ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】 作:きちきちきち
―――とある暗幕の建物の中。
「―――指令は下った。今が機であると」
【ハゲワシの番犬】【薬物改造:忠誠心】【影に潜む者】
平野から立ち上る煙に、陰に蠢く者達が動き出す。
仕掛け人の糸に手繰られた操り人形、ある意味の忠酔者、人間として終わった者。
それがぞろぞろと、その身に見合わぬ『魔具』を構えている。
「「「全ては我らが主の為に、枯れ木たる腕を捧げよう、突き刺した心臓の楔を抜く時だ」」」
【ロド麻薬】・【AI■A】=
眼を見開いて狂的に輪唱する黒尽くめの集団。または成功者の席を奪おうと悪徳に染まる者達。
薬に狂った酔い狂ったもの、身にそぐわぬ『魔具』の全能感により高揚に踊る者。
それはまるで宗教の如くに、熱狂して発狂して、それぞれに散って来たる時に備えるのだった。
しかし、忠粋者だけではタカが知れている。その中にも多少は正気の者達はいた
「貴様も、働いてもらうぞ、傭兵」
「は?あんたらキモイわ。うちに近寄らんといて」
。
齎される即物的な利益に、それに尽き回る本来の意味の
そもそもこの陰に潜む狂信者共は、混沌のならず者たちに対する利益を制御する、制御杭のような意味だ。
幾らでも世界に湧いて来る社会の屑どもを、己の手足にとして、誘導する為の手綱である。
「貴様…っ、情報の恩を忘れたか」
「情報分の仕事はするわ。でもうちは、うちが欲しい者が手に入れられれば、あんた等もこの街の連中も全員くたばろうがどうでもいいですわぁ」
【A-K:ヘルメス】【サークルマスタリー】【超絶美形】【阿修羅姫:狂羅輪廻】
その女は髪を一房に束ねた巫女姿をしていた。
端正に整った顔立ち色の抜けた白髪に、特徴的な宝石のようなものを首に掲げて、十字架を武器とする。
そんな異色異謀の女である。
「そもそも、あっちこっちの隠れ家とか隠してるのうちやん、それで十分やろ」
【陰陽術Lv3】【十字架のヘルメス】
その女は外部からの協力者であった。
出生から、集団から浮いており、そして傭兵として実力自体も隔絶していた.
"元冒険者Aランク"、この世界の冒険者の等級とは、Bまでは実績で至るが、A以上は何か特別な技能を要求される。
現在は問題を起こしてその資格を取り消されているが、その実力は相応して高い。
「……っち、こちらにも"切り札"はある。邪魔だけはするなよレズ女が」
「それはあんたら次第やわ」」
しかし、その間には剣呑な空気が流れていた。
それぞれがその禄でもない目的のために、方向性だけを合わせた悪人ども、その関係は良好とはいいがたい。
「あぁ、疵がうずくわぁ」
思い出すのは決別の日、この身に受けた激しい拒絶の槍を受けた頬の傷を撫でる。
己の最愛を囲う為の"親衛隊"という"装飾"は、その主の添えた大事な者の拒絶にて終わった。
その女にとって変わらず良かれと思ってしたことだった。
己の最愛はあんな放逐のような形で朽ちるはずがないと、ただ狂気の淵に妄信する。
「―――待っててな、姉さん。今迎えに行くさかい」
【元九十九巫女】【欠落狂愛】【狂羅輪廻】
何処までも純真に恋する童女に様に笑う笑う。
女は自身の愛を、生来の欠落を埋めるために、周囲を顧みない狂気の獣である。
女も去るのを見届けながら、
「ふん、女は怖いな。まぁ利用するのは正しいか」
対して彼は様々な悪事に手を染めた男だが、平静に平静に自身の利益になる様に頭を回した。
手札として認識するはAランクの魔具使いに、出生不明の炎の巨人。
平時であれば、そんなもので街は小動もしないだろが。
しかし彼らは本命ではない。聞かされている"破滅を齎す天使"の存在、それに乗じて奪うだけだ。
その街の躯から、死肉を漁り、己が渇望満たすのだ。
蠢く者達が、それを揮発させるのはあと少しの事である。
―――高山都市【ドゥナ・ロリヤック】
とこと変わり、時は少し後に経った頃。
ふよふよと、儚紅の少女が漂って、生を謳歌する陽気な天気の事。
この高山都市は、未だ緊張状況ではあるが、どちらも手をこまねく様に、まだ平穏である。
その暫定庇護者である少年と、槍使いの女が互いに武器を構えて対峙していた。
「―――その、ごめんなさい。また僕のわがままに付き合わせる形になって」
「問題ないわ。今は私も忙しいというわけではない」
その双手に愛剣『絆の双刃』を構えて、頑丈な石畳み以外は空白たる広間に構えていた。
既に素振りにより剣の感覚をより取り戻そうとする。
ただ真剣な目で一振り、二振りと重ねていく、剣のブレ、肉体の発条、眼の配り方通し方を、一つ一つ確認する。
ブンッ!
【狂羅輪廻】
その佇まいは以前より、鋭利にさざめき立って、存在感を増しているように感じた。
変質した己の気質を、その剣に舞にと重ね合わせる。これは例えて"リハビリ"ともいえるだろう。
ブンッブンッ!!
既には基本である少しの走り込みを終えた後に、再度剣を握っている。
疲労による落差を実感して、少しずつ修正しようとしていた。
これで準備が整った。
「じゃあ、行きますねガルデニアさん」
「ああ、何処からでも来い」
【二刀流】【舞武】【狂羅輪廻】
【槍技・洟風月】【魔力撃】【阿修羅姫】
互いに、その眼を鋭くお互いの信じる武器を構えて対峙する。
カイトは双剣を身体の発条と交差させるように鶴翼に。
ガルデニアは悠然と、その変形槍を上段から手を添えて流すように。
しばらく、互いに隙を目配せ合う空白の時間が流れ…。
「―――シィイイイ!!」
【精霊術:アプドゥ】【ファストアクション】【ソードマスタリー】
先手を取ったのはカイト。彼の十八番の【魔法剣】を用いず、その分の意識を裂いて放たれる。
『死神』を打倒した褒章により、新調した魔具も併せて。相手の間合いを割る斬撃である。
「なるほど、より鋭く初撃で軌跡を追いにくいか」
『グランシースピア・改』【削ぎ落し】【見切り】
それを槍で巻く様に流し受けて、捌く。
ガルデニアの槍技は基本受け槍であり、"後の先が最優だ"。
変形槍『グランシースピア・改』も用いて、緩く流し受け足を組み替えて、引き上げて捲り払おうとする。
【魔法剣:炎舞の刃】
双剣に呼吸を重ねるそこで初めて魔法剣の灯が宿り、魔力撃を虫食いに燃やし、弾き連撃を重ねる。
オドを切り替える、彼の微かな才能であり『腕輪』によって補強された"二属性濃度"。
己の剣の重みを信じて迷いを捨て、狂気によって先鋭化されたオドによってなされる、己の相棒を"呼吸法"を取り込んだ瞬時の選択して練り上げるのだ。
「ふむ、精霊にオドを喰らわて意味付けするか、厄介だな」
【槍技・洟風月】【ディフェンダー:パリィ】【阿修羅姫】
変形槍が唸りをあげて、変形し衝撃を重ねて巻くしなりの動作を強化して、鋭く払う。
【魔力撃】は間に合わない。しかしその動作はただの"魔具使い"というには同一化しており、その選択をもって触れ難き城塞の在り方を体現する。
「そちらこそ相変わらず、隙が無い…っ」
【精霊術:チャージ】【魔法剣Lv1:雷舞の刃】
バリィ!!
素槍で迎撃するなら肉焼く雷で、このように魔力撃を纏ったならば『蛍火』の特性を用いた。
マナの虫食いの炎をもって軽減し波を滑らし、その足を踏み入れる。
「もっと前に…っ!」
ギィイン!!
衝撃を跳ね除けて、堪えた。
重心を前進にかけて重量を載せて、剣と舞を折り重ねる。
【模倣剛剣:幻想】
冒険者、カイトの魔法剣は残滓の模倣である。
『英雄』とは別として、カイトの知る中での最強の剣は親友であった【蒼海】オルカが誇った何事も圧倒する"剛剣"であり、その剣の模倣として虎の如く瞬間捻りでオドを投擲飛ばす【虎輪刃】、一撃にかける"魔力撃"の代替えである【爆双竜刃】、奥義たる螺旋の刃【裂破轟雷刃】、どれも併せ威力を重視した魔法剣である。
勿論、この世界に剣使いの最高称号の一つ【剣聖】の様な、一部例外を除いて。
双剣を以って成すのは困難であり、"己が剣腕の威力のみならずピンポイントでの衝撃を束ねる手法"。
という、"剛剣理念"さえ理解せずに形取られた魔法剣はいびつである。
しかし、それを実現させる為に積み上げた修練は彼の中に息づいている。
【ダンシングヒーロー】
【ダンサエスパレス:疑似制空圏】
連鎖して甲高い剣戟が響き渡る。
ガルデニアの槌槍に対して、双剣の二打と重量を打ち込んで歩みを後退しながら抗った。
戦局は槍の彼女の方が優勢である。鉄壁の如く彼女の間に刃を突き入れるにはまだ技量が足りない。
ああ、まだガルデニアが彼等の先を行く、そして彼女も修羅場と共に成長しているのだから。
「本当に強くなったな、反応が早い。だがッ!!」
「それで全然通らないんですけどねぇっ!」
【ソードマスタリー】【爆竜双刃:炎舞の刃】【狂羅輪廻】
【槍技・洟風月:槌一打】【魔力撃】【阿修羅姫】
ガキイイィン!!
鍛錬の初めの時の様に、触れた途端に弾かれる様なことはない。
魔法剣の
自身の刃を呼吸と共に吹き込まれる二属性、その魔法剣を同時に用いることができるのが、今の彼の可能性だ。
渾身の魔力撃に吹き飛ばされながら、炎の臨界で抗い。衝撃に後退して重心を低く耐える。
肉体の発条性を堪える。次に備えるあの夜の様な"獣の構え”である。
(……払いのタイミング、繋がるは薙ぎ、仕掛けるッ!!)
【ソードマスタリー】【魔法剣Lv2】【精霊術:
そしてまた数合の斬り合いに備え、左腕片手剣を前方に構えた。
それを盾に踏み入みながら、右腕を突き入れる様に魔法剣を、構えによる鍛錬の染み付いた行動を条件付けに引き出し、足場を重ね、
疼く"呪印"、かつて見た英雄の舞踏重ねて、真似にも届かぬそれはまだまだ未熟に"奥義"に届かない。
「―――あぁ、やはり君はいいな」
【槍技・洟風月】【魔力撃・■】【生命燃焼】
それに魅せられて、変わらずガルデニアは槍を構えて"後の先"に待ち構える。
積み上げる武威での語り合いは、ある種立派なコミュニケーション、触れ合いの一つであるだろう。
好いた男の■い姿をそれ故に真摯に見つめて、高揚する 体質が活性して、身体が火照った。
【奥義・桜花参連】
導かれる魔槍、いや将来に魔装に至る変形槍と、多段に弾ける魔力の削撃、志向性を三綴りにした舞踏である。
互いに。導き合われる様に接触して斬り合う。
バギィン!!
一閃目はその槍と両の剣は喰い合い。
少年は体勢を崩しながらも自己補助をもって、立て直しを、作り出した足場に体重を踏み越えて舞踏と維持しようとして。
「しっかり防げよ」
ガギン!
黒閃が走る。
そこに無慈悲に、更に鋭くなった連なる斬り落としが襲い、片手の剣を吹き飛ばされた。
「―――ぅウ!!」
【狂羅輪廻】
だが、カイトとてそれで止まらない。
足場を消し衝撃を逃して。歩みを駆動の裏に差し込もうと身体は動き続け、屈め力を入れ。
「そこまで、ストップだ」
「ッう!?」
【リジェネ】
しかし、その発条の構えが槍を目前に突き入れられる。
自身のオドに呼吸を吹き入れ続けたカイトに比べて、体質による環境放射を輪環させるガルデニアの方が余裕があった。
「すまない、少しやりすぎたな。つい力が入りすぎてしまった」
いい。できることなら、先の様に、その眼を独り占めにできるならば―――
そんな衝動はおくびにも出さず。
これで、この"模擬戦"は決着である。
「はぁ……ハァ……ふぅ」
返事の儘ならない疲労。深呼吸して、呼吸を整えて。励起させたオドの暴発を抑える。
狂気染みた感情と共に伴い、波立つオドだが、その分その落差に心を配らねばその身を焼くだろう。
「手合わせありがとうございました。最近ローズとやり合うと、そろそろ手が詰まり気味だったので助かります」
「何、私もいい経験になった。君も確かに強くなっている安心しなさい。私も少し焦ったわ」
彼女は冗談めいて微笑んだ。
現在、カイトと"相棒"であるローズとやりあうと、互いに大体初手で流れが決まる。
その程度には既にお互いの手癖は知り尽くしている為に、こうして時々に手合わせを頼んでいたのだった。
時々その中に、マーローが混ざり、彼等はその技を磨き上げている。
「しかし見て気が付いたが拙いな、"視線"の通し方がなんだか以前と比べておかしい。腕に隠れるタイミングで、揺らいでたぞ」
「えっと…?その、大丈夫ですよ」
【九十九巫女】【治療術】
その様子を、ガルデニアは槍を打ち合いながら見ていた。
この"リハビリ"と言える鍛錬に際して、医療知識のある者の監督、それが彼女が捻じ込んだ条件である。
そしてその出生由来の医療知識故に、違和感にすぐに気が付いたのだ。
「大丈夫かは私が判断する。大人しくしなさい」
「え、あっ、ン」
その強がりをガルデニアが声で制して止めた。
そして剣を握りながら、キョトンとする彼に近づいてその頬に触れて固定し、目を見開かせてのぞき込む。
やはりその反応は鈍い、瞳孔はなかなかに広がらず窄まらない。
"まるで別の物を同時に見ている様だった"。
「君は嘘つきだな、本当は辛いんだろう、その"眼"は?」
「……少しだけ。でも、大丈夫。チラチラうっとおしいだけで、それに、こうして剣を振るってた方が楽だ
」
強がりなのか、必要に迫られてなのか、おそらく両方だろう。
真実かは証明されていないが、突然空白に顕れた、"儚紅の少女"も併せ、彼が予測した『死神』の同類。
リコリスの願い、目的。騒乱も併せて【魔王級】の存在を予測していた
もしあれが、まだこの地にあるとすれば…。
頬を離されて、拘束から解放されて、少しだけ体を休めながら話しを続ける。
「―――時間は、ないんです。きっと"侵略者"がまだ居るのだから」
当然、その突拍子もない言葉を
倒錯しながらも、一振り二振りの機先を追う眼は、それでも少しずつその先を練り上げ続けた。
歩みに迷って沈む心を、苦痛をもって前進の実感へと錯覚し慰める。
そんないつもの悪癖の延長でもあるのだった。
「それに、君が戦わねばならない道理はないだろう?とにかく、その"上級魔具"『腕輪』の特異性は、私も理解しているが、恨を詰めすぎだ」
「そんなこと言っても"怖い"から、とにかく備えないと」
困ったように頬を掻いた。
ある日突然自分を取り囲む世界が終わる、そんな実体験をカイトは重ねて。
それをもう、彼はただ自身の空白を"我慢"できない。そんな強迫観念として駆り立てるのだ。
「……そうか」
そこで話は平行線である。
背後を流れる風切り音を背後に少し会話が途切れた。
「―――……」
鍛錬の間もその後も動きは、宙を漂う儚紅の少女は傍目に眺めていた。
自身の庇護者と定めたこの少年が、
しかし、何故だか、その張り付き巡らされた糸を幻視して、少し"悲しくなった"。
それを頭をフルフルと揺らして、目を逸らす。
(違う。私は、元々、"いい子"なんかじゃなかった)
【フェイト:壊れた心】【憑依具】
彼女はその見た目より幼くない。己が討たれる以前、彼女には、善き人達と歩いていた想い出があった。
未完成だった自身を拾い集めた。その中での"旅の記憶"、破滅・破局が約束された美しい想い出である。
それにより、その感性は育っているのだ。
ああ、だからこそ
だから、打算的な"悪い子"をとして振る舞っている側面もある。
ふよふよ。
「ん、何?どうしたの」
「何でもない」
だから、幼いふりしてその膝に体重を預けて、少しだけ寄り添った。
リコリス自身も人の温かさに飢えている側面もある。基本的に彼女は人が好きなのである。
憎悪と狂気だけでは、心は癒されない。それでもそうするしかないのだろう。
彼女とて、己の想い出に、死に壊れている。
器として繋がりもあって、何となく理解して心が痛む、故に熱を分け合うのである。
「ふむ、この子もそう言ってるわ。今位はちゃんと休みなさい」
「そうなのかな、気を使われてるか」
それにガルデニアは肩を竦めて、グシグシと頭を撫でた。
抑制される脈を感じながら、高山都市特有の風に、鍛錬による疲労の倦怠感に身を任せる。
狂気の淵、その中でも、カイトという少年は精神が強い部類である。
狂気だけに捕らわれず、前を今を見てただ歩む。
だがしかし、その身に目の前の断崖の如く道は険しく深く圧し潰されそうなほど彼を急かす。
そもそも元々"英雄"の資質を持つ者の為に、用意された試練なのである。
しばらく時間が経って。
「以前、少しだけ君の故郷の話をしたわね。記憶が戻ったのだろう。少し聞いていいか?」
「変わらず普通ですよ?なんの面白い事もない」
「構わない。君の話が聞きたい」
以前のそれにガルデニアは肩を竦めて、以前の釣りを共にした時に、少しだけ故郷の話を聞いた。
あの時とは違い、彼女も事情に突っ込む気満々である。
【九十九巫女:一つを欠けた者】
否定はして、内面は誤魔化しているが、彼女が自覚した渇望はまだ胸の中に湛えられている。
居心地の良い、自身の欠落を埋める為の場所、"私を囲う鳥籠"。
彼女は生まれから頼られるのが好きだ、それが自身を受け入れてくれる湿度であれば尚更に。
「―――えっと、ここよりずっと南の方にある、山と山、谷の合間にある小さな村。穏やかに時間流れて、畑を拓いて暮らしてました」
かなりの間悩んで、言葉を並べる様に事実を並べていく。
カイトは記憶は取り戻した。しかし、とある要因でその価値の優先順位は曖昧だった。
「本当に、村から上京して冒険者として成功した
しみじみと語る。
なお、友人と言ってもカイトと、件の"蒼海"オルカの年齢は一回り離れていたりする。
それでも兄貴分とかそういうのではなく、ただ対等に、その方が面白いだろと、それだけの理由である。
それはカイトの認識と解釈を主にする処世術にも、影響受けていたりする。
「時々やってくる行商人に、"オルカ"が、時々帰郷して。色々な話を持ち帰ってくるのが、娯楽みたいなものでしたアイツ"冒険バカ"だったからいろんな話を持ち帰って―――」
ロマンを優先し、些細な事を気にしない豪快な男だった。
カイトを供に外にと誘ったのも理由も、"お前と冒険したら絶対面白い!!"という単純な理由でる。
広く広大な連合国家たる『聖連』にて、次期Sランク冒険者候補の八人と数えられると詩人に謳われた。
自ら同じ道をなぞって実感した、"鬼人八人衆"特別な、称号の重み。
「あとは父がいました、お酒にだらしないけど日々鍬を振って、法螺話を膨らませて回りを盛り上げるのが得意だった父が。母が居ました、節約上手というかけち臭いというか料理が得意な母が。妹がいました、そろそろ生意気な年頃で僕を事あることに『オルカ』と比較してきた妹が」
現実感のある実体験として、反芻されて彼を
その圧縮された想起は、連想される感情さえある種、振り切って。
「まぁ、そんな風に暮らしてて、久しぶりに帰郷したオルカに誘われて外に出た間に、戻ってきたときには『死神』に滅ぼされたんですけどね」
努めて軽く言う。この残酷な世界では有り触れた悲劇だと人は言うだろう。
『聖錬』における
それでも逃れた生き残りが逞しく生きるのがこの世界だ。
だが、当人にとってはそんな事は全く関係ない。
「それでも、まともに悲しめない、結構つらい、です」
しかし、思い返しても涙の一つも出やしない。
事実は認識せど、二重の痛みに上書きされて、それらの意味は遠くなっているのだから。
しかしそれでも確かに己の原風景であり、貧しくてもその中で必死に生きていたはずだった。
それを想起しても痛い、鈍く痛い痛いだけである。
それは共感するには難しいだろう、狂気の淵を逝く者の内面は、それぞれである覗き込むに触れるに遠い。
その話を聞いて、女は、ガルデニアは…。
「ふーっ…」
全く仕方ない奴だと、溜息をついた。
「ダメだな、ダメな奴だ君は、こんな世界だ、誰もかしらが重かれ軽かれ痛みを抱えている。だからこそ幸せになる様に努力する義務があるはずだろう」
「そう、ですかね」
ガルデニアは思う。人には大小、自身を幸せにできる力が備わっているものだ。
不幸になりたくて生きている奴がいるものか。
彼女は駄メンズという訳ではないが、その酷く運命というそれに、欠けたさせられた少年を―――
「少し、じっとしててくれ」
己が座りたい場所を意味を見出して、高揚する。
彼は強くなった、そしてこれからも強くなるだろう。出会った当初は本当に駆け出し冒険者だった。
それが一年という短い、一念に賭けた時間だが、今は一端の技能を身に着けて、単独で競い合うに至っている。
あぁそれが、彼女が少年を欲しくなる理由の一因であるのは間違いないが。
「あぁ、君は幸せになる、その力が、やり方が酷くへたくそだ」
【ディフェンダー】【衝動肯定:菩提樹の献身】
その狂気性に微笑む、このままでは彼が幸せになれない。
なら、誰かがそれを、自分を幸せにする方法を教えなくてはいけないだろう、と。
しかし、彼は意地っ張りだ。それを選ばないというのなら。
その身に過ぎた理不尽ばかりが降りかかるなら、それに寄り添い振り払う槍となれる。
「その、何を言ってるか、わからなくて」
カイトは困惑の表情で、己を見つめるその瞳に、どうしたらいいかと困惑し、固まっている。
その自立性と幼さが時折混在した様な、からかい甲斐のある、その反応が好きだった。
―――そして、その先にきっと己の幸せもきっとあるのだから。
【九十九巫女:一つを欠けた者】
彼女の、ガルデニア面倒見の良さはある種の"共依存僻"の現れである。
"意味が欲しい"。"由来が欲しい"、"そして愛して欲しい"。
自覚したその心は、根を伸ばして巡って、自身が日差しを浴びる籠ではなく、心地よい土壌に湿度に互いに育まれたい。
故に、彼女の魂が欲っするのは(己の理想を前提とするが)、彼女自身を必要とする欠けた者になる。
その衝動は彼女の常識という良心を超えて、肯定される。
元々、凛として頼られる様にあれ、自身の衝動を遠ざけただけで本来、この世界に彼女を縛る法などない。
むしろ人死が異常に多いこの世界には、"優秀であれば"という枕詞が付くが。
産めよ増やせよを肯定するような魔境である。
「私は、決めたぞ。うん、君は手を離したら何処かに消えてしまいそうだ」
「???、どういう意味―――」
彼は脈絡のない言葉に意味を問い直した。
例え彼が、闘牙の少女と好き合っているとしても。いや、だからこそ供に歩むのは意味もある。
変わらず、ガルデニアはローズという少女も好きだった。
それに。カイトは簡単には幸せになれないのだからと、自身を肯定する。
その返答は。
「いや、今はいい」
「……」
つまらなそうなジト目をこちらに流す、"儚紅の少女"の存在を無視できる程に図太くない。
それに、いつかとしても彼から求められたい。
「対して意味のない事だ。きっと話しても、伝えても変わらないわ」
その言葉に、反して込められた意味は強い。
君が他の誰かを見るのはいい。何かに夢中になってもいい。けど…。
(君が、私を避けるのだけは許さない)
その心の奥底で蠢く黒い感情、それも確かに彼女自身の衝動だった。
カイト君の浸食による第六感は、原作.hack(無印)染みて世界に想定してます。
『八相』の近くにいると砂嵐がバリバリ走るし、とある技術系統関連する事象に文字列をとして認識しますし、その力の痕跡が残った地を欠けた白黒に0・1もとして認識します。
このノイズバリバリのせいで、【狂羅輪廻】が定着している想定。現実の剥離と怨敵『八相』を認識します。
リアル設定がないので、蒼海オルカとカイト君はかなり歳が離れてる想定です。19~20歳くらい?
あの体格で14歳は相当早熟だし、称号から相当の年齢を想定してます。