ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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日常【前篇】

 

―――田舎町【ラインセドナ】。

 【聖錬】における汎用の田舎町で、戦闘特化の冒険者として活動しているカイトであるが。

 だんだんと技能を持つ知り合いが増えて、彼の生活習慣も多様になっていく。

 更に何故だか彼には個性的な知り合いが多く、共同しての依頼も個性的な物であるのだが。

 

【妖精術:サーチャー】

 それを切り取って、幾つかの光景に纏めて記録する事とする。

 

 

―――【外れの自宅】

 

 

 太陽はまだ出て間もない、そんな早朝の時間の事である。

 彼等は夜は基本的に早くに就寝する為に、こうして早くに活動する事が多くなる。

 主に、田舎育ちで明りになる魔法石をケチった貧乏性が残っているせいだ。

 

 これはカイトの日課である鍛錬の時間、その一幕である。

「んー、今日は曇りか、面倒だから雨は降らないといいな」

 今日の空を眺めて彼を眺めて、呟いた。

 自分の家を持てるようになり、そこには庭もあったので、鍛練に郊外へ足を延ばす必要がなくなり時間を節約できたのは、嬉しい誤算であった。

 

 まず一通りのに柔軟を十分行って、身体の駆動を十分伸ばして、一応周囲に人がいないか確認した後。

 ホルダーから剣を片方だけ取り出して、構えた。彼の”二刀流”は極端な重心移動を混ぜる為に、対人戦想定以外の鍛錬では邪魔(ノイズ)となるので片剣だけである。

 

 そしてそれを。

「―――ッフ、フッ、フッ!!

『相鉄の双剣』【魔法剣:Lv2】

ブォン!ブォン!!

 とにかく愛用の剣を虚空に対して振るう。それは”親友”の過去の指導の記憶の残滓で基本としている。

 現在の唯一体系付いた修練方式(メソッド)を持つ、先輩冒険者”カルデニア”のアドバイスや内容やペース配分などを参考にして素振りを行っていた。

 素振りは一刀で行った方がいいと言うのも彼女のアドバイスである。

 オドを隆起させ、魔法剣を時折付与・解除の動作を繰り返して、その抵抗と揺らぎを確かめ、攻撃性の維持を行いながら。

 両手に神経を張り巡らせ、経絡の流れに気を張り巡らせながら、握りに直に還ってくる感覚の変化に合わせて、最適を模索していくのだ。

 

 基本基礎(カラテ)を重要視する一部の精鋭候補ならば。

 ”魔法剣”を使わずに基礎を身体に染み込ませるため、素振りを主に実践するだろうが。

 彼の認識はそこまで極まっていないので、派手な技能である”魔法剣”に傾倒するのも仕方のない事である。

 

 彼の魔法剣の精度は、自身のオド特性”固有魔法”とも呼べなくもない”蛍火”の理解が深まった。

 それもあって、初期の頃から比べ物にならない程度には向上している。

 今はまだ予備動作や前提が多いとはいえ、”蛍火”を活かしてマナ環境に満ちる、精霊なども鱗の様な仮想刃に鋳造できるようになったのは、”魔法剣使い”としてはかなり前進していると言えるだろう。

 しかし【火の担い手】や【風の担い手】などの合一とした可能性には、まだ遠いのも事実である。

 

 丁度、百程度の剣が空を斬り裂いた頃、建物の方から一人の人影が現れる。

「おーっす、相変わらず朝から早くから精が出るわねカイト」

「ん、おはよー。ローズ」

 最近、住居を同じくする事になった彼の”相棒”であるローズである。

 田舎育ちのサイクルと貧乏性が染み付いた彼より、彼女が活動を始める時間は少し遅く、女性である為に身嗜みを整える時間も必要だった。

 それでも一般的に自堕落である冒険者に比べれば、すこぶる早くはあるのだが。

 時折、それぞれの気分と都合に合わせて、先輩冒険者のカルデニアを主に、知り合いがここに加わって鍛錬を行う為に様々な様相になる。

 

「ぬー、ねっむいわー。曇りの日は何時にもまして朝きついんだけどー」

「まぁそうだね。何時も通り朝の眠気覚ましのお茶入れといたけど、ちゃんと飲んだ?」

「ちゃんともらったわよー。ありがとね」

 彼女がそうぼやくのに、苦笑しながら頷いた。

 カイトは一人でプライベートが完結していた今までとは違い、他人が行動を映す鏡となって。

 嗜好品にも手を出すようになっていた。安物だが、お茶などもその一種である。

 

 彼女が、同じく身体を伸びて柔軟体操を行うその背後で。

 彼は、いつものハ調ラ音を鳴り響かせて、向き合うと決めた【黄昏の腕輪】を起動させた。

 流石に一人の時に試すのは危険であるので、了承のある知り合いがいる時以外には試す気はない。

「1・2・………」

ガシャガシャガシャ。

 目標は”腕輪”の展開時間である、三秒を何度か展開・収束させる事で短縮できないかの試みである。

 実際使うとすれば、実戦でこの三秒間は余りに重たいのである。

 

「―――3。問題なしだけど、変化もなし、か」

【黄昏の腕輪:完全展開】

 結論から言えば、砲塔である”電子装甲束”の展開自体は慣れと環境によって早くはなった。

 しかし、この腕輪の特徴である【紋章砲】(データドレイン)による、破滅的な電磁吐息の、引金を感覚的に感じるのは、どうしても早くて三秒程度の時間を必要としている。

 

「さて注意して、万が一が無い様に……!」

【紋章砲:空撃ち】

―――ドォワウウン!!

 弾丸を装填され、今にも放たれそうな兵器を、そのまま解体しては危険なのは誰にでもわかる。

 細心の注意を払って臨界状態の”紋章砲”を、大地に放って雑に削り取り処理をして。

 その後に”電子装甲束”をマナに溶かして、”腕輪”をカイトの身体に格納されていく。

 

パチィパチィと泡が弾ける様な音がする。

 その際のオドの減り方は、そう多い物ではなく、下手すれば彼の未熟な”本気の魔法剣”より少ない。

【代償燃焼:血液】

 だが、代わりに軽い立ち眩みに襲われる。正体はわからないが、他の何かを代償にしているのだろう。

 それを除けば、この魔具の費用対効果の殺傷力だけはやたら高いのを、再度実感できた。

 ただし、臨界に時間が掛かるのは仕様なのかもしれない、とため息を付いた。

 

 

「どうにか活用法は別に考えないとダメかな、さて、もう一度」

 人体改造を伴う上級魔具は、使えば使う程、馴染んで使い手を改造するものである。

 それはまるで無機質に、神経が通って行くと表現していいだろう。

 同じように不本意に上級魔具の類を扱う事になった、知り合いの”マーロー・ディアス”の経験則からの言葉である。

 彼の言葉は、魔具との向き合い方と言う意味で参考になる。

 

 再度、”腕輪”を反復練習に展開する。【紋章砲】にもクールタイムか、”臨界”はない。

―――ガシャガシャガシャ。

「おっと、何やってるのカイト、そんなにガシャガシャ煩くさ」

「んー、ただの大砲だけだと使いづらすぎるから、どうにかできないかなと。装甲帯の展開は早くなるからさ」

「ふーん」

 ローズは大剣での素振りを中断して声を掛けて、彼が答える。

 もう一度【紋章砲】を放つのにどの程度時間が掛かるかは不明、限界性能を試すのはまだ怖い。

 その言葉の通りに少しずつ”電子装甲束”から、外界の感覚を微かに感じ取れる。

 そんな錯覚を憶えていた。

 

(この装甲束は物理的な干渉力はあるけど、どう活かしたものだか)

【黄昏の腕輪:収納】

 頭の中に幾つかの考えを浮かべながら、無滑稽な物をその中で却下していく。

 結局は、手始めは単純な事をしていくしかないだろう。

 

「”腕輪”しまったって事は、もういいのね。何時ものいってく?」

「はいはい。お手柔らかにね」

【二刀流】【魔法剣】【精霊術】・【闘牙剣】【錬気法】【頑強】

 その声と伴に、お互いに得物に布を巻き付けてを構えて向き合い合図とともに斬り合った。

 朝の時間が余る様ならば、彼等はいつも通りに模擬戦による修練を始めるのだ。

 現状の彼等の勝敗率は、慣れを併せて自重を緩めてもカイトが三でローズが七である。模擬戦の範疇では初期のころから改善の見込みはない。

 

【ダンシングヒーロー】

 鋭くなった始動の大剣の斜めに割居る様な横薙ぎ斬撃を、片脚さえ浮かして受け流して、伸びた腕筋に隙間を縫うように踏込み、懐に入ろうとする。

 

【打ち返し:反動制御】

 彼女の方も以前大会で交戦した侍風の男”砂嵐三十郎”から学んだか、持ち手を工夫して反動をいなし、素早く”斬り返し”を放つ。まだ掬う様な不恰好さだが、それでも質量物が返ってくるのは洒落になってない。

 

「っちぃ」

バァン!!

 ……なので、最初の斬撃に付着させていた小精霊を、彼女の顏付近で起爆し剣筋を歪めに掛かった。

 

 

「っく、大剣で、斬り返しとか洒落になってないんだけど…!?」

「ごほっ、そっちこそ何もなかったら、これ露骨に顔狙ってたでしょ!」

【精霊術】

 これは攻勢への付箋であるはずだった。できればここで切りたくはなかったのだが。

 後は交代するローズに、追い縋るカイトと言う何時もの構図ができる。

 

 彼がうまく凌げている場合には、金属の接触音が不規則に長くなる。接触を長くし分散させ歪める為だ。

 彼女がうまく攻勢を維持できてる場合には、金属音が短く甲高く響く物だ。

 

 今日の鍛錬ではその中間の様な、剣戟の協奏曲を奏でている。

 

(ちょっとずるいよなぁ…っ)

 内心、その種族差によるフィジカルに、少しだけ愚痴る。

 彼女の剣腕が上がったのは勿論なのだが、肉体の力強さと頑強さは、食生活が改善して行く度に増しているような気がするのである。

 その剣圧が頼もしすぎて、苦笑するしかない。

 

―――続いて、響き渡る鈍い剣戟。

【闘牙剣:スマッシュブロウ】

 時折、小さく息を吐く様に彼女は波撃を乗せてくるから厄介だ。

 そのおかげでこちらは毎回必死に身体の至る重心を回して、真面に受けずに必死に凌いで脚を進める。

 横をカチ上げ、沈め、その隙間に身体を潜らせる。二刀流剣士の彼は、小細工ばかりがうまくなる。

 

―――ッチッチチ

 彼の”精霊術”は実践式である。握りを少し加工を頼んで空属性の指に力を籠め流せば、微かな音が響く。

 術式と伴にそれを信号に”共感”を行い、魔法剣でもばら撒かれる”蛍火”に惹かれる、小精霊を少しずつ組み立てるのだ。

 同時並行で組むのは半端な負担ではないので、未だに安定した物ではないのだが……。

 

(鍛錬の時くらいは安定して組めないとねぇ)

 これが可能になったのは、”謎のツインテールの少女”に矯正パンチもらって以来に上昇した精霊術。

 挟み込む様に、ばらして組んでいた鱗状の小精霊と、自身の”蛍火”を噛む様に固着させて。

 

【闘牙剣:オーラファング】【打ち返し:ウェポンガード】

 ローズが仕切り直そうと流転するオーラを纏わした、大剣を盾に進撃する殴打を真向から。

 

「―――ちゃんと防いでよ。シィイイ!!」

「なっおも、あ!?」

【魔法剣:爆双竜刃】【精霊術:使役精霊】

 潜る様な身体の運びと、双剣の振りと伴に合わせて砕く事で”疑似魔力撃”の威力を強化し、不意を突いたとはいえ、ローズの大剣を初めて真っ向から弾き返した。

 連鎖して疑似刀身が砕けたる為に、衝撃と伸びが特段に強化された威力重視の魔法剣である。

 今までと同じ方式の魔法剣だが、少しずつ能率を改善し、時には改良を施しているのだ。

 

 それの反動を受けながら無理に動き、そこでもう一歩大きく踏み込んで、彼女の首元に刃を突き向け。

「はい、これで今回は僕の勝ち、だね」

「うーっ、悔しい。カイトに力負けするなんてね。どうやったのさ」

「力で勝ったわけじゃないんだけどな、連鎖破裂させて打ち払っただけだし」

 と言うよりそもそも、付与していた”魔法剣”の付与・維持は先ので剥がれた為に、実戦なら【頑強】である彼女の首元を貫くのに、時間が掛かり、反撃を貰っていただろう。

 彼女の身体スペックは、そろそろ本当に理不尽であった。

 

 互いに武器である得物をホルダーに仕舞い。少し休憩を取る深呼吸して強張りそうな経絡を解した。

 

 そしてあいにくの曇り模様でわかりにくいが…。

 相当時間が経ったか、街に陽が昇り辺りが相応に明るくなっている。

 

「よし、そろそろいい時間ね!メシ食べてさっさと仕事行きましょうか!」

「はいはい、ちょっと待ってねー。作るの僕なんだから、一人の時はどうしてたのさ」

「パン肉挟んでそのままよ。しゃーないっしょ、アンタの方がうまいんだからさ」

 といっても、彼が作るのも、目玉焼きと肉サンドイッチと、根菜と豆類煮詰めた簡単なスープでしかないのだが、大体20分くらいで出来上がる。

 最近、ゴルに余裕が出来、”ミルタンク”の安いチーズ位は追加してもいいかもしれないと思い始めている。

 一人だと絶対ケチっただろうが、身体は資本であるし、貯めておけば保存食にもなる。

 

「カイトはやたら塩加減だけはうまいのよねぇ…、なんでかしら」

「まぁ田舎だと岩塩が唯一の調味料だったからね。それ位しか工夫する所ないし」

 こちらだと、もうちょっといい塩が使える。

 ”親友”にも褒められた、彼のほんのささやかな特技に一つである。

 

 こうして朝食も終わり、今日一日に対する準備を済ませて。

 

「カイト―、戸締りすんだー?」

「ばっちりー」

 そんな掛け声と伴に、冒険者ギルド”ヴェルニース亭”に依頼を見繕って受けに向かう。

 ”相棒”と居を同じくした副次効果に周囲も同じく冒険者(ごろつき混じり)である為に毎回、ある程度警戒しながら宿屋で過ごしていたのだが。

 それが無くなった為、警戒態勢が緩くなっている為に、無意識ながら疲労の回復に効果が出ていたりする。

 

 

 

 所変わって、依頼を受けたその指定の【ラインセドナ:郊外】の草原帯にて。

 

 

 

―――中型モンスター『スターイーター』の討伐依頼。

 依頼合同者『カイト・ローズ・術師ミストラル』で、彼等は郊外で活動していた。

 事前に討伐対象であるモンスターの情報はギルドから得ており、それに合わせての対処を行っている。

 

 ごろごろ転がってくる、何か石塊に見える中型モンスター、それが二体。

 それは纏った見た目星型のモンスターであり、その見た目は海の生物である”ヒトデ”にも見える。

 その五節に分かれた触腕にはびっちり得物を捕まえる繊毛がぎっしり詰っており、捕食時にはそれ捕まえ、中央の歯の生えた口にてバリバリ喰らう、トラウマ必須のモンスターである。

 移動方法は今見た通りに、その身体を丸めての転がり突進してくる。

 速度自体はそこまで早くはないのだが、この”移動形態”時には、内側にある弱点が硬い外皮に包まれ消えるのが厄介である。

 

 

「―――ダァリャアアア!!」

【闘牙剣:スマッシュブロウ】【打ち返し】【錬気法:怪力】

 ローズがその大剣と怪力で片方のヒトデモドキの突進の進路をずらして、後は脚で躱した。

「っく、キモッ!なにこれキモい!?」

【二刀流:重心操作】【魔法剣:爆双竜刃】

 カイトはもう一方で捕食せんとがばぁと、その体躯を星形に開いて覆いかぶさろうする星に対して。

 ぎっちり繊毛が詰り、うっすら血管が見え脈打つグロテスクな内側に悲鳴を上げながら。

 

 魔法剣の反動と伴にバックステップ躱し、代わりに新鮮な炎の斬撃を喰らわせていた。

 

―――GYAAAAA!!

 身を焼かれたヒトデモドキが体を震わせて怒りの叫びを上げる。

「効いてるみたいね。どう、そっちやれそう!」

「なん、とか!内側までは硬くないみたい、片方もうちょっと引き寄せてて!」

「りょーかい!」

 彼は、あえて相手の捕食距離に寄って捕食行動を引き起こさせる事で、丸まった身体を開かせる事で。

 弱点を露呈させていた斬り付けていた。

 しかし体格差とオド相性から、中々に有効なダメージに成り難い様だった。

 

 だが、しかし。

【喰らい星】【抱擁の五節:捕食態勢】【超頑強】【繁殖期】

「よしきたっ、その身体で立つのはさぞかしバランス悪いだろうね!」

ブォン!

【魔法剣:虎輪刃】

 怒りに燃え体をくねらせ、再度取りつき捕食しようとするヒトデモドキを。

 その五節の先端の方にタイミングを合わせて跳ぶ魔法剣を直撃させ、ドシンと転ばし”裏返す”。

 しかし、これで無効化できない。反対方向に丸まって、建て直そうとするが。

 

「よし、ミストラル!」

「おっけー、まっかせてー!―――”燃え盛れ”+”墜落せよ”【火殺球】(バグドーン)!!」

【理性蒸発:精神耐性】【精霊術:スニーク】【魔術師:二章魔法】

 隠れていたミストラルが、道具と精霊術による簡易潜伏を解除して魔術を行使する。

 その墜落火球が、裏返ったヒトデの弱点である口内に直撃した…ッ!

『―――GA,gyaaaaaaaaa!!』

【摂食口:弱点】

 響き渡る悲鳴に、肉ともつかない構成物が、焼けて爛れる匂いが充満する。

 

 

 カイトより”精霊術”の才能が無いと自認する彼女であるが、やはり基礎教養を持ち術師として先行する彼女の方が、用いる術も多く幅が比べ物にならない。

 彼女が用いる最大火力である【バグドーン】は、妖精を起点にして墜落火球を生み出す複合魔術であり。

 ”属性””性質”に留まった”二章級”でありながら、最大限火力を引き出す工夫をしている。

 

「―――さぁ!二発目行くよ!」

『複製記貝』(デコード・トーカー)【魔術師:ダブルキャスト】

 そして魔導具による容赦ない墜落火球、二発目である。

 既に開いていた傷口に突っ込み更に焼き貫き、一体目の『スターイーター』を撃破する。

 

『―――GYUAAAAAAAA!!』

 だが、番いの死をそれを察したか、もう片方の『スターイーター』が体を震わせ、怒りを表す。

 近寄っても捕食態勢に移る事は余地を捨てて、その回転は勢いを増し速度を増し、その質量のみで殺そうと弾き潰そうと彼等に迫りくる。

 

【喰らい星】【身固める星:防御態勢】【超頑強】【繁殖期】

 その勢いをとりあえず殺そうと迎撃せんとする彼等だが。

 

「だああああ!くっそ硬い、ヒトデはヒトデらしく、海に居なさいよ!見た事ないけど!」

「―――シィ!だめだ、刃が通らないね」

【魔法剣:虎輪刃】・【闘牙剣】【錬気法:怪力】【打ち返し】

 先程から、囮を引き受けていたローズと合同し、二筋の”魔法剣”で勢いを多少削いで、怪力で打ち返し。

 また進路だけずらして躱すが、ぜんぜん応えた様子はない。

 ヒトデモドキの外皮はとても硬い、それこそミストラルの魔法がまともに通らない程に。

 

「全く、硬くて柔軟な事と言い、中身に重石でも入って回転させてるんだろうか、鈍いけど方向転換までしてきてさ!」

 モンスターの生物的な理不尽は、考えれば、考える程無駄であるが、愚痴も出てくるのである。

 あの質量生物による回転突撃はローズの怪力ですら、真っ向からは止められないのだが。

 一度進度をずらせば、相手の方向転換でかなりの余裕ができる。

 

「さて、予定通り逃げるよ」

「あいよ!備えあれば憂いなしってね!ミストラル落ちない様に、しっかり捕まってなさいよ!!」

「おー」

 ローズがミストラルを持ち上げて、西方向に一斉に駆けて逃げ出す。

 このヒトデモドキは番いであり、繁殖期由来の凶暴性と、その生態として卵を多く産卵する事から。

 町の近くで繁殖されると、後々厄介な事になると討伐依頼が出されていたのだ。

 見た所、卵の様な物は抱えていなかった。番の片方を始末したら目的は半分達していると言っていい。

 

「ん、着いてくるか」

―――ゴロゴロゴロッ!!

【喰らい星】【身固める星:肉弾戦車】【超頑強】

 だが、執拗に追ってくる丸まった黒く硬い外皮を石塊の様に輝かせるヒトデモドキ。

 繁殖期の気の立った時期に手を出した愚か者に、ましては番をぶっ殺したそれに怒りで進撃してくる。

 直線距離に成れば、ヒトデモドキの方が早いのである。

 

 

「”火天よ”+”響け”―――【火炎太鼓】(バグローム)!!……うーん、移動されると【火殺球】(バグドーン)当たんないしぃ!火力足りないよー」

「大丈夫、勢いを殺してくれるだけでいいから」

【魔術師:二章魔法】・【精霊術:使役精霊】=疑似【三章魔法】

 両手が空いてる為に余裕があるカイトが、ばら撒いた”蛍火”を用いた簡易的な使役精霊に。

 抱えられて運ばれてるミストラルが二章級を疎らにばら撒いて燃料起爆”範囲”の要素を後付けに、回転の勢いを削ぎ落とした。

 結果、速度を落として無事。目的の場所まで辿りつく事が出来たのである。

 

 ”事前に用意した”目的のそれから少し大回りして、構えて待機。

『―――GUOOOOOOOッッ!!』

 再度、繁殖を邪魔された怒りに任せた速度を上げ向かってくる肉弾戦車を。

ズドォン!

【C級冒険者:土方の心得】【レンジャー:罠隠蔽】

 カイトとローズが用意した単純な落とし穴に落した。

 これが、冒険者ギルドに集積された情報からの推奨される『スターイーター』の対処法であった。

 

「いよっし!成功ーっ、苦労して掘った甲斐があったわ」

 といっても彼等二人で用意できる落とし穴など、そう深い物ではない。

 磁気で周囲の状況を探知していたヒトデモドキは、それが吸収される自身の居場所に困惑して、固まり。

『GYO!?gggggg』

 その混乱のままに、防御態勢を解いてもがき這い上がろうとするが。

 その際に柔らかい内側の臓が、彼等に狙いやすい上方に”露出”するのである。

 

「いくよー!―――”燃え盛れ”+”墜落せよ”【火殺球】(バグドーン)!!」

「焼けて落ちろ」

【魔術師:二章魔法】【森眼】・【魔法剣:爆双竜刃】

 彼等の火力を一極集中に叩き込まれて、悲鳴を上げるグロテスクな捕食口を焼き裂かれて。

【摂食口:弱点】

 そのまま絶命したのであった。

 

「よっし、討伐完了♪えへへやったね二人とも。あんまりボクは大物相手しないからさ、安心して戦えたよ」

「こっちこそ助かったわミストラル、やっぱ魔術師がいると楽ねー。火力叩き込める幅が段違いだもの」

「うん、お疲れ様でした、終わったとはいえ、余り油断しないでねー」

 快活な女性陣は依頼の成功にハイタッチを交して。

 カイトはそれを見ながら緊張を解し呼吸を抜いて、こわばったオドを緩めながら、【レンジャー】の役割(ロール)に沿って軽く周囲の警戒を行う。

 なお、モンスターパニック王国では、こんな悠長な立ち回りはできないだろう。

 時間をかけて叫び声上げさせては他のモンスターに群がられるし、罠の類も用意するのにリスクが発生する。

 通り魔的に斬り棄て置いて移動し、遭遇すれば次をぶち殺すのが常である。

 

「ふー、結構手強いのだったけど、誰も怪我がない様でよかったよ。この『スターイーター』の肝は、乾燥させれば薬の材料なるからねぇ、確保できるのは嬉しいなぁ」

「うへー、このグロイの薬にするのか……」

【理性蒸発:精神耐性】【薬草知識】

 ハーフエルフである彼女は、薬学に関する知識もあるらしかった。

 結構匂いもあった、初めに考え付いた人について、畏怖の様な感想を抱きながら。

 二体の『スターイーター』を軽く解体して、スタンチップに遺伝子データを通して証明としながら。

 その肝を切り分けて取り出して、包んでカバンにしまい込む。

 

 マイペースに生きるミストラルは、兼業冒険者なのにやたら肝が据わってる気がするのだった。

 

「さて、帰りましょうか、長居する時間もないですし」

「薬の肝をもらったし、今回使った道具代はボクが出すよ。毎度ありって事で!」

「おっ、それは助かるわー、ありがとね」

 どうせ肝など、彼等に活用法はない。今回使った道具は、ミストラルの呪符の類に、気配を隠すのに使った道具に、落とし穴の隠蔽に使った消耗品位である。

 十分に黒字ではあるのだが、消耗材の補填を気にしなくていいのは。

 依頼報酬の分配の手間の意味でも助かるのである。

 

 その後は再度のモンスターとの遭遇などのトラブルが起こる事はなく、無事に依頼は終了し。

 冒険者ギルドである”ヴェルニース亭”で、受け取った報酬を分配して。

「助かったよ。またねー、ついでにうちの店もよろしくね!」

「はい、こちらこそ」

「じゃあね!」

 ぶんぶん手を振るうミストラルを背景に、別れの挨拶を告げて。

 彼らはそのまま別れたのであった。

 

 

 

 

―――【ラインセドナ:彼等の自宅】

 

 強引に持ち出された家財の不恰好な隙間を、配置を弄る事で誤魔化している。

 そんな最低限に取り繕った居住空間。

 そこの共同で取り回しが良い場所に、互いの装備を卸して立て掛けて、埃を最低限落としつつ。

 

 依頼を終え、自宅と呼べる場所に戻ってきた彼等であるが。

 その自宅での過ごし方はと言うと、学問書を読んでるか、多少広いリビングで大体ダラダラする事が多い。

 部屋は幾つか余っている位には大きな邸宅を、正直に持て余していた。

 

「そうだまだ薪に余裕あったけ、薪割りしてくる?」

「まだ大丈夫じゃないかな」

【レンジャー:自炊】

 主に夕食を作るのはカイトだ。魔物肉の収穫があり、美味しく肉を焼く以外は彼の担当になる。

 彼の料理技能は種類(レパートリー)は少なく、野性味の入って偏るのだが。

 しかし、ローズが出来な過ぎるので仕方ない。

 一度改善を試みたのだが、種族がらか、どうにも大雑把に進めがちだったからだ。

 共用の鍋をゆっくり、焦げつか無い様に掻き回す。

 

「カイト、今日のご飯は何さ」

「んー、パンとシチューだね。肉の入ったシチューなんかは、僕の故郷の家族何かじゃ月一のご馳走だったからさ、自分で作るのにまだ慣れないや」

「おいしいなら問題ないわよー」

 妙な感慨に苦笑いする彼に対して。

 至ってシンプルな答えで急かすように返してくる彼女。

 

「こっち、お風呂は沸いたわよー」

「はいはいこっちももう出来るよ、ちゃんと蓋しめてねー」

 元々ラインセドナは奇麗な水が豊富な事が取り柄の田舎町である。格安で水を汲出せ。

 元の家主のこだわりか、結構いい魔導式の”太陽熱温水器 ”が設置されており、気軽にお湯を供給することができていた。これも疲れを取るのに有用な事だった。

(正直、これが居を構えて一番大きい事だよなぁ)

 そう、彼は思っている。

 翌日の柔軟体操で身体の硬さや、響き方、経絡の脈の整えが全然違うのを実感していた。

 費用対効果は悪いとは思っていたが、頭の中だけでは測れない物もあるのだなとしみじみと考え直す。

 

 出来た料理を元々の家具であるテーブルに並べて。

「うひゃー、いつもあんがとね!いっただきまーす!」

「うん。じゃ、いただきます」

 同居してから気が付いたが、彼女は食べるのが大好きである。

 凄い勢いで掻っ込んでいくのは見ていて圧巻で、見ていて微笑ましいものだ。

 

 その後は湯浴みをして。

 残った時間を多少【バッカ-資格】と【基本知識】の習得に費やして。

 そのまま眠る。

 

 そんな感じで、今日の日は終わり過ぎていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 




スターイーター君は.hack無印に出てたモンスターです。
ファンタシースターのと混ざって魔改造してます。
書いててこいつ等Cランクじゃねぇ!と思ったけど、まあ内部上は実質戦闘特化Bランクが2人集まって、C級ちょっと足出した魔術師と連携して殴った事になるからいいか。
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