ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】 作:きちきちきち
『高山都市:烈風山脈』
吹き荒れる嵐風。
そしてそれを中心核たる女神の指揮によって完成する、単体による連携業である。
ぎゅううううう―――!!
【精霊術Lv5:壊乱のテンペスト】【女神の心格】
三点に発生した、大地が抉れる圧搾される乱回転気流のミキサー。
大気を軸に圧搾する炸裂の大渦である。
一度捕まればその四肢を捻じ曲げ、へし折り、変幻した空気の圧力に内側から殺され得るだろう。
【妖精射手】【合成魔矢】【アローシュート】
嵐の剣をもって乱入した双剣士に援護に、部落の戦士達により変わらずに矢が援護に打ち込まれるが、それだけでは崩すに、押し通すのは足りない。
それに対して。
「―――ッ!!」
【ダンシングヒーロー】【狂羅輪廻】【俊足】
姿勢を低く維持し、熱に浮かされずにカイトは当然の様に、致死の一歩先に踏み込んだ。
怯みはしない。相手が理不尽である事など予測しているのだから。
彼は碓氷を踊る狂戦士、戦を飲み干す修羅とは相反するこの世界の根太く麗しき雑草の一系統樹。
カイトは、仇敵との死闘にその癖が抜けがたく染み付いてしまっており、元々の歩みの気質に合わさって判断を加速する。
おそらく背後で引き寄せられる岩が砕けた、想像よりも硬質で高音染みた破滅の足跡だ。
「―――『双剣士』視線から逃れろ、捕まるな。その手順、精霊様の御業は、視線の先から断層が連鎖的に発生するのである!!」
【東の筆頭】
背後で斧を振るう知った顔、東の部落戦士の筆頭エシオが、戦場を轟かす鵺の一声で助言を叫ぶ。
彼はこの『風の守護者』と交戦経験がある為に、その手癖を知っていたのだ。
それを聞き届き、なおカイトは思う。
(だけど、止まったら、死ぬのはいつもの事……っ)
ガッ
空気抵抗を発条の如く。
圧力を手繰って成される一軸の回転を、完成する数瞬前に駆け抜いたのである。
その隙に、呼吸と共に魔法剣の
『絆の双刃』【蛍火】【精霊術:
奔る電磁の指に、自身の搔き立てた刃にて周囲の吹き荒れるマナを一時的に染色して。
【精霊術式】、使い手を中心に空気抵抗を誘導し、その脚は駆け抜ける。
複合する歩み。鼓動する呼吸する、リズムに合わせて練気に自身の内力を練り上げ、流れに乗るのだ。
勿論、大自然環境の化身であるそれに長く、自己の有利な環境を維持し続けるのは容易ではない。
大気が混ざる、掌握下にある"繋がり燃え続ける炎"が風のマナに侵略されながら、火を燈す。
【乱懐のテンペスト:バックドラフト】
爆音、一極化した故に密度が低下した所に、他から殺到する大気が集結する。
それが、握り潰された岩石を"火花"を引き起こして、風属性のみで爆発現象を起こすのだ。
これが、火災の際に起きる"バックドラフト現象"に似た連鎖現象である。
「これで、凌げるわけ、―――斬り流、す!」
【ソードマスタリー】【魔法剣Lv2:爆双竜刃】【ダンシングヒーロー】
息を吸い更に踏み込んだ。竜頭が三頸あり、更に女神の心格が指揮を執るのは先の戦闘を眺めて知っている。
必ず複数の手数、連続攻撃が基本だと考えるべきと理解しているのだ。
光が届いた炸裂する音を聞く、烈風より早いその予兆が届く前に、その双剣を振るった。
純人種は脆い、青の少年の様な常識外れの
踏み込み跳躍、力場の発生点に、派生する慣性を乗せた回転剣戟。
振るい裂いた片刃の『絆の双刃』を手放し、『高山都市』にて学んだ
―――キィン……!
―――ズガァアアン!!
【ダンシングヒーロー】
炸裂する爆風の余波と"疑似魔力撃"たる魔法剣を以て、炸裂を足場と変える。
【蛍火:■炎】【舞武】
【禍々シキ波】と対峙した時と違い、呼吸する様なマナの適合に宙を掴むことはできないが。
ただの高跳びの要領で、魔の手から逃れる。
手に喪った愛剣の片刃の代わりに、相鉄の双剣を抜き、繋いだ。
そのタイミングにて重剣士の蛮族、その脚を魔具に補助されたローズが乱入する。
「だーから、あんたは手が早いんだっつーの!魔具使ってるあたしより早いってどういう事よ!」
どぉん!!
下段の構えにて自身の鼓動を波撃を、自身の相棒が引いた注目の割り込む様にその大剣を引き絞り。
大地を砕き、弾丸にして空に巻き上げる。
【先天属性:風】【練気法:マッスルベアー】【蒼火の加護】
彼女は後続の一団の中では最も、この環境の中では自由に動ける戦士である。
とある事情で現在は混ざり変質しているが、大半の高山都市の住民と同じく、先天的な風属性を持っている。
「ちぃ、悠々と空飛んで鬱々しい、確か精霊って奴は物理効かないのよねぇ、降りてこいやー!」
しかし、その礫の弾丸は牽制のみに留まる。
一般的に精霊というマナに依存した種別にとっては、単純な物理は脅威になり得ない。
マナに染み付いた情報をかき乱し、意味結合を崩さねば死にはしないのだ。
『—――リィン』
【風の守護者】【狂精化】【精霊術Lv5:ウィンドクローク】
理性なき風の大精霊は、飛来する岩礫を自身の風の統制力を振り分けて防ぎ分ける。
狂化による、その規模拡大の代償に、判断力は著しく低下しているのだ。
自身に向かう驚異は本能的にその規模のみで判断する、元よりそこまでの感覚器もない、取得選択はできないのである。
結果的に、双方に暴風の勢いが向けられて、その勢力を半端にして。
「よーし隙間見えた、そこだぁ♪」
「斬、込む!」
再度、詠唱が完了した榴弾光矢が飛来するタイミングに、紡風の衣が焼け拓ける。
斬ッ!
その合間、腕輪で作り出した電磁網掛けの足場に踏み込んだ、双剣士が本体たる女神の心格に回転しながら炎のクロス斬撃を浴びせる。
斬り裂いたのは女神の心格の右腕か、遺物の混合に少量に形を崩し、乱れ荒ぶる髪が空に舞った。
「よーし決まったー♪」
【理性蒸発】
その連携に、狙撃を成した白耳の魔術師が喜びの声を上げる。
あの女神の心格はその両腕に、衣に連動して指揮をとっていた。これで攻撃の手は緩むだろう。
しかし。
(っ…目が合った)
【風の大精霊】【嵐竜の琥珀眼】【三竜の化身】
そして一頚の化身と視線が合い、先ほどの筆頭戦士の言葉を思い出して。
落下の浮遊感に惑いながらも体重移動に剣を引き戻し……。
キン!
空気の弾ける音、手順を短縮した視線による空弾破裂に刃腹に受けて吹き飛ぶ。
『死神』に吹き飛ばされた時を想起して、その動作に両腕を燃やす。
受け身を取る。模ってしまう己の炎を回し空に掻き毟って、吹き飛ばされる勢いを殺し独楽の如く空転して……。
どぉん…!
それでも遠方に吹き飛ばされ、衝撃に遠く音を鳴らす。
【狂羅輪廻】、狂気に寄ってた闘いの深淵に踊る者、カイトは思考の余白・余地が少ない程に前進を選ぶ癖がある。
それが良きに転ぶかは、敵対する、どちらかがその薄氷を踏み抜くかで決まるだろう。
進め、歩めば確かな死は遠ざけられると信じる武理を知らぬ純真は、今はそのまま狂気に感化されて狂い咲きの道を歩むのである。
「全くもう!言わんこっちゃないわ、ちゃんと受け身を取ったみたいだけどさ!」
【ウォークライ】【打ち返し:流し斬り】【闘気の才】
ローズは空いた前線の穴を埋める様に、風を払いながら大剣を振るいあげて中心に前進する。
元々、ばらばらに仕掛けるのは当初の予定である。
相手は広域に制圧する大自然の如く大精霊。そして観察により、決まって嵐の如く大気の一か所を軸にその猛威を発揮すると理解した。
固まって軸に吹き荒れる暴風に、纏めて吹き飛ばされるのは賢くはないと。
【フィブルストーム】
しかし、カイトは想像以上に対処のしようがない故に。
初手に仕掛けたまま、歩みを続けたのが反撃を受けた実情である。
「最近のターゲットは当たり前のように空を飛びやがって、ほんとうにめんどくせえなァ!」
『黒蜘蛛の鎧:暗黒瘴気』【暗黒剣士】【重装】
そして、それに遅れて暗黒騎士が参戦する。
重装故にその歩みは遅かったが、重装故にその脚は重量に地に寄り添い、風の影響を最も受けにくい。
「俺の魔法剣は届きもしないな、タンクの真似事は性に合わねぇが、それが仕事なら是非もねぇ」
【ソードマスタリー】【暗黒剣Lv??】【孤独者の矜持】
マーロー・ディアスは割る、斬る、崩せぬ烈風は渾身で捻じ曲げる。
生体鎧の呼吸、暗黒剣の技法にマナの領域を割りながら、その存在感を主張する。
【破損経験:風の担い手】
更にマーローは、元の適性、経験から風の歩み方を知っていた。
後詰めのカイト一行の今回のメインは、どちらかと言えば黒鎧の彼である。
長期戦故の役割は"タンク"、それそのものが熱を生み出す生体武具であり、風避けである重鎧『黒蜘蛛の鎧』を身に纏っており、"闇属性"由来の忌避感を惹きつける霧をによりヘイトを惹きつける。
生体鎧は生きている、稼働する度に熱を生み出す。
故に凍死はしない、枯れ死も草木を切り裂けば水分を少量に摂取できるのである。
「応援感謝する、外来の戦士達よ!!重ねて、我らが母なる風を鎮めたい協力を頼むのである」
「へん、万一は斬るぞ俺ぁ!金の分だけは働いてやらぁよ!」
【アックスマスタリー】【ストロングアーム】【風の担い手】
豪斧が振るわれる。東の筆頭である、変わらずに健在である。
「まぁそうよねー。言っちゃえばこれはあんた等の闘いだし?変な癖付けて突っ込んでぶっ飛ばされたうちの阿呆はともかくさー」
【闘牙剣】【竜装帰:ドラゴンクロウ】【怪力】
ローズは少しおどけ、マナ除けの竜の鱗を展開しながらその大剣を振るう。
恩義はある、依頼もある。故に戦う。それ以上もそれ以下でもなく、これはあんた等の事情と割り切るシビアさを、長く活動する冒険者なら、少なからず身に着けているものだ。
「笑えない風の質量だが『死神』の奴よりぬるいか、合わせんのは苦手だ、雑に突っ込むぜ」
「はいはい、カイトの代わりにオフェンスに入る。ヤバいのは噛み千切ってあげる」
【暗黒剣士】・
大剣に長剣に大斧、互いの流儀に嵐に対抗し続ける。
力業か、道外れた流儀かの違いはあるが、それぞれに分かれた風に質量をぶつけて交代しながら。
変わらず降り注ぐ矢の雨は、領域は斑に穿たれ、その形を不全とさせる。
「矢が切れた、困った困った。あたいの槍は形のない相手は苦手なんだけどねぇ、……さぁ奉納に参ろうか!!」
その矢が切れた戦士は、原始的な獲物を構えて前線の支えに参戦し始めるのである。
【部落の門番】【断塵槍】【練気法:ガゼルフッド】
とにかく、嵐の猛威をしのげばいい。容易な事ではないが、まだ身の潜らせようはあるだろう。
下手を撃てば崩されるのは当然だが、それだけのフィジカルを持ち合わせる戦士達だ。
『リィン―――!!』
【風の守護者】【精霊術Lv5(風)】【嵐竜方陣】
膠着した状況がしばらく続いていく。
重傷者は出る。呼吸を維持できずに立ち尽くし後退する者も出る。
外来の冒険者も、更に少ない周期で
―――別視点、別動隊。
「―――……ふぅ、よくやるわ。割にも合わない事を」
【へクスナイト】【■国式操符術】【レイピアマスタリー】
黒髪を風に流し、特徴的な仮面を身に着けた軽騎士めいた風貌の女。
流浪のBランク冒険者『ロザミア』、とある宿願を元に『聖錬』を旅する一匹狼である。
彼女も依頼を承諾し雇われて、『風の守護者』と呼ばれる大精霊を鎮めにこの場にいるのだった。
「この状況、想定よりも余裕はないな。『ロザミア』、少し予定を早めるぞ」
【ディフェンダー】【陰陽術師】【ハルバートマスタリー】
「貴方の仲間がぶっ飛ばされたみたいだけど、いいのか?放っておいて」
「……アレを刃で受けたのは見た、うちの双剣士はあれ位で死なないのさ」
そのロザミアと共に動くのは、カイト等一行の先達であり今や術も槍も一定水準以上で扱う阿修羅の姫。
ガルデニアは金糸の髪を結いあげて、風に紛れて、抗戦する戦場の周囲を密かに動いているのである。
冒険者、ガルデニアとロザミアは以前は同じく流れ者であった。
カイト等と出会う以前に、幾つか依頼を合同して請け負った程度の知り合いである。
「随分とお気楽ね。よく言えば信頼とでもいうべきかしら」
「えぇ、そうとってもらって構わない。とにかく、私たちはやるべきことをやるぞ」
【阿修羅姫】
ガルデニアのカイトに対する実力の信頼は割と強い。
それが彼女の彼を好いた理由と一つであるのだから、ある種当然である。
彼女等はまた別の役割を負って、ベースとなる簡易拠点から別行動をとっているのである。
カイトが嵐の剣を初手に撃ち放ち、
「会うのは久しぶりだけど、前より良い声をするようになった。……似た様な流れ者だったのに、少し面白くないわね」
「少しの間にも人は変わるさ、割と修羅場もあった。群れればいい。程よく騒がしくて、落ち着ける場所もいいものよ」
「ン…、私は止るわけにはいかない。この忌まわしい呪いの『仮面』がある限り」
【復■姫】
互いに軽口を交わしながら、術を張り込む、種を仕込む糸を張り詰める。
仕込みはまだ不十分だが、整ったと彼女等は判断する。
【風の担い手】【ストロングアーム】【再起の使命】=【ミスティックハリケーン】
【暗黒剣:
さて、暴風の勢いが少し弱まる。
筆頭戦士の奥義である、過去から部落に受け継がれた『精霊巫器』の豪斧と合する一撃が炸裂して。
『風の守護者』が高度を下げたその隙に、暗黒の瘴気に精錬して生み出したそれを纏っての蠢動突撃技が突き刺さった。
【■空】、元来のマーローディアスの風の担い手としての喪った可能性である。
風を読み場を読み、あえてそれに従わずに動く事により虚を突くタイミングに踏み込む。
それは忌まわしい忌避していた『黒蜘蛛の鎧』を受け入れて。魔具による生命改造により、風を感じる感性を薄なっているが。
水闇属性由来の暗黒の瘴気に意識を惹きより、その裏に踏み込む経験に反映されている。
「さて、仕掛けるなら今のタイミングか。術を起こす……、君の方が器用だろう併せなさいロザミア」
「ええ、いつでもどうぞ」
そして詠唱を伴う。
「―――嗣子の芽、森羅の支柱、ここに顕現せん…っ!」
【元・奉納巫女】【旋律詠唱】【陰陽術Lv3】【固有術:木伴装】
ザっガ
―――ギギギドドドド!!
変形槍を突き刺す。大地に魔力を巡らす、それが合図となり大地に仕込まれていた術札が"起動"する。
途端に成長した木々が一斉に競り上がり、弱った大精霊を取り巻き包囲するのである。
ガルデニアは今まで、事前の時差術式を起動する事はしたが、意思通りに多重に連鎖等はできなかった。
『裏切華のペンダント』
それを可能にしたのが、自身のエゴに欠落に裏切りに襲い掛かったかつての義理の姉妹の遺物。
"傭兵の女"、それが使いこなした
その破損した残骸とはいえ、元が量子論の空絵図を実現させる、高マナ凝縮体である。
働きかけ拡散するだけで、周囲に伝播する合図位にはなる。
「さて、これで決まらなければ撤退かしらね。―――術式展開『操符術・虚冥陣』!!」
『呪いの仮面:
その木々を固定具に張り付いて、符の繰り手が封印術を展開する。
展開していく光の升目、連鎖して繋がり意味を成し、空に冥混じりの
それは冥の濾過装置の様に。
【――――――封印術:虚冥陣――――――――】
『―—―!、??』
【大精霊:マナ生命体】【ウィンドクローク】【三竜の化身】
風が冥属性に沈着し、純粋マナの構成体たる本体の勢いを弱めていく。
三頚竜の化身がその形を崩し、攻勢を薄くしていくのだ。
共存の道をたどる
こうやって防衛戦にその戦いを着陸させるは、封印術の類が使える類が重要であった。
しかし、彼女の扱う符術はその効力を発揮するに、この暴風の環境は悪すぎる。
ただ展開すれば、符は定着しない風に散らされ流されるだろう。
故にガルデニアの固有術による成長した樹々は、物理的な防壁と共に、それゆえの支えの軛樹でもある。
【風の守護者】【精霊術Lv5:乱懐のテンペスト】【嵐竜方陣:自然感応】
しかし、未だに形の解けた暴風が吹き荒れる。
取り囲んだ樹織りが、軋み。内部から砕け溢れ出そうとするのである。
「……くっ、しかし押されているか……」
【■国式操符術】【光升の接ぎ手:整列不全】
しかし、ロザミアの本来小札を配列し、多重に連結させることで力を発揮させる術理である。
木々の成長に配列を任せたこの手法では、本領を発揮できないのだった。
流れ者の連携不足もあるが、そもそも発想自体に無理がある。といっても他に手などないのだが。
―――『『『シュュゥウン……!!』』』
そこに、交差する参つ射手の砲撃が突き刺さり、勢いを削ぐ断ちにかかる。
いわゆるダメ押しである。
一つは"白耳魔術師"の四章級魔法、一つは"青の少年"の傷口を抉る甲矢、そして最後は……。
―――交戦地の遠方にて、幾何学模様の弓を構える若葉色の髪の少年。
『黄昏の腕輪:電制装甲』
その手に構えるのは、
その撃ち放った弓は柄に、彼の愛剣である"絆の双刃"を取り込んで。
しなりというより、定められた歪みに復帰する様にその両柄を撓んで揺れていた。
弓を引いたその指は炎を燈して付与を、高山都市で学んだ
現状では歪みを発条にする為に準備に一発のみ、渾身の一矢を"中てる"だけの手札である。
「―――……ふぅ、出来る事は、やったかな」
【腕輪の担い手:六花弓】【レンジャー:弓術の心得】【精霊術Lv2:
残心の所為、冒険者カイトの弓の腕は未だに並みである。
魔法剣を扱う双剣士に尖鋭すると定めた、いくら努力を重ねようと余技を十全に磨くには時間がない。
故に、"必中"に届かない。
しかし必要だというなら、他の手段で代替えすれば良いという。
(……こんなんじゃ、実力に繋がらないとはわかっているけど)
『魔具』が強さが、冒険者の強さであるのが常識な『聖錬』では、在り得る発想である。
『―――"ぱぱ"が必要なら、組んで、あげる』
【電脳精霊】【円環魔術:ハッキング】【タッピングエア】
そういう風に腕輪を動かす
しかし、彼女は、"精人"としての生まれからそれに極大の適性を持ち合わせているが、経験の不足から創造性にかけていたりする。
故に
だから、これも未完成であり、何度も何度も関数を組み上げて辛うじて動く代物である。
ぶぉん…。
幾何学模様の投影された弓が溶けて、用意した糸の結われた弦と、双剣だけが残る。
ターゲッティング、演算された結果に、"中る"正しい道筋は見える。
その手本を元に、電制の装甲に引っかけて、矢を弾き絞ったのは、しっかりとカイトの技量である。
暴風が吹きつけられ、その両腕が冷やされてまるで千の虫に食われる如く、酷く痛む。
もしかしたら、骨に罅が入っているかもしれない。
「いっつぅ…っ」
焼けた両腕の皮膚に包帯を巻きつける。もはや慣れた経絡の痛みだった。
両腕を自身の空、炎オド性質に模って空気を引っかけて、軸回転を生み出して、それを繰り返してその勢いを減衰させたのである。
その無理は、張力を持つ故オドを放出する汗腺などに負荷をかけて引きずり出して、掻き毟る様に身体の中から傷めているのだった。
「この位置から駆け出しても、きっと間に合わなかった。ガルデニアさんには、感謝しないと」
生体放射を保護する符も剥がれた、そんな中で自身の余力を護った予備護符のそれに感謝する。
その状態で、矢に塗布し
呼吸の所為だけで呼応してオド絞り出す、カイトはそんな経験だけはひたすらに多いのである。
戦場を見れば、三矢に削られた大精霊はその存在容量をすり減らし、大地にその存在を堕としていた。
【狂精化:容量縮小】
そこから外界との隔離、自身の自我要領を超えた拡張性は途絶える。
参頚の竜の化身も形を崩して収束して…。
『―――ルン』
【超絶美形】
中心たる風の女神の形だけが取り残される。
女神の心格はその理性を取り戻して、瞳に澄み切った空の如く光が戻っていた。
声は聞こえない。
だが、"部落の戦士達"が、首を垂れて儀礼の所為を取っている事だけは察せられた。
武器をしまうその動作で、大体自体は察せられるだろう
「終わったみたい。しんどかった」
カイトはそう呟いて。腰を下ろす、体力もそこまで余裕はない。そして、また己は怪我人である。
下山の事を考えれば、ここでじっとしている事が吉だろう。
息を吐く、空を見上げる。巻き上がる髪に身を任せて、こみ上げる痛みから目を逸らす。
久々の仲間と離れて一人きりである。内面の膿が滲んでくる。
「思った通りに、グランは強いね。やっぱり"英雄"の通りにはいかない」
―――【ヒーロー】【日々是修練】
カイトは"英雄"と呼べるような人間を知って、似た匂いを感じた少年について想う。
故郷を飛び出して、ロマンに生き、冒険者として成功してなお、その気性を失わない"親友"と同じ匂いだ。
人は環境によっても形取られる。"青の少年"と比べて、あぁ、己はなんて道具頼りであるのだろうか。
【自棄自損】
既に自分が弱いという自責はないが、劣っているという実感はこびりついている。
己が"腕輪"に溶かした、『鋼の先駆者』の残滓に信じる事の"重さ"を説かれた。
積み重ねた歳月、
足りない対価を支払って、支払って支払って、本当に自分がそれに見合う重さを持ちうるかという自覚はないのである。
【腕輪の担い手】
おまけに、己が何か良くない"モノ"に選ばれた、その核心だけはある。
「自分を信じるのも難しい事だよね。僕はどう、終わるべきなんだろうか」
何となく、己を信じる為に、それを定める必要があると感じた。
もう一度、溜息を空に溶かすのだった。
●●●
後で聞いた話であるが。
『風の守護者』暴走の原因、それを本人に尋ねてみると。
それはやはり近くに、高山都市を襲った『異邦の侵略』が主な要因であるらしい。
高山都市全体に、広域に、二度でも及んだ【領域作成】禍々シキ波というノイズ塗れの空間。
更に、
環境に溶け合う大精霊ゆえに、影響を受けたのである。
【風の守護者】【嵐竜方陣:自然感応】
彼女は元々に、"棄て子"の情報の集合であり、過去の時代に集積して形を成した存在だ。
故に人の形をとる寂しがりの大精霊である。
それにより人に寄り添っており、風の感性を持ちながら、本来必要としない人との交わり、信仰する事を求めた。
そしてこの普段は『隔離領域:烈風山脈』陣取ってなお。
風を従え空気を読み、噂を拾うだけの感性を持っていたのも悪かった。
ノイズに乱され、騒乱の噂を聞き、新たに降臨した設計された"理想の偶像"を崇めだしたという。
―――そして彼女は怒った、怒りを引きずりだされた。
"また"私を、棄てるのかと。
彼女が時に自我を蓄積して、確固たるエゴを蓄積した『大いなる存在』でなければ。
即座に、同時にその怒りを導かれて、『空泳ぐ人魚』と評された侵略者と共に『高山都市』を襲った可能性もあっただろう。
とにかく、これで一件落着である。
小人の声に傾けるだけの理性が、彼女には有る。淋しがりな女神は事態を聞いて、またそこに落ち着くだろう。
「―――全く、手間をとったわね。まぁこれで十分に恩は返せたしょ!」
「まぁ、そうだね」
清々した様に、ローズが快活に笑う。
『ティアマトボルト・オリジン』
"青の少年"は大精霊、【風の守護者】に気に入られて、その分霊の宿った巫器を下賜されたと聞いた。
これにて彼らの長かった『高山都市』での戦いは一旦幕を下ろすのだった。
―――長期戦になった理由。
真っ当な封印術使える子が一人しか居ねぇ!
カイト君の精霊術段階フラグの一つにしようと思ったら、四属性マグナの中で唯一、カイト君が扱えそうな武器持ってないティアマトちゃん。
しかたないので段階強化は更地に、多分、ティアマトちゃんに気に入られなかったんでしょう!
―――持久戦に向かない【狂羅輪廻】
当然、ぶっ飛ばされる。
カイト君雑多な魔具使いまくるから、本編修羅勢(WA)には動きがぎこちないとかで斬られるんだろうなぁという予想(魔具無しor高ランク魔具一筋が基本なのを見ながら)
近い将来的に枷になりますが、魔具無しでカラテを鍛えるという発想が、至る発想も選択しうる時間もないのがつらい所。
―――Xフォーム参照の弓スキルの基礎。
カラテで実用に持ってくには背景と時間が足りない!
『円環精霊』のリコリスは、ほぼ感覚派で機械に、マナに働きかけるプログラム組むのでソースが汚い想定。
コメント文も残す訳ないから、彼女以外には理解できない
この子にも先達が必要だけど、超レア技能何ですよねえ。雷電王おじいちゃんは王国だ。
―――このBランク詐欺共。
ロザミアの
札整然と組み立てて力にしてる事から、
"呪いの騎士"と、冒険者の
SSRだからそう出番在りませんが、ジータちゃんの仲間相当のスペック想定。ちょっと復讐相手(まだ予定)の都合でグラン君とも絡ませずらい。
残りのマグナボス候補のユグユグは出ません。投稿案にいた気がするので…。