ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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外典【レヴィア・■■■■■■】

 

 

―――誰かの原初の記憶。

 きっとこの世界では有り触れた不幸話の一頁(ページ)

 

 セピア色に微睡む。

 子供の騒がしい快活で優しい声、その手を引っ張る誰かその掠れたイメージを、夢に見た。

 港町の片隅で石材で組み立てられた。

 "孤児院"と呼ばれる様な、身寄りのない子供を育てる質素な建物の光景である。

 

 死と生のサイクルが、極端に早いこの地獄めいた世界において。

 明日の保証のない。例えば両親が職に問わず子供を置いていつも通りに仕事に出て―――

 そのまま、なんの予兆もなしに帰らない何てことも珍しくない。

 

 ましては性産業盛んな『覇濤』の土地柄故に、"望まれない命"の捨て山の側面もあるだろう。

 子供は弱者だ。弱きは吹き溜まり(スラム)を作る。

 そしてきっと悪悦な誰かの食い物にされ、悪しきの土壌に幹を育てうる。 

 そういう事情も相まって、"孤児院"というものはある程度の規模の都市にはつきものだ。

 

 似た役割に『九十九機関』という人材の確保と量産を目的とした。

 良血(サラブレット)の『血の坩堝』の存在はあるが、それに抱えられない雑種の受け皿として別に存在しているものである。

 

 

 この世界では、命それ自体が消費される"資源"であるのだから。

 お偉い誰かが言うだろう。精々それをうまく消費しなさいと。

 

 回想が歪む、ノイズが奔る。

―――ザッザ…ッザァアアア!!

 

 まるで海より純粋な、生来澄み切った宝石の様な両房の髪を提げた少女がいた。

【孤児】【彗星の両房髪】

 彼女もそんな有り触れた孤児の一人だった。

 

『―――おー、新入りかぁ。よろしくな』

 物心着いた頃には、やはり少女に両親はいなかった。

 "海賊"の船から"保護"された子供が自分らしいと。朧気て聞かされただろう。

 今や、もはや何も覚えてはいない。ただ大きな音が苦手だった。ただ怯えた。

 

『名前はなんていうんだ?』

 初めてに怯えて縮こまる少女に、小麦色の髪をした誰かが手を伸ばすだろう。

 

『そーか、あたしは■■■、この中で一番年上!つまり姉さんだ何でも頼ってくれよな』

 雑音塗れでかすれた記憶。

 そんな中でも染みついてに思い出せる大切な記憶である。

 差し出された手を取る。そう年少である彼女は、いつも誰かに引っ張られた。

 

『童話詩:ピンクスの酒』

 気になるのかと、優しく読み聞かせてくれた。絵本に描かれたコミカルな"海賊"の話。

 

 痛みの中に消し切れない。あたたかな胸の灯である。

 

「ねーちゃ」

 まどろみの中でつぶやきが漏れる。

 彼女は孤児院をよく手伝い、

 平穏に暮らしてきたころの記憶、貧しくても寂しくなかった確かな幸せな記憶だろう。

 

 そこには、ただ同じ境遇の子供たちがたくさんいた。

 集まって引っ張り合って分け合って、いろいろ苦楽を共にした兄弟たちがいたはずだった。

 

 

 ただ、

ザッザザザァアァア。

 雑音塗れにもう、きっとこの一時以外の記憶は思い出せない。

 

 その平穏の終わりは突然だっただろう。

 

 

 ここからノイズが更に酷くなる。

 

 そんな幸せなその日々は突然に終わりを告げたのだ。

 

『―――喜びなさい。お前を引き取りたいと言う人がいるらしい』

 孤児園の大人、"園長"と呼ばれる男が言葉、それと知らない誰かの声が響く。

 支援者の、"里親候補"の一人が誰かが申し出たらしい。

 いわく"桜皇人"の養子が欲しいと、そういう話だった。

 

 とんとん拍子引き合わされた知らない大人、明日からこの人と一緒に暮らすのだという。

 幼い少女にはわからなかった。

 なぜ自分ここを出ていかねばならないのか、泣いて泣いて泣いて駄々こねて。

 

『―――レヴィア、我が儘を言わず聞き分けなさい。それが"孤児園みんなの為なんだ”』

 "園長"と呼ばれた男は、冷めた表情で鈍る感情に、そう言いつけるだろう。

 まるで錆びた街灯のような笑みである。

 それは子供の我が儘として聞き分けられることはなく、淡々と処理させられただろう。

 

【怠惰の弱者】

 この"園長"と呼ばれる男にとって、孤児を育てるは作業であり、そこに何かしらの情熱はない。

 この厳しい世界において、得れるパイは少なくともそういう居場所を糧を得るために、

 ただ福祉という盾に最低限、淡々と平和に怠惰に過ごす事を選んだ人種だ。

 故に事前に相手も背景を調べる事もなく、その後を追うこともない。

 代わりの孤児なら幾らでもいる故に。

 

 そして姉妹に別れの言葉のなく、孤児園から強引に引き摺る様に手を引かれる。

 それは物を扱うような、優し気のない強引な力、痛くて怖くて不安で。

 強引に馬車に乗せられてその戸が締められるだろう。

 

 そして。

 

 

 

 

 

『ふぅ手間を賭けさせてくれる。たかがガキ一人手に入れる為に、窮屈な事をさせてくれた』

『ひっ』

 そして馬車の中という密室になった瞬間に、白衣の男が張り付けられた笑みが剥がれる。

 少女が連れられたそこで目にしたのは、郊外の隠れ家、余りに異質な機械の群れの中であった。

 

 少なくとも人の生活する場所ではない、真っ当な場所でない事は少女にもわかった。

 

 手術台の上に、白衣の男たちが取り囲むだろう。

 

『―――資金と引き換えに"メンタルモデル"技術の一部。"阿頼耶識"システムの提供があったのはいいが、不完全にも程がある。欠けている部分が多過ぎる!』

『―――ならば埋め合わせるしかあるまい。いや、我らの手により研鑽の果てにより優れたものへと発展させるのだ』

 そこにいた白衣の男たちの会話。

 海の権益は巨大な、とてつもなく巨大なものである。

 大量輸送の実現この世界の人類の発展は、海を切り拓いた事による最高効率。

 故にメンタルモデルを、その技術を欲する勢力は多い。

 

 まさしく実験動物(モルモット)を見るような、幾多もの無感情の目が貫くだろう。

 

 怖かった。

 

【違法改造個体:メンタルモデル】

 ここから更にノイズが酷くなる。

 そこにあったのはまさに、試行の数だけ積み上げられる地獄そのままであった。

 

『―――いいものが手に入った、かつての対魔戦争において猛威を振るった海賊の如く"上級魔人"。それを貫いた剣の欠片』

『これを『阿頼耶識』システムの媒介につなぐ、浸食の結果と同時にマシンとの適合性を得られればばその理論値は……!』

 そんな妄言を元に乱暴で無遠慮なメスが迫る。

 きっと、理論としては、桜皇にて語られる伝説の"半神存在"(ニンジャ)その再現する為に用いられる。

 あるいは"魂"と呼ばれるだろうマナに宿る強烈な記録。

 その浸食による偉大なる者の再現、すでにある前例の真似事である。

 

『―――思った通りだ今まで失敗したアプローチでもマナに染まりやすい桜皇人であれば、相性がいい!』

【魂鋼:宵水星】

 興奮し歓喜の声を上げる白衣の男など、気にする余裕などない。

 そこで与えられたのは痛み痛み、そして魂を侵食される不快感。

 とある『遺物』との神経接続の為、不完全な処置で身体の髄を引っ掻き回され埋め込まれた。

 

 その後も幾度も幾度も"調整"という名目で、メスを入れられ身体を弄られる。

 

『―――あぎ!?いいいたい!た、たすけて。ねーちゃ、ねーちゃぁあああ!!』

 その度に少女は全霊で泣き、サケブ、ひたすら助けを呼ぶだろう。

 無力な彼女はそれしかできない。無垢な彼女は、まだ、誰かが助けてくれると信じていた。

 

『―――ガキが。ギャーギャーとうるさいな』

『――――――ッウウ!?』

ざくっ。

【舌足らず(物理)】

 そして白衣の男たちは少女は声が煩いから必要がないからと、まるでタバコを吸うような気楽さでその舌を切断し縫い合わせた。

 言葉を奪われて助けも叫ぶこともできず、そもそも誰も声を聴いてくれない。

 

 朧気に唯一、唯一の成功作そう呼ばれた。

 そんな気がする。

 

 そんな処置がやっと終わり、幾日もの夜が過ぎた。

 その世界の変質した、仮にも優しさに手を引かれていた彼女の世界が。

 それが今や、迎える朝に"おはよう"、"おやすみ"の声が、ただ聞きなれない耳障りな呻き震えに取り囲まれている。

 疵がふさがって、動けるようになっても、ただただ、もはや話すための舌がない。

 鎖に繋がれた身体は、もう何も声に表現すら叶わないだろう。

 痛み故に何より孤独故に少女は現実から逃げる。変わらない地獄、現実から逃避するのである。

 

 少女にとって幸か、不幸か。

 不完全な阿頼耶識に流しこまれる情報、繰り返し繰り返し血を流す"魂"が、夢を見るその先に。

 その"遺物"を媒介にしたマシンとの適合性の感性に、空想の世界への逃避を可能にした。

 きっとそれは傍から見たら、きっと心が壊れてしまった様に見えるだろう。

 

【メンタルモデル(偽)】【違法改造個体】【ハイファミリア】

 鎖につながれた檻の中、彼女の周辺に単純に機械の群れが浮遊する。

 過去に海賊染みた【水宵星】と呼ばれた上級魔人が従えていた、3人の眷属(子分)の投影。

 "ハヤブサのレイス"、"力持ちのモーガン"、"働き者のボニー"。

 その中で完結するある種閉じたネットワークの樹立。

 少女は常識の上では本来自立しえない意志宿らぬ機械を、話しかけ組み合わせて動かしてじゃれる。

 きっと傍から空想上のままごと人形遊びだが、

 確かに、戦舟のジャンク品を動かした彼女は、白衣の男たちにとっては成功作の一体となっていた。

 

『―――素晴らしい、23人目にしてやっと成功した。我らの研鑽が結実した!』

『―――この素晴らしい作品の有用性を示しデータ収集の為、運用テストにを行うべきだ!』

 

 そして白衣の男たちがとそれを気に止めるわけもない。勝手な都合に、少女は海に放たれる事になった、

 綻び崩れた心に、艦娘が従うべき"提督"という上位存在を植え込(洗脳)んで。

 そして海で略奪したものを持ち帰り、その性能を示せと何度も何度も。

 

『双銃デカラピア』

 外された鎖の拘束、与えられた魔導機械による武装。メカメカしい二丁拳銃。

 それを手に取って―――

 

 ガチャン。

 

 鎖を外され。

 戸を開かれ、ジャンクの戦舟と共にそのまま少女は、広い拡い大海の中に放り出された。

 

 しかし白衣の男たちには理解できない。

 

『――――――』

 広く広く広大な海の上、独りぼっちの航路。

 マナに満ちた金魚鉢の世界、この世界おいての海は見た目以上に複雑怪奇である。

 

『……どこ、てぇとく、ねーちゃ』

 少女に居場所がわからない。どこにいるかわからない。

 真っ当なメンタルモデルにいるはずの、航路を帰るべき場所を示すハズの"提督"はいない。

 数字しか見ない研究者は、ただの命令を下す"上級権限者"と勘違いした故に。

 

 少女は白衣の男たちのもとに帰らない。帰れない。

 結論から言えばそれは迷子になる故に、その制御を放りだすと同意であった。

 初めての自由に眼を見開く、果て無き海原の中、星だけが見える星だけがキレイだ。

 

(―――あぁ、奪わなきゃ。子分たちの為に)

【フォルネウス海賊団】【略奪本能】

 独りぼっちの少女の心の中で声が響く。

 それは【宵水星】と呼ばれた"上級魔人"。戦いに敗れ海に沈んだ敗者、その残滓であるのだろう。

 

 ただただ奪えと、本能のつぶやきに従って。

 たださ迷ってそれを見つけた。

 

「あひゃ」

 夜の明かりに灯を浮かべる木造の船、惹かれる蟲の如くそれに引寄せられて―――

 その銃口を向けて、笑う。

 

 焼き尽くすだろう閃光、次の瞬間に海の平原にひときわ輝く炎の光が照らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 そして大凡、半年の時は過ぎて。

 

 

―――【波濤:セレクティブ】

 

 とある艦がゆっくりゆっくり、帆をたなびかせながら海を行く。

 洋上を堂々と進む鉄の城、しかしよく見ればとても人の整備されているとは思えない屑船である。

 難破船、または幽霊船の様に見えるだろう。

 しかし至近に見れば理解するだろう、動力を持ちながら帆も持ち合わせるこれは多種多様な船の残骸の継ぎ合わせである事を―――

 

『幽霊船:フォルネウス号』

 近頃とある噂があった。放浪する幽霊船、歪に形作られた不気味な幽霊船の噂を。

 "セレクティブ"の海に、その正体を語られる怪異が一つ。

 そんな船先に佇む少女が、その双銃を航路の切っ先に向けて、海の遥か彼方を見つめていた。

 髑髏のトレードマークの帽子に掲げ、宝箱を形どったバックを抱えて、テンプレートの様な海賊意匠に身を包んでいる。

 そんな、年端もいかない少女である。

 

 その不釣り合いさは、まるで海賊ごっこ遊びの様な微笑ましさを感じるかもしれない。

【魂鋼:妖水星】

 とても健康的とは思えぬ冥色とした異色の肌に、毒々しい魔力の波がなければ―――だが。

 

 風にその彗星の尾の如く、三つ編みのおさげを海風に靡かせながら。

 かすれた声にろれつの廻らぬ下に、虚空に声を駆ける。

 

「今日も資源回収は順調なのれす!ボニー! 船団に欠員はいないれすね!」

【海賊少女】【航海術】【舌足らず(物理)】 

 それに応じて、その継ぎ合わせて作られた船が震えて、分離する様に生物的な機械的な異形が現れた。

 禍々しい魚が如く造形をした幾つ物の機械仕掛けが、浮遊して少女の周りを踊る。

 

『ぎぎぎ(はい、レヴィアお嬢さん!!)』

『おうおう!(天気がいいからか張り切ってますねぇレビィアたん)』

 その浮遊する機械はジャンク船の一部なのだろう。

 問いかけに、機械仕掛けの異形が身体を震わせて応えているように見える。

 おおよそ言葉には成り得ない、しかし彼女の頭の中にはしっかり己の子分達が同輩が、しっかり受け答えをする幻覚を覚えていた。

 

「ボニー、モーガンあちしの事はちゃんと船長と呼ぶれす」

『ぐー(背伸びしてますねぇ)』

 それはまるで微笑ましい一人芝居、人形遊びにも見えるだろう不気味な光景を作り出していた。

 そのまとわりつく機械は単純なもの、単純な知能のみ。

 大凡の特攻兵器、おおよそ自律できるような代物ではないはずなのだから。

 

【違法改造駆体:メンタルモデル】

 しかし、彼女等は繋がっていた。独自の世界で完結していた。

 『メンタルモデル』という正規のものではない。それがこの結果を生み出したのか。

 違法品とはいえ機械の適合性をもって、それを同族とみなして交流と思わしき行動を取っていた。

 

 そう、同族である、彼女はただ一つのこのジャンク船のネットワークの司令官として―――

 

「レイス!提示報告れす、航路上に船はいないれすか」

『ぐぐぐ(いえさー、南西の3㎞先、中型クラスの船団を発見!レーダーに映る事から鋼船の類と推測)』

『ぎぎぎぎぎ(となると戦船の可能性もありますね。どうしますレヴィアお嬢さん)』

 

 それを聞いて。

 

 海賊少女の、思考が直結する。

「―――ぁぁ、獲物れすね」

『双銃:デカラピア』

 それを聞いて、少女がその略奪本能を刺激された様に無邪気に笑い。

 頭の中で、"奪え奪え"と声が響く。

 その本能のままに、その巨大な双銃を航路の先を向けて、宣言した。

 

「もちろんお金持ちからは奪うのれす。富める者から奪いそれを配れば経済は廻る、らしいのれす!」

【海賊少女】【略奪本能】【洗脳】

 もはや覚えていない、洗脳に植え付けられた勝手な理屈を、そのままに反芻して略奪を天真爛漫に謳う。

 権力者の貨物船を拿捕し、得た宝で貧しき者から商品を買う。

 経済を回すのは重要だとレヴィアの"提督"は仰った。故に、これは善意から出る行為なのである。

 

 それがこのガラクタ達を同類とみなして、それに向けられなければ…だが。

 その上位存在の命令に同意する。同意して連動していく。

 不揃いなジャンク製の不気味な船が、全体にうねり声御上げるだろう。

 

「やろーども舵を取れ!ふぉるねーす海賊団は義賊なのれすよ。偉大なてぇとくの為、今日も―――」

 歪な機械の城が戦闘態勢を取る。

 砲台を剥き出しにして、それを敵対象に向ける。

 船全体が低い鈍いうねり声の咆哮を上げるが如く、不気味な雰囲気を醸し出すだろう。

 

 目標になった船団も、近づくそれに気が付いたか、進路を曲げて逃走しようとする。

 

 しかし、一つ引っかかる事を覚えて、少女は首を傾げた。

 

「……レヴィアの"てぇとく"って誰れしたっけ?どんな名前れしたっけ」

『ぎしゃ(さぁ?)』

『ギギギギ(そもそもていとくってどういう意味です?レヴィアのお嬢)』

【洗脳:ギアスロールスクロール】

 海賊の少女は曇りかかった記憶で辿ってみても、かすみかかったように思いだせない。

 もちろん"そんなものは存在しない"なんて、可能性には辿り着かない。

 彼女に施された洗脳、常識からの上位存在の刷り込みとして―――

 ただメンタルモデルが従うべき、空想の存在を彫り込まれていた。

 

「まぁいいれす!さあ、目標に向かって取り舵一杯全速前進!!」

【リーダーシップ】【航海術】【海賊の流儀】

 そうこうするうちに、射程の中に目標である舟が現れる。

 それは一般的な木造の鉄船である戦舟と、帆船が複数、艦隊を組んでいるのが見えた。

 こちらは寄せ集めとはいえ鋼舟、戦力差で言えばほぼ一方的な蹂躙となる様な戦力差である。

 

 この世界の艦船は風の利用した木造の帆船と、鋼鉄製の動力搭載した船が共存している。

 その双方に利点が存在する故に歪に共存している。

 静かな帆船は、重量の関係で『海桜石』の船艇の底に敷き詰める事でモンスター避けに優れており。

 鋼鉄の動力船は、天候に左右される事もなく、安定な運航が可能である。

 

「合図とともにやろーどもかかれ!襲撃れす!」

『双銃デカラピア』【ガンズマスタリー】

 その水星の髪をたなびかせて。両手に牙の如く銃口を象った歪な双銃を構える。

 先制砲撃、狙うは護衛に付いてるだろう戦舟である。

 それは『幽霊船:フォルネウス』に配管が接続されており、エネルギー供給の出力をもって主砲として機能と果たすのだ。

 

ズドォン!!

【ガンズマスタリー】【ペダルファフィール:砲撃】

 引き金を引いた、高出力の魔弾が放たれる。魔導文明由来のマナを加工した弾丸である。

 果たしてそれは放物線を描いて、海へと着弾して大きな水柱が上がる。

 

 船団を見れば、襲撃にけたたましく警報音が鳴り響いている。

 そのまま開戦としての合図となるだろう。

 

【駆逐艦:吹雪級】【50口径12.7cm連装砲】

 その返答の如く、鋼鉄の戦船からの反撃、その砲撃も左舷にずれて水柱が近くに上がる。

 襲撃者は構わず、速度は緩めずに目標に接敵する。

 船団の護衛の冒険者が出張ってきたのか、攻撃魔法も入り混じった砲撃戦となる。

 獲物とされた船団にとっては必死の抵抗だろう。

 

 それをかいくぐって、海を斬り裂き、その幽霊船の如く船は海を奔る。

 

『ぎぎぐぐぐ(着弾を確認、レビィアお嬢、修正データを送るっす)』

「あいあいー!」

【宵水星】【戦場適性・海】

 その完結したネットワークからの指令を受けて、その仰角を調整する。 

 引き金を引く、今度は違わずにその戦舟の片舷を焼き焦がしてしっかりとダメージとする。

 出力を艦船に依存するとはいえ、所詮は携行武器の火力である。

 

 鋼の城たる戦船に対して、致命打に成り得ない……。

 

【ガンズマスタリー】【ペダルファフィール:最大砲撃】【ファレンアステル:鬼■】

 海賊少女のまさしく人艦一体という、特異性がなければ、だが。

 それは魂鋼【宵水星】を中心に機械に繋がれた魂の絆、あるいは"共有されし命の名前"。

 禍々しき魔力が周囲に感化するだろう。

 それは重なる様に、乱暴な手術痕が大きく痛々しく浮かび上がっていた。

 

「これが本命れす。沈めえええええ!!」

………ドォオオンッ!!

 強烈なる閃光、その双銃から放たれたそれは五章級に匹敵する砲撃だった 

 たかが駆逐艦クラスの装甲は容易く溶解し、火薬庫に引火し爆炎が立ち上がる。

 "共用される命の名前"、戦船という洋上の城を動かす動力が、海賊の如く少女に共有された結果の瞬間的出力だった。

 

「だいせいこう、大成功れす!!お前たちよくやったれす」

【メンタルモデル(偽)】【欠損:舌足らず】【リーダーシップ】

 護衛とされた鋼の戦船をぶち抜いた後は、抵抗の余地はない。

 事が終わって、沈めた船を遠目に船の上でピョンピョンと跳ねて喜びを表現するだろう。

 海賊少女は、残された船に群がる人型を、他人事のように眺めていた。

 少女は知っていた。

 

「一隻は残すれすよ」

 逃げ道を用意していれば、荷を放り投げてでもそれに群がって逃げていく事は知っていた。

 奪うべき宝は後で子分と共に回収すればいい。大事に抱えていく余裕などきっとない。

 

「なんか、そーすれば邪魔なものがどこか行くれす」

【ファレンアステル:現実感失調症】

 彼女は逃避の果てに閉じた世界に、同族(ヒト)をもはや認識できない。

 故に、襲撃の後残る、海に浮かんでくるたんぱく質なんて邪魔でしかなかった。

 見れば冷たいそれに触れば、何故か無性に泣きたい気持ちになるのだから。

 

【りヴぁ■あさん・し■ゅ■む】

 それはあるいは、"畏れ"と呼ばれる力の根源であることを本能的に理解しているからなのか。

 誰もわからない。それは彼女の身体を弄り回した白衣の男たちにもわからないだろう。

 

 海賊少女は煙に燻る、空を見上げて―――

 

「ねーちゃ達、レビィは今日も元気れす」

 海賊の少女は、禍々しい魔力を垂れ流しながら。

 訳も分からないのに、ノイズ塗れの風景の想起に望郷の念に呟いただろう。

 

 人を異物として認識する。もはや彼女は人間にすら見えない。

 怪異の一つ、波濤に蔓延る都市伝説が一つ。もはや、討伐されるべき海のかいぶつ―――

 

 

 その日常の一頁(ページ)である。

 

 





中ボス想定の一人の経緯、本来三馬鹿枠想定の戦力です。
出てくる人物大多数がお糞ですわよ。
お糞な人物も人物で出すなら悪趣味に書け、文章カラテが足らない。

提督のテレパシー能力軽視したせいで、広大な海で居場所がわからず迷子になって。
自由にふるまう怪異になってしまった海賊娘です。
ただ上位権限者という刷り込みがあるんで、白衣の男が接触すればヤヴァイです。
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