ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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抗い【ドゥナ・ロリヤック】

―――同時間の【ドゥナ・ロリヤック】

 

 

「おい、南東の方から”狼星”が上がったぞ。上に報告して判断を仰げ、引継ぎも頼むぞ」

「あい、さー」

【高山の門番】【機巧乗り】

 南東から上がる”狼星”、それを最初に確認したのは『門番』である。

 それを確認して、その判断を仰ぐために街の中心に向かって人を、伝令を走らせた。

 現在は厳戒態勢を敷かれているので、”総督”と”冒険者ギルド長”の武民によって、スムーズに意思決定がなされるハズだった。

 

 

 現在、機巧を傍に置いて、煙草を吹かしながら休憩状態である髭面の男。

【隊長】【機巧操り】【インファイター】

 彼は『ドゥナ・ロリヤック』の機巧(ギア)隊の隊長である。

 レバーをガタンガタンと切り替え。

 魔導式の動力に熱を入れて、待機状態(アイドリング)にして、その方向を睨めつけた。

 

「やっと、尻尾を掴みやがったか、【鬼人八部衆】とか聞く『蒼天』とやらが仕事をしたかねぇ」

「待ちぼうけの時間はもう終わりですよ。隊長、煙草もしまってください」

「あいよ。さて、仕事仕事……っ」

 門に付いてる機巧は全部で四機である。

 名残惜しそうに煙草を一吹きして、己の手足である機巧(ギア)に乗りこんで、軽く駆動させ確認する。

―――鉄の唸り声が響いた。

 これを駆る機巧操り(ギアドライバー)は山岳不整地を制する、この町の特記戦力である。

 

「調子はいいな、『ガーリオン』よ。いっちょ頼むぜ」

「『リオン』、こちらもオールグリンです」

 桜皇重工から海運の玄関口【波濤】”セレクティブ”に運ばれ、流れてきた機巧である。

 動力は魔導式、武装は『リオン』は雷属性のレールガンに、マシンキャノンに多少のミサイル。

 隊長機の『ガーリオン』には大体似たような物だが、四肢を持ち格闘戦にも対応している。

 不整地にて異常に急行する為に、配備された緊急用の機巧として。

 これらは空戦用機巧。普段は戦力過多である為、倉庫の奥に仕舞われてる様な『大襲撃』(スタンピード)や”戦争用”であった。

 

「どう動く事に成りますかね隊長」

「さーてね、とにかく気張れよひよっこ。コイツなら、動いていれば死にはしねえんだからよ」

【騎乗】

 上から命令次第であるが、門番である自身等に出撃の可能性もあるだろう。

 まずは偵察目的を命じられるだろうか、コイツの機動性なら、ノロマ相手に二手三手打つ事など訳ない。

 ”狼星”を上げる事例は基本的に、対処が不可な脅威を確認した時だ。

 そうでなくては信頼性が喪われるのだから、その正体を対処可能なら殲滅する。

 

 この時までは、彼等には余裕があった。

【機巧騎士】(ギア・ナイト)

 バケモノを相手にするにしても、位置さえ知れればある程度、分析して袋叩きにできる自負が彼等にもある。

 割と中央に近い安定地帯故に、交戦経験は少ないが彼等は国に認められた鋼の騎士。

 特にこの隊長は、過去に『大襲撃』(スタンピード)十罰との交戦経験すらあるベテランだ。

 

―――しかし、今回は例外である。

 潜み狩りをする為に設計された、【魔王級】の化け物の存在を彼等は考慮してなかった。

 更にあの狼星は襲撃からタイムラグがある。その機能と緊急事態が立て続いたために、狼星を上げるのは遅れた。

 既に『死神』は真近に迫っているのだ。

 

【影ヲ疾走スル者:気配隠蔽】【憑神の杖:怨霊巫器】

 『死神』が悍ましい死の気配を、紅の十字の杖に押し込めて、身を隠し疾走する。

 気を抜いていた訳ではないが、注視していたセンサーの類は、その設計(ステルス)故に反応しない。

【迎撃態勢:不発】

 マナと同調した第六感、世界を知るニュータイプ、スターゲイザーと呼ばれる様な例外もいるが。

 敏感な計器と鋼鉄の肌越しに世界を見る機巧乗りは、どうしても些細な事には鈍感になる。

 

『――――――』

「―――ッ!?パスルカ!右に避けろ」

「へ?」

【憑神の杖】【影ヲ疾走スル者】【ファストアクション】【継承・夢幻羅道】

 『死神』その怪力を持って、十字杖を振りおろし一つの機巧『リオン』を砕き、破壊する。

 【凍結の櫃】を取らなかったのは、道中で黄金精霊を捕食して資源(リソース)を回収したとはいえ、先の戦闘の消耗が残っているのと、町相手だと凍結対象範囲が流石に広過ぎる。

 別に攻撃性に突出してる訳でもなく、”同化凍結”は術の類で溶ける物だ。維持するにも魔力がいる。

 なら殴って壊したした方が早くねと、『死神』の骨子が判断した。

 

「―――パスルカ!?」

「チィ!?なんてドジだい俺は、こんな図体の奇襲にすら気が付かないとは!おい、ひよっこ共は緊急発進(スクランブル)しようと思うな!マシンがイカれる!」

『バーストレールガン』【機巧騎士】【我流・緊急機動】(スクランブル)【精神戦術:集中】

 隊長と呼ばれた男は自身に悪態を付きながら、緊急にバーニアを吹かしマニューバで重心移動、翻し。

 宙返りするかのように浮遊機動を取って、牽制射撃からの突撃を敢行する。

 

『――――――ララ』

【憑神の杖:ガード】【光鱗の衣:固定座標機動】

 『死神』はそれを十字杖で防ぎながら、虚属性の幻影を振りまきながら高速移動する。

 そして、町の中心を見下ろして、その腕を向けて。

 

『碑文八相:電子魔術(ハッキング)』【領域作成:禍々シキ波】=【多重投影:円環精霊】

 銀砂波を媒体に信号を発信させ。

 ”高山都市”に存在する全三機もの『調律器』(ハーモナイザ)の制御を乗っ取って、自身の領域を町全体に拡大させ、更に”黄金の精霊”を至る所に投影させる…っ!

 

【死ノ恐怖:恐怖伝播】

 更に、『死神』自身の特性を乗せて、いきなりの事に一部で、町に恐慌が響き起こる。

 それは精鋭である機巧乗り(ギアドライバー)達にも、少なからず影響及ぼす程の圧力である。

 

【禍々シキ波】=『ハイパーセンサー:誤作動』

 

「野郎、町を盾にしやがった…っ!?」

『アサルトブレード』【機巧騎士】【剣重機】《ソードリッパ-》【精神戦術:突撃】

 それに対し、鮮やかな直線機動を纏って『死神』にその高周波ブレードを持って斬りかかる。

 しかし、先ほどから抵抗を受けた様に機巧の動きが重く、『死神』纏っている【プロテクト】(電制フィールド)もあって、うまく刃筋が入らなかった。

 マニューバ、アンバック、妙に抵抗が大きくなった空間も利用して翻る。

 

 その後は出力で勝る『死神』の十字杖を、流し受けながらながら空中を更に跳ね跳ぶ。

 

「っく、実体剣の方が相性がいいか。出力を細かく絞って調整して吹かせ、”吞まれる”ぞ!」

「アイ、サー!援護します!」

【戦闘指揮】【鑑定眼(偽)】・『レールガン・小型ミサイル』【機巧騎士】【精神戦術:援護射撃】

 誘導は『ドゥナロリアック』の上の連中に任せておけばいい。 彼等だけがこの町の戦力ではない。

 目の前の『死神』は、そこまで安い相手ではなかった。

 生物的出力は『大襲撃』(スタンピード)での災害『十罰』には大きく劣るだろう、しかし能力が厄介過ぎる。

 

「チィ!反応がダンチだ。噂に聞く『上級魔人』の”化身”とでもいうのかねぇ…!?」

 判断力もあり過ぎた。まるでこいつは”人間”を知っているかのようだ。

【憑神の杖:衝撃波】【凍結の櫃】(フリーズ)

 高山都市『ドゥナ・ロリヤック』の町をその衝撃波と、凍結の権能にて破壊しながら。

 『死神』と【機巧騎士】(ギアドライバー)隊は競り合う。

 戦闘の最中に町の象徴である『精霊風車』は砕かれ、連続した風凧は千切れ飛ばされ、流れ弾の【凍結の櫃】で建物の一部凍り付き砕ける。

 本来、町の守護者である彼等だが、構ってる余裕などない。

 

 

『―――――――』

「―――っくアラート、パージも効かない、飛行フィンも関節の駆動も動かぬ……っ!無念…っ」

【凍結の櫃】【紅の三眼:空間把握】【光鱗の衣】

 一機が『死神』に捕えられ、機体の一部を凍り付かされて落下していく。

 機巧を纏っていても、高い所から落ちればただでは済まない。

 死んだかは確認できないが、少なくともしばらくは戦闘に復帰は不可能だろう。

 

【死ノ恐怖:プレッシャー】【領域作成:禍々シキ波】

 

「隊長っ!ラジが!」

「わかってる!クソ、センサーが鋭敏なのも困りものだな。滅茶苦茶な数字を出されて惑わされたか」

 残存二機。

 『死神』が放つプレッシャーもあって、歴戦である”隊長”の精神をも圧迫する。

(仕掛けるか…ッ!?)

 駆動で誤魔化しているが、相手の方がスペックが圧倒的に上だ。【我流・緊急機動】(スクランブル)での負荷もある。

 未だに”勝機”が見えないが、己の『機巧』の無理が効くうちに、賭けの様な勝負を仕掛けようと。

 

 多少冷静さを欠いて、気が急くが…。

 

「―――助太刀、御免!」

【魔法剣:疾風の燕剛剣(シュツルム・ファング)】【風の担い手】【見切り】【修羅道】

 そこに疾風の一閃が奔り、戦場に刃を捻じ込ませる。

 この魔法剣は蒼天が誇る”固有技能”(オンリーワン・アーツ)

 地属性・風属性の抵抗反発を発生させ空さえ舞う【月衣】を持つ『蒼天』であるが、この推進力を”重力、自由落下”のみに頼って、翔るルート制御と剛剣に、突き入れる隙を見出す事のみに集中する魔法剣。

 例えて、五大流儀・魔法流天翔る【早撃ち】極意とも言うべき技である。

 

『――――――――ルウ!?』

「その翼、噂に聞く『蒼天』か!?どう言う事かと聞きたい所だが、助太刀は純粋にありがたい!」

【プロテクト:両断】

 高速移動していた『死神』が、その勢いを落とし”墜落”する。

 『死神』は台地に叩き落されて、そこの岩造りの建造物を粉砕しながら。

 ”隊長”と呼ばれた男の推察通り、この存在の纏うフィールドは電磁で分散させるタイプの為に、物理剣・質量の類に脆い。

 

「即席だが連携するぞ、ひよっこは当ててくれないだけでいい!『蒼天』の行けるか!?」

「ぐっ、魔力はきつい、―――ッだが!」

「アイ・サー。叩みかけます!!」

【機巧騎士】(ギア・ナイト)【インファイト】【精神戦術:熱血】・【蒼天剣士】【生命燃焼】・【援護射撃】

 地に落ちた『死神』に対して、それぞれが自身が信じる技を叩き込む態勢に入る

 我らは精鋭、その自負と伴に自身の限界を叩きつける。

 あぁ、例え【魔王級】とて、囲んで殴って理不尽を埋めてきた。この世界の人類の真実(いつものこと)

 

―――その真実は確かに『死神』に届き。

【紅の三眼】

 暗闇に光る赤の三眼が、意識をを刺激する。

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

――― 高山都市【ドゥナ・ロリヤック】地上視点。

 

 

 

 高山都市は混乱の極みに合った。

【死ノ恐怖:プレッシャー】

 『死神』の放つ怨霊のプレッシャーによってである。

 戦闘慣れしてる重剣士(ローズ)ですら、負荷を掛けた重圧。精神判定に成功できる者は多くない。

 しかも今回は……。

 

『―――ポーン、ルルル』

【円環精霊:雷魔法】【鋼帯の錨】【投影体】

 『死神』が調律器を乗っ取り、投影された近頃周辺を騒がした『黄金精霊』達が暴れていた。

 これは『力写札』の如く、ただの”投影体”である。

 肉である珪素を持たず脆く、生物上位としての象徴であった【月衣】も持っていないが、その代わりとして数がわらわらと、調律器(ハーモナイザ)のあるギルドを中心に湧いて来ていた。

 

「―――お静まりくださいッ!避難誘導に従って!お近くの建物に避難してください!!交戦できる人員は建物の上に!!」

【ギルド文民】【精霊術:ウィンドボイス】【美声:人心掌握】

 それでも抗わない理由はない。ふわふわしていたギルド員、”受付嬢”の避難誘導を促しが響き渡る。

 ギルド文民は四年毎の『大襲撃』(スタンピード)後に、強制的に修羅場を乗り越えさせられる

 普段から膨大なデータを扱い、定期的に分布図とか真っ新になって、時折隣国が吹き飛び、または隔離領域の壁が競りあがり、いちいち一新するような過労働(デスマーチ)をこなす彼女等にも、この世界の流儀は息づいている。

 

調律器(ハーモナイザ)の様子は!?」

「ダメです!?操作も受け付けません!勝手に音を奏でて調律して…っ」

【ギルド文民】【調律師】

―――♪♪

 ギルド中央では、武力を持った『ギルド職員』が一人護衛に付きながら、必死にギルドの『調律師』が、オルガン状の鍵盤を指で弾き鳴らし、正常化に努める。

―――♪~♪~~~♪

 しかし無駄だ、『死神』の中心核を成す『碑文八相』は高度な演算機能を持ち、それから扱われる電子魔術(テクノマンサ―)は『魔導文明』の”遺失技術”である。対処法を見出すには在野では厳しい。

 

 破滅の旋律を奏で続ける。

 

 

 そしてその一方で、『円環精霊』と交戦する者もいる。

 混線状態ながら、普段は一般冒険者に紛れていた『ギルドナイト』やら、この世界の流儀を知る冒険者やら、『牙の搭』(カインガラ)のスカウトやら、【機巧操り】の他の【聖錬】(中央)からの派遣組であったり等だ。

 

―――その中の一組に…。

 

「こういうピンチにこそ踏ん張り所だっ、いくぜぇ!」

【フォレストレンジャー:弓術】【ファストアクション】【パルクール】

ヒュン!!

 それは典型的な野外装束を纏った”緑色の少年”だった。人の波を飛び越える身軽さをもって、いち早く矢を放つ。

 それ自体は”黄金精霊”自体に大きなダメージを与えないが。

 それが文字通りの鏑矢に、心得のある者の現状認識を刺激して更に続いて。

 

【御技の継承:ミゼラブルミスト】【ライトウェイト(軽芸)

 それに続くかのように、純朴な姿をした”青の青年”の魔法が奔る。

 これは”森属性”の霧、共鳴性質を誇る属性であり、それを”黄金精霊”にぶつけて、その”投影体”構成を維持するの間に潜り込んで、ボロボロに脆くして。

―――ボッ、ジュア!

【投影体(物理無効):無効化】

 緑の青年の放った矢で、本来物理で殺せないハズの、マナで構成された投影体を崩せるようにした。

 理屈としては、ガルデニアの【削ぎ落とし】に近いだろうか、それより応用性を持つ、この様なデバフを体系付いた術として、操れる冒険者は珍しかった。

 

 そして、”緑の青年”と”蒼の青年”は、互いに剣と両手ダガーを手に、背中合わせに構えた。

 彼等は互いに冒険者として活動しているパーティである。

 

「―――あぁもうなんだこれ!?”ジータ”を追っかけてたら、何でこんな事に!こんな精霊パニック、王国にもないぞ!」

「考えてもしかたねぇだろ?放っとけないから、ちゃっちゃとヒーローやろうぜグラン!」

【修羅の国の民】【INAKA育ち】【ヒーロー】・【フォレストレンジャー】【二刀流】【カモフラージュ】

 ”緑の少年”の名は”ウェルダー”、眠りについた友人に広い世界に語らんが為、旅を続けるレンジャー。

 ”青の少年”の名は”グラン”。武力で覇道を突き進む蛮族国家(聖錬視点)【王国】出身のCランク冒険者だ。

 一昔前に”未開領域”に趣味で消えたSランク冒険者の息子であり、その足跡を目指す者。

 同じ夢を描き、現在はすれ違いで一足早く旅に出た兄妹である”ジータ”の後を追って、ゴルを稼ぎながら旅をしてる最中に今回の事例と遭遇していた。

 

 幼い頃から父であるS級冒険者(英雄)に憧れ、故郷の良くわからないババアに秘伝を持って鍛えられ。

 近頃、王国南方の未開領域の一つからも帰還した。

 そんな冒険者である。そしてその本領は…。

 

「っく、まだ人が多すぎる。弓しかないか、喰らえッ!」

【バッカ-Lv2(バッカ-中級):折り畳み弓】【戦士の才能:全武器適応(オールウェポンマスタリー)【未開領域(アーカルム)帰り】

 手持ちの異次元バックから、格納弓を取り出してデバフを掛けた相手を自身でも射抜いて、そのマナ結合をばらしていく。

 才と鍛練で適応性を持っているのが、若き冒険者”グラン”の強みの一つであった。

 

 努力、才能、血筋、環境、装備、更に生来からの精神力。

 その全てが揃った野生のヤベー奴。

 危機が蔓延してる代替に割とそんな彼よりヤバい存在が、時折うろついているのがこの世界だった。

 

「へへっ、そんな攻撃が当たるかよ。おい大丈夫か!」

【センスオーラ】【鋼帯の錨】

『アンカーフック』【カモフラージュ】【アクロバット】

 緑の少年”ウェルダー”も都市を駆け、特殊なマントで気配を誤魔化し、”黄金精霊”の鋼帯の刺突を避けながら、逃げ遅れた人間を引っ張り上げた。

 

 誰かが戦っていると言うのは勇気付けられるものだ。事態の鎮静化にも一役買い。

 

「ええ、中央に!中央に避難してください!大丈夫です橋は爆破にも耐えられるように、頑強に設計されてます!!」

【ギルド文民】【精霊術:ウィンドボイス】

 そんなこんなで、ギルド文民の誘導もあって、次第に人も減っていく。残ったのは既に物言わぬ様になった死体だけ。

 人を喰らう黄金精霊は、密かに一部がブクブクと膨れ上がってる気がした。

 このままではまずい。そんな気がして。

 

「ごめん…っ!」

【純朴青年】

 これから一言、彼等に謝って。自身の切り札で武器を、自ら最も頼りにする生態剣を構えて。

 武具に魔力を蓄えた。

 

 『古龍武器』、この世界の真に竜と呼ばれる様な種族が持つ、マナへの特攻の一つ、特殊な属性”竜属性”を放つ。

 属性を発する特殊な生きた武具の総称。優秀な物は聖錬特記戦力、戦姫が持つ伝説の『竜具』と同様。

 と言うか、その優秀な物を逆説的に”伝説”の名が付けられるような代物である。

 

【闘気の才:ウェポンバースト】

 生命力の扱いに長けていることを示す才。内腑に生命力を循環させ、魔力に関して必要時に応じて魔力を精製。

 これにより彼は爆発的な力を発揮することが出来る。

 

『ノヴルの剣:古龍武器』【魔法剣:レギンレイブ】

 この”魔法剣”は専用化されたもの、古龍素材の”竜属性”を纏う剣であり、同じく有機物由来の生態磁気を良く操る”森属性”を感応させて、”竜闘気”としのマナへの特攻性を極所的に集中しぶちかませた。

 

―――、一瞬の紫洪のきらめきが空間を焼き切る。

【竜闘気】

 その一撃は。

 既に肉を少し蓄えながら、半分マナで構成された投影体である”黄金精霊”を一面を、まとめて一撃で消し飛ばした。

 

「ひゅー、相変わらず。凄いな」

「まだだ、まだ敵は全然いる。ほんとどうなってんだよこれ!」

【ヒーロー】

 そして彼等は、まだワラワラ湧く敵対者に対して、剣を向けて駆ける。

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

―――視点は戻って、対『死神』視点。

 

『――――――――』

【憑神の杖:怨霊巫器】【死の波動:破砕クレイモア】

 『死神』は地面に真紅の十字杖を突き立てて、その躯体を健在である。

 これは意図的な怨霊を塗り固めた十字杖に、『死神』自ら干渉して魂を”発狂”させて繰り出された制圧技である。

 それにより、墜落した頑強な建物が更に崩壊して、『死神』を中心に炸裂して更に形をなくしていた。

 追い詰めたと思われた建物は衝撃波を受け、弾丸にされたのである。強風に耐えうる頑強さが、そのまま破壊力に転嫁された。

 

「……っそんな、隊長っ」

 図体故に避けきれなかった機巧『ガーリオン』の腕は【切り払い】でひしゃげ、コクピットに破片が命中、コクピットも損傷。

 『蒼天』は急な回避機動に膝を尽き、唯一生き残った機巧『リオン』は”レールガン””マシンキャノン”の発射口を全開に、牽制の構えを維持してるが動揺を隠せていなかった。

 

―――【継承・夢幻羅道】

 

「”死に体”の振りまでするのか、貴様ァ…っ!」

「へへ、何処までも人間らしいクソッタレの化けモンだなァ、さぁて、あとどれ位動けるやら」

【戦闘続行:意地】

 『死神』は、いやその骨子知っていた、人の身体は脆く。その攻め気にこそ、一番の隙が生まれる事を。

 その骨子になった経験は、こうやって心を隙を突きながら、相手を嘲笑うかの様な刃を突き立てる悪悦戦法とて取りうるのだ。

 

「ぐっ、まだだ…!」

【生命循環者:生命燃焼】

 そもそも『蒼天』は事前の部落での戦闘で消耗し、空を駆け追い、今回の畳みかけ以前で限界だった。

 生体出力と魔力に優れた【人魔身】とはいえ、ここまでの全力稼動は意思の力で持たせているだけだ。

 負荷は蓄積し続け、何時かいや、今限界を迎える。

 

「『蒼天』よぉ、その様子だとコイツと狼星の下で交戦して消耗してたようだな。どうやってこの『死神』を追いかえした」

「……オレの力ではない。偶然に推定戦術級の”魔具使い”が居合わせ、それと撃ち合って一時撤退した」

「なるほどな、つまりここにはないって訳だ」

【隊長:ベテラン】【機巧騎士】

 指揮官として打開策を探る隊長の質問に、『蒼天』は言葉を濁した。 

 この危機的状況で、そんな事に思考が回るのが『蒼天』が天然と呼ばれる理由の一つである。

 『死神』と同じ力を用いた事は少し迷ったが言わない。流石に助けられて風潮するのは気が咎めた。

 

 

『――――――ルルル』

【死ノ恐怖】【紅の三眼】【継承・夢幻羅道】

 『死神』は、それをただ見つめている。

 その骨子の悪悦を良しとするルーチン、『八相碑文:死の恐怖』としての生に執着する魂を収集する機構、【紅の三眼】による空間把握による残心。

 さまざまな要因が絡まっているが、さらに合理的な理由が、機能がある。

 

 『死神』の近くに、”ハッキング”された調律器(ハーモナイザ)によって掻き集められたマナと、住人の命を喰らい、時折同類すら喰らって、肥え膨らんだ【円環精霊】が浮遊し近寄って…。

 

―――ギュルルルルrrr…

【円環魔術:リ・モデリング】

 『死神』の腕に吸収され、その消費した資源(リソース)を回収して【超再生】による稼動限界。

 何より、【紋章砲】の次弾の装填資源を癒活させる。

 あぁこれが『碑文八相』の”都市落とし”さえ想定される所以である。

 

「なるほどな、そういう”不死身”(人食い)か…くそったれっ、過負荷を気にせず弾幕を張れ、一秒でも長く足止めしろ!!」

「ア、アイさー!リオン『リミッター解除』…ッ!」

「『死神』が距離を取りに来たなら、全力で右腕の直線から離れろ、纏めて死ぬぞ!」

【隊長】【精神戦術:激励】・『レールガン・マシンキャノン』【機巧騎士】【狙撃姫】【精神戦術:連撃】

 機巧『リオン』に積まれた魔導式エンジンと、火器その全てに過度の熱を走らせ正確無比に叩き込む。

 まだ実戦経験は少ないが、彼女も国に認められた精鋭【機巧騎士】(ギアナイト)、その適性から消耗も少ない彼女が全力のカバーに入り、『死神』を近寄せない様に、立ち回る。

 

 しかし、稼げるのはわずかな時間だろう。交戦して、痛いほどわかっている。

 

「さて腕は潰れた、やるしかないよなぁ」

【隊長】【機巧騎士】

 口に溜まった血反吐を吐き捨てて。愚痴の様に呟く。

 自身の命運はもはや尽きた。ならばこの命で他を繋ぐしかあるまい。『死神』相手だ、自惚れではないが自身が力尽きれば、もはや全滅するほかないだろう。

 

「不確定要素に頼るのが癪だがね―――俺等を、甘くみんじゃねぇよバケモン風情が」

 折角相手が、大仰に手札を見せてくれたのだ。

 せめて不死身の絡繰り・町を覆い尽くしている雑魚精霊だけでも断つ。

 少しでも時間を稼げれば、小数でも脱出して情報を繋いでくれるだろう。それに狼星で確認した方向には、『蒼天』の言う戦術級の”魔具使い”がいると言う。

 

 隊長と呼ばれた男はその内実を理解していない。味方か敵かもわからない。

(愚かなことかもしれないがな……っ)

 なのにそんな賭けを取る理由は、町の盾であり剣である、真っ先に尽きるだろう。

 自分の部下たちが助かる一抹の、唯一の望みである、その為なら魂の一つや二つ賭けてみるだけだった。

 

【ハイパーセンサー:オフ】【機巧の呼吸】【精神戦術:底力・集中】

 オートの類を必用な所以外切って、マニュアル操作で全て移行する。

 相変わらずセンサーは滅茶苦茶な数字を出しているし、そうしなければ、エラー等を吐き出し途中で正常状態に戻そうと、ブレーキがかかるだろう。

 騎士と呼ばれるひよっこ共にもまだ早い。文字通り”機巧”を自身の手足として扱う為の”全集中”。

 

『――――――ッ』

「っく、振り払えない…ッ!」

【憑神の杖】【怪力】【光鱗の衣】

 後衛として『死神』の動きを観察し続け、なんとか隊長と呼ばれた男の動きを参照して、何とか死神を拘束し続けた『リオン』に、十字杖が振り下ろされるその刹那に…っ!

 

―――横合いから鋼鉄の流星が奔る。

「ハハッ、テメェが人間らしいってならなぁ!こっちも利用できるって事だろがァ!!」

 先の『死神』の反撃の理屈と同じである。攻め気にこそ隙が生まれる。

 文字通り捨て身で蹴り圧し、フィールド発生機を前面に、空力特性を強化する為に、アンバックの為の四肢を流動系にして、更に駆ける。

 

 衝突。

【プロテクト】

ギギギギギイィ!!

 金属の削れるような嫌な高音が響き渡る。

 『死神』と機巧のサイズ比は二対一だ。重量と反動に表面装甲が砕け、純人種の脆い四肢が内臓が悲鳴を上げた。

 衝突。

 人の及ぶところにない程の、もはや特攻である。

 

「―――ゴホッ!?十年代の付き合いだ、ロートルに付き合ってくれよ『ガーリオン』ッ!!』

『ソニック・ブレイカー』【機巧騎士】【インファイター】【乾坤一擲】【精神戦術:捨て身・魂】

 それは、『リオン系』の機巧が空を舞う為に搭載された、それらを軍用と呼ばせるに足りる象徴の”雷属性の半反重力フィールド”。

 そのフィールド出力を前面にだけ集中させた渾身の体当たり、推力を文字通りエンジン燃焼だけに頼った。

 『蒼天』の【疾風の燕剛剣(シュツルムファング)】と似た様な所はあるが、これはただの渾身の捨身である。

 衝突。

 技と呼ぶには余りに洗練されておらず、凄惨だ。

 

 ペダルは息吹を、レバーを握りしめ歯を食いしばり、内臓を潰し血反吐を吐きながら。

 それはまるで鍛冶師の如く、鞴と槌打をイメージさせるだろう。

 『死神』を逃がさぬ様に、特攻のリズムを自身の生涯の全て、経験と勘を全てを機巧に吹き込める…ッ!

 

―――キィイイイイイイン!!

 その軌跡は『死神』を高山都市『ドゥナ・ロリヤック』の境界より押し出して…っ!

『『ズドォオン!!』』

 その勢いのままに『死神』を山岳地帯に叩きつけた。

 クレーターの様なくぼみをそこに残し、それを成した機巧『ガーリオン』から、その躯体を半壊させ光が消える。

 

ブゥン!

【怪力】【円環魔術:超再生】

 それは限界を迎えた様に崩れ落ち、『死神』の腕に乱雑に払われる。

 『死神』も無事ではない。庇った左腕の損壊、プロテクトの全損、表面剥離。

 幾ら鋼鉄の鎧を纏おうとも純人種の身体は脆い、それが全てであり、既に用をなしていないコクピットにはべっとりと血糊となって、人を構成していた要素はそれぞれに潰れていた。

 

―――連動する様に、高山都市の三機の調律器(ハーモナイザ)の機能が戻った。

 【領域作成】を喪い。投影された”黄金精霊”が解ける様に消え堕ちるのを『死神』は、その反動で確認した。

『――――――るるるr』

『碑文八相』

 『死神』は苛立つ、予定と違う。

 自身と自身の軍勢を持って、都市を骸に変えてその舞台を持って、『黄昏の腕輪』の担い手を迎える。

 その予定だった

 そこで心が折れれば、見込みなし。そのまま屠る。『碑文八相』に力届かずとも見込みはない、屠る。

 次の担い手がどうなるかは知らない。

 

 【死の恐怖】、波の先兵、自身の使命を謳いながら。

―――その実、自身を終わらせ得る、そう設定された存在への畏怖が、”生きたい”と言うロジックが自身に根づいてしまった事を、その存在を折る目的が大きい事を。

 『死神』は気が付かない。

 後の大きな流れの先兵に、人間の生に執着する心を収集する機構、分析する機構である。

 稼動経験と情報から、骨子の”人間らしさ”が混ざり、独自の人格と呼べる様な物が産まれ得るだろう。

 

 そう、彼等の母なる存在の様に。

 

『―――ポーン』

『碑文八相:腕輪』【紅の三眼】【浮遊】

 故に、悪悦と焦りを込めて”高山都市”に向けて幾何学装甲の花弁を咲かせた。

 今度は上空から姿を見せ、迎撃する特記戦力をこの三眼に捉え、己の機能が誇る最強の機能を持って排除。

 あぁ今度こそ”絶望的で凄惨な”、舞台を整えようと、飛翔しようとする。

 

―――だが。

 

「―――見、け、た」

【ファストアクション】【レンジャー:隠密】【輪廻狂羅】

 しかし、それは先の捨て身の”流星”に打ち付けられて、轟音を響かせ非常に目立った。

 

 彼は音を抑え、獣の様に四肢を脈動させ、『死神』の足元に踏み込んだ。

 理想的な不意打ち、その狂気は物理的に手の届くならば、『死神』を逃しはしない。

 

『絆の双刃』【精霊術:使役精霊】【蛍火】

 仮に彼が必殺を狙い、『腕輪』で【紋章砲】を発生させた場合は、それは反応する事が出来ただろう。

 あの”破調ラ音”はお互いによく知るそれだ。展開から発射の三秒は関知して射線から退避するのに十分である。

 しかし、『死神』は悪悦故に、読み誤った。

 今回の『腕輪の担い手』は、絶大な威力を認識しながら、いきなり生えてきた『黄昏の腕輪』に信を置いていない。

 

 『死神』双刃中心に風巻く暴風と”黄金”。

 彼が一番信じる初撃と言えば、自身が知る限りの幻想、魔法剣に他にないのだから。

 

【狂羅輪廻】

 それは狂気によるオドの指向性、旋律を奏で集めた現地色の精霊と、遭遇した【円環精霊】を文字通り『腕輪』でばらして、丁度良いと、自身のオドの延長である『絆の双刃』に纏わせていた。

『黄昏の腕輪』+【精霊術】【蛍火:精霊燃焼】=【魔法剣:木端美刃】

 偶然の事、【円環精霊】も精霊だ。利用できるかもしれないという安易な発想だった。

 

 バラせば”珪素”に情報の染み付いたマナでしかない、同じ由来の力故に”腕輪の担い手”は、機能は限られるが【円環精霊】を利用できる。

 

「シィイイイイ!!」

―――斬ッ!

 それ等を全て、束ね。精霊を刃と殺意で精練して放たれた両断の一閃。

 初撃の様に【精霊燃焼】を伴いながら、精霊を剣鱗に、”黄金”(珪素)の実体が鉤爪の様に食い込んで刻み殺させる。そんなこの場だけの魔法剣…っ!

 

【光鱗の衣:破砕】 

 それは確かに、『死神』の衣に届いて両断して、その機能を半減させた。

 紅い幾何学の破片が広範囲の宙に舞う。これに魔力が篭る度に、『死神』が加速しうるのは確認していた。

 故に魔法剣により断ったのだから。

 

『―――-――ガガ!!』

「逃レば、抜く」

【二刀流】【狂羅輪廻】

 『死神』は計算する、それの言葉通り自身の機動性の源である【光鱗の衣】の破損した状態では、【紋章砲】から逃れられないだろう。

 

『――――――』

 『死神』は初めて、紅の十字杖を対峙して向ける。

【死ノ恐怖】【憑神の杖】【領域作成:禍々シキ波】

 

 そして、『死神』と傍迷惑な呪い(祝福)に心から奪われた少年が。

 月明かりの元に対峙するのだった。

 

 

 

 

 

 

 




 【超再生】でスケィスしぶとい…。視点的に出来にちょっと自身が無いです。

 インフレしていいよっ!って言われたからインフレしました!
 【継承・夢幻羅道】持ちの魔王級の厄介さを出せてればなぁといいなと思います。
 スケィス君というか、『碑文八相』は基本的に【機巧繰り】に相性良いです。
 マニュピレーターとかに別要因負荷をかけ、センサーとか殺します。

 グラン君については、投稿案出身の通りすがりの殺意です。自己解釈入ってるので、正しくない可能性が高いです。引き算が出来ない…。
 フォレストレンジャーは素で【ヒーロー】級の精神補正持ってます。

 隊長は近衛兵級を意識して、データも説明文一部欠けてるけど出来てます。
 ギア・ナイトとか響きがカッコよくねと、ロマン吹き出した結果がこれです。すみません。
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