ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】 作:きちきちきち
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―――混沌と炎上する覇濤『セレクティブ』
勝気の少女の鋭敏な耳が、戦場をとらえる。
小麦色のサイドテールと白磁のクロークを揺らして、指先が遥か空を目指す。
儚紅の幼子の手助けを借りて、鎮守府の港に係留された船体が連動するように駆動音を上げる。
今や彼女の艤装に付随するように、緋色の円環陣が回って彼女のそれを支援している。
そこに見えるは空から落下傘を装備し、降下している
どうやら弾丸の如く投射されるまま壁を越えてきたは一部の精鋭、命知らずだけらしい。
先行した精鋭が荒らし橋頭保を作る間に、技量が危うい後続は布の
彼らが用いる機巧戦術、蛮勇を用いた使い捨て破城槌、『弾丸旅行』とはそういうものだ。
―――『傭兵国家グレンダン』
傭兵国家においても磨かれた蛮勇は無限ではない。弾数が、限界がある。
一般的に彼らは戦争を習わいとする。戦争は自殺ではない。求めるは名声と略奪である。
連中は何もかも飢えた餓狼でありながら、
つまりは、臆した後に続く連中は、混乱に乗じて取りつこうとする練度の足りない的であり……。
「
『軽巡洋級:クリーブランド』【対空配置:パッション・テンポ】
勝気の少女の深紅の目が鋭く、風に白磁のクロークが揺れる。
いつもの観測砲撃ではない直射狙い。しかし、背を押された今ならできる気しかしなかった。
己が船があるのは、海属性も薄く波もない穏やかな湾の中だ。砲撃の難易度は大きく下がる。
そもそも、目標も己も揺れまくる外洋がひどく過酷なのである。
「—――ビンゴ!!
【強襲指令:全弾発射】【円環の導き】【μ装備:初恋のビート】
少女は、指揮棒の如くその手を指を振り下ろす。
人艦一体、離れているのに感じる一体感に陶酔しながら、波に合わせて彼女は唄う。
彼女が信じる、彼が信じる、己を海を鋼を讃える歌を。
そして大小重なる二十の覇剛音、彼女の号令に従って、重なった砲火が戦場を揺らす。
その結果の先が示すのは。
―――ヒューン………!
「砲撃音?!どっからか狙われてるの—――」
「あわてるなコケ脅しだ。これは奇襲だぞ、こうやって先鋒も調子よく荒らしゃあ―――え?」
「う、うわあああああ!」
物騒な
副次効果、その幾多重なってが砲火の掠めるような流線に、
空気とマナに増幅された熱に殴られ壊れる。破ける。そして堕ちるだろう。
それぞれ余波に、四肢を壊され、落下傘を破壊されバランスを崩した機巧共が墜落するのだ。
「うああどこ、から、どこから撃ってきやがった!!」
彼等は
そんな未熟者の、不意に叩き落されたその末路は言うまでもないだろう。
爆発する景気よく火薬の花が彩る。これが『覇濤首国』が誇る『鋼船』、洋上の城。
砲撃特化である彼女が『軽巡洋艦:クリーブランド』は小型の部類でありながら―――
その船体に計"二十を数える大砲を備えている"。
海という底知れぬ環境に育まれた"怪獣達"を仮想敵にした、陸では破格比類なき火力である。
「よっしゃ渾身の砲撃!やりかえしてやったざまーみろだ、あんがとなリコ!!」
「ん」
パチン!
勝気の少女は成功に指を鳴らして、それを手助けしてくれた幼子に礼を言う。
少なくとも襲来した
まさしく一網打尽、後続も飛んでくるだろうが。圧はかなり減っただろう。
しかし、このままここに留まって固定砲台をするか?
【りヴぁいあさん・ししゅてむ】
否、奇襲により初動の対応が遅れたとはいえ今、襲来している大隊規模の
(そうだ多分、きっと、何かまだ隠し球がある)
【メンタルモデル:旗艦】
その位は
緊張に掌を握る、しかし、それを判断するのは己ではない。
舵手を港の方に向けながら。
『—――てーとく聞こえるか?こちら第十三水雷戦隊旗艦"クリーブランド"、応答願う!!』
『—――ん?!クリーブランド君か、
『—――いや、ちょっと違うけどリコに手伝ってもらって動かせてる。てーとくは今どこにいるんだ"カッシン"と"ダウンズ"は!?私は何すればいい?指示をくれ!』
【覇濤提督:テレパスの素養】
枯れ木の提督と通信を取る。
これはだだっ広い洋上で、身の丈に合わない巨体を操る船娘が、『阿頼耶識』にもたらされる情報処理と海の広大さに自分の居場所を見失わない様にするための機能である。
"提督に選ばれる人材は”総じてこれの素養を持つ。
状況に慌ただしくも、それはそれとしていつも通り、芯通った落ち着いた声に安心するだろう。
『—――鋼船との仲介と制御、あの幼子がそれを、
『—――ン、あのときとおなじ嵐が来た、みたい』
『—――おぅドームの外はすげー騒ぎみたいだな!クリーブの兄貴も無事でよかったぜぃ!!』
【凡人提督】
距離の壁を無視して、"艤装"と"鋼船"の通信仲介の成したという。
枯れ木の提督は職業柄つい浮かんでしまった。懸念を咳払いでごまかしながら話を進める。
『—――今は来賓として、『平和の歌姫』のコンサート会場のいる。彼女は聖錬全土に影響力がある【覇濤魁湾】の
枯れ木の提督は、淡々と今の状況を語る。
「これは喧伝して、融和のきっかけとなるはずだったんだ。だから、『セレクティブ』からも結構な有力者達が参加している。だから、これがもし"過激派"の仕業なら攻撃対象になるだろうね。いや、逆に仕掛けざるを得なかったのか……』
「じゃあ
『—――いや、ここにはすでに別の駆逐艦が会場のドームに横付けしてるし、傭兵クラン『赤ずきん』の護衛達がいるから問題ないよ。”陸”は彼らの方が向いている。他の提督たちも動いている、とにかく君が外から見た情報を状況を説明してくれ』
【政治知識Lv3/5】【議事録の鬼】【老練の経験】
餅は餅屋、陸の戦いは"傭兵"や冒険者に。
『対魔戦争』が英雄を起原、彼らは歴史は長く海での専門技能を備え、童話に準えた役柄事に備えられた専門性にて無類の信頼を誇るのだ。
『—――報告した違法改造船娘 レヴィ……、
『—――距離は』
『—――沿岸三十km、今は襲撃の時に沖にいた”商船群”が湾の中に退避、あたしの船体は港に移動しながら今それを哨戒の小艦隊と一緒に援護中だっ!』
『152mm三連装砲』【対空配置】
勝気の少女は報告をしながら、特攻を仕掛ける迫る
砲弾の段階射で、その巨体と子機を寄せない様に手数に戦術的圧力を形成する。
近海の哨戒である、今仕掛けてるのは小型の"軽巡、駆逐艦"だけだ。
当たり前だが、鋼船は大きくなればなるほどコストがかかり、『戦艦』や『空母』などの"主力級"達は、普段は使いには動かせない。
海運によって非常に豊かな『覇濤首国』とはいえ、普段使いに動かしたら干上がる。
そのための時間稼ぎ、初動対応である。
故に相応であり即応、普段使いしやすい駆逐艦、軽巡洋艦の意味はここにもある。
時間稼ぎ小口径、中口径の火砲の火花が彩る。しかし先の遭遇戦と同じように容易くは抜けない
おそらく、有効打を与えるには魚雷の射程に肉薄するしかない。
しかし、その甲斐もあってそろそろ『空母』と『戦艦』の動き始めるだろう。
鋼船の本領、それさえ動き出せばこの状況とて―――
『—――待って、てーとく、強襲から10分程度で?一般人がその退避判断を?』
『—――え、確かに、言われてみれば余りに迷いが、なさすぎる』
【秘書艦】【真珠湾の涙】【白昼夢の天秤】/【凡人提督】
黒濡れのポニーの少女が呟く、海からでもセレクティブが襲撃されているのは見えるだろう。
渦中の中、確かに本当に湾内が安全だと判断し、舵を切る退避するのも確かに選択肢だ。
だが、しかし何にしても、一般人にしては、余りにも、安全圏を判断するのが、早すぎた。
『—――イカン!!これは陽動だクリーブランド君っ!その"商船"に威嚇砲撃を許可する止めたまえ!!』
「お、おうわかった!!」
初老の提督が焦りに叫び声を上げて命令を叫ぶ。
しかしほぼ確信がありながら、撃沈まで判断を下せないのが、将たる彼が凡人故だろう。
そう、遅かった。すでにそれは"五瀑"に向け要塞化された湾内に入っている。
「—――お、バレちまったか、まぁうまくいった方だな」
『偽装商船隊』【トロイの木馬】【戦場の勘:スターゲイザー】
『機巧操り』が鋼の鎧を纏い、鈍くなったゆえに発達した超常的な直観というべきか、
まるで
―――ぴしっガコン、ズォオオンン!!
"商船"に偽装された3隻もの帆船が艦首を中心に爆砕し、人為的な自沈を引き起こしたのだ。
それは事前に決められた列車砲の
この大規模案件に『傭兵国家グレンダン』の上層氏族が念入りに計画を組み立て、入港の時間を調整した。
一般商船に偽装し隠された切り札である。
「……んっな?!」
勝気の少女は、予想外の事態に困惑するだろう
それは計画された自沈元々、そういう仕掛けだろう、船底に敷き詰められた
爆砕で音が感知できない。海属性に、その裏の光景は幕で閉じられる。
「船派手に沈めて、大波起こして動く壁作りやがった。んなことより、あいつら何てことしやがるんだ!!」
ワンオペで船を動かせるのは『メンタルモデル』のみ、それが常識である。
【―――『ヒューマンデブリ』—――】
つまり、当然、あの使い捨てられた商船にも船乗りはいただろう。
彼女は海の上で、そういう使い捨てされる存在を知っている。
きっと何も知らされず、何も与えられず、
彼等は焼けて、砕けて、溺れ死ぬ、溺れ死んだだろう。
「ふざけるな」
勝気の少女は『覇濤』に住む者刻まる共通の恐怖、痛みと恐怖と無念を熱く吐き捨てる。
怒りも鋼の冷たさにひやして指揮棒たる手を動かす、応じて背後の電子円陣が回る。
外付けの演算能力に渾身を、そのまま鉄船と連動して狙いすまして、その全砲門をもって。
「ファイア!!」
ド、ドドドォン!バシャ……!!
【砲華の鉄城】【強襲指令】【円環の導き】
―――そして多段砲撃をもって、迫る”津波を解体”して見せた。
そう、大雑把な飛沫と変える。
冗談のような出来事に聞こえるだろう。しかしこの大波とてマナ現象に増幅されたモノだ。
手助けを流れの根本を、波及する流れを吹き飛ばせば、そういう事もできる。
大波の破砕、壁としていた波の暗幕が晴らされて、その裏側が覗いた。
その飛沫の影から、襲撃者の本命が飛び出すだろう。
「ハハッ、波をバラすとかすげぇな!しかし取りついたぜぇ!」
「—――フン、予想以上に対応が早いな。ド派手な歓迎してくれてるじゃねえか”アサルト
「了解、旅団長」
【戦術機動:環境迷彩】【ヒップホップバウト】
―――そこからの動きはまさしく異次元だった。
本来なら津波を壁にして接近するつもりだったのだろう。
あっさりと、その
そこからはまさしく稲妻の如く、転換するのである。
「ッ—――あれも敵か!」
「随伴駆逐、対空砲火、展開っ!絶対に私達の港には近づけさせない!!」
『高射砲』【水雷戦隊】【ユーハブ/アイハブ】・『スプリットミサイル』【機巧繰り】【憲兵】
警鐘が鳴るより早くすぐさま歓迎の火器が熱烈に、更にこの混沌の『セレクティブ』を揺らす。
鋼船の火器のハリネズミ弾幕の中を、暖簾を潜る様に、速度を落とさず接近してくる。
侵略的な鋼色、マナ色の世界の空をまるで引き裂くような機動で飛尖が、巻き上がる海属性のしぶきをも、足場に多段加速して迫るのだ。
しかし、
相手は確かに円卓が地獄の如く楽園を、
生き抜き仕事を成したエースを中心とした機巧小隊である。
「なっはや……!」
「いっだ、いやァ?!」
『空戦機巧:ゲルググ・メナース』【円卓旅団長】【ランナーズ・スパークハイ】
『鋼船』の直掩機として、
海から湧き出る妖とドローンに水際で対処していた
鏑矢の如くその機先にそれが通り際の駄賃とばかりに一射、一振り、一殺で抜かれる。
【クイックブースト】【躯体制御:
ドォン!!
再加速。
ついでとばかりに、旗艦たる軽巡洋艦が艦橋を蹴り抜かれて、それを足場に踏みつけて沈み込んだ海の張力の返りタイミングも読んで、さらに飛ぶ。
戦隊による情報連携、高度に連携するが故に、痛みに緩んだ弾幕の網を。
「"アサルト3"、陣形を切開する」
「ひゃっはー!!より取り見取りって速ぇえよ、旅団長っくそ負けてたまるか!!」
【
続く小隊機巧が、容易く踏み越える。
まるで傷口をこじ開けるように、行きがけで確実に"鋼船"の武装を壊しながら。
船を足場に踏み蹴り飛んで、ブーストを吹かして突破するだろう。
ドォオン!!
それを背景に、突然隊列を組んでいた駆逐艦が一隻が爆発し沈み始める。
「—――ここで無残に散った命の嘆き忘れ」
その特徴的な大鎌を振り上げて。
「『魔王領』の尖兵共にかどわかされ安寧を享受する裏切り者たちに、今、裁きの時がきた!!」
『海戦機巧:フォビドゥンブルー』【覇濤残塊:ザラ派】【復讐するは我にあり】
蒼蟹の如く機巧、水中から大鎌を振るい、艦艇の船底を切り裂きながら浮上する。
それは聖錬大企業が一つ、”シェリーインダストリー”から供与された海戦機巧が一つ。
環境に最適化した最新の先鋭機、それを駆るのは富や栄光等に目をくれず、ただ復讐を求める歴戦の古強者。
そして。誰よりも高く飛び、鮮烈に降り注ぐと飛尖が蒼空を貫き。
「—――ぼくが……ぼくが、やらないと」
【舞い降りる剣】【ハイマットフルバースト】【マルチロックオン】
太陽を背に、瞬時同時の精密砲撃が、コンサート会場の護衛を正確精密にぶち貫く。
「皆がっ!!」
『戦術機巧フリーダム』【
空から自由の翼と呼ばれた。鋭利な多数の砲塔、どこかヒロイックな機巧が舞い降りる。
正確に、武装と四肢のみを吹き飛ばすのは、並外れてイカレタ技量を示すだろう。
自由の銘を持つ白と青のコントラスト、汚れた希望を背負って中心に象徴として、今ここに降り立った。
陽動を伴った”精鋭”での一点突破、纏めてしまえばそれだけの事。
ただそれだけでは片づけられない圧倒的な突破力、雷の如く、『鎮守府』に憑りつき、『平和』を関する歌姫のコンサート会場を
そして、その光景を見た誰かが叫ぶ。
「……あの動き、間違いない!あれは……あいつ等は『エース』だ!!」
―――
『エース』という存在、好敵手以外では死にはしない、
戦場に語られる都市伝説の様なものだが、こうして平和を蹂躙する光景にて、その実在を威容のを示すだろう。
覇濤首国が歴史の一幕『セレクティブ事変』。
その鋼と火薬の匂いはより、よりその濃さを増していくのだった。