ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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傭兵【蜃気楼の侵略】

―――【混迷たる高山都市】

 

 降り注いだ破片により発生する結界。

 【サークルマスタリー】という自己探求した、計算された統力場の形成術式。

 エンジェルギア・A-K、または『IS』と呼ばれる魔導文明由来の魔具は破格の性能を誇る。

 過去に滅んだ魔導による『マナ力学』が、最盛期に発達した文明の遺物の機能も併せて。

 力場を己の探求も併せて、多彩に利用するのが彼女の技能(スキル)である。

 

 胸に杭を打ち込まれたまま槍舞士。

 ガルデニアはそれに『魔具』の断片と共に封じ込められ、空間すら誤魔化して隔離された。

「―――ッ!!―――ッ」

 それは封印されたとも言っていいだろう。

 声すら通らず、変形槍を魔力撃と共に打ち付けても、びくともしない。

 そもそもこの狭い空間では、槍の様な長柄は威力を振るえないのである。

 

「あんま暴れると疵に響くわ。ちょっと待ってね、姉さん。うちはまだ"仕事"が残っているさかい、ね」

【魔術師:ヘルメスの薔薇】

 心の像に、文字通り杭を打ち込んだ"傭兵の女"はまさに人生の絶頂にいた。

 己の最愛である、"九十九姉妹"の姉、彼女が物心付く前から供に合った半身というべき存在である。

 彼女は本来、弱い人間である、誰かに寄りかかり一人では立てないそんな少女だった。

 

「あぁ、姉さんがやっとこの手に、どれほど待ち望んだやろか。こんな状況でも力を喪わない。この綺麗な金の髪、緑の瞳、全部想像以上や。一人で慰めていた時より…。もう、全部全部うちのものや」

【欠落狂愛】

 この上なく、恍惚の笑顔で両手で顔を覆い、湧き上がる衝動に身をくねらせる。

 その弱さをただの一人、美しく強かった姉に全てに押し付けたのが、全て間違いだったのだろう。

 

【壊れた天秤】

 生まれによる由来と、とある出来事に壊れた価値観の天秤、典型的な視野狭窄である。

 

 唯一至高と信じた九十九の姉"ガルデニア"は、その血脈を不要と廃棄された。

 この世界は厳しく、幾多の苦しみを前を向き抗う姉の姿を、その価値を見出すことはなく。

 拒絶に別離に、狂気に陥った今の彼女は、唯一至高に仕立て上げて、この手でただ愛でたかった。

 

 宝石の様な装甲を纏い、右手に十字架の盾を持ち飛びたとうとする。

 義理立てではあるがとにかく、己の足を消す為にも街には滅んでもらった方が都合がよいのもある。

 彼女が誇る、"戦術級魔術"を実現する『魔具』は、この状況をさらに混迷に陥れるだろう。

 『元式魔具』に代表される弩級の上級魔具は、一般的に特記戦力の無い町を用意に滅ぼしうるという。

 

 別離にて、"傭兵の女"の崩れた倫理の天秤は、完全にバランスを喪っている。

 そうだ己の最愛をこの手にする為に、その為になら、彼女は悪魔にだって魂を売るだろう。

 

―――その愛欲衝動に、妄想に溺れた目に……。

ザッ。

「―――ッシ、ネェ!!」

【精霊術:アプドゥ】【ファストアクション】【舞武:重心集中】

 全霊に、駆け抜けた勢いの儘、振るわれる脚撃が襲い掛かる…っ!

 その光景に思考は要らない。己が恩人・仲間に胸に突き立てられた『杭』。

 その光景が目に入っていたカイトはまず蹴りが出る位にはブチ切れていた。

 

『エンジェルギア:ヘルメス』【サークルマスタリー】【イナーシャルキャンセラー】

 しかしそれは弾かれる。

 『エンジェルギア』という魔具は自在に空を翔ける為の力場を纏っていた。

 彼女の技能(スキル)により、月衣に等しく強化されたシールドによって防がれ…。

 

「回、れッ!」

【魔法剣Lv2:爆竜双刃】【狂羅輪廻】【舞武】

【十字架のヘルメス】【鋼鉄乙女】

 その力場を逆に足場に、重心を踏み込み回して宙を跳ね上がり、落下と共に回転魔法剣を叩き込んだ。

 渾身は"傭兵の女"の振るう十字架に弾かれ合い、距離が開いた。

 

「なんや、誰だか知らんけど―――」

 やっと、至福の時間に乱入してきた少年に鬱々しそうに、その眼を向けた。

 その目前にて…っ。

『陰陽札:煙符』【精霊術Lv2:サイレント】

 縫い合わされた煙幕が炸裂し、精霊術の応用も咬ませて、辺りの視界を覆いつくす。

 彼は冒険者だ。大概が獣人を除く人類種より、感覚器が鋭いモンスターを相手にしてたゆえに。

 事前情報で有効の確信がない限り死蔵していた、絡め手の手札である。

 

「なんなのですの?いきなり羽虫風情が煩いわぁ」

「ああ"侵略者"だな、お前」

 それに紛れて鶴翼に向けて、呼吸を整えるわずかな間。まるで会話にならない言葉を投げつけ合った。

 呼法、魔法剣の初歩を練り上げ、踏み込み回り込んで、斬りかかる。

 

「馬鹿やねェ、そんな目晦ましでうちの『ヘルメス』の目から逃れられるとも?」

【ヘルメスの十字架】【ハイパーセンサー】

 "傭兵の女"は余裕の表情で対処する。宝石細工の鎧を稼働させて反応する。

 データリンクによって視力や、空間情報を取得することが出来るのである。

 視界を防がれようと、影を追い。

 武装である十字架を振り回して、その力場を手繰って迎撃しようとする。

 

「アハハハハ!無残に八つ裂きにしたるわ!?」

【杖銃術】【陰陽術Lv3】【サークルマスタリー:スラッシュリッパー】

 十字架から放たれる力場による回転ノコを4ツに分割し、放って予測線を菱形に切り裂いた。

 これは彼女の基本パターンに一つであり、体技も合わさり投擲されるその威力は。

 例え鎧を纏おうと、四肢を切り裂き分割するに余りあるだろう。

 

【魔法剣:炎舞の刃】【舞武】

 その投擲を捉えた影は、双剣の吹き零れる炎をもって迎撃した。

 一投、二投を焼き弾き、更に残りの宙を地を挟み抉るように迫る回転ノコを…。

 

「甘い!」

「ご、な?!」

【舞武】 

ガッ、ドカァ!! 

 精霊術に足場を形成して滑り、潜り込んで、再び宝石鎧の力場(シールド)に亀裂を斬り入れたのである。

 それは方程式の様に整然としすぎた。

 電子技術の補助を与える『ヘルメス』の存在を、電子世界への感覚は輪郭として写すのだ。

 

 

「―――演算、補助術式」

【憑依具】【円環魔術】

 そしてそれを援護するのは、儚紅の少女の魔術である。

 カイトは術の行使をリコリスに任せて、体技のみに集中している。そうでなくてはここまでは動けない。

 

 そのまま"傭兵の女"は驚愕の声を上げ、装甲を拡げ、警戒して飛び退き。

 全力稼働のカイトはそれを追う余裕もない。獣の構えを取り、呼吸を整え睨め付けた。

「なるほど、あんさんも視得てるようですなぁ」

「またふざけた奴、上級魔具のオンパレード。アンタ等なにが、目的?」

 武器を構え、互いに、警戒して目配せし合った。

 特に状況は、どちらにもウィークポイントが存在する。

 

(なんや、年若い。センサーにも強い生体反応はないわ。気迫はあれど、それだけの雑魚やん)

【ハイパーセンサー】【壊れた天秤】

 "傭兵の女"は、目の前の乱入者をそう評した。

 己は上級魔具の使い手である。その機能は自己格納と、自己修復を持ち維持が容易でありながら。

 使い手の状態を維持し、障壁を持ち、空を翔ける。その中でも逸脱して破格のものだ。

 故に真っ当に圧殺できるだろう。それはこの世界で一般的な常識である。

 

(敵は鎧の魔具使い。とにかく硬い、綺麗な術式が鋭い。纏う力場に隙も無い)

 観察して割り出した戦力値は、噂だけに聞く上級魔人に等しいか。

 強固な宝石の鎧、可能性の翼を纏ってはいるが、敵の適性は魔術師寄りのそれである。

 現在はカイトはそこに漬け込んではいる。おそらく、真っ当にやり合えば順当に死ぬしかない。

 唯一の楽観視できる要素は、実質の二対一であり、それを相手は気が付いていない事だろう。

 

「うちは、自分の(アネ)さんを取り戻しに来ただけや。邪魔せんといてや全く、こんな遠くまで離れるなんてな。探すのに手間取りましたわ」

「姉さん…?先輩、"ガルデニア"さんの事。冗談、どうみても疵付けてるだけじゃないかふざけた事を」

「アンタ、姉さんの知り合いなん?姉さんが言ってた居場所って……」

 短く互いに都合をぶつけ合い感情が、憤怒が噴き出す。

 特に"傭兵の女"は、許しがたき盗人を見る様に、瞳を狂気に沈めて。

 その反応にカイトは一抹の迷いを捨て、双剣を更に切っ先を先鋭に、波立たせて重さを載せる。

 

「そういえばあんさんの動き、姉さんの舞に似てるなぁ……」

【欠落狂愛】

 

 その言葉と共に、暗く淀んだ目を伏せて。

「気に入らないわぁ。丁度ええ、引き裂いて姉さんの前に晒したる!!」

「アンタは僕の大事な人を傷つけた。奪われるもんか、奪われる前に死ね」

【ソードマスタリー】【魔法剣】【狂羅輪廻】

【サークルマスタリー】【杖銃術】【阿修羅姫】

 大事な物の為に、互いにここは退けない。

 中心とした必然的に接近戦になる。再びに己の獲物、十字架を双剣を構えて、距離を詰めぶつかり合った。

 

 雷と炎の魔法剣が鉄の閃きと共に狂い咲き。

『十字架のヘルメス:銃撃』

 いくつもの円月輪(リッパー)を従え、歪みを貯め破砕する円弾を討ち放つ。

 

【魔法剣:虎輪刃】

パチン。

 曲線力場が、彼の牽制である"飛ぶ魔法剣"を弾く。

「アハハハ、なんや啖呵斬った割に非力ィ非力やなぁ!!」

【杖銃術】【鋼鉄乙女】

 強固な障壁を纏いながら、天使の名を本来の機能である銃撃を繰り出し、前進する。

 己の周囲を巡る円月輪も併せて、圧殺する構えだ。雑多な冒険者はこれで大概死ぬものである。

 

「頼んだ、真面に防がないで、角度で流して!!」

「……わかった」

『黄昏の腕輪』【プロテクト】【フェイト:壊れた心】

 リコリスに腕輪の機能の制御を、【電制防壁】(プロテクト)を併用して動く。

 彼女も、短い間だが触れ合い母性を感じた、ガルデニアに打ち込まれた杭に、重症に怒っていた。

 故に全力だ。壊れた心も震わせて、打算もなく全力である。

 真似る、真似る、自身の器である『憑依具』の蓄積された記憶を、形と成して可能性の先取りをする。

 

【精霊術:使役妖精】・【タッピングエア】【アサルトサージ:蛍火】

 

 カイトの属性、炎と空、無遠慮にばら撒かれる"繋がり燃え続ける炎"に、情報の意味を与える。

 【妖精術】とは、人工的に創造、育成を施した精霊。その妖精に指示を与え補助させる魔術である。

 大別すれば精霊術と変わりのない技術であり、それによって生み出される……。

 

 それは煌めく小精霊の群、あるいは鱗に編まれた炎の衣であった。

「コケ脅しを…そこや!いい加減おとなしゅうくたばれや」

『十字架のヘルメス』【スラッシュリッパー】

 円を描く様なステップと共に。

 未だ煙が漂う視界を"傭兵の女"は、感覚器にリンクしたセンサーにより、輪郭を追う。

 再び、構えた十字架を中心に追いすがる身を切り裂くこうと、唸りを上げ。

 

―――まるですり抜ける様に、予測線のみを切り裂いた。

 

「なっ!幻やて、うちのヘルメスのセンサーを」

【精霊術:デクトーマ(ブリンク)

 マナを感知する感覚器をを誤魔化す、そんな炎と磁の陽炎であった。

 『蛍火』はそのままカイトの体質であり、延長である。

 これはそれを残像として残し、数瞬前の自分の身代わりとして惑わす技能である。

 

「取り付いた…っ」

「くっそ、鬱々しい小蠅や…っ!こりゃ不味いかも」

【イナーシャルキャンセラー:慣性固定】

 冒険者カイトの術は未だに、先行する精霊術に限っても、応用性をもって未熟である。

 確かに、彼は事前準備が伴えば一定以上を行使できるだろう。

 しかし師がない、術の行使は妖精詩の亜流でありノウハウがない。戦技と同一化させるに足りない。

 

 それを埋め合わせるのが、高い演算能力を持つ"リコリス"という空白に顕れた(イレギュラー)である。

 彼の素質の先取りを許しているのだった。

 

 電子技術に形取られた、フィールドをしっかり認識して、回り込む。

 連続駆動、全力の斬撃を叩き込みうる姿勢を探り…、確かにそれを見出し踏み込んだ。

【ソードマスタリー】【魔法剣:爆竜双刃】【精霊術:チャージ】

 辺りのマナを励起する魔法剣と共に、炎の衣まで練り込みチャージし、剣腕を叩き込もうと降りぬいて。

 

「―――へへ、なーんてなぁ!」

【サークルマスタリー:陰陽の弾き鐘(シンバリティ)

 "傭兵の女"カルミアが追随する円月輪に仕掛けていた術式、機雷ともいうべきそれが追随する。

 カルミアとて、自身が接近戦が不得手なのは自覚している。

 補助機能に富んだ高度な魔具鎧を纏おうと、彼女は術師の延長であるのだから。

 それを埋め合わせる、円に縫い重ねられた破裂せし棘輪であった。

 

 そして局所の起爆破裂、耳鳴りを伴うつんざく高音と共に。

 敵対者を屠ろうと、両叩きに殺傷するマナ衝撃を響かせ抉り出すのだ。

 

―――しかし。

「ずっアッ」

【ダンシングヒーロー】【狂羅輪廻】

 その双剣は全く怯まない、踏み込みは止まらない。

 彼は狂気によって薄氷を踊る者、見出すのは殺意、例えて起爆するそれに聴覚を貫かれ身体が軋み上げようと。

 魔法剣により、衝撃刃を払い除け焼き焦し、虫喰いに。

 偶然だが、雷電に"共振する剣"その歪みの道を見出し押し纏い、それすら威力に変えて叩き込んだ。

 

 互いに割れる砕ける。己の纏う宝石鎧が予想外に、重さに乗せられた剣は痛打に。

 カイトとて、払いきれぬ衝撃刃に身を砕かれ、特に頭部に聴覚に軋み痛打を受けながら。

 

(こい、っつ)

 それによってやっと"傭兵の女"は、敵対者を己の同類と認識した。

 なぜこんな狂人が、邪魔である。己の最愛に届くための障害になっているのだ。

 獣の如く互いに吠える。

 

「「―――この、気狂イガああああ!!」」

【【狂羅輪廻】】

ギュウ、ガガガガガガ!!

 狂気の儘に互いに本気で排除しようと、甲高き衝突音の激しさを増していく。

【陰陽術Lv3:円転結界】【杖銃術】【サークルドライブ】【鋼鉄乙女】

 円を描くようなステップを踏み、陣地を引くように円たる結界を引き摘め、乱雑に回転させることを。

 己が編み出してロジック、戦闘術にて方向性を持たせて、近接の不得手を埋め合わせようとする。

 

 彼女のエンジェルギアの武装。『十字架のヘルメス』は殺傷力に欠けるが強力な力場の発振体たる、防御性に優れた武装である。

 

 それもあって、その獣の如く削り合いは、交戦距離(レンジ)の適性有利をもってしても。

 少年が肉が破れ、削れるが早かった。

【サークルマスタリー】【頑強】【鋼鉄乙女】

 それは装甲の差であった。

 "上級月衣"に匹敵するその力場、彼の魔法剣は渾身以外に通りはしないのだから。

 

ひゅん

 それに、眼光が奔る。見覚えのある馴染んだ槍が奔った。

「"カルミア"、家族の不始末はこの手で付ける。これ以上、好きにはさせない」

「なっぁ、(アネ)さん?!」

【陰陽術Lv2:生滅破邪】【固有術:森】

 それは自身の魔具の欠片を中心に、結界をもって封じていたはずの最愛の姉である。

 その姿は更に傷が深く、胸に打ち込まれた杭に血を滴らせて―――

 

(姉さんは、術は苦手のはず…!?)

 ガルデニアの固有魔法、体質を知り、環境から培われた術師の知識から、直感する。

(まさか生血を媒体にして、うちの結界を破ってたん、なんて無茶や!?)

【九十九巫女】【陰陽術師】

 その"固有術"は生体反応を引き出すものだ。

 それを塗り付けて、魔術陣を描き魔力を練り込み歪みを。狭い距離で、脆くした箇所をぶち抜いたのだ。

 その体質故にそれは命を削る。生血をもって傷から、魔力を引き出していると同意なのだから。

 

「何をバカなことを止りィ!その杭は、うちの意思一つで臓を裂くというとるやろ!」

「ごふっ、やってみればいいさ、私が死ぬより一刺報いるが早い…っ」

「……っ」

【ヘルメスの薔薇:開花】

【リジェネレイト】

 打ち込んだ杭を少しずつ花開かせ、身体を内部から、疵付けて…っ。

 最愛に、姉に止る様に懇願するが、血を流しながらも全く鈍らず止らない。

 再生と破損を繰り返す堪え難き痛みを噛み締め、それでも槍と身体に力を籠める。

 そして、その中に確かに笑みがある事の理由を、"傭兵の女"は理解していた。

 

 焦る、焦る。

 その杭は楔である。本気で殺すつもりはなく、生殺与奪を握れば離れていかぬと思ったのだ。

 大人しくしてれば問題なかったそれは、刻々と拡がり、最愛の命を削る。

 

「なんでや、なんでわかってくれへんの!あんなに一緒にいたのに、こんなに愛してるのに…っ!」

「知るか、自分の都合だけを大声で喚く奴は邪魔なんだよ!」

【杖銃術】【サークルマスタリー】【ハイパーセンサー】【壊れた天秤】

 "傭兵の女"は地に覆う円輪で、立ち位置がずれて、二つの銀閃を辛うじて受けながら。

 鎧の翅を展開し、数値を少しずつ入れ替えながら干渉する。

 とにかく距離を入れ替え、円月輪(リッパー)を分回し、歪みの弾丸も併せて屠り去ろうとする。

 

ギンッ!

『黄昏の腕輪:電制介入(ゲートハッキング)

 

 それを"腕輪の担い手"である少年は意に介さない。

 鋭く奔る円月輪(リッパー)と、双剣で受け流しながら、時に切り裂かれながらも。

 解析された法定空間へのメタ機能が、一流水準の結界に適応性を与え、普段通りに動かさせるのである。

 

「……あまり、無理しないで」

【電脳使い】【イレギュラー】【アナライズ】

 それを実現するのは、リアルタイムで変化するそれに対応する、"儚紅の少女"の解析能力であった。

 侵略する影、『碑文八相』が持つ【月匣】と呼ばれるそれより、情報量が圧倒的に少ない。

 とはいえ、術者とて干渉を常に変化させていくのだから、補助なしで実現はできないのである。

 

【初演・夢幻■舞】

【ダンサエスパレス】

【サークルドライブ】

 打ち合う、競り合う、舞い踊る。三者三様の牙、切っ先が全力で回り、互いを削り合う。

 カイトの見立ては正しく、破格の上級魔具を纏い、使いこなした彼女の戦力値は"上級魔人"に等しい。

 圧倒的な力場故に、数で圧倒しながら膠着している。

 

 しかし、"傭兵の女"は焦る。

「あんさんも"異能使い"か?!うちの『円転結界』をなんやん噂に聞く『霊夢』でもあるまいし!」

 魔具の補助なしで到底実現不可能なこの結界は、彼女の隠し札であり、殺し間である。

 自身の最愛である姉が、普通に滑って発条に利用して、斬り掛かって来るのは理解できる。

 それは"カルミア"の扱う技術、その理解あっての事のはずだからだ。

 

 しかし、それをまるで無視するように動く蠅風情は許せない。

 何より、己の最愛の姉にさも当然の様に隣に立ち、舞い踊る様は更に許せないものだ。

 

「その手綱、ふざけて!まとめて吹き飛ばしたる!!」

【飛翔する天使の翼:跳躍】【イナーシャルキャンセラー:弱体化】

 "傭兵の女"は、天使の名を関する魔具を纏いながら、空を翔けない。

 その分の機能を力場障壁に応用して特化、"上級月衣"並みの防御性能を実現していたのである。

 特化した防御力場脆くさせてでも…。

 

【天■化】

 それが"無限たる可能性の翼"(IS)と謳われた、魔具が判断した天■化を伴い適合させていった。

 例えて『魔導機鎧』(メイジアーマー)としての機能であった。

 "傭兵の女"には、空を翔ける【高機動戦闘適合】の才能がない故に、それは高度への跳躍に留まり…。

 

「さぁ、うちの想いに応えれ、ヘルメエエェェエス!!」

【魔術師:詠唱破棄】

 跳躍により空に逃げ、距離を取り時間は稼げた。焦れながらも経験から精密に標準を定める。 

 マナを取り込む排気口を展開する、円環を螺旋に織り込む、十字架を形成する。

 再び局所に練り上げ、多重に折り重ね多角に縫い合わせた円筒結界、その自壊による螺旋破戒の円転だ。

 

【十字架の夜明け(セント・オルトゥス)】【乾坤一擲】

 "戦術級"、技量にて五章魔法を上回るこれは"傭兵の女"の最終奥義である。

 これを日に二度も撃つのは初めての事であるが、そんな事は関係ない。

 

 自身の最愛に隣に立つ羽虫に嫉妬に殺意に浮かれて、更に局所に撃ち絞り己と供に墜落させる…っ!

 

 それを、一度は自身の事前知識と、槍の技量にて引き裂いたガルデニアが反応する。

 あの術技の、妹の"可能性の翼"を知るのは己だけであると。

 

「私が、やるしか、ないか。君は下がれ」

【ディフェンダ―】【見切り】【生命燃焼】【阿修羅姫】

 ガルデニアは変形槍を扇状に構え身体に生脈を巡らせ、呼吸を生命力を巡らせ活性させる。

 未だに打ち込まれた杭に開く疵は、身体から脈が熱が零れだし、徐々に冷えていくのを自覚するが…。

 そんな事は関係ない。喪いたくない湿度が、温もりが背後にある。

 眼光鋭く己は最前線の盾で、払う槍であるとの矜持が芯として動かすのだ。

 

 ……のだが。

「"カルミア"は私の妹、私の落ち度だ。君には関係ない…―――」

「貴方が!下がるんですっ!その怪我で何言ってるんですか!」

【舞武】

 ドカァ。

 カイトはその意地を矜持を蹴り飛ばした。とにかく今は重症人であることが最優先だった。

 先ほどは隙を生む為に、慣れた呼吸に供に舞い踊ったが。

 

「な、何をする」

「ガルデニアさんなら治せるでしょう、とにかく少しでも疵を塞いで!」

 重症なら下がって欲しいのが本音で、傍目に見るたび、焦燥に襲われるのである。

 それに戦術級など、迎撃するなら単独が効率的なのだから。

 どう見ても、空の鎧の目標は己だ。巻き込まれるのは一人でいい。

 

【蛍火】【精霊術:旋律感応】

 少年のオド性質、"精霊に好かれる程度の才"である。

 その指が空属性が、双剣の柄を搔き響きならす、妖精詩が響き渡りばら撒かれたオドが形を成す。

 

「手は在る。"芯を解体する"。リコリス、手伝って」

「わかった、ぱぱ」

 それは、儚紅の少女こと、リコリスが食い潰した可能性である。

 その鍛えなおす前の由来にて、『蛍火』にて染色され特異な雷を切り裂いた『精霊巫器』を握る。

 

【憑依具:マナ投影】【偶像少女】

「―――術式『雷電降臨』(ランセオルー)、足りない情報素子形成、連続性を推定して保管―—―」

 ここいたって、儚紅の少女が初めて、空間にその身を投影され姿を現した。

 リコリスにとっても異はない。自身の器が壊さない為、温かさを喪わない為である。

 結局、打算的に振舞えない。何処までも結局、彼女は人が好きなのである。

 

【電子魔術:模倣演算(エミュレート)

 その喰らった情報を、既に自身の身と同化した其れを再現する。

【雷霊降臨】(ランセオルー)

 そして顕れる、歪に捻じれた獣を形どる、雷属性の化身の如く"精霊"だ。

 『絆の双刃』にて、育ち宿るはずだった精霊、その可能性名が『ランセオルー』である。

 殻を形取るのは、突き入れ切裂いた『悪魔の投影』、『黄金精霊』の大魔法に由来する。

 

 "幽霊"の位階にあったリコリスはそのオドを、マナを、情報を、生きる為に自身の肉に変え貪った。

 少年が、カイトが握る『精霊巫器』は、そこまで容量はない。

 精々、中精霊規模で定員である。故に彼女は喰らって席を空けた。

 

 その頂点にあるのは、未来軸に商人の少年の手に渡る『カスタムソード』が上げられるだろう。

 

 それを…。

「確かな意味が欲しいなら幾らでもあげる。だから、供に燃えろ」

 自身も喰らわせ纏い。惜しげもなく燃やした、というより己の炎にて半々に特性を染色する。

 "あの夜"に、『死神』相手に撃ち放った時と同じ所為である。

 

『絆の双刃』【魔法剣Lv2】【使役精霊:精霊燃焼】=【烈破轟雷刃】(ボルテクスアタック)

 組まれるは単純な"オド放出の術式"、"破裂の方程術式"。

 互いに性質、対流特性、張力の異なるマナ特性を一度は実証させ、精度が上がりし曲技である。

 それを双剣体技と同一化させて放たれる、変わらず少年の夢想の最強たる剣。

 

 双極の対方向に交差するミキサーの刃、連ねる炎喰と雷霆の刃渦。

 多重に折り重ね多角に縫い合わせた円筒結界、その自壊による螺旋破戒。

 

極音。

 響き、互いの奥義が高山都市の蒼空にて、互いに炸裂し合う。

 

「あはははは!!良い心がけやんか、手間が省けたあんさんだけ殺したる…!!」

【サークルドライブ】【乾坤一擲】【輪廻狂羅】

 "傭兵の女"は奥義は、多重結界を繋ぎ留め歪みを局所に破壊力に変える。

 その極地にて、"無限の可能性の翼"にて自身だけ保護しながら、重力も併せて落下する。

【壊れた天秤】

 雷霆に炎喰に巻かれながらも、それが愚かな羽虫を微塵に千切ると疑いもしない。

 

ぴしっ。

 それは姉以外には、見切られる事はないと信じた破壊力の源、歪みの局所の割れる音。

 電子世界に対する第六感(シックスセンス)により、知覚されている。

 エンジェルギアとは"、情報顕現"によって生み出される天使核兵装。いわば量子学理論の投影だ。

 

(縫い合わされた中心が見えた…っ、そこを解体すれば!)

 "傭兵の女"とカイトの相性は悪くない。最初から力場の形を認識して、足場などに利用していたのだ。

 故に、今度もその見取った輪郭から、歪みを捲り穿ち…っ。

 

―――ドオオオォオン!!

 しかし当然の様に、質量差から相殺しきれずに、墜落の余波を食らい吹き飛ばされた。

 

「ごほっハァ…ハァ…!やったか」

【鋼鉄乙女】【頑強】

 

 眼をやる、"傭兵の女"は膝をつき、顔を俯かせて墜落時点からぴくりと動かない。

 彼女が纏っていたは宝石鎧は、制御より解放された力場衝撃に、砕けている。

 元々、斬り合いに削れていた事も大きく、その力場の保護機能を半端にして、墜落したのだ。

 

【乾坤一擲:失敗】

 【乾坤一擲】という技能は、重量を速度を比例して威力に変える技能である。

 だが、相応して失敗した時のリスクも大きく、その威力がそのまま反動として襲い掛かる物だ。

 

 故に渾身の賭けに失敗した彼女に、立ち上がれる道理はなく…。

 

――着用者肉体の存続を確認、”堕天”を開始しますー――

ドクン!

【機心覚醒】(ポゼッション)【オートイジェクション】

 故に、別の要因が動かさた。薬剤の投入、天使の翼が切れた糸を動かさせる。

 それは蘇生機能、微細機械群及び採血された着用者の血液サンプルと合わせて最適な薬剤として投与される保護機能である。

 

「うちは……、うちはまだ……姉さんを…」

「…っなんだ!?」

【接合:天使化】

 再び立ち上がった"傭兵の女"の目は虚ろであり、うわ言喚いて虚空を見つめる。

 その様子は明らかに、異常であった。立ち上がる魔力に組み上がる数式に背筋に戦慄が奔る。

 

「あねさん、あねさん、あねさんあねさんあねさんあねさん―――」

【エンジェルギア・ヘルメス:セカンドシフト】

 ”機械に心を持たせた存在として情報の優先差別を人為的に発動”。

 それにより本来設計されたポテンシャルを凌駕する、設計者の意図を超えた機神となるだろう。

 

【界鎧装(ヘルメス)第二形態(リングワールド)

 その再起動(リブート)と共に、辺りを粉砕し砕き、熱に代わる。

 新たに組み上がる禍々しき鎧、罅割れたガラス人形たる巨人兵である。

 その周囲に、周り巡るリングは衛星の様。

 中央の太極図を展開して、辺りの者を圧搾しながら、このリングは超高熱の熱鞭とするのである。

 

 それは折り重なったに閉じ込めた物体、それを電磁崩壊させてそれを内包した結界を手繰る権能。

 灼熱たる境界面それが、彼女の"無限の可能性の翼"であった。

 

 過去魔導文明にて、人類上位種(ハイエンド)溢れる『魔王領』をも蹂躙した『天使兵』の領域である。

 

 しかし、準備されて割り込むように木々の牢壁が転化する。

「足を止める…っ!"―――我は木卦成す織り手、森羅顕現ここに示さん…っ"」

【陰陽術】【魔術師】【固有魔法:木判装】

 蹴り出され構えを崩されたとて、それで動きを止める程に、甘い覚悟ではない。

 だから、準備していた。本来、気休めの壁としての方程式だ。

 まだ不完全に機動を硬直させるその巨人に、術による木々が巻き付き、動きを妨害した。

 

無感動な反応。

 "ドール化"と呼ばれる現象、"傭兵の女"の在り方さえ侵食して、徐々に無意味に変えていく。

 それでも妄執にて動くそれは、愚図り泣く赤子の様であり、その技の鋭利さ美しさを損なっている。

 しかしそれでいてお、圧倒的な熱量の力場だ。

 

 己の最愛の姿さえ、おぼろげな障害物、邪魔者として認識して。

 機械的な反射的なロジック、その木々ごと円環の尾を薙ぎ払おうと……。

 

「―――アカン。それだけは、ダメや―—―」

【欠落狂愛】

 その機械的なロジックが、一瞬硬直した。愛に狂うても、それだけは退けない一線であった。

 弱い彼女は、自身の最愛が居なければ生きていけない。

 "傭兵の女"は一度とて、自身の最愛に殺意は向けていないのである。

 

 その隙をもって。

「そのまま消し飛ばす…っ」

『黄昏の腕輪』【狂羅輪廻】【ダンシングヒーロー】

 少年の右腕に、幾何学紋章の花弁が花開いている。

 その堕天という変性に、不自然なフリーズに、【紋章砲】の展開を完了させた。

 推測する、あの鎧の適性は術師のままだ。故に距離を取れば死ぬしかない。

 少年は正面突破を選択し、その為に迷いなく選択して踏み込んで歩むのだ…っ!

 

『―――高エネルギー反応、感知。迎撃します』

【迎撃態勢:エンジェルハート】【ハイパーセンサー】

 多数の魔法陣、魔術的核融合、円環が集い物体を崩して縮退した空間図形を引き上げ。

 歪みの局所に集中させて、弓の如く熱量打ち放つ究極砲撃の一つ。

 

―――未来に至る、大陸を焼き尽くしこの世を亡ぼすと讃えられた。

 ”七名の極光”(セブンスビックバン)に至る為の、あるいは一つの方法論である。

 

―—―【円環紋章砲】(ドレイン・アーク)

―—―【太極番天核】(アトミックフレア)

 

 万物を情報に返す極光の帯、幾何学光線(サーカス)

 過負荷により、太陽の具現たる核熱の矢がぶつかり合い。

 

 高山都市【ドゥナ・ロリヤック】の、"蜃気楼の侵略"と名付けられた一幕の決着がつくのだった。

 

 




おかしい。なんかセカンドシフト設定してたら、核ブッパし始めたぞ。
カイト君とカルミアの相性は良いです。というより腕輪と相性がいいです。
中ボス"カルミア"のエンジェルギアは、量産品ではありません。

腕輪君の貴重な応用性。
八相以外でもリコリスが解析しうる範囲により、月匣、結界などの法定空間を無視して殴り掛かります。
強化パーツ染みてきたリコリスの運用。
設定上セグメント回収しないと身体が物理的に脆すぎるから、簡易的な魔術で昇天よ(死にませんが)。
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