ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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幕間2【暗躍する者達】

―――『■■■ィア』

 某日某所、聖錬のいずこかに蠢く、暗黒の闇中の事である。

 変わらず絡まり合う様に機械類がみっちりと詰まり、稼動するのが特徴的である密閉空間の中で。

 

カタカタカタ……。

 機械仕掛けの中、無機質な鍵盤を叩くような管高い音がひたすらに響き渡る。

 そこで"白髪の男"は数字に目を走らせていた。

 空間に投影され記号配列キーボードに、高速にその細すぎる指を奔らせて、それに合わせて電子の波が動き、脈打つ様に伝播し続ける。

 

【機工知識】【高等魔術解読】【努力する天才】

 

 それに呼応するように、マナ由来の電磁が走り周囲の機器類は脈動して蠢くのは、この時代の住民にとっては異質な光景映るだろう。

 しかしその指先の一つ一つに、(1)()の旋律を積み上げてそれは途方もない積み重なりに意味(ロジック)が宿っているという。それが"彼等"が保持する遺失技術である。

 

 そして、彼は手を止めずにぽつりと呟いた。

「―――第二相『惑乱の蜃気楼』の反応喪失、稼働して間もないというのに、討たれたか。予測が計算が甘かったというのか」

【マルチタスク】【鉄面皮】

 "白髪の男"は溜息だけ一つ浮かべ、思索を巡らせる。

 それに込められたのは喜びか、感嘆か、呆れか、それとも恐れだろうか。

 その、枯れ果てた細く痩せ細った貌からは読み取ることはできない。

 

 ただ一つ間違いないのは、白髪の男にとって、それは単純に割り切れるものではないのだろう。

 その、人類の逸脱自体を期待している様な節もある。

 

「ああ、その未知数の期待値に無限数を秘めた、有限数に期待を寄せていた。それこそが期待するもの……だが」

 初めからそうであると運命づけられた如く、世界に満ち満ちる人類に仇なし続ける理不尽。

 影に影に、弱さでもなく欲でもなく光と影として蔓延る悪徳。

 それに可能な限りのNOを突き付けて、今日の今日までまで世界を繋いできた人類が多岐に渡る流儀を観測していた。

 

 "白髪の男"はそのどちらにも、意味を見出している。

 否、それを自身が愛する"至高"を造形する為の資源(リソース)だと捉えているのだ。

 

 しかし、として。

「―――正直に予想外だとも、私が設計した『惑乱の蜃気楼』(イニス)が早々に撃破されるというのはな」

【電子魔術師】(テクノマンサー)【藍の札:造形造詣】【彼女の物語】

 "白髪の男"とて、『碑文八相』と銘ずけられたその己の作品に愛着はある。

 "彼女"の物語から汲み出し、それぞれに完成品として送り出した。

 傑作たる試練であり、災厄なのだから。

 

「"偽りの光景にて見るものを欺き、波を助く"……、確かに戦闘特化、というより破滅の崖の先へと導く機能を主に寄りかかった個体だ。それでも『聖錬』自体も動かず、こんな早くとはな」

 先導者、『精霊狂信者』(ナチュラリスト)を火付け役として、拡大する予定だった戦乱の導き手である。

 旋律に伝播する精神汚染、弱きを掻き毟る旋律の人魚が汚染し伝播し、混乱を拡げる絵空絵図だった。

 

 しかし、反してそれらが与えた影響は、想定よりあまりにも小さすぎる。

 その性能を把握する白髪の男が客観的に評して、"本領を発揮する前に撃墜された"と認識し、そして事実通りであった。

 

 そもそもに対峙し抗った者たち以外には、過去の恐るべき侵略者の類する【魔王級】とすら認識されていないのである。

 結果的にだが、予告された四年ごとの『大襲撃』に出現する『八罪十罰』でない限り。

 それは齎した被害の大きさで、定量的に判断されるだろう。

 

 そう、既に討たれた『災害』などに大衆は興味は長続きしない。

 強いて言えばあぁ英雄となるべき存在が鮮烈に活躍した成らば別だろうが、今回の功績は分散して伝わっているらしいと、支援者の一人である死肉漁り(グールズ)たる『ハゲワシ』の男の報告にある。

 

 既に名が売れていた、過去の十罰スレイヤー"フィアナの末裔"の片割れ『蒼天』を筆頭として。

 『鉄芯の流星』、『鋼鉄の銃姫』(アイアンバレル)、『蒼き竜刃』。

【吟遊詩人】【漫才師】・【マネージャー】

 それが吟遊詩人に噂として持ち出されて語られるが、至高を添える華として見出した"英雄候補"である。

 『腕輪の担い手』の名は、それらは同列以下に語られる程度の小さな灯でしかない。

 たった一人の英雄ならばまだしも、あっと言う間に人の世に霞んで消えてしまうだろう。

 『碑文八相』たる二柱を費やしてそれでは、男のとっては不服な結果である。

 

「全く、儘ならないものだな」

【彼女の物語】の通りに世の中が回らないのは、単純に己の力不足であるだろう。

 それを含めて、完成させる物語とは定めていたが。

 また望む絵図にある、救世を望むような戦乱に、混沌世界にまた遠ざかってしまったと意味する事である。

 

「私の手で造形しては意味がない。蝶の羽搏き(バタフライ・エフェクト)という言葉もある。露骨に手を入れるのは、好まないのが……」

 "白髪の男"は災厄を造形し、蔓延るの悪意を煽る、それ以外は成り行き任せに定める事にしていた。

 【彼女の物語】に"見えざる手"など無粋に過ぎるのだから。

 原始的なシュミレーション(ライフゲーム)でも、一つの干渉で全く違う結果を齎す事を知っている。

 故に、"白髪の男"は最終たる『再誕』の調整、設計された法定世界のデバック、バグフィクス。

 紡ぎ子たる"我が娘"たる『電■神』"ア■■ーラ"の調整に、その作業を全霊を傾けていたのである。

 

 だがしかし、こうも予想外が続けば、そのままに原因に想いを馳せない訳にもいかない。

 

 "どうにも不自然過ぎるな点が多い"のだ。そして、今回は決定的なものがあった。

 

「どうやら少々想定外(イレギュラー)があるようだ。解体に効率が良すぎる、【禍々しき波】を媒体に乗せた"精神汚染"に"高揚の詩"、観測されたその反転調符、これは自然発生しえないもの、だ」

【電子魔術】(テクノマンサー)【機工知識】【高等魔術解読】

 しかし、心当たりはない。『預言帝』の連中ならばこのような意味のない事はしないだろう。

 そして、"白髪の男"は基本的に他人に興味を抱かない為に、自身の生い立ちからも、この妨害者の存在に繋がる糸を推測できない。

 

―――『『『ビュン!』』』

 並列に躯体に接続、新たに宙に表れる幾多もの仮想の電制投影(ディスプレイ)を展開する。

 白髪の男は、自身の"至高"を、"愛娘"の調整に並列して、『惑乱の蜃気楼』からフィールドバックされたデータに、残存した『黄金の精霊』の一部を解析していく。

「同業の仕業、か」

 高速で流れる1と0の羅列の中に、己の論理変換(デコード)を噛ませて、その原因を推測する。

 

【創造者たる者:機械知識Lv4】【電解の王】【高速演算】【高等魔術解読】

 常人であれば、その押し寄せる情報量の奔流に容易くその脳を焼き切るりうるだろうが、彼にとってはこの並列作業は全力ですらない。

 生来から"白髪の男"はそういう可能性として生まれてきた。白紙に滲みだすシミの様な吸収性、その一芸の身に注力した。

 それ故に"努力する天才"である。

 この程度であるならば睡眠を必要とすることなく、作業を続行する事が出来るだろう。

 

「ふむ…、この実体のなさは私と同じ"ソフト屋"の匂いがするが周辺地の調律器(ハーモナイザ)に、目立った干渉の痕跡はない。そう、簡単に尾を掴ませる様な輩ではない、か」

 しかし"白髪の男"は全知ではない。彼が統べうる魔導時代の遺物の類は殆ど残っていない。

 遺跡の類を、時折稼働させて干渉の窓にしているのみだ。

 この時代にてそれが叶うのは、伝説に足り得る(機械技術Lv5)の技術者が、その絵図を引いた時代の最先端のモデル都市である聖錬北東部『シルト』に限られるだろう。

 

「今の段階では、探査するしかあるまい。『テクノマンサー』(私たち)にとって機材(ハード)の性能は、そのまま能力の限界に比例する。故に……、拠点を持たないのは在り得ない」

完全自律母体システム(モルナガ・モード・ゴーン)

 実際に、その"白髪の男"がなした、その推定は的を得ていた。

 別の視点から、『袖幕の暗躍者』は自身と"残骸物を集めた城"(タ■■ロス)を築いて、そこから少なく小さく、波紋を起こす"見えざる手"を伸ばしていたのである。

 

「であれば、少々大人げなく行くとしようか、土地への寄生。単体にて一つの生態系」

 それでもあくまで"白髪の男"は動かない。試練である『碑文八相』にのみに全てを委ねる。

 尖兵たる『死の恐怖』《スケィス》、波の広げ手たる『惑乱の蜃気楼』(イニス)同存在に比べて、完成度(クオリティ)が上がるという事はない。

 ただ、依存する資源(リソース)の規模が桁が異なるというだけ、である。

 

「"天を摩す波、その頭にて砕け、滴り、新たなる波の現出す"碑文"たる第三相『増殖』(メイガス)

 彼が謳い上げるは次なる侵略者。

 その銘を淡々と、それでいて自信に満ちたように紡いでいく。

 

「これに一つの設計思想を付け足すとしようか、"高次の視覚"を収集する機能を、探査機(サーチャー)として、と」

 土地を食い尽くして拡がる災害。永劫に増え続ける葉であり蛇である"増殖"である。

 この世界の人類は麗しい。修羅と呼ばれる様な人種が蔓延っているのだ。

 故に、それは目立ちすぎる故に討たれるだろう。

 それは勿論織り込み済みであり、試練でもある『碑文八相』の本来の役割であるのだから。

 

「―――この侵略範囲にて『妨害者』の拠点に炙りだす。退場願おうとしようか。予想外の"客演"にしては暗幕の裏を知りすぎている」

【創造者たる者】【ブラインドタッチ】

 さらに、電子を奏でるしなやかな手の動きが加速し、周囲の蠢く機械が唸り声を上げる。

 

「【彼女の物語】に、"我が愛娘"に、神の手など、不要なのだ」

【彼女の物語】【愛たるすべてを】

 そう言葉を占めて、流れる数列だけを追い続け"白髪の男"は作業のみに集中するのである。

 

 『聖錬南部』にて蠢く、道化の闇はまだ序章に過ぎないのである。

 

 

 

―――所変わって。

 

 カァン!!

「糞ッ!!この結果は何だ、何が【魔王級】だ!!あの優男が大法螺をふきよって、たかが地方都市の一つでも堕とせない体たらくではないか!!」

【死肉漁り】(グールズ)【ハゲワシの頭】(カシラ)【没落貴族】

 暗く質素な洋館に、乱暴に強く杖を叩きつける音が響き渡った。

 そこに身を潜めるは、聖錬の死肉漁り(グールズ)南部の頭であるハゲワシと呼ばれる男だった。

 

 男の苛立ちは最高潮に達していた。

 『碑文八相:惑乱の蜃気楼』(イニス)

 【魔王級】と評されるその仕様と、襲撃時期の情報を事前に受け取っている。

【プライド】【悪悦手管】【工作知識】

 その情報のアドバンテージを糧に、【魔王級】の襲撃を戦乱に漕ぎつける種にと大仰に言い放った。

 手順は踏んだ。

 外部の『精霊信仰者』を偽って、自身の手駒である影を浸透させ麻薬を密かに馴染ませ、中央に不満を持つ部落を煽って同時に騒ぎを起こさせたのだ。

 

【碑文八相:二相】(イニス)【惑乱の波長:崩落・高揚の詩】【領域作成:禍々シキ波】

 仕様書の通りであれば、環境を染め上げる機能を悪用し、『黄金精霊』という軍制を作り上げる機能。

 蜃気楼の如く錯覚に、心を破壊し、高揚に染め上げるそれは、きっかけさえあれば爆発的に広まるだろうと踏んで。

 しかし、現実には|『惑乱の蜃気楼』は迎撃態勢に早期に撃墜され、その思惑は大概無駄になったのである。

 まだ小火は燻ってはいるが、事態は収束に向かってしまっているのだ。

 

「馬鹿どもを煽てるのに俺が、どれだけ苦労して……くっそ『ロドの鉱石』、麻薬の材料はある程度手に入ったが」

『ロドの麻薬』

 聖錬南部の、死肉漁り(グールズ)のハゲワシが被った被害も並ではない。

 確かに男が、人を支配する根源として得手とする。

 強力な麻薬の原材料である『ロドの鉱石』もある程度の量は手に入ったが、それが投資に見合う量かといえば、そうでもない。

 

「ああ、手駒を喪ってしまった。屑どもはいい、幾らでも補充は効きよるが…っ!」

 欲を貪るに、暴力に頼りに、または貧困に生まれるクズ共。

 それらはいい、少し餌を魔具や魔道具をチラつかせてやればすぐに釣れるだろう。

 この残酷で暴力的な世界の理の暗部である。

 人類は慰める様に、または繋ぐように目合ひ。幾多が生まれ、そして幾多が死に続けるのだ。

 

 何も持ってない人間が一度、気が付いてしまえば転げ落ちる、転落する。

 遅々たるを積み重ねるより、持っている奴から奪う事が一番楽で、欲を満たせる方法であると。

 そうした辛抱の無い屑どもの集まりが『死肉漁り』(グールズ)と呼ばれる集団である。

 

「だがしかし、薬物に調整した"影共"は痛い、これは一朝一夕には補充できぬ。見切りはつけたがそれでも大きな出血だ」

【影を手繰る者】

 そうした意味では元貴族という肩書を持つこの男は例外であり、貴重な頭脳である。

 手先に浸透させる意味で、自身の狂酔者を薬に染め上げ作り上げ、稚拙ながらも組織的な動きすら可能にした。

 

 そういう少しでも先の見える人間だからこそ、より荒れる。

 勘定をして、換算して。己のプライドの高い高い自尊心を満たそうとするが、うまくはいかない。

 

 得体のしれない。先が見えない。

 

 更に拍車をかけるのは己の取引相手(スポンサー)である。

 

『―――そうか、しかし。私は"投資"はした。後は、おまえ次第の問題だろう』

【鉄面皮】

 "白髪の男"はそう言って、まるで興味が無いが如く、取り合わおうとしない。

 予想外はつきものであるといわんばかりに、それに対してなんも反応も見受けられないのだ。

 

『私が望むのは、おまえが成すがままに悪徳をなせば、いい』

 相変わらず得体が知れない。無法図な許容性が不気味である。

 "ハゲワシの頭"である男は、この不気味で男の使い走りで終わるつもりなど毛頭ない。

 

 いつか己の才覚、喪った貴族の立場以上に、ふさわしい栄誉に服すると、野望を滾らせている。

 だからこそ、隙を伺っているのだが……。

 

【プライド】

 相変わらずに、"白髪の男"との差は隔絶していると実感させられるばかりである。

 それは男にとっては屈辱的な事だった。

 

 

 

 

 

 

 

―――そんな中、突然に声が響き渡る。

 その姿は、黒く禍々しきフードに全身を隠して、焼け果てた皮膚を包帯に全身を覆った大男である。

「―――クフ、フハハハハ。随分荒れてるようだなァ……、死肉漁り(グールズ)の頭よォ」

「っ、何がおかしい"継ぎ接ぎ男"(パッチマン)

【真人】(エタニティ)【継ぎ接ぎ男】【夢惨輪廻】

 貴重な魔導文明由来の通信機器に、そこにぬうっと現れたのは、取引相手の一人である。

 蒸気放つ吐息、包帯塗れの肌、爛々と血走った禍々しき双眼がこちらを見つめる。

 

 ……と言ってもその関係は、包帯の男にとって寄り宿の一つというべき、曖昧なものなのだが。

 "包帯の男"は『聖錬』が指定する、野生の災害、未熟な情報社会の中で偽装された”変装する怪物共”の呼称。

 自己意志でのみ災害たりえる被害を齎す存在、活動者である。

 件の『蜃気楼の侵略』と呼ばれる一連の事象と、この包帯塗れの男の動きは連動していない。

 

【指定災害 人在】(ディザスターマン)

 そもそもハゲワシの男に、この"災害"を制御できるだけの器量は到底ないのだから。

 精々が南部の『死肉漁り』(グールズ)の頭でしかない彼の手には、負えない怪物なのである。

 

 故に、遭遇したのは偶然である。何かの求めに応じた訳でもない。

 ただ、『高山都市』から引き上げる手駒の一部が偶然にこれを発見して、接触しただけの事だった。

 

(……ふん、ろくでもないバケモノが、野垂れ死んでいれば良い物を)

『魔導式射影機』【影に潜む者】【薬物改造:狂酔者】 

 目配せして、遠隔地に己の特に信じる手駒を密かに配して、より鮮明にその情報を受け取る。

 気を抜いていい相手ではない事は知っている。というより、単純に生理的に気持ちが悪い。

 

「くふふ、くふ。愉しいからなァ、小さくずる賢い頭で世の中の大きな流れに乗っとて、自身の欲を貪ろうとするその姿。それでこそ"獣性"(ニンゲン)だとも……」

「……っ、喜色悪い事を言うな肌が粟立つわ。大体、貴様と手痛い傷を負っているだろう。謂われる筋合いはない。どういう下手を撃ったのだ」

【薬物使い】【悪悦手管】【没落貴族:政治知識Lv2】

 "ハゲワシ"の男は、元貴族という経歴である。

 顔を繋ぐこ事、小さい取引でも定期的に関係を繋ぐ事の重要性は、基礎的な高等教育にて物にしている。

 雑に乱暴に気まぐれに、潜んでいた"死肉漁り"(グールズ)を町ごと食い潰したその存在に、"手駒"を遣わして取引を持ち掛けた。

 それは一方的な取引である、定期的に"物資"や"生贄"を提供している。

 ただそれだけ、だがそれによりこの『災害』の居場所を知ることができるのだから。

 それは、高い高い金のかかった天気予報。

 それは堅実な取引であると彼、ハゲワシは自負していた。

 

―――ただそれが成立しているのは、目の前の醜悪なる男の気まぐれである事には、気が付かない。

 人の世の順当な理屈など、全て蹴飛ばす類があるというのを、彼は知る必要があるだろう。

 自身の想像できる範囲の最悪が、そのままハゲワシと呼ばれる男の限界であり。

 政治知識という、ある種お高く留まったルールに生きている。

 そう言う意味では未だに、暗部を渡り切れるとも言い難いのだった。

 

「くふ、頽廃の風に誘われて『魔王級』の"上級魔人"と遭遇してなァ……」

 包帯の男は一呼吸おいて、熱のこもった溜息を漏らしながら。

「白い鎧を身に纏った実に良い身体をした色男だァ。是非、その全てを奪ってやりたい所だったが、ひ、ひひ。どうにも痛み分けといった所だ。鎧を砕きて熱い抱擁をくれてやった」

「気色悪い声を出すな……、ちょっと待ちたまえ"上級魔人"だと、貴様に比類する規模のか?!」

【魔王討伐者】【失墜楽園の王】【竜王六魔将】

 そして死肉漁り(ハゲワシ)たる男は、件の話に出た白き鎧の男。

 己の名を天高き翼(バエル)を名乗った流浪たる修羅、長き時を修練にて完成した、亜流たる"駆動の騎士"の話を聞いた。

 

―――その抗戦の結果的に言えば、ほぼ相打ちである。

 

【黄昏の支配者】【ライフキング】【死霊術Lv4】=【溢れ出せ地獄の窯】(ゴグ・マナグ)

【死を刻む黄色の徴】(タナトス)【全駆動把握:全集中】【天座は揺るがない:修羅道・超スタミナ】

 『原式魔具:五虹の神槍』(ブリューナク)と己の技術を利用した"軍団形成"

 『疑似生属性』(フィフスエレメント)に怨嗟を投影して自身の無尽蔵に、地獄の徒(トモガラ)との単独同士での戦争かくやの光景を生み出した。

 

『撃退&追放』(アィヤムル ヤグルシュ)【駆動騎士】(ギアナイト)【見切り】【魔力放出】

 確かに白鎧の騎士はその群がる全てを斬り棄て、すり抜け、薙ぎ払い。

 黒に染められた極光たるを竜属性も併せて掃い、極限の斬り裂く剣尖と化して、凌駕肉薄しその剣を突き立てたのである。

 

 まさに神話に語られる、無双の体現たるその光景。

 

 しかし。

『―――ニィィ…っ♡』

【夢惨輪廻】【生命過敏】

 しかしとて、"包帯の男"は狂気の深淵の極致、欲に支配された夢惨を高らかに世界謡いあげる畜生。

 絶望感を刻み与える悪夢すら無惨に散らす、救われることすら理解し得ない狂人である。

 

【黒光の手甲】(ガントレット)【剛怪力】【悪飽賛歌】

ドカァ!!

 袈裟に刻まれ、龍闘気に焼かれながらも、間に合わせの単純な暴力に拳を握り、振るった(カウンター)

 当たり前のように、呼吸する様に、(無残な)結末に夢見て焦がれて敵対者の最悪を選択し続ける。

 その堕ちに堕ちきった極地が、彼等の領域であるのだから。

 

【真人:重症】【超再生:竜属性により妨害】

『バエル・ザ・メイル:半壊』【怨嗟塗装】(ラミネート)

 確かな手ごたえ、純白の鎧が砕かれた高音が響き渡る。

 人としての触覚を大きく超えた刹那に、包帯の男は実際に目にはしていないが、感覚少なくとも半壊であろうと判断する。

 

 そして、衝突の慣性と勢いそのままに斬り抜け、大いなる翼はその場から離脱した。

【竜王六魔将:死神騎士】

 『竜魔神』(アジ・ダハーカ)の信奉者である。

 故に、白鎧の男は離脱した。まだ死ねない理由が、宿願があるのである。

 

 

 

 

 

 

―――これがあの夜の顛末であった。

 

 

 これを聞き終えて……。

「単独でその様な規模は限られる。聖錬(中央)の『戦姫』も、『猟犬』連中は動いているという話はない。だとすれば『魔王領』の気まぐれな流れ者か、また余計な不安要素を……っ」

ドンッ!!

 ハゲワシの男は机を叩いて、そのやり場のない怒りをぶつけた。

 一般的な常識として、どうしても"災害"に単独に比類するは同規模の暴力の化身か、"英雄"のみと連想してしまう。

 そんなのが不意打ちの様に潜んでいるというのは、未だ小悪党でしかない彼にとって冗談ではないのである。

 

【悪悦手管】【没落貴族】

 そして、悩んで、苛立ち怯えて竦む。まずは自己保身に頭が回るのは当然である。

 クズならが幾らでも死ねばいい。しかし、その繋がりから自身が脅かされるのは耐えられないのだから。

 

 

「カハハハ、クハハハは!興が乗ったぞォ、これが潮流という奴だろうなァ……」

「だから、何がおかしい強がりを、貴様とて瀕死だろうが!」

【蔓延させる者】 

 そんな小悪党を有体に言えば気に入っている。"包帯の男"はしたたかさをかっていた。

 男はあらゆる欲を貪る醜悪な悪鬼であると同時に、獣欲の肯定者、"蔓延させる者"としての振る舞いである。

 

「くくく、そんなにいきり立つな。そんなに無様で醜悪で……健気な姿、実に興奮してくるじゃないか♡」

「「「―――………ッ?!」」」

【影に潜む者】【薬物改造】【忠酔者】

 その声色はどこまでも醜悪で、這いよる嫌悪感に、感情を染められた"影に潜む者"達すら震わせた。

 心は共通する、心の底から、会話が通じないと思った。

 これは包帯の男にとっては、"愛玩動物"を愛でる程度の感覚である。

 あぁ、"包帯の男"はどこまでも悪趣味極まりなかった。

 

「くくく、力を貸してやろう。【死肉漁り】(グールズ)ハゲワシの頭よォ」

 漆黒のマントを翻し、興奮に肉体から蒸気を上げながら、尊大に災厄である男は言い放つ。

「この潮流は"道化"の類も動いているのだろう?私はアレは好かないしなァ」

 自分本位に自分の欲望を満たすために、世界に人間の本性、獣の如く終末論を刻まんがために。

 

「……ッ!何が役立つものか、貴様の様な……無様を晒していながら、危険ならば逃げるのだろう!?」

「ククク、少なくともあの"色男"もケガを負っている。次やるとすれば『四騎士』の誰かを供回りに踏みつぶす。あれだけの光は、強者は蹂躙すればよく酔えるのだからなァ……」

【青の札】【融和術】【■を育てる者:起■覚醒】

 "包帯の男"が言う『四騎士』とは獣如く悪欲を愛でる、男が見出した救いようがない破綻者達である。

 力だけそれを放し飼いにしていた。その中には力の規模だけならば、男の足元に及ぶ者さえいる。

 そのどうしようもない獣を『災厄の四騎士』に例えるは、男が夢見る理想を、頽廃たる終末世界をなぞって悦に浸っているからであろう。

 

 "包帯の男"は修羅でもなければ武侠者でもない、真っ向から競り勝つことに興味はない。

 蹂躙できればよい。そして、それがより陰惨であればいいと心から思っている。

 

 ……なお、この世界は誰にとっても甘くない。

 放し飼いにした『四騎士』と例えた連中も、うるせえ迷惑だ死ねと殴られて。

 事故死という代替りを繰返し、現在も二騎の欠員が出ているのだが、それは気にしない事とする。

 

「さぁどうするかね、精々より悪き選択したまえよ」

 災厄は嘲笑う。"蔓延させる者"として。

 『聖錬』南部の晴れ間は、まだ、遠いのだった。

 

 

 

 

 

 




エネミーのターン。
白髪の男
 増殖(メイガス)の高次の視覚を収集する機能を流用して。
 介入者の探索に動きます。タルタロスへの摂食の可能性が拓かれました。

ハゲタカ
 人脈の整理と様子見に入ります。
 ■■■いを、パッチマンに提供しました。登場するかは流れ次第。

パッチマン
 がわ゛い゛い゛な゛ぁ゛ハゲタカぐん゛
 現在、重症一ターン休み。
 災厄の四騎士(残存二人)が、気まぐれに参戦しました(離し飼い)。
 一人のデータがやばい(超絶魔力持ち)
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