ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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企み【運命の預言盤】

 

―――【覇濤:セレクティブ】

 

 彼らが徒党がこの観光都市にて、一期一会。

 つかの間の休息の中、モノと人の出会いを楽しんでいるそんな中。

 

 その一方の視点。

 これは表面上は平穏なこの覇濤セレクティブの地にてうごめく闇、企みの視点である。

 

 その中心たる行政府を、執政を司る中心地片隅にて。

 レンガ作りの建物。

 その一室にて、白髪に目を薄っぺらい笑みを湛えた温和そうな男がいた。

 "セレクティブ"全体の地図を凝視し、『入国管理』と記載された資料を見比べながら―――

 

 まるで未来の事を占う様に、それぞれ地図の上の駒を動かしているだろう。

 

「―――……入国管理、新たに、Aランク冒険者を中心とした高ランクの徒党(パーティ)が入国、か」

【執行議員】【派閥:人道派閥】【政治知識Lv3/5】【経営の才】

 呟く白髪に温和そうな若い男の名前は"トーマス・サザーランド"。

 この『覇濤・セレクティブ』において、若輩にて行政を司る"議員"が一人である。

 そして、今現在も覇濤の地を分断する派閥を代表する一人であった。

 

 彼はその心の内に秘めた企みのまま―――

 通常の業務と並行して、恥知らずに彼は白昼堂々職権を乱用していた。

 

「不確定要素だが人数はたかが3人、観光客がこの時世に運が悪い事だ。おそらく微差だろう。カネで転ぶか、傭兵連中に接触だけさせて―――」

【革命家】【参謀の賢策】

 男は早々と結論を割り出して、対処を決め打ってしまう。

 認識しても高々冒険者である、何処かの"間者"のような動きもない。

 そうなれば所詮は在野の根無し草、高き危険を避けて"カネ"の低きに流れるだろう。

 例えば王国の"武貴"、そんな元々選抜された落伍者でもなければ、ごろつきの延長たる冒険者とは大概にそういうものである。

 

 ただ"カネ"の力にこちらに転がせるならば、賑やかしにはなるだろうとメモに残して。

 

【インテリ】【扇動者の才】【牙の塔卒業者】 

 そう、頼る所からわかる通りに。

 実務能力があるとはいえ、若輩である彼をこの地位まで押し上げたのは。

 『聖錬国』が最高峰の知の巨塔『牙の塔』にて身に着けたコネと、偏に金の力だった。

 

 ただ己が考える。この時の為に、多方面からの投資を集めていた。

 

 次へ次へと思索を伸ばす、やるべきことならいくらでもある。

 

 ただ一つ個人的に気がかりに、覇濤に在籍する有力者の名簿に目を通して。

「……■父は、まだ意地を張っているのか、大したことできないんだ。さっさと引退してくれればいいのに」

【人道派閥】【■子】

 これは目的のために、本来必要のない付録である。

 そんな意味のないはずの、根回しの結果にため息をつくだろう。

 

 そうやって、己の野望に、淡々と来るその時の為に準備を進めていれば―――。

 

ドン!ドドドン!!

―――突然に乱暴に扉が叩かれ、大声と共に開かれるだろう。

 

「トーマス殿、トーマス殿!おるか!!」

【聖錬王族】(ハイヒューマン)【聖闘士】【重鎧要塞】

 無遠慮にその扉からぞろぞろと押し入ってくるだろう。

 それは偉丈高、剛腕の大男だった。

 高価な黄金重鎧と魔具の類を身に纏った姿は、どう見ても戦士か騎士のそれである。

 それは美女に統一された、物々しい護衛を引き連れた様は相応の立場を予想させるだろう。

 

(この繊細なご時世に、考えなしにこの脳筋が)

【鉄面皮】

 対して内心、遠慮なく目立つ行動をと舌打ちして。

 そんな事はおくびにも出さず、温和な笑みをもって対応するだろう。

  

 

「これはこれは変わらず覇気で、ご機嫌麗しゅう"ラグネル王子殿下"、このタイミングで視察とは―――」

「貴様の下手な世辞はいい!俺様は知らせを聞いて飛んできたのだ!!」。

 この仰々しい大男の名はラグネル、トーマス・ザザーランドの一番有力なパトロンである。

 『聖錬国』を纏め上げる中心たる"聖都"、そこに座する王の尊き血を継いだ一般的に言えば皇族、王子が一人であった。

 

 ……しかしその枕草子に、

 継承順を下とする、変わりは幾らでも効く数多き王子の一人と付くのであるが。

 

 仰々しき男は、机を勢いよく叩き、勢いのままに詰め寄る。

「本当に万全なのだな!?これだけの投資だ万が一にも失敗は許されない。わかっているのか!!」」

「ええ、その時は来ました。筋書き、武力に、賛同者その必要なすべてを揃いましたとも。これも王子殿下のご威光の賜物かと」

【話術:いいくるめ】

 嘘だ。絶対の準備などない。

 怒鳴り混む様な声を柳に流して、相変わらず温和な笑みを湛えたまま話すだろう。

 目の前の男を煽て、持ち上げるのは忘れない。

 

「ついに来たのか本当に事を成すのだな……!500年前、対魔戦争の時世に『魔王領』からの侵略された奪われた港を取り戻す戦が!!」

【脳筋】【正義は我にあり】

 この大男はかつてない栄光に目のくらんでいる。

 そうしてやれば、仰々しい姿の男は万感の思いを湛える様に、震えるのである。

 

「これを成せば俺様は『聖錬』の有象無象の兄弟共に埋めようのない差を付けられる。俺の功績で五大国の中で、唯一大規模な港街を保持する国へとなれば、オヤジも俺を認めてくれるに違いない……っ」

「ええ、港はより人類の発展の為あるべきです。"人類最大の生存圏"である『聖錬国』にはその舵取りをするにふさわしくその責務がある。来るべき当然の流れでしょう」

「ああそうだな!その通りである!」

 このラグネルは王子と言っても、継承順においても下位であり、腕っぷし以外に誇る所がない。

 そして兄弟の中でも上には上がいた。そして尊き血の自覚も傲慢さに拍車をかける。

 若輩にて『聖錬32将』に選ばれるようなほかの優秀な兄弟に、魑魅魍魎蠢く宮廷にて比較される日々、燻る野望を抱えていたのである。

 

(相変わらず、驚くほど動かしやすい男ですね)

 白髪の男は、その様子を眺め内心にほくそ笑む。

 そこに牙の塔で築いたコネで手紙をもって接触し、その"大義名分"を吹き込んだのが彼なのだから。

 時に本当の歴史の中に真と虚を織り交ぜて、目的の為に煽っていたのである。

 

 "人道派閥"トーマス・サザーランドの支援者(パトロン)は一人でない。

 平和な場所に人が集まると多かれ少なかれ、統治者に不満を持つ、世界において共通の事だ。

 貧しい貧しい平等は我慢できるが、豊かな不平等は我慢できないものであるが故に。

 そんな心理をもって、下剋上、動かぬ富と権力ピラミットの席を退かして、

 あわよくば己がそこに座らんと皮算用するが餓鬼共など、幾らでもいるのだから。

 

 うまく事が運び事が独立がなされても、その中でパイの取り合いの綱引きが始まるだろう。

 きっとこの男はそれを自覚していない。ゴールの位置を見誤っている。

 消極的様子見の唾付けであるが、奏護における砂丘王『クロコダイル』ですらその一人だ。

 傑物相手に容易い事ではないだろうが、その苦労とて己の宿願に比べれば軽いものだった。

 ただ傲慢に、後の事は己がバランス感覚に手繰ってみせると意気込むだろう。

 

【革命家】【言いくるめ】【扇動者の才能】

 ただ男は口がうまかった。そして嘘つきである。

 時に、巧みになすこと、歴史を動かすことの意味を、なさねばならない事を誘導して。

 時に、魔族の脅威を歴史になぞらえて、描く将来を語りながら煽って。

 時に、今誰が行渡るべき富を独占しているのか欲望を煽って。

 相手に合わせて歴史を下地にした真と虚を折り交えながら、様々な人間から己に投資を集めていたのだ。

 

「『傭兵国家グレンダン』の連中も、相場以上の質を提供してくれています。どうやらあちらも派閥争いが激しいようで」

「ふはは、あ奴らは戦場を求めておるからな!無法者を取り込んで膨れているくせに、『聖錬』では近頃大きな戦もなかった。二つ返事だろうよ」

「ええ、バカと鋏は使いようと言いますから」

 そして、彼等の計画の主力となる戦力は傭兵たちだった。

 革命と呼ぶべきこれに拙速を常にするとならば、使えるのはこれ以外にないだろう。

 そしてその過程で発生する犠牲の諸々を許容する。

 

【インテリ】

 今は500年前の『対魔戦争』の時世で侵略への最後の抵抗した聖女の伝説を起源とする。

 古くからこの地に根付く、傭兵のギルド『赤ずきん』に独占されている。

 奴等とて、この『覇濤:セレクティブ』のシェアを丸ごと奪えるチャンスなのだ。

 少しでも"考える頭がある"(・・・・・・・)なら、ある程度行儀よくしてくれるだろうと―――

 安易に、考えている。

 

 電撃的。

 そのおかげで個々の道筋の絵図を描くを、一月の時間にて完了していたのだ。

 白髪の男は刻々と進む準備に、息を呑みながらもはや大胆に動く。

 

「しかし、独立で歪んだ基盤を少なくともかの『砂丘王』クロコダイルが見逃さないでしょう。事がなされてもより一層のご支援を―――」

「おお!その程度の事!時期筆頭となった俺様の権力で『戦姫』すらこの地に引っ張ってみせる。その時には誰も俺の声を無視できないのだからな!がはは!!」

「安心いたしました全ては人類圏の発展の為、より一層のお引き立てを願います」

【脳筋】【正義は我にあり】【唯我独尊】

 重装鎧の大男は、気を大きくして勝手に言質となる言葉を落としていくだろう。

 そしてご満悦に高笑いしながら、また豪快に扉を開けてこの場を後にするだろう。

 その尊大な胸の中に描かれているのは、きっとまさしくバラ色の未来である。

 

 武力を誇り、しかし武力において評価されなかった男はこの一時にて、全てがひっくり返ると信じている。

 そう思うのは彼だけであると知らぬまま―――。

 

「―――……はぁ、王子殿下には拾われた恩は有るけど、この浮かれ調子なんてね」

「愛人だとしても、仮にも宮仕えの勝組だと思っていた。何処かにいい転職先はないかしら」

『ラグネル親衛隊』【ワルキューレ】

 背後に続く護衛の女騎士達も、小声に愚痴を呟くのが聞こえるだろう。

 気の毒な事であると他人事に思う。

 

ばたんっ!!

 勢いよく扉の閉じる音が響き渡る。

 

「ふぅ……」

【鉄面皮】

 そしてやっと静かになったこの執務室にて、白髪の男はやっと張り付けたその偽物の笑みを崩す。

 その身体は、小さく震えていた。

 

「失敗は許されない、ですか。呑気なものそもそもこの期に及んで、これが分の悪い賭けだと理解していない」

 賭けだと理解しているからこそ、全額を投じる男と。

 ただただ、バラ色の未来への投資と信じる男の確かな温度差がここにあった。

 

(あぁここが潮目だ。本国(ルルイエ)の『海魔柱ダゴン』が動く瀬戸際だろう)

【革命家】【参謀の賢策】【魔■恐怖症】

 しかしとして。

 『正規魔王』が一柱であり、正当な統治者であるダゴンが出張ってくれば全てがご破算である。

 戦力的にも、数的にも万が一にも勝ち目などありはしない。

 それぞれの本拠が海を渡って、連絡のタイムラグがある状況だからこそ。

 

「そうやって安全な場所から好きなだけ騒ぎ立ててればいい。名を貸して金だけ出してくれれば何も言わない」

 今は四年事に巻き起こる"大襲撃"に対する中弛み時期だ。

 平和を享受しているこのご時世だからこそ、この企みは成功する余地がある。

 少なくともそう彼は信じて、賭けに出ているのである。

 

 白髪の男の震えがさらに強くなる。

 蘇るのは『魔王領』に短期間の交換留学した際の記憶、である。

 直接手にかけられた、圧倒的暴力、強くつかまれ叩き伏せられた首の痛み。

 

「―――ただ、俺は"魔族"が恐ろしくて、仕方ない」

【トラウマ】【魔族恐怖症】

 誰もいない空間で、本音を吐露する。

 忌々しい記憶(トラウマ)が蘇る。絶望的な未来予想が頭を満たす。

 

 そう、大義名分を偉そうに振りわす男の動機の全てはただ恐怖、それのみである。、

 

 この時代において『純人種』の優位とされている、人体機能を強化する『魔具』という発明の普及。

 しかし、彼はそれが牙の塔に学んだ時期に『魔具』の仕組みを知った、

 ただそれは現状『純人種』の数がサンプルが多いからこそ、過去に人体の設計図をよく研究されているからこそ、優位性を保てているだけであり

 ――― 一般的に風説で流れているな、"純人種”の特権という幻想は断じてない。

 

「時代は進んでいる。技術は進んでいる。全ての学問自体は属性の安定地たる純人種が有利だ。しかし、それが流れてしまえば」

『水妖霊(ウンディーネ):上級眷属』

 事実、『波濤』においてはB級魔具の分類である"艤装"に、魔族の眷属が適応している実例がある。

 例えて、一般的に猫とサーベルタイガーと評される能力の差。

 『魔具』が使える様になれば、もともと高い能力がさらに絶望的な差として拡がる……。

 それは確かな事実だろう。

 

「今は無理だろうと、将来に水妖霊(ウンディーネ)が"戦舟"を操れない保証がどこにあるというのか」

 誰かが言うだろう。

 時が進み技術が進み"獣人"や"魔族"が、『魔具』の技術を完全にものにしたのならば―――

 かつての"純人種"は『奴隷』になるしかない。という絶望的な未来予想の学説を。

 

 彼にとってはそれを覆す為に、クーデターである。

 

「典型的な吸血鬼騒ぎの"魔族"への恐怖を煽る扇動も、あまりうまくいっていない。もう少し騒ぎを大きくするか」

【インテリ】

 白髪の男は、街居の現実を見てはいない。文字での報告と卓上の空論、仮説に目を奪われている。

 きっと紙面で世界を知った気になる、文官が陥る典型的な視野狭窄である。

 

「誰かが、やらなければならないんだ」

 呟いた。

 実の所、男は己が恐怖と宿願のみに目がくらんでおり目暗、足元が何も見えてやしない。

 それに自覚はない。

 いやきっと、複雑に絡み合った世界を想うがまま動かすことなんて、誰もできやしないのだ。

 未だこの世界は、知り得ない範囲でもただただ"敵"に溢れている。

 更に物事を面白おかしく事故らせる『道化師』(愉快犯)の存在を知らないのだから。

 

 そして事が起こって白髪の男は知るだろう。

 紙面で知り己の頭の中で描くより、人々は愚かしく欲望に素直で考えなしである事を。

 

 

 ただただその時は迫る、誰にとっても破滅的な革命の局面まで。

 一歩一歩ちゃくちゃくと進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか、最初から詰んでるからかわいく思えてきた。
桜皇のアルゴ(許されない)、
皇義の互換みたいなの付録で持ってるのがダゴン様なんだ。
作中のキャラの視点じゃわからないので、その事は触れずに進めていきマス。
最終的にダゴン様が本国から出張れば、全部潰れるから暴れさせるの凄い気が楽。

この扇動者のモデルはガンダムシードのムラタ=アズラエルです。
つまりお察し。
なんか、事を進めるのにお金が必要なので重たいパトロン出しましたが。
きっちり後に影響でない様に処分します。

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