ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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日常【後篇】

 

―――あくる日の【ラインセドナ】

 モンスター『スターイーター』の討伐依頼から四日位後。

 今日の日の冒険者宿『ヴェルニース亭』は、普段にない特大の騒々しい喧騒に包まれていた。

 その原因は…。

 

「―――どぅわーはっはっ!久しぶりだな、良い眼をした人達よ!”鈍き俊足のドーベルマン”ただいま参上だ!」

「あはは……、お久しぶりです。もうこちらに来たんですねぴろしさん」

【愉壊痛快】【専門BGM所持】【ギャグ補正】

 その圧力に押されながら、大体三日前くらいの事らしいが、兼ねての宣言通りと言うべきか。

 【ラインセドナ】の町に、吟遊詩人の”闘争都市”【ルミナ・クロス】の街にて活動し、伴に大会に出場した変態巨壁こと、Bランク冒険者”ぴろし”が訪れていたのだった。

 そこに知り合いのCランクの魔術師の冒険者であるミストラルが、偶然居合わせて……。

 

「お?お?新しい人かな?んー、おっきい!もしかして君が何時かに聞いた、大会で組んだっていう冒険者かな。ボクはミストラル!役割(ロール)呪文士(マジックユーザー)のCランク冒険者だよ。よろしくね」

「おおそうとも!小生の名は”鈍き俊足のドーベルマン”ぴろしである!よろしく頼むぞ爛漫な少女よ!」

【理性蒸発】【陽気の嗅覚】

 よりにもよって、彼女と出会ってしまったのである。

 彼女は初見の対象の善悪の二極を、軽く見抜く事が出来る程度の直感を所持しており、この威圧感を持った大男も、善性を感じ取って容易に懐に踏み込んだ。

 

「ふんふんふん、なるほどなるほど、君からもレアな匂いがするねー」

「ぬ?意味は分からぬがとにかく褒められおるのだろう?悪い気はせんな!だぁっはははは」

【レアハンター】

 彼等の相乗効果で、ギルド内部の温度が数度上がった錯覚さえした。

 濃さの違いはあるとはいえ、ある種の自分のリズムで生きる同類と出会い、意気投合していたのである。

 対してカイトは、ギルド受付嬢の”ヒバリ・カイルン”の冷たい目線を感じ、温度差で風邪ひきそうであった。

(ちょっと、恨むよ……)

 なお、ローズは声を掛けてくる所で察して逃走である。

 

「それにしてもごっつい鎧だねー。どんな魔具なのかな?ボクも聞いた事ない奴なんだけどさ」

「ふっふふ!聞きたいか、そーだろうそーだろう!この【蒸気重反鎧】は小生のオリジナルなのだぞー、どうだ凄いであろう!」

「おーっ!すっごーい♪オーダーメイドって事かな、超レアだね!」

【デザイナー:錬金知識】

 互いに趣味に全力な兼業冒険者である。

 どちらも上がるテンションのまま会話のドッチボールを繰り広げていたのだが。

 その興味がぴろしの纏っているごつい鎧に移ると、互いに更にヒートアップしていった。

 

(というか、それとなく、ボクが付けた名前使ってるし)

 分りにくいからと気軽に表現した物だったのだが、何か、気に入ったらしい。

 なお、ぴろしが以前にその鎧を呼んでいた名前は『スーパードーベルマンスーツ』である。

 

 その後もカイトを若干置いてきぼりにしながら、【レアハンター】であるミストラルと。

 作り出す方に才を発揮する【デザイナー】のぴろしのマニアックな会話は続いていったのだが…。

 

「―――あー、そうだ!良い事思い付いた」

「ぬお?」

【理性蒸発】

 そんな中、ミストラルがポンと手を付いて、特有の思い付き行動である。

 何か善い事を思いついたようで、喜色を滲ませて提案する。

 

「ボクは夫とさ、この町で【A&M商店】って言う店を経営してるんだけど、何か店の印象を示す広告に成りそうなの建てようって話になったんだけどさ、もしよかったら奮発してちょっとしたもの作ってもらえないかな。君なら、珍しい者に仕上げてくれそう♪冒険者宿を闘して依頼出しておくからさー」

「おお、早速デザインの依頼であるか、任せるのである!この”蒼き曇天のイーグルマン”ぴろし!超絶美麗な造形を設計してやろう」

【商の才】【理性蒸発】

 流石に大きなゴルを動かすことになるので、冒険者預かりで依頼として通す様だ。

 なお勿論であるが、夫である”アレックス”さんにとっては大まか認識しても、詳細はこれから要検討のはずだったと思っているだろう。

 暴走列車、いつもの彼女の悪い癖である。

 

(いいのかなぁ……)

 彼はそれを傍観しながら、いつも彼女の夫さんである”アレックス”に対して少し同情する。

 カイトは数回だけ会った事があるが、気弱そうな顔で『それで結果を出すんだから、タチ悪いよね』と曖昧に笑う姿が思い浮かんだ。

 きっと、惚れた弱みと言う奴なのだろうと、他人事に思う。

 

 

 その後は、アイデアに熱中するか暑苦しい彼等を余所に。

「あの、少し静かに、ね?何が悪いって訳じゃないけど、圧力が凄いから―――」

 カイトはじとーと冷気の視線を送る”受付嬢”に、配慮して彼等を言い諌める。

 弱小な冒険者宿【ヴェルニース亭】は酒場を兼業している為にガラの悪く、乱闘が起きる事も珍しくはない。

 流石に酒乱の乱闘ほどではないが、人の眼を惹き付ける様な圧力を放っているのは、天性のタンクたるぴろしの”気配圧”の影響だろうか。

 なお、今はミストラルも併せてパワーアップ中である。

 

「おお、すまぬすまぬ。もしや声が大きかったか?」

「んー、じゃあ個室借りようか、すみませーん、今ギルドの個室開いてるかな?」

「あ、はい!もちろん」

 その声に、ほっと胸をなでおろす顏をする、受付嬢ヒバリ・カイルン。

 他の”調律器”(ハーモナイザ)が設置しているよう規模の大きいギルドの様に、冒険者と依頼人の受付を分ける余裕などないのだから、基本的に一般人である依頼人が入口で圧されて帰ってしまう可能性があるのは怖いのである。

 

 そして続けて、依頼の話を積めて。

 

―――そして十日後。

 

 凄まじい事に設計図は三日で引き終わったらしいのだが。

 そして善は急げと言うモットーそうな二人にしては以外に、次の店の定休日を待ち工事となった。

 こういう所で、変に常識的なのが、ぴろしとミストラルの暴走列車であった。

 傍から見れば【A&M商店】の店前にて、組立足場が聳えたつのが目立つだろう。

 

 

「なんかエライ事になっちゃったなぁ」

 そうカイトは呟いて、目の前の光景を眺めていた。

 彼女等の【A&M商店】の象徴(シンボル)となる広告になるものとの注文で、珍しいもの大好きな彼女の意向で、ブレーキの外されたこの”企画依頼”であるが。

 まずその高さがおかしい、本来半分の高さで済ませるつもりが、折角だから精一杯高くしようぜ!と言い出した奴がいてこの有様だ。

 

 何時かに店の関係で懇意にしていたらしい、この町にやたらいると推測される。

 【建築魔法】の使い手が混ざって、どんちゃん騒ぎを引き起こしたのである。

 なお、特殊技能はないが資材を運ぶ、若い単純労働力として彼等も依頼受注していたのである。

 その人数はぴろしも併せて、六人程であるだろうか。

 

「―――円形球体の造形するのである!小生の他に”錬金知識”持ちは居るかぁ!」

「ここにいるぞォ!!」

【デザイナー】【錬金知識】【建築魔法】

 こんなぴろしの威勢のいい掛け声に応える職人やら。

 

「しっかり溶接してくれよ、こんな目立つもん崩れたら職人としてとんだ赤っ恥だぞ!」

「……任せてとけ」

「陰陽術で錬成した塗布材塗っておこうぜ!これで錆びも平気のへいさ」

【鍛冶師】【機工知識】【陰陽術】【建築魔法】

 たんたんと部品の様な物を組み立てていく職人やらで、非常にカオスな事になっているのである。

 というか、いつの間にか依頼も受けていた、知り合いである鍛冶師の”月長石”もなぜか参加していた。

 一体どういう事だろうか、引き籠り気味な彼がどう聞き付けたのか。

 これが類は友を呼ぶと言う奴、なのだろうか。 

 

 ここまで目立つと、彼の知り合いも何となく見に来て、遭遇する事もあった。

 

「ふむ……これは、一体どういう事だ?何か祭りでもあったのか」

「あはは…、こんにちはカルデニアさん。あのその、まぁ何かミストラルとぴろしさんが、店の広告の依頼を出したのですが、相乗効果でエライ事になってしまって」

「はぁ、なるほどな。彼女ならありそうな事だ」

 マーローは喧騒を察知し、避けて行き。冒険者である先輩のカルデニアなどは、もうこの町に居ついて中々長く、当然貴重な低ランクの”魔術師”であるミストラルとも組んだ経験もあり、その性格も大まか知っていた。

 そして、話だけ聞いた奇人のぴろしとの相乗効果と理解したのである。

 嫋やかな金の髪を揺らしながら、少し引いた呆れた視線で、その様子を眺めていた。

 

 そして、資材の搬送が終わり。

 

 彼等が手を出せない専門的な項目になっても、少しも勢いが緩む事もない。

 カイトは大人しく邪魔し無い様に、同じく傍観しているカルデニアの横に座って眺めていた。

(んー、サボってる気がして、落ち着かないけど……)

 基本仕事キチである彼は手持ち無沙汰にそわそわするが、邪魔になるより余程いいので仕方ないと、己を落ち着かせる。

 金属質な球体と半透明な球体を中心に部品が取り囲んでいく。

 そもそも看板の様な物の予定だったのに、何だか機巧を詰めた機械染みてるのは何故か不明だ。

 

「ところで、カイト。これは何を作っているのだ。記念物(モニュメント)でも作っているのか」

「さぁ、僕にもさっぱり、宣伝用と言う事くらいしか、確かにそれにしては凄く大がかりに思えますけどね」

 困惑しながらカルデニアが訪ねたが、彼にもそれは分らないのだった。

 相談の現場には彼も居たのだが、テンション上げ上げの彼らの会話は全く付いていく事が出来ず。

 こうして、パーツを目にしても彼には完成像は全く予想できないのである。

 

 そして、またガシャンガシャンと作業音を背景に、しばらく騒々しく時間が経っていく。

 職人達の手によって、相対性のある突起が取り付けられた鉄球体と、透明なガラス状の球体の二重構造に、それを頭上に掲げ支える二本の支柱が、形だけ設置されて土台は完成した様だ。

 更にその土台から伸びる二本の棒の姿は、まるで巨大な天球器を吊るす支えの様に見えるだろう。

 

「ただいまー♪おー、すごっーい!もうこんなにできてるんだ」

「うっし、戻ったわよカイトー、あら先輩じゃん、おーっす!」

「ああ、君もいたのか」

【商の才】

 外回りに出ていたミストラルとローズが戻ってきた。

 事前に近隣には話を通しておいたし、工事の際には彼女の持ち物である、簡易収束型の結界魔導具【エアフィールド】によって、匂いや騒音対策はしてあるのだが。

 万が一と言うか、再度挨拶回りしてトラブルを避ける為に、あれから以前の様に短期助っ人は頼まれていた際に、その店番をしていた彼等の片割れのローズを連れて、再度近隣に声を掛けていたのだ。

 

「こんなのが組み上がってく光景とか、滅多にないだろうからね、面白いかと思ってさ。見に来ないかって誘ったんだけどさ!」

「テンション上げて誘ってたから相手さんなんか引き気味だったけどねぇ、ミストラルは独特よねぇ」

【理性蒸発】

 実際はこの通りに彼女なりの善意の行動であるのだが、自慢したいという気持ちも多少交じったそれは。

 ローズの言うとおりに、ミストラルのどこか子供っぽい天衣無縫が、良く表れてると言える。

 

―――そして少し経ち。

 彼女の来た町道から、こちらを伺う様に子供達が疎らに現れる。

 

「あー、来てくれたんだ。でもごめん!ボクは皆に昼食作って来ないといけないし、危なくない様に子供達の見張っててくれないかな?」

「うん、まぁ暇ですしそれ位は」

「でももうちょっと考えてなさいよ、ミストラル」

「ごめんね、お願い!」

 (o≧人≦)と、幻視されるように、頼み込まれる。

 結果的に彼女の思い付きを、押し付けられた形になるのかもしれないが。

 専門技能を持たない彼等は、資材の搬入後は手持無沙汰であり、それ位は問題なかった。

 

「はいはい、この線から先に近づかないでね、危ないから」

「こら!そっち隠れて近づかないの!」

 適当に町の子供達の相手をしながら。

 『エアコフィン』による結界の内側ちょっと基準に線を引き、そこより先は子供が近づかせさせない。

 遠目からでも組み上がってる様子は十分見れる範囲だろう。

 子供達の反応もパーツで構造体が出来上がっていく様子に興奮気味である。ここまで奇麗な二つの球体が更に包まれ重なり、更に加工されて良くわからない物になっていくのは中々見る事のない光景だろう。

 万が一にも怪我をさせたら、目も当てられないので安全重視である

 

「ふふ、騒がしくて本当に見てて飽きないな、君達の周りは」

 またその様子を行儀の良いの花のように、佇みながらカルデニアは眺めていた。

 流石に手伝いはやめておく事にする。

 彼女は居心地のいい知り合いの元に、自然に居ついて馴染んでいる事が最近は多い。

 

「みんなー、今日はありがとねー。ご飯用意できたから、ちょっと運ぶの手伝ってくれない?」

「あ、うい。わかりました」

「おー、ミストラルお嬢の手料理は久しぶりだな、おーい野郎どもお嬢の飯の時間だぜー!」

【人妻:手料理】

 とりあえず、ミストラルが皆を労う食事を作り用意したそうなので、それを運ぶのを手伝う。

 ”建築魔法”と”錬金術”の使い手がいるので、テーブルは普通に地面から生えてきた。

 彼等は、そこに皿に盛られた料理を運んで並べていく。

 作り置きが大半であるが、味はそこまで落ちてない。この人数の分を用意するのは、相当苦労しただろう。

 善いと思った事を選ぶことに、迷わないのが彼女である。

 

「おー!感謝するのである、小生熱中しすぎて腹がぺこぺこであるからな、いやーにしてもこの町には、良い腕をした玄人が一杯居るのであるなー」

「……感謝する」

 その軽い料理を平らげて、すぐに仕事に戻って。

 またしばらく時間が経ち、ほぼ形は完成して今日の所は解散の運びとなった。

 後は細かい所や、微調整、塗装などを乾かす為に後日の稼働となるらしい。

 ”稼動”と言う言葉が出てくる時点でおかしい気がするのだが、気にしたらもはや負けだろう。

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

―――そして、また三日後。

【ラインセドナ:AM商店】

 

 今日がこの機巧構造物の稼動日であるらしい。

 依頼は初日以外にはないが、一応と見に来た彼ら二人にカルデニアが、固まって頭上を見上げている。

 周囲には建設の際には見に来なかったが、改めて興味を惹かれたか、街の大人衆も見えた。

 もしかしたら、あの時に見に来た子供達が誘ったのかもしれない。

 

 この構造物の名前は【アイオロスの球(スフィア)】。

 蒸気が動力として検討されてた過去の時代の原始機巧を、概要だけ参照して魔改造した物である。

 と言うかもはや、完全に別ものだ。

 設計(デザイン)は”ぴろし”担当、部品(パーツ)の製造と着工は鍛冶師”月長石”と、ミストラルの伝手の町職人集団。

 スポンサーにブレーキ壊れた【理性蒸発】のミストラルによって成り立った構造体(モニュメント)である。

 

「―――ヌアッハハ!観衆も多く集まった。作り手冥利に尽きるな。モノども良いか―、ではイクゾーッ!!」

「「「おーっ!!」」

「勿論だぜ、さっさと動かそうぜ!」

「………ん」

 ぴろしが号令を上げて、支えるの二本の柱に括り付けた固定具を外して、機構を回し起動させる。

―――ギティ…、ギチィ…、グル…グルんグルん。

 果たしてそれは正常に動き出す、真ん中の突起物の付いた鉄球が上下左右不規則自在に回り始め。

 それを併せて観客達から、歓声が上がった。

―――ピィイイイイ!

 四つの排出口による、蒸気による高温が、回転によって拡散されて鳥のさえずりの様に響き渡る。

 なお、これは排出口のキャップを変える事で、音を小さくもできるらしい。

 凄まじい凝り性だとだと感じざるを得ない。

 

 

 小さな金属級の外縁を大きな半透明な球体が取り囲んでおり、蒸気により回転し続け外部からの光をを煌めかせ、蒸気をスクリーンにし、投影して映し出すらしい。

 それはまるで昼には紋様色を滲ませ、夜には星の様に投影されて静かに瞬くらしい。

 鍛冶師”月長石”が編み出した、特殊な”天属性”に染色させる『陽鉱石』の合金が用いられているらしく、それによって蒸気の水滴の分光、発光性質を強化して色を濃くしてるそうだ。

 特にその境界面は軽く円形に、虹を被ってる様に輝いていて見えた。

 

 何が凄いかと言えば、これ十分な太陽エネルギーと水の供給がある限り恒久稼動である。

 『陽鉱石』の結晶体まで用いて太陽光を増幅して、専用の”強制循環式の太陽システム”を外付けにドン。

 半永続的に回り続け、蒸気に虹色を映し出すのである。

 

 知らぬ余人がこの話を聞いたら、こう評するだろう。

―――『変態共が集まって、ブレーキ壊して好き勝手させたらこのザマだよ!』…と。

 

 実際、動いている所を見るととにかく力強く圧巻で、溜息しか出ない。

 霧に包まれながら柔らかく光を投影、拡散する”七色光のレインボウボール”である。

 更に、この耀きは陽気さによって様々に変わるそうだ。

 

「―――なるほど。これは凄いな、部品がバラバラの時はこんなしっかり動くモノになるとは、思いもよらなかったわ」

「ほへー、なんだか単純で地味ィって思ってたら、確かにすっごいわね。だけど、ミストラルの店の商品とか全く関係なくない?本当に宣伝になるのこれ」

「うーん。まぁ、目立つし?惹かれて寄ってくる人もいるかもしれない」

 カイトは曖昧に頬を搔いて苦笑いしながら一応、フォローした。

 彼もただの田舎町の広告需要に、ここまでの物はいらないと、ただの趣味なんじゃないかとは思ってはいるのだが、盛りあがってる所に水を差す事もないんじゃないかと、変な空気を呼んでの事である。

 

「すっごいお金かかっちゃったけど!満足だよ、多分【聖錬】中探しても、ここくらいしかないんじゃないかな。やったね超レア―だよ♪」

【理性蒸発】【レアハンター】

 店に合う合わないを無視して、ただ珍しいを追い求めた彼女はご満悦である。

 (ノ〃^▽)ノと幻視される如く、杖と、白帽子の耳をぶんぶんさせて喜びを表現するミストラル。

 周りもそんな指摘を気にする者もなく、お祭り騒ぎであった。

(まぁ、知ってた)

 なお、それ位で水を差される程、軟な偏屈者の集団ではないのは知っていた。

 職人達はそれを見て、自分がいい仕事をしたと言う実感に汗を拭う。

 

「ふむ、なんだか妙な関係だな、愛され体質とでもいうべきか、姉妹の中にもああいう娘もいたな。懐かしい」

「あー、なるほど。じゃあ、ミストラルは確かにそんな感じですね」

 カルデニアの言葉に、彼もうなずく。お嬢と言う呼ばれ方と言い、彼女のは仁徳とはまた違う気がした。

 人に愛される才能というのは、ああいうものかと、妙な感慨と伴に感じ取っていた。

 

 とにかく、話は変わって。

 この【アイオロスの珠(スフィア)】の完成に特に貢献したのは二人である。

 

「………いい探究になった。勉強にもな」

【鍛冶師:一鉄錯誤】【努力の才能】

 一人は、この【ラインセドナ】の片隅に工房を構える、鍛冶師”月長石”である。

 金属の扱いに優れ、溶接の強度と自然に盛り(ピード)と、不純(スラグ)もなく溶け込みさせた。

 鍛冶師と関係ない技術に思えるが、あまりに硬くし過ぎた剣を、彫金する際に取得したそうだ。

 秘匿技術である『陽鉱石』の合金技術と、精錬技術を惜しげもなく、光源と効率化を成した。

 

「いや―、圧巻圧巻!きちんと動いて安心したのである。風呂に入ってふと考え付いていたのだがアレなのだが、スポンサーがいなくてミニチュアだけ作ってお蔵入りにしていたものだからなぁ!そもそも腕のいい職人が多くて、効率化が出来なければ無理だったかもしれん。ぬわっはは」

【デザイナー】【錬金知識】【機巧知識】

 もう一人は”ぴろし”。なおこの男は、”観光”を産業の主体とする闘争都市【ルミナ・クロス】。

 その幾つかの構造物のデザインを担当し、確かな実績を持っており、ここまでの物が作れたと言える。

 ……しかし、センスが先鋭的すぎて一人で作ったりすると、彼の【蒸気反重鎧】の様にヘンテコなものに仕上げる事もある為に、一流と呼ぶには安定性に不安がある。そんな変態な事には変わりがないのだが。

 

 見に来た観衆達も田舎町には見合わぬ物珍しさからか、先から歓声と騒ぎ立てていた。

 とりあえずこれは随分と続くだろうか、そんな感じの大盛り上がりに思う。

 

「あれ…?」

 いつの間にか、ローズが彼の隣からいなくなっており。

 

「―――おーい!カイトォー良い眺めよこっち来ないー?明日にはこの足場解体しちゃうってさー!」

「僕はいいよー!ローズも怪我しないようにねッ!!」

「だいじょーぶよ、そんなヘマしないっつーの!」

【ムードメーカー】

 なお、その消えたローズはいつの間にかその祭りに参加する方に回っていた。

 既にそのモニュメントはほぼ完成しており、残された高い足場に昇って町の風景を愉しんでいた。

 下界の世界を望む様な高地の建造物()が故郷であった彼女は、こうやって風景を見下ろす事のできる、この一時的な足場の塔に馴染んでご満悦だった。

 笑顔でぶんぶんと手を振るって、己の”相棒”を誘っていた。

 

 そんな事をしているから、見に来た子供達もそれに惹かれて。

 『いいな、いいな』と騒ぎ立て。

 そんなんだから、彼女が一人一人支えて土台に昇らして、高い高いと遊ばせる。

 

 その光景に、手を振るって曖昧に答えて。

 

 段々と暮れる陽を背に、少しずつ変化してく【アイオロスの珠】(スフィア)の輝きを眺めて、今日の日は暮れていくのだった。

 

―――なお後日、相当時間が経っての事であるが。

 このモニュメントの宣伝効果の程は、意外とあったそうだ。

 そもそも変なモノ過ぎて、立ち寄った”吟遊詩人”までネタにして詩を歌い外部に情報が拡散。

 外から見に来ようとする物好きを引き寄せて、何故か観光スポットと化した。

 

 ミストラルは元々の【商の才】と料理上手を活かして、”アイオロス焼き”なんてもの売り始めた。

 ……なお、まだ費用対効果の方はマイナスであるらしい。どれだけゴルを掛けたのだろうか。

 

 ぴろしは【デザイナー】としての技能を評価されて、新天地でも一時期依頼は押し寄せたが…。

 それでも彼の強烈な個性(キャラ)によって篩に掛けられ、予算でストップが掛かるのもあって、現状は【ラインセドナ】に特段の”変な物”は増えていない。

 

 ”鍛冶師”の月長石は、また引き籠って鉄を鍛えてるそうだが、少しだけ依頼は増えたらしい。

 ユニークなだけの建造物だけあって、まだ秘匿技術の『陽鉱石』により合金技術の特性は認識されていないようだ。実際有用なのかは専門家が見ないとわからないだろうが。

 

 これが理由なのか奇人ぴろしは、しばらく【ラインセドナ】の方に滞在する様になり。

 一方で冒険者ギルド”ヴェルニース亭”の方では、変な需要の依頼の処理に頭を悩ませているそうだった。

『―――何故こんな事に。大半はだらしない冒険者が大半の、弱小ギルドだったはずなのですが……?』

 元々。、最近狂人と認識されつつある”仕事キチ”に、”無縫妖精”(グラスランナー)等のイメージが強いのが所属している。なお、”無縫妖精”(グラスランナー)はミストラルの異名である、無法妖精とも読んだり読まなかったりする。

 そこにヘンテコな音楽と気配圧の”変態巨人”のぴろしが加わるのである。

 冒険宿”ヴェルニース亭”の受付嬢である。”ヒバリ・カイルン”が変人の溜まり場と呼ばれては溜まらないと、一生懸命イメージ改善に努める姿は健気であった。

 

 そんな事はいざ知らず【アイオロスの珠】(スフィア)はギイギイと回り続ける。

 そんな感じで、変な構造物を改めて受け入れ。

 少しだけ愉快になった【ラインセドナ】は、いつもと変わらずに回っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




 元々露出させる気なかったアレックス(ミストラルの夫)さんどうしようかなぁ。
 幼馴染、、魔具職人、気弱、割とイケメン年か決めてないので。
 八相データとか考える時間に押されて中身が決められない…。

建造物草案。
【アイオロスの珠(スフィア)
 見た目は日本の支柱に支えられた鉤型の突起が目立ち鉄球多少装飾されたと、透明なアクリル板と半円形状の土台。
 稼動時には鉄球のが上気を吹き出し、横方向に回転し周囲に蒸気を纏い、掻き回しながら回転する。
 その稼働時の見た目は七色の斑輝く虹魂である。ついでに流転する事でそれは流れ模様を変える。
 投入された目新しい技術は【蒸気循環システム】【フォグスクリーン】
 【蒸気循環システム】は太陽光とマナと機巧技術での効率かによる半永久稼動。”陽鉱石”の結晶投入。
 【フォグスクリーン】は純度の高い”陽鉱石”の合金による天属性により、蒸気の発光・蓄光・分離特性を強化し輝かせる。均一な蒸気でなくても光を反射させる。
 計算された球体の外縁部のガラス殻で光を分離させ、それを蒸気に光の色を保持させる。
 夜には外から光が飛び込む事が少なくなり蒸気の発生が緩くなる為に、うっすらと模様と空の光を移すのみである。
 天気によって左右され、様々な顔を見せるが、だらしない回転になってしまう事もある。
 
 アイオロスの珠は、名前カッコよくて何かどっかで使いたいと纏めてあった中二病ノートから引っ張ってきた奴。
 原始的すぎて何処にも使えなかった奴なので、大分理屈が強引です。話半分で見てくれると助かります。
 天属性って透過率上げるだけだった気がしますし…。



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