ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】 作:きちきちきち
―――混沌の覇濤首国港町『セレクティブ』
ガガガガガガガ……。
固く舗装された空間を、縦横無尽に爪が搔き毟る。
「あはははは、わたしの爪は変幻自在、周りの物質を吸着して固く大きくなる……っ!!どんどん重くなるわよ!さぁいつまで耐えきれるかしら―――!!」
『魔具:
それは手数と質量の暴威、本質的には錬金術の自動化と生成物の操作。
あらゆる金属を再構築し爪とする、指の数に対応した自由自在の爪が地形を削り取り抉とる。
その
ぎゃん!
【二刀流】【精霊術Lv1(2):ブリンク】【舞武】
たいしてただ挺進にて、幻影交じりの獣の構えに移動しながら襲来の角度を限定し凌ぐ。
壁と床を利用して、転がるように勢い任せに襲来するそれを流して地に壁に突き刺せ、次の襲来の猶予を稼ごうとする、そういう動きである。
そんな動きの中、砕ける砕ける流された続けて余波であらゆるものが飛び散る。
積み荷と砕けた果実が周囲にこびり付く、まるで当たれば肉袋がどうなるかを示すように。
「ははよく踊るなガキィ!」
「—――!」
フォォン!
『魔具:
そして追い打ちをかけるように、雨の如く光の槍が降り注ぐ。
それは魔法剣の精製、簡単な穂先さえ用意すれば、簡単に一流の魔法剣を生成できる。
これはそういう魔具だ。投擲すればお手軽な遠隔の魔法剣になるだろう、その手軽さをもって気軽に弾幕を成していた。
「ははっざまーねーぜ!ちゃっちゃと坊主片付けてお楽しみだ。奪って奪って存分に凌辱して
―――」
『ネイキッドソード:怨嗟骨髄』【■血感応】
『魔具:紅の血風』『魔具:白玄機甲』
続けて砕けた殺傷性の風が駆け抜けて、手甲魔具使いの乱雑な投擲が降り注ぐ。
若葉の少年は包帯を巻かれた手慣れない長剣を、時に壁代わりに振るう。
その蹂躙の中を、敵対者の呼吸を図ってステップ踏む、時に受けて反動に障害物に逃れタイミングを外し続ける。
ワンパターン。この襲撃に前衛はいない。
決まって遠方から嬲るように、魔具にて保証された暴力があたりを蹂躙する。
そう、上級魔具により手に入れた力にそれぞれが
エモノの取り分は少ない。故に平気で互いを巻き込むだろう。
力に酔った頭ながらその位は理解している。
しかし、だからこその遠距離の飽和で、魔具で担保されたそれで十分なはずだった。
「—――ガァッァアアア!!」
しめるように苛立ちを示す魔具による『化生変化』の咆哮が少年を吹き飛ばすだろう。
効率化した魔具使いとてもちろん無尽ではない。
次の飽和攻撃に向け、仕切りなおしとばかりに。魔具を
―――散々たる破壊の余波に辺りに、土煙が立ち込めている。
「ぜぇ……ぜぇっち、ひらひらとしぶといわねぇ。まだ生きてるなんて……っ」
「糞爪女、てめぇのせいで俺の槍の狙いから逃げちまうじゃねえか!!」
「うるさいわね!あんたの槍こそ無遠慮に突っ立てて進路の邪魔なのよ!!」
襲撃者が苛立たしさ舌打ちをする。苛立ちに互いに罵倒をぶつける。
飽和攻撃である。なぜ凌がれているか、理解できない。
彼ら彼女らにとって、きっと手にした力は絶対であるのだから尚更だった。
「はぁまぁいいわ。いつまで逃げまどってもどうせ嬲り殺しよ」
上級魔具が自動的に周りのマナを変換して、体に還元して活力へと変わっていくだろう。
魔具使い達がそれぞれに構える。次の蹂躙に向けて。
―――そんな猶予は、この残酷な世界においてきっと致命的で。
『ネイキッドソード』【精霊術:アプドゥ】【超俊足】
ブワッァ!
「は?」
瞬く間、煙を突き破って迫る影を目視する。
爪の女は困惑する真っ白になる。魔爪には
まったく頼りにしていないが、化生変化の魔具使いによる嗅覚・聴覚の感知もあったはずだ。
『絆の双刃:デクトーマ』
獲物との確かに距離は開いていたはずだ。あの炎の感覚は未だ土煙に揺らめいている。
なのに。
「がっ……!?」
爪の女の疑問悲鳴さえ遅れて、そしてハラワタに掌底を喰らう。
どこか触れられたような感覚がある。
白中する頭の中、同じく反応の遅れた襲撃者達がそれぞれの蹂躙を叩きつけただろう。
ギィイン!!
若葉の少年は肉薄から、封された長剣に斬り流れて、再び距離が開くのである。
「錬気が甘い。反射でゆるゆる、こんな殴ったくらいですぐに吐き出てオドつかめた」
ステップを踏んでの倍々、緩急騙し技、例えば和洋折衷の侍女が得手である瞬歩とは違う。
若葉の少年のそれは瞬発力に遥かに劣るが、速さを錯覚させる術を知っていた。
「こんな程度で?素人?本当に呼吸してる?飯食ってる?そもそもあんたらちゃんと生きてるの?」
「こぉのクソガキっ……!!」
そして、煽る挑発する。
敵が冷静にならぬよう、なぜ肉薄されたに拘わらず斬られずいるかも考えられないように。
仮にも熟達の域にいる彼にとっては、これから起こる事の対処法など幾らでも思いつくゆえに。
爪の女は、容易くその挑発に乗って己が感情任せに魔具を過稼働させようとして。
―――ボォォオン!
それは劇的だった。
魔爪を向けた女が、それこそ魔具を中心とする如く激しく燃え上がるだろう。
「あつっ!?えあ、痛いっ、なんであたし燃え、って!?」
痛みに、恐怖に、困惑に力がこもる、ますますに空転する。
身体が抗おうとするそのたびに、湧き上がる炎の勢いは強くなる。
皮膚爛れ、体液が蒸発し、渇き渇き取り返しのつかないことになっている。
それだけが彼女にはわかる。
「お、おい」
「なにやだどうなって!?いや、やだ痛いぃいいいい!!」
爪の女はがむしゃらに、炎を畏れ掻き消そうと無様に地面を転げまわるだろう。
もちろん内から湧き上がるそれには、哀れで無意味な抵抗である。
この手妻に抗うには、あるいは惑わされず調息で身体を沈めればいい。『魔具』を
そもそも肉の
痛みに弱い。覚悟などない。感情任せに任せるからこう連鎖は止まらない。
それこそ結果は"薪"の如くである。
「あたしあたしあたしあたしの身体が、誰か!?何とかしてよ、ああああ来ないで来ないで!!?」
―――『AIDA:
爪の女は悲鳴を上げ、己が内に潜む共生者と声を上げるが返事はない。
恐怖を振り払おうと魔具に頼り力を籠める程、それは止まらない。
これは魔具に、オドとマナそれに
ただ、一工程"炎に変換する"様に、と。
儚紅の幼子の得手に繕ってもらった
「がっ」
『ネイキッドソード』
畳み掛けるように串刺しに抗いに転げまわる女に、封された布巻きの倭刀が突き立てられる。
怨嗟に魔剣の成りかけだ倭刀が封されたまま炎が染み渡る。伝播しその内に啜り秘める。
それは彼が二級品の愛剣とは違う。その一人狼の牙はミスリル細工の特別性である。
マナに対する媒体としての容量のケタが違う。
"炎を収奪し、媒体として貯める事ができる"
すでに目の前の連中は眼中にない。次に備えて、だ。
「つぎ」
「な、な、ななんだよこいつっ……!?」
若葉の少年は啜りきったそれを、炎の尾を引く様に抜いて倭刀を構えなおした。
襲撃者達が一斉にどよめくだろう。
一方的に狩る側だと思っていたこれに、その残酷の裏返しに、である。
いくら数がいようと、畏れた羊の群れであるならば、きっとまるで脅威にならない。
【魔器呪印:
それは、彼が与えられた
少年は少年の未熟故に、ここまで活かし巡らせてくれた
吐き気がする。
恩知らずな事に、無垢な幼子さえ利用して、彼はこんな悍ましい手段に転嫁してしまった。
きっと、先に背を押した勝気の少女も、このやり方"呪印"を叩き込んだ
何より、かつての在り
外道のやり口、
若葉の少年はそんな吐き気を噛み締め、噛み締め、飲み込んで。
思い浮かぶのはこの歪な倭刀の持ち主、吸血鬼に黒コートのオオカミ女。
遠い遠い最前線の光景。
「多い多い多すぎる。こんな場所でも敵、敵、敵だらけ侵略者が、どこもかしこも、まるで影みたいについてきやがって」
【
しかし、周囲をにぎわす満ち足りた敵意に、その瞳を見開いてただ腸の内を吐き出すだろう。
先に身に刻まれた最前線の、その一端に無様に負かされた。それでも殺すべき敵である。
この残酷な世界に"都合のいい覚醒"などありはしない。
故に
「連帯責任。『セレクティブ』の情勢も、お前らがどういうつもりで動いてるか知らない。ただ見かけたら全部奪ってやる」
何かから誰かから、"収奪するしかない"だろう。
例えば、それが目の前の連中と同じだとしても、狂羅の輪廻に導かれるままに彼は止まらない。
それは荒々しい侵略的な炎の如く弾けた泥炭というか、そういうもの具現が。
覇濤の街に轟轟と咆哮を上げるのだった。
感想を燃料にツミキがやっと一個積めた!
覇濤編完結まで積んでくぞー。