ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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新鮮な三次創作にテンション上がってきた(ブースト)!


EXコミュ【応竜】

聖錬南部。

 

―――【田舎町:ラインセドナ】

 

 『増殖の氾濫』と呼ばれるスタンピードを経て、

 聖錬南部に多く拡がったそれは、この地にも波及しており、近隣の村との交通の回復に復興にと多くの人足が求められ慌ただしく動いていた。

 その繁忙期が収束して、また一月の時が過ぎたのである。

 近郊で起きたその大騒ぎにかかわらず、町の様子は既に平静を取り戻しているだろう。

 

 天気は、どこまでも澄み渡る快晴である。

 

 久方ぶりのこの平穏な時間に、彼らが徒党(パーティ)はどうしているかと言えば

 『紅衣の騎士団』の好意から、先行の調査依頼も併せて、まとまったお金(ゴル)が入ってきた。

 それこそ雑多な冒険者にとっては、半年は遊んで暮らせるような金額である。

 それで少しばかり、時間を余暇に回す余裕ができてきた。

 

 その使い道は徒党の中でもそれぞれだった。

 カルデニアは、古巣である九十九機関へ様子見ついでに里帰りするらしい。また献金次第で保管されてる資料も閲覧可能とかで学びなおしてくるとか言っていた。

 ミストラルは、それを元手に今回の市場に溢れた、魔物の素材を仕入れてお得意に卸すらしい。

 マーロー・ディアスは、今回の事変で討伐された『暗黒剣』と相性のいい生体素材である"王蟲"(オーム)の殻を鍛えた剣を調達するらしい。

 

 

 そして、一方若葉の少年はというと。

 

「ふはははー久しぶりだなー!いい目をした人達よ。むむ!もしやその目っ、もしや試練を乗り越えた目をしておるな!」

「やっほー、闘技場以来かしらね。久しぶりー!」

「ええ、お久しぶりですピロシさん。もうこっちに来てたんですね」

【半籾人】【専用BGM所持】【愉快痛壊】

 闘技場以来の知古、相変わらず騒々しい気配圧を放つ、黄金の鎧の大男が目の前にいた。

 若葉の少年は懐かしさを覚えるような。一度見たら忘れられない印象的な声と姿に苦笑する。

 それこそ明らかにこの大男に反応して、何がなくとも通りすがりに周囲の視線が集まってるのがわかるくらいだ。

 

シュポポー!

『蒸気重反鎧』

 勿論、この特大の変人はそんな周囲の視線は気にも留めずに。

 その特徴的な黄金鎧から機関車の如く蒸気が噴き出して、その興奮の程を表す。

 

「わっはは良い事である!さて、今回は吾輩に仕事があるという事だったな!」

「うん、ちょっと家族が増えたからさー。住居の改築を手配してほしいのよ」

「えーと、予算はこれくらいかな、少し余裕ができまして」

「おー、それはとても景気のいい話であるな!!」

【錬金術】【建築知識】【デザイナー:職人の伝手】

 この大鎧の男は、それだけで食べていけるだけの余技を身に着けた副業冒険者だ

 器用という言葉とは程遠そうに思える見た目だが、人は見た目に寄らない事を体現する証左だろう。

 

「この鈍き疾風のドーベルマン、見事にその希望をかなえて見せよう!さりとてよい目をした人はどのような改装が希望なのだ?」

「えーと、宝石の身体を持った中精霊が住みやすい環境が欲しくて、水属性の子だからここら辺にその住処にちょっとした池と寝床を、あと―――」

 

 家畜の世話と同じだ。生物を迎えるのだから、相応の準備しなくてはならない。

 戦力として期待するなら尚更、本来精霊は自然に生きるものだ、そして活きるものだ。

 調律器(ハーモナイザ)の存在もある。精霊にとって町の中はいずらい環境だ。

 だから自宅の庭に、池を作る事で住む場所を作り出すついでに、自宅の改修を依頼していた。

 

「なんだかんだ仲間の拠点の出入りも多いからねー、改めてとばーんと思ってさ」

「ほうほう!仲良きはいい事であるな」

 徒党に帰属意識もあるか、最近、拠点を構える彼らのペアの以外の出入りも多い。

 ガルデニアは部屋を借りて基本ここで寝泊まりし、庭に小さな庭園を構えている。

 ミストラルは"自由に読んでいいよー"と好奇心のまま集めた保管しきれない本持ち込んでる。

 平時では『精霊巫器』の中で、眠ってばかりだったリコリスも、最近独りで顕現して誰かについて回って揺蕩っている事も多くなった。

 

「うむ!まっかされよう!吾輩の知り合いに風水術師もいる、水脈を引っ張る事もできよう。わは!夢がひろがリングだ!」

「……ちゃんと上の許可は、とってくださいね?」

「勿論だともいい目をした人よ!この猛き貧者のイーグルマンに抜かりはない!」

【愉快通壊】

 相変わらず勢いのままころころ変わる微妙な自称に、苦笑しながら。

 

 

 

 

●●●

 

 

 

 そんなこんだがあって、それを任せて。

 相棒、ローズは力仕事に人足を減らすぞと、改築の手伝いに残っていた。

 一方の彼は日課の走り込みに少し高い丘陵に上っていた。

 眼下には見える自宅には、手配されてた大工が行き来するのが見えるだろう。

 

「気合入りすぎ、予算は大丈夫なのかなピロシさん」

 なんやら大掛りになったそれを、日々の走り込みを中断して、眺めた。

 

「―――キュー♪」

 未完成だが、その池の中にカーバンクルが跳ねている。

 真ん中には、水晶の塊が配置されてご満悦らしい。

 

 その慌ただしい光景を眺めながら、魔女(ヘルバ)の話を、思い返す。

 誰かが作り出した幻想の物語、仕組まれたレール、その中の配役の話である。

 魔女の語るその全てを信じていない。だが、腑に落ちる事も多々あるのだ。

 

偽物の、復讐心(イミテーション)かぁ」

 『増殖の氾濫』にて関わった、男装の少女からの忠告を思い返して呟いた。

 若葉の少年は異変が一段落ついて、最近は少し考えこむ時間が増えてきた。

 己を突き動かす、この"侵略者"の存在を許容できないという感情―――

 それ自体が誰かに植え付けられた事だとしたら、きっと己はとんだ道化なのだろう。

 

 確かに『死神』(スケィス)と遭遇するまで滅びの夜の記憶も、それこそ故郷の村の事を忘却していた。

「………」

 なのに今や、逆にこびり付いた様に記憶から拭えない。

 そう文字通りに、昨日の事の如く何処までも鮮明に想起できる。

 1年と半年以上の月日に関わらず微塵も忘却できない。許されていないと言わんばかりだ。

 その違和感を指摘されて気が付いて、思う事がないわけではない。

 

「ぼく一人で歩いてきた道じゃない。得体が知れなくても一緒に歩いてきた道だから」

『黄昏の腕輪』【腕輪の担い手】

―――ポーン……♪

 掌を太陽に向けて『黄昏の腕輪』を展開する。

 その特徴的なハ長ラ音とともに、右腕に幾何学装甲で花弁を咲かす腕輪が現れるだろう。 

 己の意のままに動く。未だ、出所不明、正体不明の魔具である。

 

「この気持ちが偽物だとしても、間違ってない。はず」

【正道の歩み】

 電子細工の綺麗な花弁に不安を煽られながら、それでも己に言い聞かす。

 この記憶が偽物だとしても、この目、この耳、何よりこの剣にて感じた事は否定できない。

 直接対峙して知っている。『碑文八相』と呼ばれる"魔王級の侵略者"は間違いなく糞である。

 事実、己の取り巻く世界を、頑張ってる人たちを踏み荒らすクソッタレだ。

 

 故に、これからもその影を見かければ、彼の全霊をもって滅ぼしてやる事に相違はない。

 

 だが、思う。

 底辺の冒険者だ。このままいけば、己はいつかその侵略者との戦いで命を落とすだろう。

 理不尽を笑って呑み込んでしまう器の"親友"(えいゆう)とは違う。

 己が我慢できなかった為に、背負った"負債"は膨らむばかり、身の程知らずのツケはいつか払うことになるのは道理だ。

 この世界は基本的にやさしくはない。だから死後の保証が欲しい。

 いつか信頼できる誰かに保証してほしい。

 果てた後、来るべき終わった後の話を。

 

「こんなの、仲間には頼めないよね」

 こんな願い、"相棒"には仲間には頼めない。

 きっと距離が近すぎる、言いだしただけで、きっと訳もなく傷つける。

 

 この躯を焼却して"終わり方"を、きっと仕組まれた何かを一蹴に伏してくれる誰か。

 そんな都合のいい素敵な人(ヒーロー)がいてくれたら。

 

「―――やめやめ。もうちょっと、走ってこよ」

 そんな都合の良い思考を振り払うように。

 自身の住処が、家が増築されている様を見納めに、また走り出そうと立ち上がって。

 

――― 一陣の風が吹く。

 

「よぉ!久しぶりだな"双剣"の」

「―――?」

【光耀■姫】

 何処か聞き覚えのある覇気に満ち溢れた声がする。

 振り向けばそこにいたのは。

 

「―――なんで貴方が、『ラインセドナ』(ここ)にいるんですか?」

「薄情じゃないか"双剣"の、あの収まり方をタイミングから察するにお前があの"大蛇"を討ち果たしたのだろう?」

「……?どうしよ言っていいのかな。まぁ、否定はしないけど」

【常時破顔】【人類愛】

 瞳孔見開いた双眼、癖ッ毛を遊ばせながら髪を流し、学生服じみた服装にマントを纏った。

 腕組をして堂々と背後に立つ、そんな田舎娘めいた色抜けた少女である。

 先に件の森にて遭遇した、その事変における"戦友"の一人であり未だに正体不明(アンノウン)でもある。

 

「だから薄情じゃないか!散々期待させて事が済んだら見向きもしないとは!」

「ちょっとちょっとちょっと、外聞が悪い」

 若葉の少年は色抜けた少女の勢いに満ちた、誤解を招く言い方に慌てて静止に突っ込んだ。

 彼女の実力は良く知っている。生活基盤を整える元手(ゴル)も貸した。

 生きていく事に、全く心配などしていない。

 手振りで制しながら、相変わらずの暴走列車的な気質に、相変わらずだと溜息をもらす。

 

「私は、お前の語り部(カガヤキ)を愉しみにしていた。さっさと引き上げて何処かに行ってしまったと聞いたわけだ。つまらないじゃないか」

「えー、そんな約束してない。あの時は本当に疲れてたから、早く拠点に帰って身を休めたかったんです」

 色抜けた少女からは袖すれ違う仲で、なぜか一方的にそんな期待をぶつけられたらしい。

 身体に不調は残っている。そもそもこの軽い慣らしの様な鍛錬とて、現在進行形でリハビリ中である。

 若葉の少年は、明確な形が定まらなくとも異能者の道を歩いている。

 

「だな!だからこっちからお前を風の便りに探して訪ねてきたというわけだ。ついでもあったしな」

 相変わらずの熱量、言いたい事を言えば、けろりとその抗議をほっぽりなげて。

 手渡されるのは、懐から取り出した一通の封筒である。

 それ纏わる懐かしくなりつつある覚えのある残り香が、鼻をくすぐるだろう。

 

「ほれ、ジャスミンの奴からの手紙だ。アイツもお前の無事を心配していたぞ?」

「え、ぼくに?」

【縁広がりの茉莉花】

 かわいらしい包装に包まれたそれを受け取って、物珍しさにパチクリと裏表にして眺める。

 手紙の主は魔物の強襲にはぐれ、"森"に取り残された際に出会った女の人である。

 

【田舎育ち】

 "手紙"なんてものは初めてもらう。脅威の溢れるこの世界手紙一つでも運ぶのは容易ではない。

 少年はどこにでもいるような、取るに足らない田舎育ちだった。

 親友(オルカ)も体験は直接語るようなタイプだった故に、こういう外からの縁などとんと疎い。

 

「これが手紙、かぁ……、はじめてもらうな」

 ただ、封に閉じられた形に残る言葉と想いの綴りである。

 彼にとって、それはとても価値あるものに思えた。

 依頼に一時的に組む冒険者の様に、袖すれ違う縁だと思っていたが、意外と彼女は気にしてくれていたらしい。

 ましてはそれを形にしてくれた、ほんのりうれしい。

 若葉の少年はそれを大事に、懐にしまう。

 

 

「ありがと大事にする。手紙の返事ってどう出せばいいんだろ」

「おう、そうしてやってくれ私も運んだ甲斐がある。お前が返事を書くならまた私が運んでやってもいいぞ」

「ほんと?助かります。お礼もします」

 その反応に、色抜けた少女は満足そうに腕を組みながら頷いた。

 それこそ彼女は、他人(ヒト)が大大大大好きな気質が身に染みている。

 日常も人の"輝き”の一つであるゆえに、嬉々として彼女の心の鼓動となるだろう。

 

 さておいて。

 若葉の少年はふと思いついた事を聞いた。

 

「そういえば、あれから"名前"は見つかりました?」

「いや、それが困ったことにまだなんだ」

【記憶喪失】

 変わらないどうやらその記憶の欠如は、一時的なものではないらしい。

 そして、なんと呼ぼうか困った。

 

「幸い生き方は身体が覚えてるとはいえ、"名前"は大事な贈り物だ。早く取り戻して身に飾らないとも思うが、どうにも足掛かりがなくてなー」

「そっか。難しいね、状況が状況だからぼくにもさっぱり。だとしたらなんて貴方を呼んだらいいかな」

「お前がよびたい様に呼べばいいさ、"渾名"それも贈り物だとも」

 事の深刻さに反比例して、気楽な言葉。彼らはまるで十年代の友人の様に話すだろう。

 一度呑み込んでしまえばそういう物と受け入れてしまう彼と、

 周囲をその期待という熱量で焼く輝きの暴走列車である彼女は、割と気質が噛み合ってる。

 

「んー、じゃあ"天使"さん。初めて見たときそう思ったから」

「ぶっは……?!いきなり気恥ずかしい渾名をぶち込んでくるな、なんかむずかゆい!確かに好きに呼べばいいと言ったが!!」

「といっても他に思いつかないし、貴方もぼくを"双剣"のとか呼ぶ、見たまんま、そのままだよ」

 若葉の双剣士はふと初めて彼女を出会った時に、抱いた印象を呼んでみた。

 翡翠色に靡く風、"天から廻る極光"(ドーンハンマー)を爛々とした輝きに変えた円環(ヘイロー)

 その堂々としすぎた言葉と存在感、見開いた瞳孔から滲み出す人外じみた畏怖、そして翼を持たずとも空を手繰る不可侵と思える強さ(美しさ)から焼き付いた印象である。

 

 色抜けた少女は、気恥ずかしさに腕組みを解いて居なおして。

 びしっと、その指を突き付ける。

 

「ごほん、まぁいいさ。一度放った言葉はひっくり返す様なみっともない真似はしないとも」

「じゃあそれで、"天使"さん。うんやっぱりあなたに似合ってる」

「っ、だがその渾名で呼ぶなら、私もお前をその名では呼ばんぞ"双剣"の!」

 少しばかり正気に回帰したが相変わらず色抜けた少女は、"輝き"の名のもとに人類に対する期待の糞重感情で暴走列車するのが常である。

 それに対する反応は、その逝かれ具合に察して距離を彼女から取る者。

 あるいは"特別"だと勘違いしてその期待に応えようと、魅せつけようと己の足跡を主張する者。

 この身体が覚えているそれとは違う、どうにも距離感が迷子になりそうである。

 

「それはそれとしてだ!最近の調子はどうだ。剣の腕は落ちていないか!」

「微妙、リハビリ中だからまずは本調子に戻さないと、独学だから次どうするかも決まってない」

「そうか!ならばどうだ私がその剣をみてやろう」

【精霊術Lv2/5】【虫の知らせ(見■り)

 その言葉の勢いのまま、色抜けた少女は指をくいと曲げ、張り詰めてピィンと音が鳴った気がした。

 まるでそれは悪い予感、例えて虫の知らせ。

 弦が弾かれるような、少年と同じ旋律にて意味を成す精霊詩を想起させるだろう。

 

 腰の愛剣を引き抜―――否、間に合わない。抜剣など習熟していない。

 新調した細工小手に、呪印塗料(インク)を滲ませて、払うように飛沫撒いて後退しながら。

 パチンと、指を鳴らしてオド特性に"着火"する。

 

ギンっ!

『ザ・スラッシャー』【魔法剣Lv■/5:旋空(トルメンタ)】【空の担い手】

 

それは刹那の出来事。

 風の刃が虚空切り裂いて、それを塗りつぶすようにまだら模様の炎が咲いた。

 むろん収束率も糞もないそれで、完全に防げる訳もない。鎌鼬に逸れて頬を傷つける。

 

「……っ!アブな?!」

「期待通りだ、よく防いでくれた♪」

【常時破顔】【鑑定眼(真贋)】

 色抜けた少女は、防がれた風刃に満面の笑みを零す。

 奇襲とはいえこの程度の刃、きっと問題はない。そう彼女は期待していた故に、刹那を注視し続ける精神性から造り上げた観察能力にその輝きをとらえる。

 

 一方、若葉の双剣士はそのままの勢いに後退して、距離を取った。

 冷や汗に身体が冷える。

 当然だろう。一歩遅れれば、一巡噛み合わなければ、この腕は伐り裂かれ落ちていたのだから。

 

「いきなり何を、って大体言いたい事わかるのがいやだな」

「あぁ、言っただろう"双剣"の?お前の"語り部"(カガヤキ)を愉しみにしていたと、私はお前を知りたいんだ」

 大概に戦いとはよーいどんで始まるものではない。

 "あの森"の出会った彼女なら、断りもなしに敵の元に風任せに勝手に打ち上げた彼女ならば、

 間違いなくそうだろうと溜息付いて。

 

「言葉より剣を交えれば手早くわかる。お前がどういう道を辿っていたかを、その先に向き合うのかを、だから」

 風が沸き立つ、色抜けた少女に刻まれた、上昇志向を示すような入れ墨が脈を打つ。

「―――さぁ魅せてくれ"双剣"の、お前の"輝き"を!」

「やっぱり貴方逝かれてる。そういうのも含めて"天使"って感じする」

 若葉の少年は、改めて愛剣を引き抜いて構える。

 相手は風使いだ、面積を小さく、その斬撃の導線を限られるように獣の構えに。

【狂羅輪廻】

 格上相手の貴重な機会ではあるが。

 その理不尽さに少し怒ってきた。鼓動にエンジンがかかる。

 

「それはどういう意味だ"双剣"の!!私はちゃんと信じていたとも、この程度お前なら防ぐだろうと―――」

「だから!そういう、信じるって免罪符に押し付けてくる所とか、だよ!!」

【魔法剣Lv2/5】【舞武】【俊足】

 精霊巫器の愛剣の旋律に、呼吸の蹈鞴に周囲のマナに"感応"する。

 大気中のマナに、愛剣を擦り合わせて魔法剣を起動して。

 足場、重心自在、踏み込んで己の動きを押し付ける様な、身勝手な舞武闘に斬りかかる。

 色抜けた少女は遥か格上だ。初めから殺す気で挑まねば、微塵も届かない事を知っている。

 

―――対して。

 

 色抜けた少女は、そのコイルの魔剣を解いて。

 右手に、風が渦巻く。見開いた眼光のまま自然体に構えているだけだ。

「あぁ、流儀は十分だろう、"動"の構えと姿勢(スタイル)に応じた技術もある」

【迫真反応】【空の担い手】

 左下方袈裟、潜り混む様に猛る炎の魔法剣を風に誘導して流された。

 双剣使いだ。当然に次に繋がる虚空の足場を蹴り回転一拍早く、次の斬撃が回る。

 

「……!刃筋伸ばしても風に流される、か!」

 その声に、収束性を意識して魔法剣を切り替える。

 斬撃の勢いは増す、微塵も逃げの見えない。さらに笑みを深くする。

 

「ふふ当然の両手利きだな!お前は双剣使いだ矯正すれば当たり前だよなぁ!?」

「普通みたいに言わないでどれだけ苦労したと!」

【双剣技】【舞武】

 若葉の双剣士のステップとともに、速度と増して連鎖する斬り斬り舞に踊る。

 対して、彼女は炎の熱は風に流されるままに、あとは体術のみですれ違うように悉く避けるだろう。

 

 羽織ったマントが揺れる。その最小限の撓めきは。

 せわしなく動き続ける若葉の少年とは対照的な、無駄のなさを体現するだろう。

 

バリィ!

 電ノコの如く風に弾かれた剣を、痺れる腕をそれでも重心に回して蹴りを打ち込みに来る。

 色抜けた少女は解けたコイルにその足を絡めて、空にぶん投げて。

 宙の若葉の双剣士は大地に叩きつけられる前に切断し、虚空の足場を形成し回転駒の如く落下斬撃と変えただろう。

 

【迫心反応】

 きぃいン!!

 

「ふむ。特に"歩みながら斬る"(マルチウェイ)その精度飛びぬけている。重心移動と足場自在を組み合わせた踏み込みは相手するのは厄介だな」

「ごほっ少しは掠ってくれる気配出してから、言ってくれないかなぁ?!」

 双剣をメインに据えるは、ある意味才ある者の技術である。

 両手利きに矯正する手間をかけるなら、そのまま片手剣速に賭けて鍛えあげた方が、余程強い故に。

―――【千剣万打億斬】

 己には剣しかないと、強迫観念に余技と狂練してモノにするは少数派、他にプラスαが必要だ。

 若葉の少年にとってはそれは"魔法剣"であり、マナ世界に表現する"精霊術"なのだろう。

 

 それを理解しているかわからないが、在野にありながらそのスタイルは確立している。

 示すように。

 

「このタイミングなら……!」

『絆の相刃』【■炎:蛍火】【精霊術Lv2/5:デクトーマ】

 斬り斬り舞の中に、舞い散った炎の痣花があちらこちらに咲いて、

 "精霊巫器"の柄をその指が奏でる、周囲に響かせて、合図供にかちりと花開かせる。

 それの散る陰に紛れてしかける、未熟な彼に許されたわずかな極集中(トランス)状態に最高の斬撃を―――

 

 そんな幻影(まやかし)の中、交わってはならないはずの眼光が通い合う。

 

「その程度のまやかしなど、見え見えだぞ?」

【鑑定眼(真贋)】【迫真反応:リベンジ】【人■愛】

 しかし、色抜けた少女はそんな小細工に、微塵も惑わされることない。

 タイミングを合わせる様に振りかぶる拳、少年はそれが迫りくる事を理解するにも数舜遅い。

 

 バ ゴン!!

 

 文字通り空が弾ける。

 鈍い鈍い炸裂するような破音、勢いの二乗に炸裂する反撃(カウンター)である。

 

「ギっ……!?」

ズザァ!

【双剣技】【舞武】

 若葉の双剣士はその炸裂に弾き飛ばされる、土煙を上げ数メートル先に何とか踏みとどまった。

 身体が軋む、耳が、嚙み締めた歯に血が滲んでほのかに苦い。

 

 否、直撃していればそれだけで死んでいる。おそらく衝撃はほとんど後ろに流された。

 それが理解できないほど、少年は戦士として鈍くはない。

 手を抜かれている。明白だった。

 

「安易に幻影(デク)を多用しないのはいいが視線誘導が甘い!せっかくの重心自在だ両腕の陰に刃を隠せ!その魔法剣とてまだまだ無駄だらけだ」

【鑑■眼(真贋)】

 しかしそれは遊んでいるわけでない。彼はその通わせた眼光に悟らされている。

 言葉はなくとも悠々と語るようだ。これ以上を"信じている"と。

 

 対して。

 

「―――凄い」

 若葉の少年は思わず、感嘆の声を漏らす。

 なんて拙い言葉だろう、だが未熟な彼にはそう評する他なかった。

 目の前の少女が遥か格上なのはわかっていたが、想像をはるかに絶している。

 絶海の気配、過去に親友(オルカ)と同じように、微塵も鍛え上げてた剣技が通じる気配がない。

 

「まだ反応が鈍い、お前の"輝きはそんなものじゃないはずだ。知っているぞあの森でのお前の"目"はもっと見開いていた」

 その期待に満ち溢れた言葉は、己に向けられた激励であるのだろう。

 言葉をかみ砕いて呑み込む、きっとこの時間は経験は黄金にも等しい。

 地平の果て、星の果て、空に繋がっていた未知を踏破していた、僕等の憧れの星に似ている。

 

「なのに剣に迷いが見える。怖気付いたか、それとももう満足でもしたか。なぁ"双剣"の」

「ううん、許せない奴がいる。立ち止まっていられない」

【常時破顔】【人情不解】【光耀■姫:狂羅輪廻】

 そのある意味に挑発的な問いかけを心から否定する。

 故に、目の前に示されるのはきっと正しい道、その一つに違いないと心が食らいつく。

 次を見失って、自覚せずとも気の抜けていた心臓に本格的に火が熱が入る。

 意識的に最高速にギアが入らないこと自体も、彼の未熟の証左だろう。

 

「だからもっともっと教えて。自分じゃ気づかない僕の剣を」

「あぁ勿論、それでこそだとも!」

【精霊剣士】【■炎】【狂羅輪廻】=【夢幻操舞】

 パチパチパチと静電気の様に。

 目的意識に感応する、微かに空気にマナが感応して、逆立つのがわかるだろう。

 呼吸にぞくりと脈打つ命の線が伸びていく。

 知っている。コレを世界に伸ばす手段を幾つも、それこそが彼の舞の本質なのだから。

 

 

 

 

●●●

 

 

 

 

―――そして

 幾多にも響き渡った武闘その後しばらくして結果は。

 若葉の少年は剣を支えにして息も絶え絶えに、肩で息をして身を休めているだろう。

 周囲を見れば、塵流された魔法剣の残り火がそこらに燻っている。

 

「……ぜぇ……はぁ……げほっ病み上がりなの忘れてた」

「いやー、楽しかったな"双剣"の!やはり殴り合ってこそわかる事もある」

【人情不解】【光耀■姫】

 対照的に、満足そうに無邪気な子供の様に腕組んで、満面の笑みで頷きながら見守っている。

 結局、その後は全力で動いても色抜けた少女には届かず。

 病み上がりなのもあって、割とすぐにその体力は尽きた。

 その激励をかみ砕き、動きに反映させていっても、有効打の一つすら入ることはなかったのだ。 

 

 

「まず、お前の"精霊術"はここで頭打ちだな。伸びしろがもはやない」

「………やっぱり?」

「あぁお前がやってるのは、そういう体質が在ろうと言ってしまえば自身を"贄"にしてるだけ、それは古い方法論(アプローチ)だとも」

 少女は語る。ある種卓越した精霊術師であれば、その意に沿って精霊を従わせる。

―――【魔導文明おじさん】【精霊術Lv4/5】【疾走の申し子】

 リモコンの如くその意のままに空気抵抗さえ透過し、自在に空を飛び、天候すら己の知識(メカニズム)を手繰り寄せ、または緻密な原子レベル操作に、結果を作り出す(マンチする)だろう。

 あるいは己の絆の名の元に、"大いなる存在"の協力を得て、いずれは一心同体となる(深奥にいたる)のもいい。

 青の少年とて、大精霊との契約というきっかけで一気に精霊術(Lv4)の高みへと辿ったわけでない。

 彼はそのどれにも当てはまらない。

 それこそ祈る相手すらいない"独りよがりの身勝手な精霊術"である。

 

 ただ殺意のままに、自身を"贄"にする意志力のままに従わせる他に選択肢はない。

 

 それは色抜けた少女の言う通りの古い方法論だ。

 そも若葉の少年は、生命力(プラーナ)に優れていない。むしろ、貧しき田舎育ちから劣っている方だろう。

 故に、碑文八相と対峙した時の様に血の加護等がない限り、"贄"としても限界は近いのである。

 精霊に糧になりやすいオド体質、炉に焼き鍛えれば魔剣にすらなるだろう半端な才など所詮その程度のものでしかない。

 

 おおよそ500年前の『対魔戦争』の時世ならともかく、常に進歩するこの激動の時代に、置いていかざるを得ないのである。

 

 

「"双剣"の教えは、お前の師匠は誰なんだ?」

「いない。親友(オルカ)はスタイル全然違ったから参考にならないし、あえて言うなら通りすがりのツインテールの人(ソーラなんとかさん)に、精霊術と"呪印"の基礎打ち込まれただけ」

「なるほどな。どうにも勝負勘は鋭い、とことん実戦派という訳だ」

 続けて色抜けた少女は語る。

 この世界における強さの在り方について、意味記憶として染みついた彼女の視点を。

 

「だがな、強さを身に付けるのに一番重要なのはただひたすらに鍛錬だ、"戦うことだけを繰り返せばそれに慣れることは出来るが、力は身に付かない"」

 この世界における戦闘階級は幼少から、肉を喰らい体質改造(身体を作る)、鍛錬に明け暮れてその巨大な巨大な基礎を作り上げる。

 その典型的な代表例が、現在の世界盟主である『王国』のメソッドだろう。

 それこそ基礎武術が出来なければ、"技すら習得をさせてもらない規律"に徹底している。

 人それぞれの方法に、築き上げた砦の如く巨大な基礎こそを、きっとカラテと呼ぶのである。

 

 

 少年は田舎育ちだ、仕事に貧しさに日々を回していくに生活を支えるに必死だった。

 動き出しが遅い。

 それまで自衛程度に身体を鍛えて、本格的な基礎を積み始めたのは最近の事である。

 

「げほ、はぁ……頭打ちか。ミストラルは半妖精(ハーフ)で道具と組み合わせてるし……、ぼくもどうにか考えないと」

 しかし、若葉の双剣士にとって、力が必要なのは遥か明日より今日だ。

 目的に生き急ぐゆえに、狭い基礎の土台にもはや違法建築の如く積み上げている。

 なんとなく自覚はあった。安易に異能者の道を選ぶとはそういう事である。

 基礎の土台が狭い故に、方向転換がもはや効かない。または長い長い"矯正"がいるだろう。

 

 そんな暇はない、カラテが足りない。だから、もう。彼の精霊術はここで頭打ちである。

 そう、この地獄のような世界の最前線には、遥か先まだまだ程遠い。

 勿論、飛びぬけた才能でその最前線に踏み込み地獄に磨かれる類もいる。

 それこそ『聖錬』に近いうちに現れる『神剣』(アリス)『黒の剣士』(キリト)『百花繚乱』(ジータ)、そして少年も知る『蒼■』(グラン)

 それはかつて『応竜』が、恋焦がれ待ち望む世界に与えられた祝福の輝きである。

 

「時に"魔法剣"は抵抗が大きいだろう。普通に打ち込んできたらどうだ」

「できますけど、僕の剣は"二級品"だから、魔法剣なしで硬いのと斬り合うと欠けちゃうから……」

 会話の中、若葉の双剣士は荒い呼吸のまま、先ほどの手合わせを、反芻して。

 感覚を忘れないうちに、剣を突き立て支えにしたまま、何かを掴めないかと手さぐりに考え込む中。

 

「まあ、そんな事はどうでもいい。きっとこの先お前が道に可能性は満ちている、難しい話は置いておいてだ―――」

 色抜けた少女はそんな空気は放っといて、全く読まない。

 いったん満足したともいう。

 そうすると別の欲求が顔を出す、そう満面の笑みでこう告げるだろう。

 

「激しく動いたらお腹すいてきた、"双剣"の飯を奢ってくれ!」

ズテェン!!

 その余りの脈絡のなさと素直な欲求に、思わずバランスを剣の支えを崩してギャグめいて転ぶ。

 鼻を打ち付けた、内に籠った思考が無理やり引っ張り出される。

 

「いてててっ……。もしかして持ち合わせないの?」

「ああ!どうにも私は割と大喰いらしい。それに誰から奢られた飯程ウマいモノはない。地元だおいしい店くらい知ってるだろう」

【人魔身:天使化】

 色抜けた少女は、恥じることもなく堂々と言い放つ。

 意志力に踏み倒しているが天使化の影響でその生命力は高く、割と食費は切実な問題だったりする。

 

 若葉の双剣士にとって飯を奢る位全然構わない。その価値以上の時間だった。

 

「別に構わないけど、ほんと天使さんは"自由"だ、……うらやましいなぁ」

 ただ、若葉の少年は呆れて同時に本音がぽつりと零れる。

 先まで"終わり方"に想いを巡らせていた、彼の心の中の膿である。

 我慢できない諦められない。

 仕組まれた暗中に未来予想に悩んで悩んでそれでも、怒りに縛られた己を愚痴だった。

 

 それとも対照的な自由さに羨望と、眩しさを覚えてしまう。

 

「何を言っている悩んでいるようだがな。お前も"自由"じゃないか"双剣"の」

「……へ?」

【人類愛:人類賛歌】【魔法の■く】

 色抜けた少女は、否定する。

 聖母の如く愛を表現するように両腕を拡げて断言する。

 先に剣を重ねて知っていた、彼がその裏に悩みを抱えていることを。

 だから誰かに愛されていた分だけ、それを返そう彼女が抱く無償の"愛"のままに肯定するのだ。

 

「人は、この世界に生きている限りそれぞれの舞台で戦い続けるものだろう?」

 爛々と輝くその目、つらつらと誇らしく持論を語る。

「だから私はな思うんだ。最も人間らしい行動は"己の戦う場所を、自らの意志で選び取ること"だと」 

 彼女が信じる人が持ち得る素晴らしさを、総じて輝きを謳うだろう。

 まるで讃美歌である。

 

 一呼吸おいて。

 

「お前は自分で選んで戦っているじゃないか、何を迷う事がある"双剣"の、きっと自身で戦うべき場所を選ぶ者こそ"自由"なのだから!」

【限界■破(馬鹿)】

 天使の如く少女が歌う讃美歌はそう締められる。

 それはあまりに自信に満ちた根拠のない歌、ある意味無責任な放言なのかもしれない。

 しかし、瞳を通わせて悟る。冗談ではない、真剣に言ってる。

 

―――それを聞いて。

 

「ふふ、何それあははっはは!」

「なんだ、私はおかしいこと言ったか?」

「いや、だって、何の根拠もなくて意味が分からないのに凄い自信、思わず信じちゃいそう」

 目じり拭う。思わず、笑ってしまう。

 本気だそれがわかるからこそ、若葉の双剣士はそれが何処かおかしくて。

 うだうだと悩んでいる己がバカバカしくなる位、唐竹に割ったような断言に愉快で、逆に清々しく思う。

 

 あぁ、その言葉で確かに明らかに気持ちが楽になった。

 

「あー、面白かった。ありがと、おかげで少しは信じられるかもしれない。ぼくは望む通りに歩けるかもって」

「なんだかよく分からんが、盲が晴れたならよし!後は善く食って寝て忘れるが一番だとも……なぁ?」

「はいはい。わかってる。自炊が多いから、有名どころしか知らないけどさ」

 そんなこんなでまだ平穏に、彼らの再開は終わるのだった。

 

 

 





 ピロシさんうるせぇ!
 たーちゃんもうるせぇ!
 全然無垢化しない。無垢化させたらこれ違うってなるからこの有様。
 あと思った以上に馬鹿らしく動くんだが!なんか変に強いんだが!

 所々、本編勢のやばさを表現できたらいいなぁと。

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