ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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雲跳ねる【蜃気楼の侵略】

―――【高山都市:ドゥナ・ロリヤック】

 

【天明ルキ水底カラ】(ローレ・ハイロウ)

 

 ローレライ(人魚)が象徴として宙に留まり歌を響かせて、そんな明るき水底の地獄に引き摺りこむ。

 "蜃気楼の種火"が周回し、惑わしの雷"が宙に伝播して由来を忘れ去れるのだ。

 ある種、幻想的な光景。揺らぎ惑う空を背景に、多色の魔法のオーケストラである。

 空気は淀み、街の象徴であった"精霊風車"は、先まで飛行の余波に吹き荒れていた回転をゆるりと不自然に止めた。

 

 そう、翼を持たぬ者は、その仮想の水底から浮かぶことも出来ずに死ぬしかないだろう。

 本来は、……そのはずだった。

 

「―――やっと、動きが止まった!!」

【ファストアクション】【二刀流:舞武】【狂羅輪廻】

 塵巻く炎を纏った双剣士が自身で作り出した足場を、四肢を重心に跳ね上がる。

 重く澄み淀んだの空気を噛み締めて燃やし、現実を見据えて"侵略者"を睨み付けて翻るのだった。

 今まで自在に空泳ぎ、手が届かなかったローレライ(人魚)に精霊術と電磁網の足場を作り出し……。

 

【共振装甲】(プロテクト)

『黄昏の腕輪:電制介入(ゲートハッキング)』【魔法剣Lv2:爆竜双刃】【精霊術】

―――斬ッ!

 交差斬撃、その張力による破裂の剣を十字に叩き込んだのである。

 "現実を見失えば"溺れ死ぬ幻想の海。

 冒険者カイトは、『死神』二重の滅びの記憶を再現された際に、現と幻の両域を既に経験していた。

【ダンシングヒーロー】

 滅びに惑わされながらも、狂気のままにそのままに歩み倒した。

 彼にとっての現実は目の前に怨敵がいる、故に只前に歩んで喰らいつくだけである。

 

「―――術式補助…、"演算流導式"、解は無数に―――」

【円環魔術】【プロテクト】【憑依具:蛍火】

 先から変わらず儚紅の少女は、腕輪の機能を利用して空を叩いて、その動きを補助していた。

 雲の様な"使役精霊"を、さらに強固な網掛けの足場として空間に電磁の網掛けにより締上げる。

 

 それを足場に伴った物理を伴った魔法剣は、障壁を抜き敵対者の躯体を小さく斬り焼くのである。

 

『―――ルルルル』

【円環魔術】【惑乱ノ波動:鬼火乱舞】【浮遊】

 その疵跡によって、人魚はその小バエに反応した。

 自身の周囲に周回する蜃気楼の種火を、精神を焼き焦がす炎を振り分けて迎撃せんとする。

 その躯体にて奏でた独自の複合音・合成言語が閉じ込められ、響き乗るその魔法に。

 

『跳動落花・改』(ジャンピングラウンド)【舞武】【精霊術:アプドゥ】

 再び自身で作り出した精霊術の雲を踏んで跳躍、重心とマナの流動性に手繰り潜り抜けて更に刃を向けた。

 その魔具は新しく彼が"侵略スル波"に備えて用意し、習熟したCランク級の魔具である。

 

 彼は、燃える続ける炎属性である。

 爆発の如く瞬発力を発揮する炎の担い手にいたる一般的な技能、"バーストジャンプ"などの技能は習得できない。

 

 故にこれは代替えだ。

 足裏からは破裂するように簡易衝撃が展開し、接着面に対して平行にかつ上昇させる魔具。

 一般的に『俊敏鋭爪』(ダッシュブーツ)の練習用であり、人足や大工愛用されている物だった。

 

 先とは違いローレライ(人魚)の動きは鈍く、浮遊するように動く、そんな動きでは振り払えない。

 

【領域作成:禍々シキ波】

 この存在『第二相・イニス』の高機動の原理は自身で作り出した領域に。

 自身の権能をもって"振動"させて、粒子を波乗り(フロート)して泳ぐように動いていたのだ。

【惑乱ノ飛翔:不全】

 『魔王級』という存在であろうと、この"海獄"を展開するには大きく機能を必要とする。

 故に領域作成の性質を変質させた現在は、その機動性を損ねているのである。

 

 

「遅い、やっと手が、届いた、"侵略者"は―――」

【菩提樹の献身:生命活性】【()演・夢幻■舞】

 彼の仲間である槍舞士の一時の加護、血潮が熱く腑はいつも以上の脈動を熱を生み出して。

 重心移動に先鋭した双剣士は、海に浮かぶ船を渡る様に足場を渡る。

 その光景は魔具の名前をもじり、"雲を踏み、跳ねる"(ジャンピング・クラウド)如く光景を成していた。

 

 これはあの夜に成した狂気のままに踊った"空中演武"、それを落とし込み道具の力で過負荷を軽減したものである。

 現在は半身である少女と、【領域作成】侵略スル波の抵抗に介入し、利用して可能な演舞だ。

 未熟であるが『腕輪の担い手』は、確かに"侵略スル波"に対する特効存在である。

 仮の仮定であるが、本来の"蒼海"と呼ばれた候補者の手が渡れば、高機動の状態でも介入を許しただろう。

 

 自身の機能が得意の距離に後退しようとする"侵略スル波"に。

 

ジャキッ

 予備の双剣として常に持ち歩いていた一時の愛剣に、【蛍火】の息吹を吹き込んで投擲する。

「―――ここで、供に堕ちて死ね」

『相鉄の双剣』【蛍火】【精霊術LV2】=【魔法剣Lv2:三爪炎痕(トライエッジ)

 カイトはそれと追随するように、敵対象に跳ね飛んで『絆の双刃』と共に同時に斬撃を展開する。

 

 それは直感的に汲み出した、彼の"固有魔法剣"(オンリーワンアーツ)にいたる可能性。

 "槍使い"のガルデニアが血液を媒体に、破邪を練り込んだ光景から思い至った。

 

 自身の血液を、設計もなしにオドを思いっきり練り込んだ剣をもって。

 手から離れても、研ぎ澄まされた刃刑のオド形成を維持する。

 空属性と炎属性の混合、彼の固有体質である【蛍火】は、"繋がり燃え続ける炎"だ。

 あるいは古き古き"十罰"の躯から鋳造し込んだ、ほんの微かに残る■属性が混ざりなせる業か。

 その性質を利用して、自身色に染色した精霊の"剣奴"を基点に三対の刃が互いに引き寄せ合い……。

 

ギギギギ、グシャぁ!

 直撃、自身が模倣する裂破螺旋の刃を形成し、卸す経験を反映させて。

 両指で旋律を奏で上げ、感応し。

 三叉に食い込む爪の如く斬撃、交わるオド性質に交差を締上げて、燃やし喰い散らす魔法剣を成したのである。

 

 しかし。

 

『ピピ、ガガガア。我は不滅、人々を導き成さん……』

「くっ、角度が悪い、疵が浅い!」

【共振装甲(プロテクト)

 その魔法剣とて"未完成"である。頭を首を刎ね飛ばすつもりで斬り込んだに関わらず、疵は浅かった。

 魔法剣の精度もあるが、主に角度が悪かった。

 首を引き裂き、躯体の頸と胴体に分かれ、双鉄の疵を埋め込むに留まったのだ。

 

 冒険者カイトは、宙に一時振る舞う権利を得たとはいえ、その歩みは全霊の跳躍の延長でしかない。

 故に、一度限りの魔法剣に全霊に繰り出し、後を考えるのは最低限である。

 

『導き、照ラシマショウ。断崖ノ先ヘト全テヲ』

【両具・両尖投射】

 翼を持たない者はいつかは堕ちる。それは自明の理である。

 人魚は意味のない言葉を重ねながら、堕ちる羽虫にその両尖の腕を伸ばして突き払おうと、腕を振るい。

『絆の双刃』【舞武】

 双剣士が抵抗に精霊の足場を愛剣を引きかけ身を翻して、その鋭き両尖を躱そうとして…。

 

「思うとおりには、させません!」

『レールガン』【援護射撃】【阿修羅姫】

 その軌道に電磁誘導に導かれた、鋭利な狙撃が突き刺さり軌道を逸らした。

 やはり世界に対する感覚が鈍く、鋼鉄の鎧を纏った機巧繰り(ギアドライバー)は、適応が早い。

 

 彼女の駆る"機巧"(ギア)、簡易で鋭利なパーツで構成された量産式の機体である。

 

『鉄流星の鍵』『リオン・カスタム』

 現在のソレは、上位機種である"ガーリオン"の予備動力コア(エンジン)と一部パーツを流用して組み込んで改造が施されている。

 この緊急事態に、その飛行能力を、火器の出力を間に合わせに強化しているのである。

 貴重な高コストの戦力である機巧の騎士(ギア・ナイト)達の愛機は、窃盗、工作に備えて全て"認証式"だった。

 

 故に、大幅な改造は容易ではない。だが、気まぐれに届けられた鍵によってその手間の手順を簡略化して。

 同継機体とは言え躯体面(ハード)制御面(ソフト)供にキメラの様な、間に合わせ改造に適合させたのだ。

 

 それは気の良い整備士たちの、不眠不休の努力の結晶ともいう。

 

 "機巧"(ギア)はそのままの勢いでのまま。

 相対速度を調整し介入してきた見知った顔を、機巧の上に拾ったのである。

「っく、助かり、ました」

「空の世界に、無謀に何をしに来たんです"冒険者"!…まぁ、この状況、手が増えるのは助かりますが!」

【クーデレ】【コンバットセンス】

 機巧は更に空中を跳ね(タップ)しブーストを吹かし、高度を上昇させて一時の同乗者の歩みに。

 双剣士の方も、海獄を噛み締めてオド染色(燃やし)、一息の呼吸を整えた。

 

『―――♬♩♬♩♪♬♫』

【円環魔術】【超絶魔力】【惑乱の波動:忘我轟雷・鬼火乱舞】

 その陰に空舞う人魚は、再度鬼火の防御体制と共に、自身に迫る一つの影に仮想雲の雷撃を放った。

『黄昏の碑文:自律思考』

 ローレライの思考ルーチンでは、この"海獄"は機巧繰りに効果が薄いのは予測済みだったが。

 乱入した羽虫は予想外である、解析をそちらの方に向けた。

 

『―――英雄招来、真二価値ヲ我二捧ゲヨ、歩ム程ノ絶望二堕チナサイ』

 

「余裕はない。足手纏いになっても助けませんよ"冒険者"!」

「十分です、僕でも高きから歩み寄れば斬り裂けます!!」

【阿修羅姫】・【狂羅輪廻】

 双剣士は再び、いや今度は確かな足場によって跳ね飛び。

 機巧繰りは流線型に躯体を格納し、高度を下げて速度を増し二つに分かれて落雷から身を躱す。

 

 雲踏み。双剣士の浮舟渡る如く体術渡海に、落雷をマナ虫食い炎を斬り裂き飛んで。

 抵抗、慣性。機巧操りの小刻みにブーストを刻まれるをタップダンスに。

 

ブン!

 "侵略する波"は変わらず、広域の魔法を展開して魔法戦が展開される。

 

【天明るき水底から】(ローレ・ハイロウ)

 カイトは幻影に溺れないとはいえ、その"海獄"の影響で強き気流に巻かれる如く、呼吸は苦しく頭を締上げる。

 "蒼天"の様な、躱しきるほどの経験と機動性はない。

 "忘我轟雷"を斬り裂いても権能である"振動・音"は宿りて、幻痛は肉体に刻まれ続けているのだ。

 

 それでも高山にて育まれた、"相棒"の練気の模倣に血潮に力を込めて。

 重ねて嵩ねて、『腕輪』の五輪の花弁の網掛け後に踏み込み、無理な軌道で追随する。

 

「前に出る…ッそうすれば!」

 喰らい付き先駆ける、猛威を引き付ければ、仲間は必ず来る。

 そこにはある種の確信があった。"あの夜"を越えた彼が、一人で突き走る事は既にないのだから。

 

 その予測の通り風巻く反応が、地上から競り上がり、宙に舞い出るのだ。

 回転し閃く銀閃、空気に靡き力強く叩く竜尾の長髪をたなびかせて、風鳴き音を鳴らす。

「ボクのとっておきの打ち上げ花火だよ、受け取って!」

「―――ちっきしょおお!クッソ重いけど届けええええええ!!」

【アマゾネス】【ウォークライ】【剛剣技】【怪力】

ブォン、グワァン!!

 ローレライ(人魚)の横合いから回転剛剣は、その巨体を確かに揺らした。

 それは竜の鱗を纏った蛮族の女戦士(アマゾネス)、カイトの"相棒"であるローズの剣だった。

 彼女にとっては、己の"相棒"が取り巻く。脅威が強い強い"現実" である。

 種族特性からの高いフィジカル、生来の風属性を混じったオド特性による"精霊感応"により肌に感じたままに、空の世界に跳びこんだのだ。

 

『オウム貝の杖』【魔術師LV2:旋律詠唱】【精霊術Lv3】=【四章級魔法:リジュローム】

 そしてそれを後押したのは杖を掲げて、無垢なる祈りを元に精霊を導きだして。

 風の猛威に打ち上げた白耳の魔術師である。

 

属性(オド):風】【竜装帰】【蒼火の息吹:精霊感応】=【風の纏い手】(ディアドーラ)

 その精霊風の余波を纏い。その練気の鱗は風色に染まりて、確かに固着している。

 マナとして取り込んで練気による竜化も鱗を適合化(アムド)、彼女は風と霊に踊る事を可能にした。

 

「貴方も…っ!まあいい、援護します!!」

『レールガン』【クイックセット】【援護射撃】【阿修羅姫】

 飛来する電磁螺旋。

 機構操り(ギアドライバー)は援護に一歩退いた。全体の選択肢の広く手を持った"蒼天"のペアではない。

 慣性のままに自身の機巧(ギア)に交通事故を起こさぬ様に、即席連携の配慮である。

 

【蛍火:精霊活性】

 カイトは一瞬だけ、"相棒"と目を配りて、空中で擦れ違い合い。

 "相棒"が纏い装甲とする精霊に自身の『蛍火』を分け合えて活性し、彼女が対空する時間を引き延ばす。

(やっときた。コイツの雷は上空に飛びずらい併せてローズ!)

(バカヤロー!勝手なこと言って、アンタがいっつも手が早いんだってーの!)

 双剣士が作り出した電磁網の足場に、互いに更に足掛け重なり合う剣舞を喰らわせた。

 彼ら彼女らの繋がりは、互いのもはや加護に近い。

 近くに在れば互いに互いの精神力(MND)を強化して、"惑乱ノ蜃気楼"が導く断崖を飛び越える勇気を与える。

 

斬ッ!!

 

『―――ルルルルル、♫♬♪】

【円環魔術:超再生】【惑乱ノ波動:鬼火乱舞】【適応進化思考】

 ローレライ(人魚)もその主な魔法に、マナ法則から自然雷の発生に似た特性を見抜かれた事を把握。

 新たな旋律を混ぜて対応しようと試みる。

 

【惑乱ノ波動:鬼火乱舞→絶■■気】

 人魚の周囲を周回していた、"蜃気楼の種火"が分かれ塵じりに分散していく。

 これは下準備であった。

 

 "碑文八相"に代表される円環生物の強みの一つは、状況・環境に対する分析による適応思考だ。

 長くの稼働経験と、元になった修羅の骨子によって活かした『死神』が顕著であろう。

 奇襲などの状況が変化すれば反応は遅いが、自身の身の代替えの容易さから、観測して対応していくのである。

 ローレライ(人魚)は、己が誇る必殺である【紋章砲】(データドレイン)の解禁を考慮するまでもないと判断する。

 

 

「先から言葉を、"侵略者"(オマエが)言葉を、人の真似をするなうっとおしい!断末魔だけでいい!!」

【狂羅輪廻】【ダンシングヒーロー】

 その流れを予兆として。数列と文字列として認識しながら、双剣士は猛り、また刃を向ける。

 【狂羅輪廻】とは、立ち止まらぬ"薄氷"に互いに、敵対者に最悪を踏み抜かせるまで踊る狂戦士である。

 何方かが敵対者の命を落ちるまで、何処までも歩みも止まらないのだから。

 

 

 

 しかし、その本領を発揮する前に。

―――そして、その稼いだ時間に領域を剥がす準備は整った。

 ズドドドドド。

 『高山都市』の周囲に唐突な石柱が立ち上がる。

 

 

 場面は切り替わり。

 チリチリと別れて、散り行く淀みの中心の中で空の見届ける老練の男が一人。

 "海獄"を齎す粒子の影響を、己の技術で分解している事から、熟達の魔術師である事が推測できるだろう。

 

「さて、美しくはあるが。嫌な風に悪趣味な造形だな推定『魔王級』とやら、人生に一度は見るバケモノか」

【ギルドマスター】【調律師:風詠み】【呪魔の紡ぎ手】

 一般的には魔に尖鋭した存在【領域作成】行い空間を法定する様な存在を迎撃するのに、マナ調律を行う調律機(ハーモナイザ)の類は有効であるだろう。

 しかし、この襲撃者は機械的な調律機(ハーモナイザ)の類を、乗っ取り逆に利用されている。

 故に先ほどから、敵対者の思うが儘に法定される空間法則を、一方的に押し付けられていたのであった。

 男はそれは実に厄介な事であると、苦々しく噛み締めるのだ。

 

「うちの騎士たちも良く抗っている、このような経験は久方ぶりだが、何とかしてみるか。準備はいいか"風水術師"」

「おぅいいけどよ。俺みたいな在野がこんなの任されていいのかよ?」

【滅却師】【熟達する経験】

 ならば、選択肢としては機械に頼らず自らの手で調律すればいいと。

 この"高山都市"の顔役、責任者の一人『ギルドマスター』である男は結論出した。

 

「もちろんだ。ワシも嗜んではいるが一人ではどうにもならん。大陸では"風水術師"は貴重でな。頼りにしているぞ」

「おうともよ。まぁ道具頼りの未熟だがよ、四の五の言っていられねぇか」

『魔具:音叉の槍』『錬金楔:五行錬地』 

 その傍で、槍を携えて派手な姿見をした男が構えていた。

 その技能によって事前に声を掛けられた"吟遊詩人"の片割れ、"リューク兎丸"である。

 

 元々意の一番に災害に対して、"吟遊詩人"の社会的な矜持から足を運んだ彼等だ。

 既にバケモノと対峙するに否はないが、渋るのは、自身の実力には確信は持てないからである。

 

 そんな不安を。

「まぁ、全力でやる事をやるだけか。考えてみりゃ"観客"が災害だろうが関係ねぇな!オレなりのロックに行くぜェ!」

【吟遊詩人】【風水術:復元】【俺の歌を聞け】

 ロックじゃないと振り払う。その魔具である"音叉の槍"を突き立てて、指を掻き立ててチューニングを行い。

 今回は新しく調達した錬金の鋲を、地に突き刺して構える。

 大地の構成比率を、魔力干渉によって調整する、錬金術を補助させるものである。

【錬金術Lv1】→【錬金術Lv2】

 男は元々、"風水術"を専攻する過程で物体の"固有振動率"を知る為に、錬金術の初歩に手を出していた。

 

―――ギュギギュィィィィン!!

「いい感じだ。さぁ、バケモノだろうが関係ねぇ俺の歌をきけぇ!!」

―――♪♬♪♫

 響き渡る大音量。それによって大地自体の反響率を極度に、形成を操る事で増幅する。

 大地を歪曲加工、大規模なスピーカーとして機能させて。

 

 町全体に轟音を響かせて、全体の干渉を"破壊"(バースト)を繰り返すのだ。

 ……だが、非力。それは大海に一石を投じる様な物、有体に言って焼石に水であった。

 

「く、ダメだ全然届きやがらねぇ!」

 それは魔の理を、同じく魔により破壊する【超絶魔力】という理外の力。

 それと対抗して上回るには、人類種一人の力は余りに非力であるののは自明の理だ。

 ほんの少しの抵抗に、響き渡るのは空しく力のない音だけである。

 

 しかし。

「ああ、それでいいさ。あとは"ワシ等"がやる」

【魔師術Lv3】【滅却師:霊子線技(リー二エ)】【呪魔の紡ぎ手】=【地上絵】(ジオグリフス)

 糸編む様に、事前に張り巡らせていた魔力の糸、"魔術線"を境界に奏でられる音を増幅するのである。

 本来属性の境界線になるはずであったそれは、【領域作成】に制圧させて本来の機能を果たせていない。

 しかし、性質を伝播する伝線として町全体をゆき……。

 

【精霊の守り人】【精霊術Lv3】【呪印術:巨体同調】

 

 連鎖させ、連鎖させ。

 それぞれの"精霊風車"の管理者として指名されていた、"精霊術者"達が、その揺らぎを受け取って。

 高山都市の象徴の一つである多数配置された"精霊風車"は、この地の伝承技術である。

 混合塗料の塗布がなされて、風を馴染ませ受け取り動力に変える。

 

 今回は風車そのものに生血を用いての【呪印術】に仮想同調して、術者のオドをもって逆巻きに回し。

 逆に風を起こす媒体として利用するのだ。これは一時的な無茶であった。

 

 『風水術師』が魔の法則を破棄し、『滅却師』(クインシー)が糸を紡ぎ絵に描き、調律を補助する。

 その影響を"精霊風車"の『管理者』達が、狂風を巻き押して攪拌させるのだ。

 

【ピタゴラスイッチ】

 そのそれぞれが、破壊(バースト)修復(チェーン)されるその連鎖を波及させる。

 それは、辺りに満ちる領域作成である『禍々シキ波』を破戒していく。

 一つ一つの技能では太刀打ちできない。【超絶魔力】という理に抗っていくのである。

 

『―――エラー、エラー。高度低下、法定空間【天明ルキ水底カラ】(ローレ・ハイロウ)、演算法則変更、修正修正……』

【禍々シキ波:半減】【天明ルキ水底カラ(ローレ・ハイロウ):無効化】

 人魚は把握する、"禍々シキ波"の独自の粘度が喪われて、"海獄"の法定法則が解体されていくのを。

 『碑文八相』が一体、"惑乱の蜃気楼"イニスは、先に襲撃した『死神』に比べても尚、巨体であった。

 この存在は例えて大海を泳ぐクジラの様に、権能の振動により仮想海に、浮かんでいるのであった。

 

 

【惑乱ノ蜃気楼】

 本来の物理法則に乗っ取れば、この存在は青空より、蜃気楼を纏いながらゆっくりと墜落するしかない。

 しかしとして、環境を観測し適応するのがこの"円環精霊"の本領である。

 

『黄昏の碑文:電子魔術(テクノマンサー)』【適応進化思考】

 文字列・数列が周辺を走りマナに騙り掛ける。幾千幾万もの"変数"の内在値(パロメータ)を変更していく。

 これの設計者は言うだろう。小賢しいと、魔を扱う術は体系技術と、効率化に寄る。

 人類の域では届かぬ演算能力を与えられたこの存在に、"領域作成"の語りかけで勝負できはしない、と。

 故に、すぐにでも適応して、再び浮かび上がり大海を泳ぎ渡るだろう。今度は学習して耐性を身に着けて…。

 

 

―――光気、一閃。

 

 

「振り絞る…ッ!"命脈無常にして惜しむべからず"…穿てッ!」

【聖剣技Lv2:不動無明剣】【闘気の才】【修羅道】

 適応しようとするその隙を指す一閃の刃、闘気の本流たる閃光の剣が人魚の頭部を吹き飛ばした。

 "蒼天"は、その"海獄"の術中に一度堕ちた。

 自身の経験からローレライ(人魚)の渾身を、あるいは"隠し手"を察知して。

 

 『死神』の"停滞の櫃"を焼き払ったのと同じように、聖剣の闘気の力動を蓄えて対峙しようとしたのだ。

 その呼吸の構えが突然に、疑似たる"海獄"を、窒息するまでに吸い込んだのである。

【天明ルキ水底カラ:窒息→崩壊付与】

 最前に対峙していた為に、感覚鋭く研ぎ澄ましていた。

 故に錯覚にて、"惑乱の蜃気楼"が誇る溺れて放心からの精神崩落現象のドツボに嵌ったのである。

 

 しかし。

「がはっ……不覚を取った。現実干渉を伴った幻術、いや幻界か。相変わらずの出鱈目な存在だが、まだ俺は飛べるぞ……っ」

『覚醒アンプル』【人魔身】【闘気の才】

 "蒼天"は立ち上がった。再び、『蒼天』の翼が、反動に身体を軋ませながら吠える。

 これは本来、彼が"属性中毒"に対処法の為に、所持していた薬である。

 肉体精神ともに負担が大きい処置であるが、それを意思の力によってねじ伏せて。 

 一度は現実を見失い溺れたが、オドを違和感を揺さぶって、現実へと立ち返ったのである。

 

 そして、蜃気楼の惑わされず目印になったのは、『腕輪の担い手』が刻んだ双鉄の疵だった。

 

『ぴピピガガガガガ……ッ』

【共振装甲】(プロテクト)【円環魔術:超再生】

 横槍を刺され、演算能力を単純に直近の重大な問題の修復に振り分ける。

 この存在には、染み付いた骨子、修羅の如く経験のオアシスなど持っていないのだから。

 機能保全の優先順位のみに捕らわれて今度こそ、代替えに現実に捕らわれ墜落するのである。

 

 高度が下がればもちろん…。

 

「無作法者めが!風の理のまま、ただ斬るのみ!」

「さっきからうるせえんだよ!二日酔いの頭に冷や水ぶっかけたり、ガンガン響かせやがって!!」

『魔具:バーストジャンプ』・【兎獣人:大跳躍】・【風の担い手】

 その戦闘に介入できる存在も増える。

 その存在は注目を合わせて三方から在野の戦士が、一時の宙の自由を手に入れて。

 それぞれの獲物を構えて、襲い掛かったのである。

 

 墜落しながらの、戦闘である。

 

 上空からも弾丸が飛来し、双剣の閃きが奔り、大剣に轟音をたなびかせて。

「「「―――そのまま、死ねええええ!!」」」

【共振装甲(プロテクト):貫通】

 小人の一斉攻撃が障壁を越えて殺意として突き刺さるッ!

 

 確かな手ごたえ。

 重力にすらりと伸びた白亜の尾を砕かれ、物理剣に幾多と切り刻まれる。

 

 しかし、災害である其れはそれで終わらない。

『―――受肉解除、全力展開。届カヌ蜃気楼ノ芯ハ捉エラレナイト知リナサイ』

【惑乱ノ蜃気楼】【偏光偏音板】【超絶魔力】=【蜃気楼ノ反撃】

 囲まれた。単純に不利であるローレライ(人魚)は機動性の選択肢を捨てた。

 モードチェンジともいうべきか、三色の魔法のオーケストラを更に広範囲に多色に展開する。

 マナで形作られた躯体の受肉を緩く解き、蜃気楼の名の通りにその中に紛れるのである。

 

「な…?溶ける様に消えて!」

 それは"本体"と言える存在を抱えるからこそ、自己定義を他で保管してるからこその荒業である。

 そう、この存在はどちらかと言えば『黄金精霊』にその設計は近い。

 

 小人を焼き尽くさんと鬼火が塵じり、落雷が満ちる。

 

 戦いは終わらない。激化して、轟音を高山から響き渡らせるのだった。

 

 

 

 

 




『三爪炎痕』(トライエッジ)は(未完成)は互いに繋がり燃え続けようと引き寄せ合うオド性質を利用して、投擲交えて歪な近郊の斬撃を叩き込む事で、疵として残る炎が抉り、引き深く焼き焦がす魔法剣スキルです。
まだ蒼炎も剣霊を従えてないし、疵の探求も不完全なのでまだエンチャントの延長のLV2、完成してません。
 ただ、ガルデニアさんのオド性質が一時残留してるおかげで、蒼炎の性質が少し表に出ています。

『跳動落花・改』(ジャンピングラウンド)は、魔具のみ為がサンダルなので。
見た目を変更する為に改つけてるだけで深い意味は在りません。
ついでにもう装備魔具も増えません。

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