具合に仕掛ける。

 今更のそれに姿勢を低く、閃光の合間の観測(ガイド)に導かれるままに突っ込む。

 

「それはいい加減、何度も見た蛇頭が!!」

【精霊術Lv2/5:ブリンク】【ダンシングヒーロー】【狂羅輪廻】

 若葉の双剣士は細工籠手に滲ませ空に、インクをぶちまける様に炎振りまき、ギアを上げる。

 そこから幻影交じりに始まる舞舞踏、接手の閃光の到来を想定した幻舞である。

 

 吹きあがる赤鉄など気にかけず、躊躇なく輪廻の狂気に墜ちた者の習性のまま。

 あくまで、怨敵を滅さんと距離を詰めんとした。

 だが。

 

「―――っ近づい」

 故に先のノロマ、固定砲台ぶりと相反する。肉薄する巨大なマナ反応に微かに対応が遅れた。

 接触事故めいた事態を。

 

「まにあっ、え!!」

バッチぃ!!

『精霊巫器:絆の双刃』【魔法剣Lv2/5】【舞武】

 若葉の双剣士は質量差に潰されると、纏い火を共振にて転化しとっさに叩きつける。

 障壁(プロテクト)との反作用に勢いを殺す。

 幸いというべきだろう。別に目的があったかの如く進路に、正面衝突は避けられた。

 

(あぶ、なかった)

ザザッ

 距離にして数十メートル、

 足が腕がしびれる。冷や汗をかくそうでなくては障壁と、質量に潰れていただろう。

 

 若葉の双剣士は似通らぬ挙動に、赤鉄が晴れた先に目を凝らす。

 そこにあったのは。

『―――自己変革』

【増殖(メイガス):ゲンシシンカ】【世界樹ノ喰蛇】【常世裂き咲く花】

 嫌な思い出を想起させる"変性"である。

 長き尾は、先と違って蛇腹めいた鱗に覆われて、何処か艶めいて蠢いているように見える。

 

 推測するに文字通り、その尾は見た目通りの蛇腹となっただろう。

 自然に生態系に学んだ原始的なメカリズムを、自己変容を交えた脈動に高速移動に活かしている。

 代わりに葉の力(メイガスリーフ)場の干渉と尾の靡きを用いた綿密な浮遊は喪った。

 客観的に退化と思えるだろうそれも、その場しのぎに取り入れる愚かさが、それにはあった。

 

『―――形態(モード)定義"蛇行"、常時最適化ヲ実行』

 歪な両腕にはこれが目的だったか、先ほど手放した長柄の石槌があった。

 『増殖』(メイガス)は変容したその歪な身をくねらせた。今やまさしく蛇の如く這いまわる。 

 『碑文八相』は設計通りとは違う、その機能に本能を連動させた。

 

 その変容は、機械的なロジックに考え、高速移動を第一とする。

 優先順位がある、再生にリソースを割り振るのならば、半力場の再準備は後回しである。

 互いに必殺である『紋章砲』の使用は、何としてでも制限しなければならないからだ。

 

『質量、地上戦ニテ打破スル―――』

【超絶魔力】【衝撃ノ槌】【新緑ノ雫腕】

 脈打つ煌々とした紋。

 先とは違い、地上を伝って圧倒するプレッシャーが沸き上がり、長柄の石槌を向ける。

 『碑文八相』"増殖"(メイガス) として己の役割は認識している。

 

 だが、しかしまだだ、まだその時ではないと否定する。

 電脳仕掛けのロジックに苛立ちともいうべき、ノイズが走り続けるのである。

 

 "英雄招来"、まだまだ足りぬ。

 "天を摩す波、その頭にて砕け、滴り 新たなる波の現出す"

 己が権能は大地に根差し、滴る波紋の様に無限の軍団を生み出す小事では終わらぬ、終わらせぬ。

 そう設計されて(望まれて)いるはずだった。

 

 "生きていていいはずだった"

 

「うっぁなにうねうね艶々できっも!?」

「隠し手かそれともなりふり構わずか、まったくどいつもこいつも【魔王級】ってやつは簡単には死んでくれないらしいな」

「その割に、楽しそうだなおい槍バカ」

 遅れて重剣士の女が合流し悪態を、槍舞士がが闘志を叩きつける。

 彼女が遅れたのは先に、『増殖』(メイガス)を叩き落す為、全力に生命力(プラーナ)を燃やして息を入れた為である。

 

「関係ない"侵略者"は殺す、それで終わり」

 どこまでも殺意をたぎらせて。

 ここから、彼ら徒党(パーティ)も囲んで殴れる状況に戦場は加速していくだろう。

 決着はまだつかない。

 

 

 

 

 




長生きしたせいで、閃光をあらゆる方向からメタられる『増殖』くんかわいそう。
浮遊してレーザーぶっぱ厨してたのい、棍棒に持ち替えて質量で殴ってくるゲンシカイキなう。
多分増殖君、ちょっとやけくそ入ってる。

マーローの霧の属性は闇・水混合なので超刺さってます。

リコリスは精人。
それも円環精霊が得意なフィールドで、少しでも技能活かして暴れるとこうなる。
【領域作成】によるセンサーの誤作動は、
接続する機器を簡単な光学カメラと、音響センサーに限る事で回避。
理論上最高適性を持つリコリスは、徒党で唯一の天才枠だったりします。

ガルデニアさんは好き放題やってるので。
【阿修羅姫】からの夢幻羅道コースに将来的に行くかもしれない。
想定以上に修羅の気質強いわコレ。

カイト君、呪印の割合がテイルレッドの調律パンチ(印)!と。
ガルデニアの加護の【菩提樹の献身】で固有魔法が精霊の栄養素になる素質が、強化されてる紐仕様、自覚はない。
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