ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】 作:きちきちきち
―――『高山都市:
天気は晴天、吹き荒れ粉塵が天に舞う烈風が不可視の壁に叩きつけられて。
剛風に削られた岩肌が、ビュードロ笛の様な独特の高音を響かせ、草木の撓りをたなびかせる。
大半が"風属性"に染められたそれは理外の環境を作り出しているのである。
このような環境、『隔離領域』とは
”周囲数十キロ”を対象として展開された現象にて、それにより外部から隔離された土地の事を刺す。
その障壁は基本的に不可侵であり、こうして綻び手段をもって侵入可能なものも限られる。
その様は、共通して現実に境界に高い壁が競りあがり、行き来を妨害するのだ。
『準浸魔獄候補地』
この世の物とは思えぬ圧倒的な現象であり、隔離された後の土地は以前の様子とはまるで違う。
”環境変動”を引き起こし、最悪はこの世の地獄の如く『浸魔獄』になり果てるという。
そんな中にカイト等冒険者一行は、依頼を受けてここにいた。
高山特有の薄い空気に、マナスポットから噴き出す風の小精霊が吹き上がっている。
息をする程に肺が苦しい、そんな環境の中、空気を噛みしめながら作業を続ける。
「んー、風属性の割合は強いけど属性値の濃度自体はそこまでは問題はないかな。なら手順通りにガルデニアさんお願いします」
「ん、任されたわ。"力脈を地を奔れ……!"」
【九十九巫女】【陰陽術師】【固有術:木伴装】
【レンジャー:野狩人Lv3】『属性検知器』
詠唱と共に、符を中心に埋め込まれたして植物種の成長を促進し木々が競り上がった。
そんな中でカイト等は、ガルデニアが作り上げた木々の骨子を形成して。
ロープを張り、樹に杭を打ち込み、呪いを施された布を張り風避けとする。
そこから更に【精霊術】をもって周囲のマナ濃度を抑えて、簡易的な拠点を作り上げようとしていた。
つまりは、一時的な拠点、キャンプの設営準備の手順である。
「ふんふんふん、出力はこれ位かな。魔導具、火を入れるよー。それー!」
『魔導具:エアフィールド』【精霊術師】【レアハンター:アイテム知識】
ヽ(•̀ω•́ )ゝと。
更にそこに周囲の空気を流動的に維持する簡易収束型の結界魔道具を調整し、環境を維持する。
今回は少し高級な魔道具を持ち込んで、更に使い捨てにしてでの作業となる。
それを用いてもなお収支が見込める、"重要な依頼"である。
「……フン、こんな事させんじゃねーよ。基本的に剣働き以外は出来ねぇぞオラァ」
「決まったことをグダグダ言わないの。こっちの杭は設置おっけーよ結んじゃって、……にしても依頼でバックアップって言ってもさ、これどういうオーダーなのさ」
簡易的なテントを形成して、拠点を構築した。
(―――こんな仮構え、この環境では1日と持つかはわからないけど、依頼の目的のためには十分だと思いたい)
その中で火を燃やし、せっせと湯を沸かす。この簡易拠点は長期戦の為の備えである。
高山都市には『奉納の儀』と呼ばれる要素がある。
長らく文化として継承してきた、大自然の化身たる大いなる存在に捧げる儀式らしい。
それ以外でなくては、この『隔離領域』は立ち入りも憚られる危険地帯だ。
「文字通りの意味だよ。僕等の役割は先の接触する人達の補助に徹する、目的が目的だからね」
「"部落の奉納に同行し亜信仰対象の『隔離領域』大精霊の調査、場合によっては交戦しその荒ぶるを鎮める"……、よくこんな仕事を持ってきたな」
「ええまぁちょっと、この間にこれを受けた冒険者と知り合って」
カイト等は基本的に"おまけ"である。
『死神』、『空泳ぐ人魚』、『闘炎の巨鎧』それらの討伐を主導し部落の信任を得られている冒険者達に、依頼として持ちかけられていた。
彼等の役割は、不穏であるその御機嫌伺いともいえる。
そのきっかけとして。
不穏な風が吹き、それが怒っているという知らせを、部落の『祈祷師』が感知したのはついこの間の事である。
「今の『高山都市』には余裕がない。喪えないから。万一の事態への備え、暴走して敗北するなら殿に被害を少なく、討ってしまう前に
「フン、偉く慎重なこった、在野も大事にしないといけない程に内情がボロボロなのか」
【風の守護者】ティアマト。
周辺の部落が長らく信仰の対象としてきた【隔離領域】に住まう"大精霊"である。
山岳地の守り神と謳われ続け、『高山都市』の気候を豊穣の風と変える張本人……と、いわれている。
精霊……、特に逸脱した大精霊と呼ばれる存在は環境そのものである。
故に理論上の稼働限界は、環境によって無限大といえる。
ここは相手にとって誕生した故郷、ホームグラウンドである為に、
その図抜けたマナへの適応性から、日を跨いの長き闘いとなる可能性も推測できた。
故に、仮拠点を構えてでの長期戦の構えである。
滅ぼすなら、最初から全勢力を突っ込んでしまえばいいが、そうではない。
だから、別動隊に別れた。
出番が来るそこで彼等は話しながら休みを取った。これからの事を考えると休息も大事な仕事である。
「本当は優しい友好的な大精霊様っていう話だよね。荒ぶる理由はわかんないけど早く戻して楽にしてあげたいなー」
「まぁねー。祖霊信仰って意味じゃ、
【理性蒸発】
その場のノリに理性が蒸発したミストラルは、あまり考えずに気楽に言う。
『高山都市』は度重なる推定『魔王級』の襲撃に、警戒態勢である。
度重なる災難に過敏となり、調査し自体を把握したい『高山都市』、信仰対象である『大精霊』を儀を奉納し鎮めて共存の道を探りたい『周辺部落』。
この依頼は、どちらの利益も合致した結果である。
「―――そろそろ接触するみたいね、必ず交戦になるとは限らないけど…、先鋒が初動でつまずいたらすぐ出張るから、準備だけはしておいてください」
「ふん、んな事言われるまでもねぇよ」
『太陽の腕輪』【レンジャー】
カイトは右腕のC級魔具を展開し、大気の偏光率の調整して遠方を覗いた。
目的の物はそう遠くなく、拡大された視野にその姿を観測された。
しばらくは臨戦態勢である。
―――もう一方『主導隊』にて
そこは距離にて1500メートルに迫る山頂付近のこと。
【風の守護者】【狂精化:肥大】【超絶美形】
空を見上げて。
そこに在り、まず一際目を引いたのは三つ頭の竜。
その中心に鎮座する緑色ドレスを纏った女性が見えた。
その巨躯は遠目からもはっきりわかる巨体に、嵐を纏って……。
流れる緑髪はあらぶり、その眼を覆い隠し、中心にて頭を抱え正気を失っているように見える。
「―――東が筆頭、ただ今参りました。豊穣の風の絹を纏いし美しき御身に奉る」
【部落筆頭】
幾人かの戦士と捧げものを手に引き連れて。
大斧を構えた部落の筆頭戦士、斧を捧げる姿勢の中"エシオ"が古流儀礼の口上を述べていった。
その言葉に反応する様に、
荒ぶる青灰髪の合間を瞳が彼等の方にと向いた。しかし、その瞳に理性の光はない。
「―――天高き貴方様がなぜそのように荒ぶられるのか、御言葉をお聞かせください。我らが恩義果たさせていたき―――』
『―――リィン』
返答はない。"それ"を認識した途端に敵意と共に、鈴の音の様なものが奔る。
雑多な嵐が指向性をもって牙をむいた。
付き従う様に撃ち込んだ三竜が、息を吐くだけの動作それだけで奔流としてブレスとなった。
「くっ、言葉が通じる状態ではないか!!仕方あるまい各自散開、事前に定めたとおりの迎撃行動開始せよ!」
【ウォークライ】【アックスマスタリー】【ストロングアーム】【風の担い手】
エシオはその暴風を、戦塗布を全身に纏った巨体を発条に放たれる荒巻く風斧にて大地ごと砕き、打ち払った。
同種、拮抗する暴風どうしの絡み合い。渾身はまさしく刃剛の一撃であるが。
それでも大精霊が延長である化身、三竜吐息を拮抗させるに精一杯であり、それ以上に両腕に余力はなかった。
「これより奉納の舞を開始させていただく。言葉なくとも語りましょうぞ近々に何があったかを、我らが迎えた友の紹介を、災害を打ち払った我らが刃にて…!」
『―――りゥン!』
【風の大精霊】【女神の心格:三精同体】
三頭の竜が吐息を放とうと、中心に鎮座する女神の手は空いていた。
手を伸ばして散らされて、斑に吹き荒れる風の制御をマナに浸透させ容易に握ったのである。
形成する、精製する。
【精霊術Lv5:
鳥の羽の如く風の針を周囲に円形に連ねて包囲する。
討ち放たれる集弾の風槍が、渾身を振るい"死に体"である大男に迫りくるのである。
属性に馴染ませるに特殊な"戦化粧"を纏い。
それに尖鋭化して馴染ませているとはいえ、まともに喰らえば致命傷は免れないだろう。
「っく、流石に…ッ!」
環境マナの集合体、総じてそのものである『大精霊』という存在。
それも誕生した環境にて抗うのは、幾ら精鋭であっても純人種には無謀でしかないだろう。
ヒュパッ!!
【フォレストレンジャー】【ファストアクション】【デュアルアロー】
故に、だからこそ人類は"連携"して互いに補うのである。
ボウガンから放たれる矢が、更に風羽の包囲を締上げようとする女神のその切っ先を、紡ぎあげる前に狙撃する。
それに続いて……。
「―――やっぱり説得は無理か、下がって"エシオ"さん援護します!!」
『バハムートウェポン』【魔法剣Lv3】【バランス感覚】
回転閃斬撃、紫電を纏い、特徴的な竜属性の長剣を構えて。
"青の少年"、依頼を受けた冒険者であるグランが直前にて、割り込む様に振り下ろされる。
マナにより紡がれた風の理を、マナ特効たる"竜闘気"にて焼き焦がし破解して祓ったのである。
儚く儚く、紫電に煌めき。
ボロボロに飾羽は形を透電させ全て焼き払われる、それに紛れてグランは進撃する。
「強い奴とはまともに戦かうな、まずはその動きを封じてやる!」
【御技の継承:ミゼラブルミスト】【薬草知識】
【精霊術Lv5:ウインドクローク】
更に、身体能力を闘気にて強化し、跳躍。
自身の属性由来の結合を阻害する磁気の霧を吹きつけて、その動きを妨害せんとする。
しかし、ティアマトが持つ風の衣にて吹き流されるが、その結合を緩くすることには成功した。
『―――こぉオオオオオ!!』
【風の守護者】【豊穣の風】
その煌めきに露骨にティアマトは反応した。従える三竜が一杯に風を蓄えた。
狂っていても、竜属性……いやそれより発展した『龍闘気』という存在は精霊にとって天敵である。
脅威の認識である渦巻く轟音がさらにその勢いを増すのである。
【風の大精霊:無詠唱】【フィブルストーム】
中心たる女神が指揮して繰り出すのは、追尾式のその存在にとっては小手先の風の刃の嵩ね技。
腕が動き、衣がはためく度に、連打される無詠唱の風の魔術である。
「先構えるは、紫電の剣閃。"モニカさんの構え"…ッお借りします」
【ジョブチェンジ:サムライ】【闘気の才:生体活性】【バランス感覚】
落下しながらも、これを瞬時に練り上げて態勢を整え、竜属性に同期して剣を構える。
これも真っ当に受けてはならない。であるのにグランは納刀する。
対抗してグランが振るうは、彼が調査した
童女姿の将から学んだ、肉体活性及び、状態姿勢に関わらず発現させる流儀である。
所変われば、五大流儀が一つ【神鳴流】とも呼ばれていたかもしれないソレの本来の使い手は。
見切りと共に後の先取る神速抜刀の名手、紫電を纏いし抜刀に雷閃謡われる聖錬を代表する戦力『三十二将』が一柱。
「"紫電一閃"改め、―――【烈刀一閃】ッ!」
【魔法剣:Lv3】
斬ッ!
姿勢を、足場を問わない閃く空中からの、魔法剣を纏った抜刀一閃である。
先天オド本来の使い手とは生体活性の方向性も異なり、技能自体はまだ模倣の未熟ではあるが。
極めれば使い手と同じく、【大鷹返し】と呼ばれるカウンターへの曲技と発展するだろう。
その剣をもって風圧の刃を纏めて引き裂いて、大地に降り立った。
しかし、狂精の猛威はそれで終わらない。
【三竜の化身】【精霊術Lv5:トルネードディザスター】
女神の一刺しに続いて、追撃。
化身たる三竜がその呼吸を合わせて最大火力の吐息を放つ。
巻き上がる切裂かれた瓦礫の渦、広範囲を切り裂く鎌鼬、敵対する全てを薙ぎ払わんとする精霊術の極致としての一撃である。
余波を背後に構えていた部落の戦士達が、矢の雨をもって相殺せんとする。
「さて、滾るわね!門番から離れてこうやって貴方様と競い合うのはいつぶりか!天高き【風の守護者】に奉る…ッ!」
「願うだけなら、想うだけなら私にも精一杯を……」
【妖精射手】【合成魔矢:アローレイン】【練気法:キャッツアイ】
【古来魔女】【魔術知識Lv2】【呪印術:スペルマーク】
背後で人形と共に祈りに宿し、援護する小さな魔女が、風属性の牙ではなく、
届かぬまでも炸裂する物理的、魔の理が連射され勢いを削がれて弱めるのだ。
それでも比較的に、部落の戦士が少ないのは、"最悪の事態"を考慮しての事である。
『高山都市』の環境に食い育まれた、環境そのものであるそれにとって、同属性の連なる者だ。
一般的な方法論に属性染色された生物は、同属性に対する強制力の強い存在に、体内の機能を干渉されて狂わされてしまう事もある。
その現象未開拓の外大陸の一つ。
遠く『桜皇』の水一色に染められた、下民を支配する『水の国』の"殿上人"などが上げられるだろう。
故に、部落の彼等は、外部の"冒険者"に助太刀を頼んだのだった。
最悪に数をそろえても"気合"が足りない戦士は、逆に狂わされ敵対する可能性すらあった。
その反面に『奉納の儀』に立ち会う事を許された"部落の戦士達"は、選り優られた精鋭である。
相反し火打ちの矢雨、削岩する如くマナとオドのぶつかり合い。
『ヌワー!?スゲェ!滅多ニネェスゲェ風だヨコレ!イヨシャー、イッソノッテ
「やだよ。こ、怖い……。『精霊様』あんなにもあらぶって……」
【小さな勇気】【劣等感】
後方支援といえど、未熟な魔女がこの戦場に参加しているのは、彼女が部落では珍しい"異端者"であったからである。
大概が風属性を帯びた高山都市に育った住人の中で、彼女は珍しく"炎・冥"の二属性をもって生まれた。
彼女はそういう古流の魔女の技法を継承する一族である、染色されて生まれた事に恨みもなく、立派な魔女に対する憧れもある。
ただ、同世代の子供の中で、風を感じることをできない、それは感性が違う事に他ならず、自身過少と孤独感故に作り出した
それが彼女の抱える『人形・カシマール』なのだが、それは今は関係なく。
「―――お願い!カシマール!!」
『呪術人形・カシマール』
一つの出会いに大きな外の世界を知ったとて、"理想の自分"、"理想のお友達"に籠りまだ祈る。
今の彼女は、願う事しかできない。
それでも、そんな自分でも必要だと言われた。出来る事を精一杯に祈り続けた。
「さーて、荒れ狂う暴風でも関係ねぇ!フォレストレンジャーただ今参上!!」
『風纏いのマント』【フォレストレンジャー】【カモフラージュ】【俊足】
却って、属性石の鏃を番え、遊撃に動くは"緑の少年"である。
十字弓を不意打ち切っ先に撃ち放った所為のまま、大精霊の動き出しに弓を撃ち込み続けた。
勿論、石鏃は砕かれる。だが純粋な風属性の塊、【風の大精霊】である彼女にとって、ノイズとなるのだ。
「狙う場所狙えば矢は通るぜ、グラン!」
「ああ、けど今回は長期戦がメインだ。矢はできるだけ温存して!」
戦場は回転する、竜の化身を引き連れた大精霊は自己を環境に拡大させながら。
無尽蔵の嵐の化身として猛威を振るい続ける。
そして、それを観察していた無表情な少女が高所に立つ。
敵対者を拘束した、その後の一押したる存在。
「―――相性は悪くない。あとは私が、どれだけ動けるか、未知数だけど」
すらりと伸びる典型的なゴシック衣装を身に纏った。
火の淵を形取られた両角が特徴的なそんな刀を構えた小柄な少女が、自己で作り出した爆炎に乗り、身に見合わぬ大太刀を構えて舞上がる。
コロッサス、街に進撃し辺りの山々を焼き払った巨人兵の銘の一部を持つ少女である。
「帳消しになるとも思わない。ただ忌まわしき
ただ光を求めて足搔いた、彼女は対峙した冒険者に秘密裏に拾われた。
自身に埋め込まれた、
しかしとして、戦う事にか知らない。兵器としての己はこうしてまた心の空洞を埋める為に、自分の居場所を見出す為に剣を振るう。
「我が身は墜落する―――!!」
【隕鉄の申し子】【陰陽術:シェルター】【超頑強】【夢幻羅道:不全】
空から落ちる火の軌跡、微かな質量にて大地に大きな傷跡を残す、そんな『隕石』の存在に神秘を見出し、鋳造された遺物に先天的に適合させられた"隕鉄の申し子"と言われた。
炎・地属性の彼女は上段からの疑似質量からの振り下ろの派生に、特化する特性を持っている。
どぉん!!
随伴化身の一頭を引き裂いて、炎柱が立ち上がる。
巨兵を喪ったとはいえ、その御業は落下に砕ける障壁を燃やし、炎が立ち上がる風荒巻く環境を散らし乱す。
その戦闘の様子は、遠方にも届いて。
―――『仮拠点設営班』
『太陽の腕輪』
下級魔具によって拡大する視界に、遠方で観察していた別働隊にも届いていた。
交戦してから嵐の余波が、彼らが設営した簡易キャンプを揺らし続ける。
そんな、派手に暴れまわる暴嵐の化身と呼ぶべき存在と、小人の殴り合いを見ながら呟いた。
「うへー、なにあれ。強いというか規模が半端ないわ」
「環境そのものに染まった『大精霊』ってやつだねー。今は暴走してるから、自己が制御できる範囲を超えて吹き荒れてるね。小さい子なら狂精霊化しても手間にもならないんだけど、元が膨大だから、何処までも大きくなってるよ」
半精人であり、すでに一流基準の精霊術師である、ミストラルが言う通りに。
『風の守護者』ティアマトは普段なら、あの規模を発揮する事はない。
制御下にない暴走状態であるからこその、無法図な"嵐の化身"と成り果てているのである。
しかし、今更うろたえない。
彼等も、あの程度の理不尽なら近々に遭遇し続けている。
『碑文八相』と呼ばれた敵対者は"不死性"を保持し、骨子に添えた修羅の経験と、死への恐怖を自他ともに存在の昇華を果たした
物理質量、巨体を持ちながら空泳ぐように天を舞い。四章級の広範囲魔法など
「ふん、先に戦っている連中も強いな。殺す気でやり合えば、普通に亡ぼせる。竜属性の剣をぶち当てない様にずらしてやがる。―――っちぃ、めんどくせえ。わかってるな、そこまで付き合う義理はねぇぞ、死ぬと思えばオメェは"腕輪"を使え」
「……うん、わかってます」
【孤独者の矜持】【迎撃態勢:孤独】
そこまでなればある程度、本能に根差す恐怖心、修羅場にも慣れるのだった。
実際、設計した作成者が『権能』と呼ぶ特化機能に、『碑文』と呼ばれる遺物と相互に不死性を持つそれらと違い。
有効打はあるのだ。
例えば『龍闘気』の奔流たる魔法剣が直撃すればボロボロに崩れる様であろうし、カイトの持つ『黄昏の腕輪』による
滅ぼす気なら、他にも幾らでもやりおうがある。それだけの物量と質がこの場にいた。
「というか、風の大精霊って聞いてたけど。明らかに竜…、人型なの見ると竜人様ぽいわねぇ、本物見るのは初めてだけどさ」
「いやあれは形だけだろう。
対して、竜属性は基本的に"マナ法則"を焼き切る破邪の性質の生態磁場である。
その知識は一般的なものではないが、少なくとも前線で戦う"青の少年"が持つ『竜武具』の様な、その通電による煌めきの共通性は見えない為に、彼等はそう考える。
確かな知識を持たない為に、その比較を交えながらも、後詰めとして敵対者を観察していた。
削られ尖っていた尾山が一つ吹き飛ぶ。
「そろそろ、行こうか」
そして状況から膠着しつつある状況に、介入のタイミングを判断する。
「この環境だと。地元の人達ならともかく、外来の冒険者の全力はここだと長く持たない」
「ああ、いつでもいける。私が作った"護符"は予備含めて忘れるなよ、この嵐の中ではそれが命取りになる」
「りょーかいっ!ポジションはそのままね、さーて、皆、無茶すんじゃないわよ」
ガシャ。
お互いに武具獲物を構え、当初の予定通りの
抗戦から既に一刻は過ぎようとしていたか、『準侵魔獄』とされるこの地は風属性の染色が吹き荒れており、空気が薄く、吹き付ける風に呼吸はまばらにし、瞬く間に肌から体温を奪う。
それがしかも、激しく交戦して大量の汗をかくなら尚更だろう。
そんな中で動き続けるのだ。最悪、動きながらだんだんと"渇き死"、"凍死"するのである。。
生体放射を保護する保護符があっても、いやそれがむしろそれが交戦の最低条件。
長期戦闘できるのは単純な"人類上位種"であるか、純粋な慣れと、オドと
風を浴びる、とんでもない圧力だ。
(むしろ極端な環境だけで済んでいる分、これでも隔離領域の中ではかなりましな類っていうのが狂ってるよねぇ…ッ)
歩みに実感する。
オルカが持ち帰り話した話では、主に悍ましさが足りないらしい。
全く、この世界は限度を知らぬ地獄だった。
ばらける、彼等は風を受けながらそれぞれの適性に、切り立った悪整地に進路を選んで駆け抜ける。
相手は無詠唱で範囲攻撃を連発してくる
ザっ。
(角度、進路もよしあとは接触…ッタイミングを)
【レンジャー】【精霊術Lv2】【俊足】
先陣を切るのは"双剣士"カイト、一番手が早く、軽装である遊撃担当である
双剣を眼前に構えて、姿勢を低く、自身で確立した鍛えた強靭な足腰に活を入れ独自の走法に駆ける。
駆けながらも呼吸を練り上げる。精霊術にて対流する風すら一部制御下において流転させる疑似刃の火種として。
「あの巨体なら斜め下部から削り落とす……ッ!」
ギュウガガガガガ!!
完全な自力で嵐の刃を放てないカイトは、大概にその時の自己染色から、環境を利用して形どる。
『絆の双刃』【ファストアクション】【魔法剣Lv2:
そして、初手から自身の切り札を、自身の愛剣に電磁の斬鉄を入れて周囲を染色しながらかき鳴らし剣の慣性のままに"嵐の剣"を撃ち放った。
ズオォン!!
『―――りぃん?!』
【風の守護者】【精霊術Lv5:ウィンドクローク】
その螺旋刃は、精霊の纏う液状化した風の衣を引き裂いた。
その衝撃に、『風の守護者』であるティアマトは衝撃に高度を下げる。
初手から、こうも派手に奥義と呼べる技を突き立てるは、前衛を張っていた冒険者の後退の為に
理性の無い相手だからこその出し惜しみのなさ、である。
そうでなくては怖くてできやしない。防がれるか対策されると彼は信じる。
「……っ!カイトか、助かる!」
「―――時間です!湯は焚きました。予定通り退いて水分補給と熱を、前進して援護します!!」
「"光よ+集い+曲がれ+集え……"」
『星の血晶』【精霊術Lv3】【魔術知識:旋律詠唱】
カイトは反撃のバックドラフトを当たり前の様に前進し、払い。
遠方にて連ねる音律が響く。
「"拡散、焼き貫け!!オル・レイザス!!"」
【森眼】
三章級魔法たる、射程を犠牲に威力を上げた榴弾、追撃する様に光の矢が飛来する。
それは正確な狙撃を成し、炎の傷口を拡散し焼き貫いた。
三頭の随伴竜の眼光が光る。
『グぅオオオオオん!!』
【風の大精霊】【狂精化:肥大】【三竜の化身】
波引くように前線を張っていた敵対象が引くのを、怒りの熱に浮かされて咆哮する。
破壊された『化身』の修復は容易にはいかないが、やはり環境そのもの消耗の速度はこちらの方が早い。
理論上の話になるが、大精霊と呼ばれる存在が手繰る魔力の総量は―――
【嵐竜方陣:自然感応】
―――魔王領の上位者の頂点『魔王』と呼ばれる存在が手繰る魔力の量をも、凌駕するという。
そして自身の投影した自己拡大する領域を削られ、多少理性が戻って来たか。
【―――――――ッ!】
その技巧に多少の技巧の光が戻った。
【女神の心格】【嵐竜の琥珀眼】
=【乱懐のランペスト】
基本の攻撃パターンである
元々、三竜の化身の琥珀色に輝く瞳の特性には、焦点の中心の大気密度を操る機能を持っていた。
そしてそれを中心核たる女神の指揮によって完成する、単体による連携業である。
ぎゅううううう!!
三点に発生した、大地が抉れる圧搾される乱回転。
あらゆるを維持しようとする闘い、未来への持久戦の決着はまだつかない。
マルチバトルなう。
流石に竜属性は削りました。一体だけ格違いになっちゃう。
おそらく元が魔王級かつ、ディザスターレッドのカズマさんの四精霊よりはだいぶ格が落ちると思います。