ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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波乱【運命の預言盤】

 

 

【覇濤首国クトゥルー】

 

 潜んで大海を穿って現れた機械蛇、多重の船体が継ぎ重なった様なバケモノ。

 異音が身体を軋ませる動く度に、悲鳴の如く響き渡る。

 

『海賊船:フォルネウス号』

ギギギギギギ……!!

 例えるなら機械仕掛けのリヴァイアサン、それが大顎を開いて、

 しかし機械仕掛けの顎の中から、海賊装束の妖しいお下げの少女が銃口を向けている。

 その背中には艦娘の様なアンカーはない。複雑に絡み合ったグロいパイプの類が接続されて

 まるで血管のように明滅と供に脈動している。

 

 あぁそれはどこか危機迫りながらも現実的ではない光景だろう。

 その光景を前に。

 

「……は?」

『双銃デカラピア』【双載銃騎】【ファレンアステル】

 凶悪な銃口を向けられている。なのに思考がフリーズしている。

 変わり果てていてもその銃口を構えた少女は、きっとよく知っている相手なのだから。

 

 風になびく双房の髪、覗く金眼。

「レヴィア……?」

【海賊娘】【違法改造個体】【彗星の両房髪:畏れに寄り無効】

 見開いた瞳孔、歪む無邪気な笑み、四肢に刻まれた痛々しい手術痕。

 怖がりでいつも手を引いてくれる誰かを探していた。その華奢で怖がりの少女に似使わない。

 

キュゥゥン

 それは照準だろうか、舵輪の様な浮遊物が浮かぶ。

 別人に思える程の禍々しいオドの流れ、収束する銃口の閃光の破滅的な音。

 そしてその海中からの突然の奇襲は。

 

―――ポーン♪

 青空に幾何学装甲の花が咲いて、その合間に割り込んだ。

「リコ!!」

「うん」

『黄昏の腕輪:六華の花冠(プロテクト)』【精霊術Lv2/5】【迎撃態勢:怨敵覚悟】

 虚空に焔の花が咲く。若葉の少年が半身である儚紅の幼子を呼んだ。

 頭上に手を掲げる。そう、いち早く対処するのは修羅場に染まり切った彼である。

 

 

 聞きなれた腕輪の起動音、担い手が頭上に拡がる本来身の回りに限られる電子装甲の盾。

 円環精霊である儚紅の少女がマナに演算をサポート、その手を借りて迅速に展開されるだろう。

 それは数瞬の出来事である。

 

【ペダルファフィール:最大砲撃】

ジュアァ!!

そしてチャージが終わり、禍々しい閃光が瞬く。

 五章級魔銃が盾を焼く、輪転と盾の境界に弾け拡散してそれでも収束性に瞬く間に白熱する。

 稼げる時間は数秒か。出力負け、突き破られるのも時間の問題だろう。

 勝気の少女も、流石にその光景にただ惚ける程には鈍くはない。

 

ばっ!

「―――エンジン出力全開、急速前進!!ぶつけるぞ耐ショック体制!」

【海上騎士】(ネイビーキャリバー)【メンタルモデル】

 手を振り下ろして叫ぶ。

 その声に応じる困惑を置いてエンジンを焼け付くほどに。

 遠方に向いた砲の仰角は遥か方向違いだ。

 こんな方法で頭上を取られた。敵はもう目前である回頭する余裕はないのだから。

 

 ならば―――

 

バリィん!!

 

 そして、呆気なく幾何学装甲の盾が破れ花弁が散るだろう。

「……ぐッぁ!」

 その砲撃は左舷、『クリーブランド』が艦橋近くに掠り、魔力の砲撃に一部焼け落ちる。

 人艦一体その表裏船体に、身体の感覚を同期させた少女の髄に痛みが走るだろう。

 しかし迅雷の如く痛みを堪えて構わず突貫する。

 至近にそれも頭上を取られたという失態に、それしか間に合わないという直感的な判断である。

 

【艤装・トンファー】

 自身の甲板に背に負った艤装の鋭角を突き刺して支えに、とっさの耐ショック体制に備える。

 

そして。

―――ゴガゴンっっ!!

 

 そして為される、前時代的衝角による突撃。

 吹き上がる水飛沫、吹き荒れる風、巻き上げられて拡散する海属性。

 飛び散った金属片が掠り、彼女の頭を切り裂いて血が流れる。

 そのリヴァイアサンにぶつかった衝撃に、ハガネがぶつかり合う破砕音が大海に響き渡る。

 一万トン級のハガネの塊同士が衝突した、普段経験しようもない衝撃的な破壊音である。

 

『クリーブアニキ!?』

「抑えた……うちかたっ、撃ち方ぁはじめぇ!!」

『あ、あいよ!!』

 当然、衝突の反動に脳髄を直接叩きつけられたな衝撃に、身体が悲鳴を上げる。

 痺れて膝を甲板に付けながらも、こらえる、旗艦として指示を出すだろう。

 

「「―――てぇええ!!」」

どドォン!!

『駆逐艤装・マハン級』【127mm単装砲】【ガンズマスタリー】

 

 奇襲という突発状況への対処、戦隊連携である。

 駆逐艦が搭載された小口径の砲台が、連続して火を噴くだろう。

 リヴァイアサンへの砲撃の追撃も含めて、大首が揺れて頭上取った海賊少女が振り落とされた。

 

「■■!?」

 そして正体不明(アンノウン)は『クリーブランド』甲板に着地した。

 姿勢を立て直す。

 

 近くにいる。顔をあげる、禍々しい気配を纏っていた海賊娘がこつりこつりと歩いてくる。

 勝気の少女の頭から血が流れ目に滲む。

 あぁ、接続された髄に響く耐えがたい痛みと意識が朦朧とする。

 

 近くにいなくなった家族がいる。歩いてくる。

 

「れヴぃあ?」

『軽巡洋艦クリーブランド:中破』

 無茶の反動、まともな判断ができない。ただ懐かしい顔を久しぶりに見れた安堵感に―――

 まるで昔に戻ったかのように、メンタルモデル(艦娘)である『クリーブランド』ではなく、

 そう、家族としての表情として。

 

「さがしたしんぱいしたんだぞねえちゃんだ。ほらどこいってたんだよ、いつもどおりに」

【お姉ちゃんの矜持】

 朦朧とする意識に無意識に、まるで迎える様に両手を広げて出招こうとする。

 

 しかし。

「■■……?」

【舌足らず(物理)】

 その返答は、首を傾げて無慈悲に着きつけられる銃である。

ガシャン

 言葉はもはや彼女に届かない。

 通じない。己の中に逃避した彼女に、そもそも目の前の対象を同族と認識できない。

 訴えた言葉は舌と供に刻まれた。思い出の縁は既に痛みと逃避の中に摩耗しているのだから。

 家族に言葉が届かない困惑、しかし戦士としての本能に察する当然に自分は死ぬだろう。

 なぜ、望郷の中に、彼女は息を呑んで。

 

ダッ!!

 しかし、立ち切る様に踏み込むが二つの刃を分断する。

「「吹っ飛べぇ!!」」

【打ち返し】【カバーリング】/【魔力撃】

 大剣と機巧槍が重なる。護衛の冒険者達である。

 どうやらいきなり最前線になったこの艦に身体能力強化に、飛び乗ってきたらしい。

 

 力業、対して海賊装束の少女は、その双銃が切っ先の牙を盾に受け吹き飛び海に叩き込まれる。

 

【射手の体技:波乱盤上】【海上適正】【海賊の流儀】

ばしゃああ。

 しかし、しっかり海面に受け身を取って沈まない。

 海賊少女には海の属性の加護がある。

 水に撥ねて向けられるのは不可解な、思い通りにいかない不機嫌なまなざしである。

 

 とにかくいったんの仕切り直しは成った。

 

「クリーブさん!」

「チィ!!突然になんなのこのデカ物は!!何やってるのさ、惚けてる場合じゃないわよ!!」

「!―――あ、あぁ……くそっ迷惑かけた」

『黄昏の腕輪:六華弓』【レンジャー:弓術の心得】

 若葉の少年が弓を構える。

 彼とて突貫時に、この軽巡洋艦『クリーブランド』にいたのだ。

 腕輪の足場に宙に逃れたとはいえ、身体は衝撃波に軋むし耳は木霊と反響を繰り返す。

 

 それでもすぐさまに動くのは、修羅場の差が如実に出ているのだろう。

 息を吸う、呼吸によるセットアップ、専心の手順、標準指先に軸は固定、弦を引き絞る。

 牽制の為に花開く六華の弓の一矢を、引き絞り構える。

 

「ローズはリヴァイアサン(でかぶつ)を、ガルデニアさんは護衛を!!ぼくが仕掛けます!」

「あいわかった、曲りなりにも遠距離手段がある。それがいいだろうな!」

 この禍々しい気配、この駆け引きが通じるかはわからない。

 

 それに対して。

 大海に追い出された海賊装束の娘はその湧き上がる略奪本能に笑う。

 

「―――なにを!?」

 そして―――

 彼女が海属性の加護に、波打つ海面が一際の時に、張力を足場に空中に飛び、

 行動を制そうと妨害の一矢を大蛇が庇い、大海にその銃牙を向けてるだろう。

 

「―――■■■。さぁやろーども」

【りヴぁいあさん・ししゅてむ】 

 海面に、砲撃をブチかます派手に放たれる海を叩く、力強く波打つだろう。

 何事かと思えば、その大波は感化される形を成していく、彼女を中心としてまとまる。

 これはメンタルモデルタイプ魂鋼式による百鬼夜行、鬼纏いと呼ばれる技術。

 大波自体を怪しき者と、海坊主として見立てるのは良く在る話。

 桜皇式の領域展開、海属性マナと同調共鳴、”波しぶきそのものを百鬼夜行と見立てる”。

 

 

「奪うのれす!!」

『働き者のボニー』【リーダーシップ】【舌足らず】

 初めてしっかり聞きとれた言葉。

 頬を三日月の如く歪ませて、略奪本能に周囲に感化されて幾多の"子分達"が形成される。

 

 太古に沈んだ『宵彗星』と呼ばれた上級魔人が従えていたそれの投影。

 

―――ドォン!!

 

【駆逐艤装・マハン級】

 けたたましく連続した砲撃音が響き渡る。

 

 それに負けぬよう戦場の号令も轟くだろう。

 一万トン級体当たりに大きく怯んだリヴァイアサン。

 しかし続く砲撃にはまったく堪えた様子はない。

 ただ、装甲の接合部にナノマシンだろう、継ぎ接ぎに肥大化した重量の化け物である。

 

 頭を振り回して船体に噛み砕かんと振り下ろして。

 

 しかし、砲撃音に紛れて。

 龍の如く鱗を纏った風属性由来の環境を足場に、少女が宙に躍り出る。

 

「させるか、おとなしく海に帰りなさい!!」

蛮族(バルバロス):アマゾネス】【闘気剣:オーバードライブ】【生命活性】

 蛮族の少女、生命の活性した剣を有り余る靱力と供に横合からブチかます。

 未熟な聖剣技の成りそこない。しかしその剛怪力と重力加速に活性したその剣は。

 彼らが徒党(パーティ)の最大手、既に、幾多の大物に振るわれて破壊力は折り紙付きである。

 

ドゴォン!!

 大蛇の頭蓋を叩いて揺るがし、追撃に『クリーブランド』が仰角を併せた砲撃が突き刺さる。

 その連続した衝撃に、たまらず海面へと退避するだろう。

 

 寄せ集めである為か、どうやらまともな武装はないらしい。

 潜水、その巨体をもって再び潜ろうとする。再び海中に身を埋めて機会をうかがう。

 

「少なくとも重巡クラスの装甲……か、ダウンズ、10cm砲単射クラスじゃ抜けないみたい」

「てやんでい上等だ!あたいはそもそもこの豆鉄砲は得意じゃないんだ。カッシン、雷撃戦でなら望むところでい!!」

【雷の如く火薬の槍】/【海戦ドラム】

 白黒の駆逐艦二人も海中に没した巨体の対処に動くだろう。

 クリーブランド級に欠ける対潜能力があるのは彼女達だけである。

 姉妹由来、得意分野の標準を定めようと鈍い船体をぶん回す。

 

 そして勝気の少女はというと。

「なんなんだよ!あたしがわからないのか、レヴィア!?」

「知り合いもしかして」

「あぁ、間違いないあの子は!あたしの義妹だ!」

 

 勝気の少女は出血した頭に包帯を巻きつけて応急処置にきつく結んで。

 痛みに朦朧する意識の気付けに、想いを叫ぶだろう。

 そうだ、変わり果てていても、言葉が届かなくても家族を見間違えるものか。

 

「なるほどな正体不明(アンノウン)が、あの治験表(カルテ)で弄繰り回された子供だとはな、それを無責任に放つとは、おおよそ正気ではない悪趣味な事を……!」

 金糸髪の槍使い、ガルデニアはその点と点を繋げて歯噛みするだろう。

 実地試験のつもりなのか、子供を道具扱いに海というだった広い孤独の平原に放り投げるとは、

 

 仮にも癒し手の端くれとして、憤りに機巧槍を握る手に力がこもるだろう。

 

 そんな感傷など知る由もなく、作り出された大波が押し寄せる。

【ハイファミリア:飛沫の妖】【ファレンアステル】

 艦壁にぶつかりその砕けた飛沫が這い上がってくる、牙が押し寄せる。

 上級魔人の月衣から生み出される眷属のように、ここら周囲はそういう既にそう染め上げた空間だ。

  

 特殊な月衣かここら海に波及する波が、彼女の肉体の写し身である。

 波飛沫が押し寄せる。艦にぶつかりその飛び散るすべてが形を牙を持ち眷属となる。

 文字通りに"波乱"に満ちた空間。

 

 装甲を齧る、仮にこれが木造船ではあれば、ボロボロに齧り取られていただろう。

 人を害さんと、その押し寄せる牙を角を鱗の群れを―――

 

ぶわっ!

「ぬるい」

【凛として月華の如く】【魔力撃】

 勝気の少女の護衛に中心に壁のよう、その波乱を嵐の如く魔力撃の機巧槍舞が振り払う。

 槍の軌跡の後に、バシャバシャと水飛沫に甲板にぶちまけられるだろう。

 眼は鋭く金髪を揺らして、弧月を繰り返す様に。もともと護りの槍である。

 

 周りは動いている。

 困惑に足をとどめている場合ではない。

 

「あぁもう!考えるのは後、援護頼んだ!あたしはあの子を―――」

「もちろん」

「こんなふざけた事やらかす奴の鼻を明かすのは、それがいいだろうさ!」

『軽巡艦装・クリーブランド』

 勝気の少女は艤装を展開して構える。迷いはないやっと本来の私って奴だった。

 

 耳が残響の余韻があるが、やっと意識がしっかりとしてきた。

 姉妹同士が魔銃と艤装砲を向け合う。

 

「―――しぶ■■れす」

「おねえちゃんに武器向けるのは悪い子だ!」

 ここから始まるのは砲撃と銃撃のサーカスである。

 その放つ砲撃に最初の威力はない。

 しかし五章級の魔砲はチャージと母艦のバックアップが必要なのか、大人しい速射弾だ。

 ならば、対人に艦砲は必要ない、艤装で十分だろう。

 

【砲華の鉄城】【ガンズマスタリー】【対空配置:パッション・テンポ】

【双載銃騎】【戦場適性・海】【ペダルタフィール:マルチロック】

 

バリン!!

 相殺、連射される魔砲と弾丸がぶつかり合い弾かれあい。

 蒸発する儚く閃光火花としてこの戦場を彩るだろう。

 海賊少女は、波をしっかり踏んでトランポリンのように跳ねながら自在に駆ける。

 

「その浮かんでる舵輪が照準変わりか」

バリン!バリン!!バリン!!

 弾ける、弾ける、弾ける。

 徐々に広い零した砲撃も、ステップを踏んでリズムを併せて。

 海賊娘は波に跳ねる潜る回る、自由に、様々な角度より砲撃を打ち込んでいる。

 なのに。そのほとんどが撃ち落としに海面に落とされる

 

「救難信号は出した。近づけるな最悪持ちこたえればいい!!」

 同時並行して艦砲を、リヴァイアサンをいつでも叩けるよう航路に追従させながら。

 

 砲撃の相殺という曲芸じみた光景が繰り広げられる。

 

「―――■■??」

「嫌って言おうがその物騒なおもちゃ叩き落して、うちに連れ帰ってやるかんな!!」

【撃ち落とし】

 海賊娘は不思議に首を傾げる。

 己の砲撃が相殺されているその曲芸、わざわざ撃ち落とす面倒な手を取っているのもそうだ。

 

 なんだか楽しくなってきた。まるで戯れに答えてくれている様だとばかりに。

 

「―――♪」

「だーっ!急に緩急混ぜてくるな悪戯じゃないんだぞ!!」

『双銃デカラピア:チャージ』【ペダルタフィール:スナップショット】

 そもそも"子分たち"の為に、何かを奪いつづけなければならないとはいえ。

 少女にとって略奪のたびに、小うるさい肉の塊を焼くのなんか、ちっとも楽しくはないのだ。

 双銃をチャージしてより強い砲撃を交えながら、どこまで遊び感覚にその攻防は加速していく。

 

 その傍で。

 

「うおー!なんでえ、リヴァイアサン(大蛇)が動き回ると、なんか波から湧いてくる量も増えてねぇか!?」

「アイツが自由に動けば軽い海流になるみたい。そこから海属性がどんどん勢いが増してる、動きを制限するよ」

【秘書官】【マリントラッパー:置き雷装】/【発破欲求】【飽和爆破】

 追従する駆逐艦の二人は、"単横陣"にて潜ったリヴァイアサンの動きに対応している。

 距離を取りながらの射線が重ならぬ様に、車輪の如く巡行する。

 

「よくわからねぇが、とにかく渦巻き(ながれ)を派手に吹っ飛ばせばいいんだなカッシン!」

「そ、得意でしょうダウンズ」

【アイハブ/ユーハブ】

 対照的な白と黒のメンタルモデルの姉妹も、同色の義眼を同じように鳴動させながら。

 海中で渦巻く海属性の渦を爆雷の火薬の力で抑制し、進行のタイミングに魚雷を置いて。

 先読みに方向転換を多発させ、動きを制限しているだろう。

 

 初めてに体験するメンタルモデルの"戦場"、火薬の匂いが周辺に満ちている。

 

「すっごい派手、巻き込まれたら死ぬな」

【舞武】

 若葉の少年はそんな光景を眺め冷や汗ながしながら、

 襲い掛かる"飛沫の妖"をその双刃で斬り捨てる。

 呼吸を刻む、染みついた反射に呼吸法に"空"に属性の傾けて。

 舞い、斬り、斬る。

 

「にしても燃えにくい……こんなに"海"が重たい」

【魔法剣Lv1:雷舞の刃】

 雑に切り払って感化し、分断する様に散らすだろう。

 彼等は散々に精霊の類ばかりに斬りなれている。

 しかし、波を切り裂けば当然海水に濡れる、その愛剣は炎属性の魔剣に近しい。

 海属性のマナの結合阻害の特性もあり、いつも通りの出力は出ない。

 きっと三割がいい所だろう。

 

 歯車が一つ欠けたままに、彼は動きながら考える。

 若葉の少年の徒党(パーティ)での役割は、中衛の遊撃手である。

 

 本能である。どこに一手を押すか、虎視眈々と、相手の最悪手を嗅ぎ取ろうと思考が回る。

 

 きっと、この中で一番の脅威は、やはりあの鋼細工のリヴァイアサン(大蛇)だ。

 ド級の質量それ自体が脅威であるのはもちろん。

 

 "精霊術師"でもある彼は知っている。

 魔人に近しき上位種だろうとオドなどタカが知れているのだと。

 

 満ちるマナ環境の流れを掌握したそれこそが、この世界における無尽蔵であるのだから。

 

 その動きの流れが海流になるならば、好きに動くのを無視すれば"大渦"となり海属性を強化。

 鋼船だろうとそれが"化生"として、

 大牙をむいて海底まで呑み込んでしまうのもおかしくはない。

 

 きっと大渦に一度沈めば重く頑強な鋼の城だからこそ、二度とは浮かぶことはない。

 

 だからその海流さえ生み出す、その動きを止めなければならないだろう。

 散りゆく炎の衣を纏いながら付いてくる儚紅の幼子に問いかける。

 

「リコ、あのリヴァイアサンに干渉して(ハッキング)動きを止められない?」

「無理、自分だけで完結してる。外の世界固く閉ざして、独りぼっち(スタンドアロン)で動いてる」

【電子妖精】【アラナイズ】

 幼子は電子精霊の感性が言う。脳髄に異物を突き刺され、なお曲りなりに安定する奇跡。

 複数、数で襲い掛かってるように見えて、アレは独りだ。

 きっと、周囲にいる全てが自己の遺物の延長の投影に過ぎない。人形遊びである。

 

「今襲ってきてるあの子だけが『本体』、でも迷って迷って一人遊びの世界に閉じてる。だからあの子達の"言葉"がわからない。解析するのも"海属性"が邪魔」

「なら物理的に接点を作ればいけるってこと」

 若葉の少年は既に機械類に対して、幼子の手癖を知っている。

 どうすればいいのかも。

 

【倖せびの花冠】

 儚紅の少女は次の言葉を待つ。

 その声に頼られて、心が鼓動する無為が色づいて薄く微笑んで、

 

「この状況であの装甲を魔法剣でぶち抜くのは手間だけど―――いくよリコ。力を貸して」

「うん」

 応えた。

 そして儚紅の幼子は、使役者の肩に手を置いて花が散る様に形を霧散させる。

 原初と違えて、庇護者の半身に炎属性に近しい彼女である。

 今の海属性に傾いた環境は、肉の器を持たない彼女にとって毒に等しいのだ。 

 

 艦上のステップに砲撃戦を繰り広げる、彼女の歩先に重なる様に追って。

 

「クリーブさん」

「うひゃあ!?」

 勝気の少女が素っ頓狂な声をあげた。

 若葉の少年が、砲撃戦に熱中する彼女の背に近づいて、耳打ちしたからである。

 

 そんな中、変わらずに飛来する砲撃を相殺する、這い上がる牙を切り裂く。

 

「な、なんだよいきなり、なんか今背中がぞくぅってしたぞ。ぞくって!」

「いいから、至近に仕掛けたいから援護を、火が欲しい。だから―――」

 勝気の少女の不意打ちに少し紅潮したその抗議を無視して、

戦場の熱に、諸々を飛ばして彼はそのまま言いたい事を伝えるだろう。

 

【狂羅輪廻】

 そして続くその素っ頓狂な提案に彼女は。

 

「ちょっと待てそんなん正気かここ海の上だぞ!?」

 とにかく反対するだろう。それは捨て身もいい所である。

 不可思議な上級魔具『黄昏の腕輪』その使い手、それでも一歩間違えれば奈落に堕ちるだろう。

 

「妹さんを助けたいなら、リコならリヴァイアサン(大蛇)を止められる」

「でも」

「大丈夫、あの時と同じクリーブさんならできる」

【パッションテンポ】

 気楽な言葉に言う。

 先から続く砲撃の相殺という曲芸に、その腕は疑いようもないだろうと。

 同じ系統樹、一度の共闘に重ねた符丁(リズム)を知っている。

 きっと彼女がその気なら、その物騒な砲撃は時に誰かへの喝采にすら変える事が出来るのだと。

 

 混じりけのない視線と疑いのない言葉、熱は伝播する。

 

「よろしくね」

 若葉の少年は艦淵から、その左腕に黄昏の腕輪の六輪の華が咲いて海へと飛び出した。

 

「……ああもうっ!」

 強引に進んだ話に砲軸を併せる。なんて勝手な奴だ。無謀な選択だ。

 だけどだけど、偽物の復讐心(イミテーション)に磨かれた戦場への熱、己を迷いなく信じるその目が、

 少し口が緩む。

 この状況に反して。彼とその重ねる刹那が楽しくて仕方ない。

 

 

 

 ●●●

 

 

 

―――一方、白黒の少女視点。

 

 白黒の姉妹が己の船体を随伴しながら、状況に対処していた。

 本体狙いの時差魚雷の投射も、まるで通じない。

 

 あのリヴァイアサン(大蛇)は知性があるらしい。しっかり直撃航路は躱されている。

 "まるで海上から見ている様に"、軌跡の泡を把握されているように感じる。

 文字通り打つ手がない。海流に流されれば魚雷など狙い通りに進みもしないのだから。

 

「……まずーい」

「おいカッシンどうしたんでい?」

 リヴァイアサン(大蛇)が動きに海流が生まれ大きくなるたびに、海中に火薬を投げ込み。

 倍々式に形を成す前に花火として、爆雷や魚雷を時限式に弾けさせ牽制し続けた。

 もちろん駆逐艦に積載できる火薬の量には限りがある。

 

「ダウンズ、そっちの"魚雷"と"爆雷"は、あとどれ位残ってる」

「そう多くないぞ、あと数射位だな」

「わかった」

『533mm4連装魚雷』『爆雷投下軌条』

 対して、黒把の少女はもう残弾がゼロだった。

 己を焼いた火薬の魅力に取りつかれた白把の姉妹(ダウンズ)程に、火薬の扱いに熟していない。

 

 ただ属性災害の知識に思う。

 この大渦をかき消し切れずに拡大続ければ、無尽蔵となって全てを飲み込んでしまうだろう。

 

 だから。

 投げつける火薬がきれたなら、後残る"火薬"は彼女の船体のみである。

 

「しょーがないか」

【真珠湾の涙】【黒把のポニー】【グータラ娘】

 黒濡れの少女は無気力に呟いた。そのまま濡れた鴉翅の如く髪を揺らしてペタンと座り込む。

 彼女は悲観主義者である。すんなり諦めてしまった。

 

(えんじんていし)

 正反対である姉妹に気がつかない様に心の中でつぶやく、緩やかにスクリューを止める。

 そもそもが彼女等再利用品(リペア)の時代遅れの旧型艦である。

 駆逐艦の代わりなど幾らでもいる。造られた直された分に十分に仕事はしたと思う。

 

「おいダウンズ!何してんだ?!」

「えーんーじーんトラブルー……、後はよろしくねーダウンズ」

「嘘つけぇ!?おいバカッシン、早く動けってば!!」

【秘書官】【オッドアイ】

 必死に呼び戻す姉妹に気楽に手を振る。

 燃料は6割程か、これを機関を暴走させれば沈む中、どの程度積み重なる流れを乱せるだろうか。

 自身の大事であろうと何事にも必死になれない。

 私達の戦隊は好きだから。時間を稼ごう。それだけである。

 

 エンジン停止、動きを鈍くして随伴から逸れる、慣性で進む彼女の船に"好機"だと察したのか。

 リヴァイアサン(大蛇)が、海を割って近づいていることがわかる。

 

 『覇濤』において叩き込まれた運用と教育、物事には兵器の価値には優先順位がある。

 戦艦を活かせ、空母を活かせ、旗艦を活かせ、沈むならより大きい艦より先に沈め。

 それが全てが一番安い、"駆逐艦"という艦種である。

 

「距離800-……」

【多目的ハイパーセンサー】【テセウスの船:再生艦】【眠り姫】

 センサーに捉えた刻々に近づくそれに、恐怖はあまりない。

 この身体が大破してもまた"ダウンズ"がいる。もし残る物があれば彼女に拾ってもらえばいい。

 既に一度やったことだ。

 先に逝った姉妹の、この金の瞳の様に残り物を使ってもらえばいいのだ。

 かつての『真珠湾の涙:魔王事象』に先に湾内に沈んでいった"姉妹艦"の様に。

 眠るのが好きだ。

 今この瞬間に思うのは、ずっと眠っていられるという安堵感もある。

 

「距離200ー」

 意気込みながら何もできず湾内に轟沈し、時代に置いてかれた時に。

 何処か彼女の感情は、恐怖に焼かれて動作不良を起こしてしまったらしい。

 周りに併せる事も苦手だ。ただただ傍観の中に生きている。

 

「てーとく」

 だから基本に彼女は、今の今まで感情の代謝をサボって、誰か寄りかかって生きてきた。

 

「ごめんね」

 しかし、今際に思い浮かべるのは。

 父親の如く、お気に入りの老木の男性の事である。

 

 『覇濤』に兵器として生きるメンタルモデル。

 駆逐艦としての正しいこの選択肢に、それでもきっと彼は悲しむだろう。

 

『―――ギギギギギグおおおお!!』

ザパァアン!!

 再び海面を飛び出して大首を傾ける、ギギギギとその機械顎を開く。

 艦腹を噛み砕こうとするそれに呆然と眺めながら。

 

 しかし。

 

「―――それを決めるのは旗艦(あたし)だ。提督に報告すんぞ、後で説教だばっかしん」

『152mm三連装砲:粘着榴弾』【全弾発射】

 しかし呆れた声と、ずっと追いかけ続けた横やりの砲弾が炸裂する。

―――ドォオン!!

 ストッピングパワー重視の榴弾、破片が弾ける炸裂が拡散する、装甲を抜けない。

 口径が足りない。海上性能特化とはいえ『クリーブランド』は、所詮は軽巡洋艦級である。

 

 少しばかり怯ませる。それで止まるわけはない。

 

 しかし、それを追うように巨体の対比に取るに足らないだろう影が迫る。

「力業だけど…!」

 それは若葉の少年だった。電子装甲の華の投影に荒海を踏破したのである。

 悪性地の踏破、風化や衝突にできただろう凹凸の装甲の掛かりを蹴って、瞬く間に頭に迫る。

 

『127mm連装砲』【パッションテンポ】

 直後に小口径砲が近くに着弾する。

 差込み、他者に対する喝采の砲撃、その爆風に煽られて身体を翻しながら。

 

三爪(トライ)―――」

【舞武】【精霊術Lv2/5】【■炎】

 先の火薬の空気が殺到し、"海属性"が晴れている"風"が戻ってきた。

 炸裂の残り香に"炎属性"が励起している。呼吸と供にやっと空気が焔が燃える。

 

 それを若葉の少年は感化して巻き込んで、双剣を構え迫る。

 刻まれるのは三叉の焔痕、彼が所持する唯一のオリジナルの魔法剣である。

 

炎痕(エッジ)!!」

【魔法剣Lv2/5:三叉炎痕(トライエッジ)

 リヴァイアサンの装甲表面に繋がり刻み込まれた斬撃、

 三叉に交わり咲き、特殊な磁性を持つ炎の収束性質により深く刻まれた。 

 

 疵痕は収束しようとする。駆動しようとすれば歪み骨格には大きな負荷となるだろう。

 

 『違法海賊個体』。ただ"ナノマシン"に無理やり接合された装甲の集まり、

 収束しようとする傷痕に、局所的な負荷がかかる―――

 装甲が砕けて硝子の様に派手に飛び散る。

 それは、たかだか皮膚を剥がされたような損害かもしれない。

 

 しかし。

 

「リコお願い!」

「任せて」

【腕輪の担い手】/【円環精霊】【電子魔術】(テクノマンサー)【ダイビングゴースト】

 しかし、剥がれた装甲の隙間にすかさず、腕輪の電子装甲が牙を打ち込む。

 

 物理的な接点が出来た。同じ技術から生み出された腕輪と幼子の親和性は高い。

 ここからの機械に対する儚紅の幼子はまさしく無法である

 

 ましては、相手は迷子の引きこもりだった。瞬く間にその伝達を支配して。

 その進路を無理やりずらすだろう。

 

「■■■―――!?」

 

 海賊少女は、"子分達"その繋がりが切り離された。

 混乱する錯乱する。独りぼっちは嫌だ、独りぼっちは嫌だと、同様に震えるその指先を。

 

 砲撃が掠めて双銃が弾き飛ばした。

 

「チェックメイトだレヴィア。大人しくしてな」

 勝気の少女が、そこに艤装を構える。

 一時はどうなる事かと思ったがどうにかなった。何より取り戻した。

 

 そして救難信号に反応したのか、どこかの機巧(ギア)の類も飛来する。

 安堵にため息をついて。皆が一息つくだろう

 

『ゲルルグマリーネ』【機巧用マシンガン】

 

「はぁ今更の援軍?遅いってば」

「いや違う―――艦橋を盾に伏せろ!?」

 しかし。

 すぐそのおかしさに気がつくだろう。アレは『覇濤』所属の機体ではない。

 その携行武器の銃口がこちらに向いている。

 

 掃射とばかりに、躊躇なしに人に向かってぶっ放してきた。

 物陰に遮蔽物に身を隠した。

 

 その隙に、甲板に人影が降りたつだろう。

 

「このただひろい海洋の中、失せ物をよく発見してくれたと言いたいが困るな。"それ"はお前の物ではないだろう」

「は?」

依頼(オーダー)だ。返してもらう」

【■騎士:覚醒者】(ホワイトライダー)【冷静沈着】【血染めの衣】

 一人は、歪な骨組みばかりの弓をもった、白髪肌黒の男。

 勝気の少女の目の前に、ヒトの義妹をモノ扱いする。のさばる放言に―――

 怒りで心の芯が冷える。彼女に珍しい、素で感情の声が出た。

 

「ふふ、また会ったやねかっこいい姉さん♪」

「……あの時の人斬りか、この糞忙しいときに何の用だ。悪戯にしても度が過ぎてる帰れ」

【誅殺メイド】【ツジキリスト】【和洋折衷】

 一人は、 侍女の如く和洋折衷、アンバランスな主張の様相。

 変わらずゆっくりとした媚びる様な声、神経を逆なでするような甘ったるい声に笑う。

 

 対峙する槍使いの彼女は面倒臭そうに、横目に流す。

 

 そして。

「やぁ、初めまして!君が"クルースニク"の腕をやったご同類かい?」

「誰、あんたなんか知らない"吸血鬼"の仲間か」

『ネイキットソード』【獣人:人狼種】(ウルフ)【双剣使い】

 一人は、分度器の如く鍔が特徴的な突剣二刀を構えた獣人である。

 手入れを忘れた様な跳ね返り銀髪を流し、黒コートとショートパンツを纏った獣人の女である。

 

「斬るよ」

「それは素敵だね♪その殺意やっぱりそうだ間違いない。こんな所で会うのは運命的だ」

【戦闘狂】

 若葉の少年はその戯言に、刃を向けて返す。

 三日月に歪んだその笑みに、ギザ歯を覗かせて心底愉快そうに上機嫌に眺めてくるだろう。

 

「何をしてるかって、決まってるじゃないか冒険者(君たち)と同じお仕事、傭兵としての依頼(オーダー)だ」

 誰も彼もむせ返りそうな血の匂いがする。

 事態を飲み込み切れないながらも皆が思う、この状況だ間違いなく敵であるのだろう。

 

 突如の襲撃者達が宣言する。

「邪魔だから君たちを殺して捨てる。異論はないね」

【【【血染めの衣】】】

 それを皮切りに人殺し達が、それぞれの刃を向けて動き出す。

 状況は混沌とする。『覇濤』セレクティブにうごめく欲望の徒。

 何の因果か、彼等に牙をむくのだった。

 

 





探してた実験体が見つかり、
救難信号を受け取って機巧に飛んできた背景待機の黒幕さん。

知ったこっちゃない戦楽しいの戦狂い。
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