ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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尺がテンポガガガ。
ゲンシカイキとかやめときゃよかった(おい)


蛇独【増殖の世界樹】

―――『ネットスラム』

 

 

【碑文八相:増殖】【ゲンシカイキ】【超絶魔力】

 

 その姿を変容した碑文八相が一柱、『増殖』(メイガス)である。

【蛇鱗・無限軌道】

 蛇腹に蠢く原始的匍匐移動、それと併せて常に蛇麟の構成自体を組み替えての高速化である。

 がらりと変容したそのスタイルを含めて、対峙する冒険者の徒党を翻弄するだろう。

 

【新緑ノ閃光】

「っいいか!俺がカバーできる範囲にいやがれよ」

 葉の端末(メイガスリーフ)の視線が、閃光となり貫かんとし。

 同じように、その観測の誘導(オペレート)に躱され、属性現象相性のままに黒鎧の男の霧に飲み込まれて掻き消える。

 

「がー!今度は脳筋みたいに馬鹿正直ぶんなぐってきて、いい加減にしなさいよォ!!」

「まともに受けるなと言ってもこうしつこくては、厳しいか!」

 重剣士が竜鱗大剣を振り回し、錬気に強化された身体能力でその衝突にぶちかます。

 それでブレた衝撃を、槍舞士が魔力撃の発露に、辛うじて流した。

 

 『黄昏の碑文』と呼ばれる演算受肉体、疑似的と言えその質量は本物である。

ドォオオン!!

 破壊・破砕音が連続して響き渡る。

 それは原始的な手段に回帰した歪な大蛇が暴れまわる余波だった。

 

 鋼の地を削りながら振り回される石槌、力場を纏った歪な両腕による薙ぎ払い。

 蛇角麟に魔力の巡りを示す紋様が蠢くである。

 更に厄介なことに、変性に取り込まれて葉の端末(メイガスリーフ)は数を減らしているが、少数四ツ伴ってその視線を注いでいた。

 

 若葉の双剣士は、閃光を躱して、次に備える中。

 

「―――くるっ、か?!」

 愛剣を構えて近づく様に踏み出す。

 しかし肩が落ちる。

 空気が重い油を差しすぎた噛み合わない歯車の様に、脚が動かない。

 直感する。

 先ほどの事故のような衝突に、呼吸を乱されたその反動だと。

 

「おもっ」

ダッ

【精霊術Lv2/5:アプドゥ(ヘイスト)不発】

 その違和感をおいて、確かに踏み出す。

 しかし、思い描いた先に脚が届かない。今までの歩みに比べてあまりに遅い。

 狂羅の輪廻に、敵を見つめ続け足元を見失った愚か者の落とし穴である。

 

 この世界の戦士と呼ばれる人種は、比重はどうであれ錬気を使用しているだろう。

 若葉の双剣士のそれは、"錬気法"や桜皇で"チャドーの呼吸"の様に、劇的に身体能力(スペック)を向上させるものではない。

 それは雅樂、生物の身体の中には(ハラワタ)から鼓動、響く音楽に満ちている。

 その誰もが持つ生きるという刻々と移ろう詩、精霊巫器たる音叉で増幅しそれをもってマナに感応し表現するが彼が舞武である。

 反復で見出した精霊雅樂に乗せて、剣技・体技・術理を並行して動かす為の方法論でしかない。

―――並行して意識するは素質()が足りない、沁みついた反射で動くには経験が足りない。 

 故に呼吸のリズムと愛剣の音叉の符牒に、たどたどしく己と世界に表現する未熟者の技だった。

 

 それが崩れた

 その隙に。

 怒涛の土煙が迫りくる。

 

『―――我ガ杖の前に二砕ケヨ、腕輪ノ担イ手』

 距離が詰まる、もはや見慣れた石槌をその手に、あっという間に、忌々しい蛇頭は目前に迫る。

 歪な大腕、脈動する紋様、接近に増長する領域の波動、そのどれもが圧倒的に。

 

(振り下ろし、流すし、かっ)

 相手の出方を見て、もはや逃れることはできないと悟る、待ち構える。

 地を踏みしめ、足を止める。マナ染色に澱む身体に呼吸を深く吸う腑に、活を入れる。

 普段は絶対取らない選択肢であっても、未知数の先を見据えて賭ける外ないのだから。

 

「……舞が、崩れてもッ」

【狂羅輪廻】【ダンシングヒーロー】

 崩れた体勢のまま踏み込む。振るわれる剣、空の律動が、炎の軌跡が空に飾られる。

 既に、彼が用いる細工籠手の装飾に『絆の双刃』を叩きつけて砕かれている。

 不足であっても頼るは己の唯一、歩みの伴に合った流儀のみ。

 

 刹那、薄く広がる、不完全な腕輪の電子装甲が斑のように拡がって。

 

「そんなもので、死ぬかああああああ!!」

『魔晶粉砕』(パ リ ン)【精霊術Lv2/5】【魔法剣Lv2/5:木端美刃】

 彼の礼装である細工籠手の彫金である属性石を砕いて、破片を燃やして(感応して)巻き込んだ。

 所持する数少ない術式、崩壊による極めて一時的なマナ励起を巻き込んで指向性を成形された。

 この魔法剣は、染色された物質をも巻き込む"感応"の魔法剣、体質で"魔力撃"が苦手な体質の彼が、現状応じて放ってる次手出力である。

 

 "魔王級"相手に、正面は勝負にならない。砕片の焔刃、それは迫りくる石槌を無視する。

―――ザァガァ!!

 故に、それを握りしめる『増殖』(メイガス)が指先を狙い削ぎ落した。

 人種の手の構造は器用さを得る為の唯一無二である。

 先に見ていた。『蒼天』が精密さを得るためのその手その指(マニュピュレータ)を、代償となるその脆さを狙ったことを。

 

 追撃が入ればどうせ死ぬ、ゆえに迫る質量物は無視しての苦し紛れだ。

 それでも生死の狭間l数瞬の出来事。

 

『―――ビッ、損傷、制動、不可』

(躱しきれ……っ、)

 結果、その重量に耐えかねて、|『増殖』は破壊の杖を手に零す。

 ずれて落下する石槌。

 ついは、遠心の力を半端に、重力の法則のまま振り下ろさんとした担い手に自由落下した。

 

 自由落下、若葉の双剣士は、視界に映る質量物がどんどん視界に大きくなる中―――

 ステップを、魔法剣の反動に必死に後退して逃れんと。

 

だが。

 しかし、しょせん小細工は小細工でしかない。

 

『―――増殖ノ波動、砕ケヨ』

「っ!」

【碑文巨体】【破壊ノ杖】【増殖ノ波動】

―――ドォオオオンッ!!

 

 炸裂する、"増殖ノ波動"と呼ばれる機能。

 自己の領域である"禍々シキ波"を媒体に響き渡る地属性のよる加重撃が襲う。

 それはたとえて大気にて地震を引き起こす、水面を叩き割る如く"響き"の一撃を成すだろう。

 『増殖の世界樹』が本性を現す際、町を襲った"破壊槌の流星群"と同じものである。

 

 踏ん張りを欠いた彼はそれこそあっさりと木っ端の如く、勢いよく吹き飛ばされた。

 運命的な死を辛うじて、運任せの致死に逃れただけ。

 つまらない局面で頼りにする道具を犠牲にして、なんとか、どうにもならない本来の格の差である。

 

 そしてそれも、無に帰すだろう。

 

『シ トメ ル』

【苛烈なる萌芽】(メイガスリーフ)【新緑ノ閃光】 

 変性の資源(リソース)に多数を取り込んだとはいえ、片手に数えるほどの閃光の発振体は未だ健在なのだから。

 閃光の目線が追う。腕輪の担い手が地に叩きつけた先が最後だ。

 あとはその指先一つで止めを刺せるだろう。

 

 戦場廻る、幾何の余白も許されない。

 

「―――!、っくカバーしきれなかったか」

「え、カイト君まさか嘘でしょ?!」

「ちょおま、何やってんだよ!らしくねぇそんなにあっさり!!」

 白耳の魔術師が複製した光の矢を待機させたまま、黒剣士がその立ち位置を探ったまま。

 硬直する。徒党(パーティ)全体に動揺が走る。

 "ゲンシカイキ"という変性、予想外とは言え彼らが知る双剣士の脚ならば、逃れて然るべき故に。

 先駆けの前提に囲んで棒で叩くよう動いていた彼等は、硬直中に―――

 

 

―――だッ!!

 

「この、やらせるかああああああああ!!」

【蛮族(バルバロス):アマゾネス】【ウォークライ】【錬気法】

 その硬直を引き裂くように、戦場に感情任せの咆哮が響き渡る。

 発信源は大剣を構えた女剣士である。

 感情・本能任せのまま、故にいち早く動く、その姿を竜モドキの鱗を纏いて、乱暴な走法に駆け寄るだろう。

 

【剛怪力】【錬気法:タイタンフッド】

 ただ無策に突撃などしない。ぐらついた柱を剛怪力に蹴りだして、それを囮に叩きつけながら。

 その後を迫る。

 

 蛮族である彼女は天然の錬気戦士、瞬発力で言えば徒党の中でも突出している、出力を感情のまま吐き出すだろう。

 彼女は蛮族、若葉の双剣士とは違う。鍛えた身体を資本に激情がそのまま力として引き出される。

 それは文字通り、巣を荒らされた竜のごとき怒りである。

 

『―――接近、感知』

【テレパス】・【模倣体技:舞武】【錬気法:ドラゴンテイル】

 恐怖により視野狭窄に、脅威の接近に反応した葉の端末(メイガスリーフ)が方向転換して追う。

 そして閃光が放たれた、女剣士に掠る中。

 焼かれながらも、頭に響く道標を頼りに、錬気の竜尾による反作用と相棒の体重移動の模倣に、転がる様に潜り込んで。

 

 そして崩れた体勢のまま、その大剣の輝きが、励起する。

 その竜尾が地を叩く。

「出し惜しみはなしこれで……ぶっ飛ばすッ!!」

【闘牙剣:オーバードライブ】【打ち返し:渾身一打】【蒼火の息吹:精霊感応】

 怒りの眼光が、無垢なる暴君を貫く。

 生命理の剣、無理な体勢からの剣筋に鋼の大地を削り取り、否―――竜尾のアンバックに反動を瞬発力に変えた。

 身体が跳ね上がる、力みの開放の瞬間を勘に捉えて逃さずに放たれた。

 

 たとえて竜の怒りたる一打である。

 

―――バガォォぉお!!

 

『―――ッ!?』

【仮想巨体】【過負荷装甲】(プロテクト)【超絶魔力】

 端末のチャージ中にその剣の破砕力により、"増殖"(メイガス)の月衣を粉砕し、仮想巨体が砕かれ浮かびあがった。

 感情任せのバ怪力、衝撃である。

 偶然とはいえ宙に浮かせて不意を衝く、効果的な割り込み(インターセプト)だろう。

 

 今の『増殖』は、地上戦特化の蛇腹への変性故に、浮かされると途端に機動力を喪うのだから。

 

 あがく、宙に虚空に腕を振るい払う。

 在庫処分に白耳の魔術師が放つ、幾筋もの光矢(レイザス)が乱雑に飛んでくるのを非効率に防ぎながら。

 学習した原始的なアンバックに一刻も早く、着地しようと藻掻きあがいて。

 

「マジかよあの馬鹿力、首の皮一枚ってところだな前に出るしかねぇか!!」

「すごーい!ローズちゃん、じゃあこうしよっか、来て風鳥(クラケー)ちゃん(≧▽≦)」

『―――ッきーっ!!』

 徒党(パーティ)の陣容が切り替わる。

 中衛である遊撃手が欠けた。割と徒党における火力担当でもある彼がである。

 

 重装の黒剣士がさらに前へと出て、空いた陣形の穴を埋めんとして。

 白耳魔術師は複製した光矢を適当に投げ捨てた後、風の中精霊(クラケー)を呼び出して精霊術に切り替え風を巻き起こす。

 

「封ぜよ廻せ涸らせ、風の中にその枝を手折れ―――"暴風注意"(リ・ジュローム)♪」

 白耳の術師が口笛を吹いて、鳥形身たる己の使役精霊にお願いする。

 言葉を交わし、身体を重ね得るそんあ例外を除いて。

 優れた精霊術師は実践において手を割かぬようこういう手段を用いるだろう。

【魔術知識Lv2/5】【精霊術】【旋律詠唱】=【三章級・暴風注意】

 『碑文八相』がキャンパスたる、この領域においてその風はあまりに非力だった。

 その仮想の巨体を持ち上げて、大蛇が着陸する、僅か数秒を遅らせただけかもしれない。

 

 それでも、刹那が金の価値を持つ修羅場において、歯車を組み直すには十分すぎる。

 

「―――その風、もらい受けるぞ」

【鬼人八部衆】【人魔身】【修羅道】

 冷たきつぶやきとともに、背後で巻き起こる。

 それは白耳の魔術師の手繰った暴風を巻き込んだマナの反応である。

 

「斬り穿て」

きぃん

 その刃は『増殖』(メイガス)、その歪な大蛇を風の流れのままに切り裂いた。

 歪な大蛇を首を切り裂き、幾多もの蛇鱗が舞う。

 

「……っち、やはり首を飛ばすには足らんか」

【蒼天剣技】【魔法剣Lv3/5:マニブランス】【風の担い手】

 魔法剣の余波に大気がブレる。震える刀身を収めて様子をうかがう。

 それは烈風一閃、旋毛刈りたる一閃だ。

 精霊術など必要ない。若葉の双剣士が、幾多もの技巧を交えた以上の魔法剣を、一動作で練り出す。

 これが差、人魔身(ナイトメア)が纏う月衣。マナに対する強制力をもって刃と精製したのである。

 

「ええぃ、またあの魔女は隠れたというのが、いっそ派手に動かれた方が気が楽だ」

【修羅道】

 閃光に具足を焼かれたとはいえ、十分な休息をとった"蒼天"が今の今まで動かなかったのは―――

 『増殖』の襲撃に、隠れた魔女(ヘルバ)の動きを警戒していたからだ。

 

 この状況だ、居合わせた徒党たちを怪しかろうと、砂漠に沁みついた万戦の経験から宛にする。

 その暗躍めいた動きに疑心は晴れていない。こちら側だと判断する情報が何一つないゆえに。

 

「先にあいつらに前に幻影を飛ばして、何を吹き込んだ、何を企んでいる」

 しかし、こうなっては動く外ない。

 聖錬が鬼人八部衆(ニアSランク)が一人、『蒼天』の頑固さは筋金入りであるが、戦場に状況を見余る程愚かではない。

 その意識を集中力を戦場に七割、魔女への警戒に三割振りながら様子をうかがう。

 

 その企みに対して、機動力をもって肘鉄を打つために『蒼天』は座する。

 

 

 

『―――ちちチチチ』

【碑文八相:増殖】【ゲンシカイキ】【超再生】=【増殖ノ蛇麟:脱皮】(ウロボロス・リネージ)

 

ドォオオオン!!

 そしてその大質量が墜落し、鋼の大地が砕け煙が立ち込める。

 

 『増殖』は切り裂かれたその指を、その首元を傷痕ごと剥離させ―――

 まるで抜け殻を剝ぐ脱ぐように、内側から埋め合わせる。

 先に若葉の双剣士に撃ち込まれた、"呪印"に対する対抗手段でもある。

 文字通り古くから不老と不死に象徴される蛇の如く再生能力。

 鱗の様に捨ててしまえる代替えてしまう、古き生物的機能を獲得していた。

 

【虚空臓ノ面】

 不気味な眼光がひかる。

 再び、その杖を手に取って。両腕に構え戦闘態勢に入る。

 

 組み直した前衛が、その少しの休息に集まり戦場の緊張感に乾いた口先を慰める。

 

「ごめ、チョット一休みさせてくらくらする」

「おう。にしてもまたけったいな再生能力手に入れやがって『蒼天』の奴も"魔女"(ヘルバ)も高みの見物か、嫌みな奴等。で、どうするよ槍バカ」

「決まっている。あの蛇尾に集中して切り落とすわ」

【凛として月華の如く】【阿修羅姫】

 情熱と冷静との間に、その眼を揺らして経験と修羅の気質から、その殺し方を推測する。

 乱れた長髪を束ね直して、槍を構え直して覇気に刃を磨いた。

 

 彼らの徒党(パーティ)で治癒能力を持ち合わせるのはガルデニアだけだ。

 状況は負傷1、中衛欠けである。

 受け身はとっただろう、根を張ったその強さを信じているとはいえ、焦りもある。

 純人種は脆いのだから、薄氷の上を踊る狂戦士であればなお更に。

 

「先ほど宙にひっくり返してあれが機動力の要だとわかった。あとは嬲り、刻み殺してやる」

「おぉこわ、あまり切羽詰まってミスるんじゃねぇぞ」

【暗黒剣】【ソードマスタリ―】【重装技】

 応じて黒の剣士が長剣と暗黒鎧を鳴らして。

 彼が戦う理由は義理と納得の為だ、粗野な性分な己は戦うのみが生きる道だ。

 ただ戦う場所を選ぶ。反面、譲れないものはない反面冷静である。

 

 それとは別に。

 

(―――じゃ、ボクが動くから)

(―――そのデカブツの諸々は、全部そっちでなんとかしてろ冒険者)

【メンタルフィールド:テレパス】

 その白熱する彼らの頭の中に、男装の少女の声が響いた。

 意外なことに、今の今まで冒険者任せに観測者となっていた男装の術師が動くらしい。

 

 熟達に至りつつある彼等にはそれで、やることを察するに十分だった。

「詰めるわ」

「おうよ」

【孤独者の流儀】・【阿修羅姫】

 機巧槍が打ち鳴らして蛇鱗を削り流して。

 暗黒剣が質量を合わせて溶かし、突き飛ばすだろう。

 

 暴力に回帰した大蛇との衝突が加速する。

 

 

 

●●●

 

 

 

 時間は巻き戻り、一方、後方にて。

 

 前衛、ドームの中心から破砕音、轟音が響き渡っていた。

 

 

「―――!」

 仮想の"天球儀"に映る影が、何かが吹っ飛ばされたのを把握した。

 儚紅の少女の投影する、天球図形にも多少ノイズで乱れていることで動揺がわかる。

 

くいくい。

 男装の魔術師の袖を引かれた。

 それは、その隣で仮想の天球犠を回していた精人、儚紅の少女である。

 

「……あ、の」

【偶像乙女】

 儚紅の幼子にずっと見つめられる。

 くすんだ金の瞳は、少しばかり涙目になって訴えかけている。

「……ぅ」

【人見知り】【フェイト】

 それだけで言いたいことは分かる。

 ただ、人見知りに言葉にならないのだろう。

 

(誰かがやられた。あの天球の反応だと双剣士(カイト)、か)

 世界を嫌悪する少女は、ある程度安全圏で、出来る事をするつもりでただ観測し傍観していた。

 目の前の『増殖』(メイガス)と呼ばれている"大蛇"は脅威である。

 その為に使える駒があるうちにその重さを削る。

 立場に縛られた愛しき人の天秤に乗る前に、全てはそのために。

  

 しかし。

ぎゅ

【サイキッカー】【メンタルフィールド:テレパス】

 男装少女は仮想の天球儀を見て、息をのむ。少しだけ、胸がざわめいた。

 久方覚えのない、心音のざわめきに、少し強く杖を握った。

 

(きっと久しぶりに―――)

【下等医療技能】【癒し手・感応】

 今の状況で救護に回れるとしたら己だけだ。そんなのどうでもいい事のはずなのに。

 気にするべきは損切り、ただ己の逃げる為の引き際だけである。

 男装少女は繋がり、戦場の熱に充てられたかもしれないと自省する。

 

(チャンネルを広域に繋げたせいだ)

 彼らの徒党とは短い付き合いだ、そしてそれきりになる筈だった。

 たとえ姿を偽り、性を偽り、使役者しての手を隠し、無口にぶっきらぼう様に振舞おうと。

 そういう相手だと、甘えていいような距離感に流して接してくる徒党だとしても。

 

(だから、違う)

 だからといって、この心臓の鼓動は自分の物ではないと放り投げる。

 

【スラム育ち】【この糞みたいな世界】【汚れた体】

 この男装の魔術師は腐った境遇に己も、賢しく(さかしく)生きているつもりの人魚である。

 スラム育ち、己の血の境遇から、欲望の醜い部分は知り尽くしていると思っている。

 だから組織に所属しても、なお一人でいる。

 それが負債(ツケ)と気づかぬまま、特別扱いに浴びせられる嫉妬にも無関心に、ずっと2人で生きていけると思っているのである。

 

(ぼくがそんなに、愚かしいもんか)

【比翼の鳥】

 当たり前の心の動き、真っ当に育っていない故の、未熟を自覚できない。

 自己本位も少女の本性だが、ゴミ溜めに生まれて痛みを逃避してきた結果である。

 唯一の愛だけあればいい。

 たとえ、口ではそう嘯いても、それで満足できる人間はいないのだから。

 

 だから。

 この鳴りやまない鼓動を……。

 

「―――ん、仕方ないか。ポチ、匂いを追って」

【ペルソナセット:マインドサイン】

 異能者としての切り替え、居心地の悪さに危険性を打算に塗り直す。

 若葉の双剣士は熟達だ。まだ、あの災害の重さを削れる。

 全て、己の愛の為と誤魔化しながら動く理由を探した。

 

「ここで崩れても得るものもないから、行くよ"ボー"」

『―――カカカッ!!』

【イジワルポケモン】【コノハナ】【遊撃手】

 男装の少女の古風めいたローブの内側から、モンスターボールを投げる。

 そこから解放されるのは、木の精のごとく小人、木々の記憶に学び風を味方につけたモンスターである『ダーテング種』の中間体である。

 

 解放された小人は使役者の肩に留まり、流れる風に状況を察して指示を待つ。

 使役者のその指さす方向を見つめて―――指示を待つ。

 

「"当てろ"」

「カカッ!!」

【使役闘争士:四式六令】【タネマシンガン】【天狗が如く】

 使役闘争士が使う”四つの指示と六つの指令の体系"。一言、単極に指示を伝える。

 彼らが用いる種族を越えた信頼を結実させ、力を引き出すのだ。

 小人はそれに従い、頬を膨らませため込んだタネを周囲に漂う葉の端末(メイガスリーフ)に打ち出した。

 

【宿り木の種】

 それは葉の端末(メイガスリーフ)命中し、砕けてそこから根を伸ばす。

 本来ならただの拘束手段に過ぎない。

 今回に限って物理的に、『増殖』が閃光の収束点を塞ぐだけのものである。

 

「ありがと」

「カカッ」

シュン!

 肩の小人に礼を言って、再びモンスターボールに収める。

 『増殖』が閃光、あれだけは何とかしないと、己に危害が及ぶのだから。

 

(―――これで、これで少し目立っても、大丈夫。でも長くは拘束できない)

 いざというときに翼を焼かれてしまわぬよう、隠していた対処の一つである。

 精々が、その収束点の熱に蔓が完全に焼けてしまうまで。

 

 その間に、救護にする、それしかない。

 

「ん、見つけた」

「バウッ!!」

【グラエナ】【ハイエナの嗅覚】【はやあし】

 頼れる相棒たる鬚犬が鋼の悪整地を嗅覚にたどって駆け抜ける。

 背に激しく揺れながら移動した。

 

 崩れた瓦礫の影に横たわって、そこにいた。

 その様は外観には無事に思える。

 何かしらの手段でそのままの勢いで叩きつけられはしなかったらしい。

【舞武】

 痕跡を見るに、何度も叩きつけられた際の受け身で衝撃を減らした跡が見える。

 

 ただ、意識はないらしい。

 心を許していた鬚犬が、頬を舐めて心配を示す。

 

「起きて」

『応急キット』【下等医療技能】【癒し手・感応】

 若葉の双剣士の近くに寄る。その頬を少し叩いて、手を取ってその脈を確認する。

 出血に包帯を巻きつけて結び。

 

「呼吸は正常だから、骨は折れてなさそう、知らないけど」

 男装の少女は、そこまで高度な医療知識は持ち合わせていない。

 元々、使役獣の治癒をする為の経験則を、学び直したものでしかない。

 

 だから、劇薬だよりだ。状況に間に合わせればそれでいい。

 

ざしゅ

「……っ、特別だかんね」

【感応体質】

 刃物で手の平を裂いた、血が滴る。

 血を分け与える。一時的な手段としては有り触れたものである。

 

 

 そう、時間も立たずに。

―――若葉の双剣士の瞳をゆっくりと開き、焦点が結ばれている。

 

「……つかさ、くん?なんで」

 何処か、熱に呆けた言葉だった。

 若葉の双剣士が意識が振れているらしい。だが、そんな事は関係はない。

 

「……いっつ、なんでここは」 

「さっきカイトがあの大蛇の槌に吹き飛ばされて、この様だよ。まだ、戦っている」

 捲し立てる、細かに説明する時間はない。

 弱気になっていては困る、速やかにその先に見えた闘争心のまま、戦場に復帰してもらわないとならない。

 安全圏から出て無理をした、その割にあわないのだから。

 

 だから

"大蛇"(あれ)を滅ぼすんでしょ。大口叩いといて、その程度?」

 男装少女は、どこか挑発的に煽り立てた。

 

じじっ、

 何処か怖気が走る。

 しかし、それは必要のない事だったとすぐに悟らされる。

 

「あぁ、そっか―――なら戦わないと」

【狂羅輪廻】

 立ち上がる。

 何処か欠けた呼吸が揺り戻される。

 それはオドの励起に汚染された、反動染色を抜く為の脱力の所作(リフレッシュ)である。

 

「全部全部全部、崩れる前に」

 既に若葉の双剣士は、『大蛇』が暴れる様に焦点を合わせた。

 展開される電子装甲、六華の花弁に形どられた指先に、幾何学文様の装甲が彩る。

 

「―――すぅ」

『六花の弓』【レンジャー】【精霊術】

 花開く六花の弓。

 呼吸によるセットアップ、専心の手順、標準指先に軸は固定、弦を引き絞る。

 弓において未熟な彼が用いるそれは、まる瞑想の如くだった。

 

(どうなってるのこれ、ありえない。成り立ちからおかしい、精神干渉……??)

 対して、男装の少女は臨戦態勢の速さに、ドン引きである。

 痛みはあるだろう、無理やりにカンフル剤に動かしてるようなものなのだから、

 それを全く意に介していない。

 

 瞳は心を映す鏡だという。

 

 血を分けた感応者、心を覗き込みうる、異能者である彼女にはわかった。

 それは贋作の復讐心(イミテーション)だ。

 故に、しかし、だからこそ若葉の少年の意志力に磨かれ純粋にそこにある。

 それゆえに深くもない、透き通っていて純粋でもあるガラス玉に例えられる意志の発露だ。

 

 どこまでも純粋である情熱を―――。

 

(―――少しだけ、きれい)

 濁った濁ったそれは見続けてきた故に、きれいと感じてしまった。

 男装少女がその異能の毒性を開花させるのは、無関心に感受性を殺していたからだ。

 世界は嫌悪しつつも、その孤独の水底は引き上げられている。

 

 少女は、ゴミ溜めに生まれて汚泥に犯され、賢く泳げてるつもりの愚かな人魚だった。

 それを自覚していない。

 

 少女は、生きているのだ。身の程知らずの愛を抱えているのだ

 少女にも避けられない、積み上げた負債も含めて、逃げらない試練が訪れる。

 自身の身とそれを取り巻く閉ざされた世界のみを尊ぶ少女に。

 訪れる知らない大海(せかい)に良きに転ぶか、まだ誰にもわからない。

 

 




 カイト君、狂羅輪廻の突っ込み癖で、またぶっ飛ばされてる……。
 いい加減長すぎる尺がまた伸びるからやめて(切実)
 今回で増殖君追い詰めてたはずなんです、なんでどうして。
 狂羅のくせに防御スキルが乏しいから見切りとかほしいけど、
 修羅場ばっかで習得する程多様な相手との経験が付かない。
 
 GM監修でマイナススキル減ったおかげで、
 相対的真面ムーブする司君ちゃん。
 【自己中心・逃避】と【元・罪人】が消えたのが大きい。
 ただ困ったことに、司君のまともになればなるほど弱くなるんですよね。
 シート作ってた時に想定した運用がほとんどできない
 これからどんどん弱くなるから、六相の時は仲間作って頑張れの方向かな。
 
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