ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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大蛇【世界樹の侵略】

―――【聖錬南部田舎町:クラウス】

 その郊外の簡易的な宿舎。

 質素にまとめられた空間に、紙を捲る音が静かに響かせながら。

 

 敬愛する団長に対して、整然とした儀礼の例を取りながら兵士は語る。

 件の異変の地、拡大し続ける森の中を観測班の報告を受けいれる。

 碧き戦衣装をまとって報告書に、紅衣の騎士団その長たる"昴"が静かに目を通していた。

 

 清涼、純粋なる水の匂いが辺りを漂う。

【竜具の器】【水都斯魂櫛】【酔紛たる胡蝶】

 そこは彼女の領域、部屋の中に一歩踏み入れば"水属性"の色彩があふれているだろう。

 準とはいえ、『聖錬』における至高の宝、神と呼ばれる竜の力の一欠けら。

 団長という立場に、単純な暗殺対策を含めて、常に簡易的な結界(ベール)は展開している。

 

「観測班の報告では周辺の属性値に大きな変化はなし植生も拡大現象は依然継続中、ですか」

「はっ」

【紅衣の騎士団】【指揮者】

 その何処か儚さを伴った美貌は、他者を引き寄せる魅力を纏っているだろう。

 毎日代わり映えのしない報告に頭を悩ませ。

 巡る憂鬱な想像を、凛とした仮面の中で溜息を噛み殺しながらその少女はその思考を回す。

 

「お疲れ様です、確認いたしました。補足をそのまま続けてください」

【カリスマ!】

 報告の兵士に微笑みと労いの言葉を掛けながら。

 

「調査に入った冒険者からの報告はどうでしょう」

「地形と植生と属性値の分布、また生態系の報告がありました。また、特出する点として"人モドキ"と"陽属性"の観測が報告されているとの事です」

【データリンク】

 彼等が調査隊の『ギルドナイト』と役職を持ちの『人形超越種』(エクスマキナ)がいる。

 魔導文明の遺産を、貴重品ではあるが、遠方に距離があっても簡単なものであれば伝送が可能である。

 それを使って、距離という制約を、報告を短縮化していたのだ。

 

 彼女はその情報を聞いて。

「"陽属性"、確か近年学問として成立した人工属性が『七曜』の一つですか、ますますきな臭いですね」

【魔術知識Lv2】

 その知識に事態のきな臭さを察する。

 『七曜属性』とは、人工的に作り出された合成属性。学問概念、自然発生しえないものである。

 それが、儚く散る陽の光となれば猶更の物だろう。より人為的な災害である確率が上がったのである。

 

「テロも同時に起こる可能性もあります監視の手を増やして、交代のサイクルを見直しましょう。他の国兵団は何と言ってます?」「

「定期連絡も昨日と同じような回答であります。未だ様子見で動こうとする気配はありません」

「ええ、そうですか。最低限に件の異変の森の地図を、中心に至るまで観測しない限り動かないでしょうね」

【政治知識Lv3/5】

 わかりきった回答を確認する。

 それは『マク・アヌ』という都市国家に属する『紅衣の騎士団』とて同じことなのだから。

 

 幾ら精鋭とて純人種は脆い。

 例えば何の対策がなければ気温が10度変わるだけでも、そのポテンシャルはぐんと下がる。

 もちろんそれに対して考えうる限り対策はするだろう。

 しかしそれでもなお"侵魔獄"は、それ所にとどまらない理外の法則が蔓延る地だ。

 灼熱地獄、地が腐り呪いが満ちる、あらゆるものがその属性に染め尽くされるのが序の口の位に。

 

 一つの例として。

―――とある事例、そこに存在する万象を結晶に同化し、時空すら狂い歪んだ其れ。

【黄金の鉄の塊】・【汚いニンジャ】

 国そのものを飲み込まんと迫るそれに、とある国の騎士団は総力を挙げて決死隊として……。

 結晶化に黄金色の対属性塗料で対抗し、犠牲になった同胞の武器を鎧を剥ぎ取り使い捨て。

 気が狂う遠大に引き延ばされた時間を喧嘩しながら誤魔化して、理外の怪物に挑んだ。

【【無限修羅】】

 なお、騎士団総出の、生き残りはたった二人である。

 

 統一された質の高い装備に、平均化された練度、それが戦力の保証と連携を成す強みであるが。

 それ故に一人がその毒に侵されれば、全員が供倒れする可能性すらあるのだ。

 武力を喪えば、その都市国家など、この厳しい世界に国たる資格なしと『聖錬本国』に取り潰されるのは目に見えている。

 

 そういう意味では、在野の冒険者の方が未知の事態の場合に、意外な生存力を発揮する事も多い。

 故に初期の調査に冒険者に依頼した。何より根なし草など喪っても、そう痛くはないのだから……。

 

(なんて傲慢な理屈……。人に価値を優先順位を定めるなんて。しかし合理的な話、役割ですものそれに徹しないと)

【政治知識Lv3】【我が身は民の為に】

 威風を示す、国を生かす為に兵を殺す、大を救う為に、小を斬り捨てる。

 冷徹に正確にそれが、彼女に求められる役割だ。

 故にに陰鬱な少女としての本性と、華々しい仮面の合間にさいなまれながら。

 少女は人々が求める輝かしい"私"を演じ続けるだろう。

 

「ただ、『マク・アヌ』の上役からの伝令に、『牙の塔』(カインガラ)からの専門家の招聘と並行して、『準侵魔獄』の"踏破実績持ち"の冒険者に協力を要請する予定と聞いてます」

「そう、ですか。最初からそう動ければと、いうべきではないでしょうね」

 この"異変"は観測されて日が浅い。一月程の比較的緩やかな変化だろう。

 そう、まだ国同士の緩衝地である事もあり、上層部のだいたいは楽観視している。

 冒険者とは違い、専門の人材とは湧いてくる物ではない。故に動きは鈍かった。

 

 余談ではあるが、この話に出ている『準侵魔獄』の踏破実績持ちの冒険者とは『青の少年』ことグランの事である。 

 彼等がパーティの世相的な評価は割と高い。

 準とはいえ『侵魔獄』の調査とは、未知と理不尽に溢れる未開領域である。

 太古から存在し、余人の進行を阻んできた『アーカルム』の地であれば猶更だった。

 

「ご苦労です、下がってください」

「はッ!」

 そして、その凛とした声に報告を終えた兵士下がらせる。

 現状に進展はない。ただそれだけの現状確認の時間であった。

 

「……どう、思いますか。司君」

【妖精術Lv2】【感応体質】

 蒼玉の少女は虚空に声を駆ける、そこに浮かんでいるのは宝石細工の鳥を形取った中精霊である。

 彼女の"想い人"が扱う使い魔である。

 

 少しのタイムラグの後に返答があった。

 

『―――……ん』

 机の上で鎮座していた亀。

 宝石の使い魔が震えて、高周波の声を届けられる。

 

『その冒険者はよくやってると思う、国が専門家とやらを手配してこちらに来るのは一月二月かかるなら』

【元・冒険者】【スラム育ち】【男装少■】

 その声の主は、泥を啜って生きて来た彼女の密やかな想い人である。

 唯一の職権の乱用、己に許した数少ない我儘だった。

 

『多分間に合わない、今いる情報をもとで全力で動いた方が、いい』

「その理由は?」

 彼■は元々に在野、それもスラム育ちの底辺に属する冒険者だった。

 食い物にされ、逆に食い物し、何より生き延びた。

 悪党に生態関しては、その内面からよく知っている、その経験から言葉を語るのだ。

 

『ただの経験則大概の悪党は、気が短いよ。辛抱足りないクズばかりだからこう派手な事できる屑なら、―――そろそろ本格動き出すと思う』

【この糞みたいな世界】【自己中心・逃避】【汚れた身体】

 しかし温度差があった。ただ己が考える未来予想を、どうでもいいかのように語る。

 実際、この少■の内面は淀んでいる。誰が苦しもうが死のうが、己が知古以外はどうでもいい。

 むしろ清々するとすら、汚泥の中に溺れてきた半生で思うのも本音である。

 

 その答えに、対照的に。

「そう、ですか。わかっていても見ているだけしかできないのは、歯がゆいですね」

『―――……』

【我が身は民の為に】【劣等感】

 対照的な二人、比翼の鳥。

 闇雲に動いたとて何になるかと頭の中で理解していながらも、その心が痛める。

 賢い選択が、結果的に今に苦しんでる人達を救う事に繋がらない現状に。

 

「こういう時に、クリム、貴方がいたら……」

【竜具の器】【半身不随】【偽りの戦才】

 本来に、この立場を預かるべき紅雷の槍騎士を思い浮かべる。

 『団長』に、武力を預かる立場に己に向いてない。分不相応自覚はある。

 しかし足をとどめる事はできない、この宝を手放してしまえば己はただの不俱の少女であるのだから。

 この華々しい仮面が剥がれた陰鬱な不俱の少女など、きっと誰も必要にされやしないのだ。

 

 既に、団長としての責務を果たす為、己の手の届かない場所へと手を伸ばして。

 今まで、幾多の冒険者を部下をこの言葉でこの手で、確かに死に追いやったのだから。

 そして、この竜具を脱ぎ捨てることは出来ない、そのためにならばこの地位に――

 

 

 

 

 そして―――彼等にとっても状況は動き出す。

ズォオオオオンン!!

 突如鳴り響く轟音、少し遅れて大地が揺らいだ。

 そのあまりの衝撃に立てかけてあった武具が崩れる、書類の山が宙を舞う。

 

【円環魔術】【衝撃の杖】【増殖の波動】

 まるで"隕石"が落ちたような、地震が如くそんな衝撃である。 

 突然の出来事に思考が一瞬止まる。

 

「―――なに、ごと襲撃ッですか?!」

【指揮者:戦闘指揮】

 少女は、状況確認がためその宝斧を手に取って祈る様に手を添えた。

ずずずず……。 

 途端、薄くその領域が拡がり水の流れのままに、普段は自身の動かぬ脚に神経を巡らせている水気を周囲に拡げた。

 

(この音と衝撃、北東の方から広がっている。この距離での減衰は魔術というより何か重量物が大地に叩きつけられた音)

(襲撃だとすれば弓兵が撃ち落しましたか、町に被害はまだ出てない。……司君も無事みたい、よかった)

【精霊術Lv2】【止水の聴視覚】【比翼の鳥:感■呼腑】

 碧色の少女は拾った情報から状況を大雑把に、状況を把握する。 

 これは、拡げた水脈に音を拾って広範囲を状況をそのままに確認する"聴視覚"である。

 

 拡げた水の感覚を引き戻す。

(うくっ、いつになっても、これには慣れません)

 状況の把握、拡げたそれを戻し祈りの姿勢をやめ、その斧を構えなおした。

 その脚は長くの正座から立ち上がった様にじんじんと血の巡りを取り戻して、痺れた感覚が戻っていく。 

 耐えがたいくすぐったさを心地悪さを堪える。これの最中には彼女の愚足は無能に戻るのである。

 

 その最中に。

 

ドンっ!

「ご無事ですか昴様ッ!」

【紅衣の騎士団】【鎧器騎士】(アーマーナイト)【忠誠心】

 暫定執務室の扉を突き破って、全身鎧姿の騎士が一人飛び込んでくる。

 紅衣の騎士団が部隊長が一人、"銀漢"である。

 緊急事態にその忠誠心から敬愛してやまない主の元に、いの一番に馳せ判じたのである。

 

「えぇ私は無事です。いい所できました"銀漢"、おそらく襲撃でしょう」

「おそらく!北東からの巨大な飛来物を迎撃した様子が見えました。当直の弓兵が迎撃しましたが軌道を反らすに精一杯の様で……」

【紅衣の騎士団:部隊長】

 これ幸いと、向き直って声を張り上げ指示を飛ばした。

 ここに来た彼は人を取りまとめる立場である。

 多分に融通の利かない側面もあるが、その頑固さはこの状況にいて命令を必ず成すと信頼がある。

 

「貴方は隊を纏めて町民の避難誘導を、今の衝撃で怯えて"騎乗獣"が暴れる可能性もあります。冒険者ギルドに渡りを、ライダーギルドにも人員を早急に手配!」

「はっしかし、昴様はどちらに」

【カリスマ】

 苦慮すべきことを並べた。

 それに人に飼いならされたとはいえ、獣のフィジカルは一般人には大変に脅威となるだろう。

 たとえば、山岳を駆ける"赤チョコボ"ならなおさらのことだ。

 

「迅速に動ける者を率いて北東に、おそらく要因である件の森の"観測地点"を引き上げ圧迫します」

「しかし、危険です!斥候をやってからでも…!」

 その声を無視する。緊急時に動かぬ武力などに何の意味もない。

 とにかく状況を把握する。守るべき対象に籠城をするなど愚の骨頂だ。

 対処する。騎士団は国の武力として、張子の虎でないことを、本領を発揮せねばならないのだから。

 

「任せましたよ"銀漢"」

 緊急事態における裁量は既に団長たる彼女の物だ。ただ一言で反論を黙らせる。

 団長として、人員を率いて早急に事態を把握しなくてはならないのだ。

 

【酔紛たる胡蝶】

 国の宝である、準竜具を構えて、精霊術を併用して天に霧の色彩を描く。

 それが彼等が『紅衣の騎士団』における集団行動のサインである。

 

 そして、時間にして数分の事であろうか。

 事前に定められた迅速に、全身鎧姿の兵士たちが、次々と隊列を組んで集合していくだろう。

 

「あぁ昴様!申し訳ありません。撃墜しそこねました!」

「いえ、直撃を防いだだけでも十分です」

【精鋭射手】【弓我日景】【千里眼(偽)】

 町の見張り台からそこに配置されていた監視から声がする。

 彼がその正体不明を撃墜したらしい。陽が落ちるまで飽きずただ弓を弾き続ける騎士だった覚えがある。

 仮に直撃すればどれほどの被害となったか、ただ、その武威に感謝を込めて。

 

 そして。

 

「ローウェル!バスタ!貴方たちの隊は私に続いて下さい。危機が迫るなら相応の歓迎をしなければなりません」

「はっ、昴様!!」

「我ら紅衣の騎士団の誇りを見せる時です。"預験帝"の工作をくれぐれも念頭に、訓練通り迅速に対処を期待しています!」

【紅衣の騎士団:正規兵】【鶴翼の陣】【我ら精鋭ならば】

―――『『『ザッ!』』』。

 念頭に置くは、『預験帝』のアレの理屈など考えるだけ無駄である。

 その一括に、掛け声に整然と儀礼を取ってしたがってその統一された威風を示すだろう。

 均一に揃えられた『魔具』が鈍く稼働音を上げる。

 

 国の象徴たる宝が、切っ先を向ける。

 その同時に雪崩れ込むように、『紅衣の騎士団』進軍を開始するのだった。

 

 

 一方その頃。

―――『ライダーズギルド』

 

 そしてその懸念の通りに。

「どーど、どーどー"珊瑚"落ち着け!うわっぁ?!」

『ブルルルルゥヒぃん!!』

【突進】【ひのうまポケモン】【炎の身体】

 騎乗獣が括りつけられた手綱を引き千切り、暴れている。

 生来臆病な生き物だ、特に音に敏感な生物である。

 社会性の強さも相まって一匹が暴れ狂えば、連鎖してもう収集が付かない状況である。

 

「外に出すな!下手に被害が出れば殺処分は免れないんだぞ!」

「んなこと言ったて、どうしろって言うんだ打ち込んだ鎮静弾が燃えちまったよ!!」

 人類が優秀な血で、選抜血統(ダビスタ)を行っている様に、"騎乗獣"にそれを行わない理由もない。

 仮に、一般人が襲われれば一溜りもないだろう。

 特にこの一匹は軍用を預かったのもあって、全身から炎を巻き散らして、在りもしない恐怖から逃れんと扉に突撃して―――。

 

 その風景の背後に、魔術師らしい風貌の誰かが歩み寄り。

 

「―――落ち着いて―――」

【使役闘争士】(トレーナー)【サイキッカー:感応増幅(メンタルフィールド)】【グラビティデイズ】

 保存していた感情、心を沈めて波及、杖を翳して、暗い位声と共に感応波を響かせる。

 それは周りの空気に馴染めないが故に、いつの間にか割り振られた仕事場ライダーギルド(ここ)に居ついていた変わり者である。

 それは沈みゆく感情の飛沫、大別して超能力(テレパス)の一種であろうと判断されるそれ。

 

 すると、その影響下に途端にその獣たちは立ち眩む。

 それを浴びせかけられた。騎乗獣たちの一帯の興奮状態を収めたのである。

『ブル、ぶるる……!』

「落ち着いて、ね。怖いものはここにはないから」

【感応体質】

 そして最後にその手に直接触れて落ち着かせた。

 その癖は妙に手馴れている。彼■は使役闘争士でもあるのだから。

 

「た、助かった。あんたいつもここにいた騎士団の世話掛かりか……?」

「おぅ、何したんだ兄ちゃんよ。しっかしとにかく助かったぜあんがとよ!」

「別に、たまたま居ただけだし」

 その掛けられる感謝の言葉に、魔術師らしい彼■は不愛想に呟いた。

 大したことはしていない。他人がケガするより、獣が傷つくのを嫌った故の行動である。

 

 一瞥もせずに背を向けて、目的の場所へと歩いていく。

 

「……このタイミングで、こうなった、か」

【精霊術師】【使役闘争士】【■装少■】

 おおよそ馴染まぬ、古風意匠の様相、冒険者上がりの構成員の一人だった。

 『紅衣の騎士団』補助団員、騎乗獣の世話を役割としているのである。

 

 空に描かれた色彩から、己が強行班に含まれていないのはわかっている。

 市民の避難誘導、そちらに割り当てられているのだろう。

 獣使いという割と機動力もある己がそこに置かれるのは、おそらく身を案じての事であるはずだ。

 

「でも昴、僕はあの人達みたいにお行儀よく振舞えない」

【スラム育ち】【自己中心・逃避】

 しかし知った事ではない。境遇から自分勝手な彼■は、自分の心のまま行動する。

 そもそもある意味の特別扱いを受けて、この境遇にいるのだから周囲に馴染めるわけもない。

 

 これでも、術師としての腕は相応に備えていると自負している。

 

「あぁ嫌だ嫌だ。こんな大それた事を仕掛けるのはどんなクズか」

【この糞みたいな世界】

 気だるげに吐き捨てる様に溜息をついて、古風の魔術衣装の少■は立ち上がる。

 屑と関わると碌な事にならないのだ。腐臭がすれば、近寄らぬか逆に煽って自滅させるのが良い。

 そうやって流れながら生きて来た。悪党なんかどっかで勝手に潰し合ってくれと切に思う。

 

「おいでポチ」

『ばうっ!』

【かみつきポケモン】【グラエナ】【牙獣の如く】

 己のパートナーを呼び出して撫でて、外に歩みだす。

 

「おい、こんな時に何処に行くんだにいちゃん!」

「関係ないでしょオジサン」

 それでもきっと己の想い人は、責務の沼に溺れて自身を追い詰め続けるのだろう。

 それを捨て置くことはできない。

 

「誰が死のうが誰が傷つこうが、ほんとどうでもいいけど、出来る限りの対処しようか」

【ペルソナセット】【マインドサイン】

 気持ちを切り替える。

 演じて杖を持つ宝石の中に刻まれた記号に勇ましさを取り次いで。

 

「―――貴方にあげるよ。僕の体で吐き出せる全てを」

【愚かな人魚姫の子】【比翼の鳥】

 それは誓いである。思えば、愚かな血筋なのだろう。

 過去の少■は、誰よりも賢しく上手に泳げてるつもりで、足を取られていた。

 優しい言葉を怪訝に窺っては、いつも耳を塞いでいた。

 それでも、こうして掬いだされて、こうして己は空を仰げている。

 

 寄り添い合い愛を唱える様な、軟な交わりではない。

 少なくとも彼■はそう信じている。

 

 

 弱さを強さを兼ね備えて耐え忍ぶ貴方を、僕は支えたいと想った。

 貴方が釣り合わない秤の上に、二度と慈悲(あい)を置かない様になるまで、せめてせめて。

 

 

 

 

●●●

 

 

 

 

 ところ変わって。

―――『脈動する大豊の森』

 

 そこには奇妙な緊迫感が生れていた。

 

 浮遊するは歪な石槌の群れ、追随するのは石の葉(リーフ)の大群。

 文字通り枝葉分かれした"世界樹"の一部、異質なオブジェクトが蒼天の空を汚しつつある。

 

【世界樹の方程式】【天に等しき者】(・・・・・)

 特質するはその数である、数は30を軽く超えるだろうか

 その中心に聳え立つ大樹の中心にて、また違った存在感を主張するだろう。

 

 あの破滅の"破調ラ音"が鳴る。

 そして、まるで"大樹"に纏わりつき、土地の力脈であるそれを従える如くそこにいた。

 文様が幾何学に輝き、その"大蛇"は地を這いだして、そこに主としての威風を示している。

 

【超再生】

 『翡翠の天使』と交戦し、大破した腕も引き裂かれた尾も、すっかり元通りに修復されている。

 能面の裏に悠然と、大樹を這い廻った。

 遥か遠方の己が指の一つを砕き負った『翡翠の天使』と、有象無象の方向を見つめるのである。

 

『―――フェーズ進行、最終段階―――』

 

『―――捕縛対象、遠方地による健在、追跡の失敗により抹殺対象に変更を議決―――』

 

『―――分割電脳、1対2で可決、碑文"増殖"たる侵略シーケンスを開始スル―――』

【適合進化思考】

 射角を方角を定める、その高次の観測能力にて人口の集中する場所を認識して直撃する様に。

 事前の定められた"大蛇"は号令するが如く、その腕を振り下ろした。

 円環の理に構成された加速器、それと呼応するが如く"その槌"が、あらぬ方向に向けられて、振り下ろされる。

 

 弧を描いて、墜落する!!

 

【円環魔術】【衝撃の杖】【増殖】【増殖】【増殖】……=【大流星槌】(リュウセイグン)

 電子そのものを操作するマクロ的な魔術、それにより加速力場である。

 先に田舎町『クラウス』を揺るがしたのは加速し荷重を纏ったこれの墜落、である。

 "天を摩す波、その頭にて砕け、滴り、新たなる波の現す者"、その顕れを示す派手な墜落星だった。

 

 土煙の漂う空の模様は、仮に直撃したならば村など呆気なく吹き飛ぶ事を容易く想像させる。

 

 この大樹を隠蔽する為の光学迷彩(ベール)を剥す、その段階(トリガー)で進めなけらばのは規定されていた。

 このフェーズに至っては、『碑文八相』たるこれは、無作為にその手で侵略する事を定めていた。

 

 其れの電脳は、なんとしてもあの『翡翠の天使』の飛翔を阻止することに全リソースを注力したいと提案するが。

 それは本能にて否決される。

 

 事前に仕込まれた暗幕(シナリオ)の通りに、英雄招来を求める混沌の世界に、知らしめる必要があるのだから。

 

 

 それに遥か距離を置いて相対するのは……。

「ふむ、いきなり無差別とは随分派手にいくものだ」

 色抜けた少女はそれに対して、木々の上で、その状況を光景を見つめるのである。

 ここに奇妙な緊迫の硬直が出来上がっていた。

 互いに相手が仕掛けるのを待っている。

 『大蛇』は交戦経験に翡翠の天使を惧れて包囲せんと待ち構え。

 対して少女はその天を掴む"可能性の翼"が折れている。

 

「空高く聳える『大樹』と取り巻く『蛇』とはずいぶんしゃれたモチーフじゃないか。なぁ、果たして期待にそぐう物なのだろう?」

 虚空に問いかける目の前に確かにある脅威に、沸き上がる期待に口元が歪む。

 その墜落した総数は最初に認識した三〇と少しを数えているだろう。

 遥か遠方でド派手な土煙が上がった、その光景を目にして、微塵も彼女は動じない。

 その性根に、その程度ならどうとでもすると、この世界の人類を信じているのだから。

 

「しかしあの『大蛇』、手を出してこない。焦れるな何か魂胆があるのか」

【雷■の襲撃者】【魔術知識Lv■/5】【記憶喪失】

 変わらずその掌に風旋毛を巻き起こしながら、遠方の能面の蛇と睨み合いを続ける。

 過去の『応龍』ならば、欲求に任せて、アレに抗せる空戦戦力が己しかないという大義名分のままに。

 背後の顔見知りを無視して、あの『大蛇』に例えて生産拠点と直感した『世界樹』に突撃を仕掛けていただろう。

 だが、今の彼女は微かに正気であり、何より力が衰えている。

 

「まぁいいか、とにかくこの毒を晴らすとするか―――"翠に染める愛しき風よ"」

ぽいと。

 爆発に低下した空気圧に押し寄せんとする風を誘導して。

 創り出した連送する旋毛風を放り投げて。周囲の大気圧と酸素濃度を掻き混ぜる。

 所詮片手間の術式である、一時的な中和であり、領域化の事もありなかなかにその"毒"は押しとどめられない。

 

 いつでも、反応出来るように睨み合い、構える。

 その期待に溢れた胸の内を、無節操に向ける。

「何をしている。早く起き上がってこい"双剣"の」

 一瞬、眼下に眼線を落として。

 爆心地の端に毒に煽られて、倒れている若葉の双剣士に問い投げかけた。

 

「お前の言う"侵略者"が迫ってるぞ?」

(……っ)

 倒れ伏しながらその声を、朧気に聞く、爆発に壊されその意味など取れない。

 経脈がうるさい響く、それが生きている実感に内側でただの耳鳴りに代わっている。

 自分の居場所がわからない、その目の裏は今は盲だ。

 

 それを聞いた双剣士は、意味は取れずとも、地を掻いて立ち上がろうとする。

 

「わがっ、てる……っ敵は何処に、……っ」

【戦闘続行:怨敵覚悟】【狂羅輪廻】

 ガンガンガンガン。 

 身体が壊れている。それで足が留まるなら、彼はこんなところにいないのだから。

 音だけが響く、心は折れていない故に身体は壊れたエンジンの如く空回りして鳴りやまない。

 

【異心伝心:同属性】

 半身に、呼びかけても応答はなかった。

 先の大爆発の起爆剤に、彼の周囲の酸素という"毒"は剥がれている。

 故にこれ以上、在るだけで身体を壊す事はない

 

 焼けた喉が痛む、浅い呼吸に脈を巡らせて。片腕で大地を支えに何とか立ち上がる。

 血が滴る、眼の血管は弾けたかとぼんやりと過る。

 其れで精一杯だ身体を前に倒して、満身創痍の体重移動で数歩進めるか程度だろう。

 しかしそれだけあれば―――そう彼とて一矢報いる手札はあるのである。

 

「リコは、敵はっ」

「なんだ目が見えないのか、双剣の?」

【盲目】

 ただ盲であるというのがどうにも難点だった。これでは標準が定まらない。

 持ち腐れて死ぬわけにはいかない。そんな終わり方は意味がなかろうと認められないのである。

 

「ほら風を感じろ背を押してやる。さぁ魅せてくれ♪」

【魔術知識Lv3】【光■渇姫】

 指し示す指の先に旋毛風が巻き上がる。

 色抜けた少女はその言葉を拾って、なお衰えない闘志に沸き上がる喜悦を噛み締める。

 相手を案じはしない、心配もない。心の底から信じている。

 

「………んっ」

『黄昏の腕輪』【ダンシングヒーロー】【狂羅輪廻】

 それを感じて、その方角に『腕輪』の宿る右腕を向ける。

 正体不明の色抜けた少女が、風使いであった事を連想しての直感的な行動である。

 

 マナの至るに、六輪に手折られた電子装甲が展開されるようとする。

 この距離有効であるかはわからない、この吐息の反動に身体が保つかはわからない。

 それでもただ、無駄死にするよりはましだと定めて……。

 

「え、あ……は?」

―――その横合いを身体を攫われた。

 そこに、派手な風切り音が、宙を裂いて烈風を巻き起こして。

 鋼鉄のサーフボード、それが宙に浮かんでいる―――

 

「救助に来たっすよーカイトさん、なんとか生きてる様で何よりっす」

『SAVウェポン:エアリアルクラスター』(LFO)【騎乗】【機動戦】

 若葉の少年は突然襲われた浮遊感、抱えられているような感覚に困惑する

 その正体は機械人形、今回の調査を持ち掛けたギルドナイト、ナツメである。

 低空で要救助者を抱えて、残された数少ない拡張パッケージに乗り、宙に翔けぬけている。

 

 状況は悪化しているが見捨てるという選択肢を取らぬなら、彼女はこうして出張る他なくなった。

 こうなるなどと、誰も予想が出来なかっただろう。

 それでも先の槌の流星群で、今ならば物量が出払っていると判断である。

 

「聞いてくださいよ、まったくもうとんだ曲芸飛行だったすよ」

「なつめ、さん?」

「こっちは滅多に騎乗()らないペーパーなんですから、勘弁してほしいっす!」

【エッジハンター】【人形凌駕種】(エクスマキナ)【自己変革】【ハイパーセンサー】

 目の前の脅威にあくまで、軽い調子で声がした。

 先に観察していた"新緑の閃光"実質光速たるそれに、できる限り狙われない為の低空飛行である。

 それは言う程容易くない。その切っ先がぶれれば激突して墜落するだろう。

 

「この状況で出張ってくるか!いい心掛けだ!!察するに件の冒険者仲間というやつか?」

「誰っスか、なんか要救助者が増えてて困惑するしかないんですけどー。まぁそんな感じですよ」

 そして色抜けた少女が乱入者に問いかけて、応える。

 ぎゅいんんと、そのまま軌道をターンし……。

 

「一度しか曲がらないっすからね。そこの知らない人、ちゃんとボードを掴んでくださいね!」

「おう、わかった。かっこいいなそれ、わくわくするな!」

きぃん!

 そしてそのままの軌道に、色抜けた少女を拾って翔ける。

 予定にない。顔見知りに比較されて優先度は落ちるが、ただ捨て置くのは目覚めが悪い。

 

 それを感知して、その世界樹の『大蛇』はその歪な腕を、その銃口を向ける。

【新緑の雫腕】【適応進化思考】

 『大蛇』は動き出す、別にそれに脅威を感じたわけではない。有象無象の人型など脅威にはならない。

 機械的に判断した。

 それを庇うならば『翡翠の天使』の枷にできると、それは休眠にありながら高位の視覚により"観測"していたのだから。

 

【円環魔術】【超絶魔力】

キュ、キュキュキュ!!

 展開する展開する展開する。まるでガラスを擦り合わせる如く音に

 大蛇の周囲を特殊な力場が、天の輝きを奪い尽くす略奪の網、先のか細い閃光を幾多幾万を束ねた破壊の旋光である。

 

【―――消エヨ、天に滴る増殖ガ波前に】

【新緑の閃光】【世界樹の方程式】【天に等しき者】=【ソーラービーム】

 

「あーしかたないっすねぇ、分が悪い賭けもたまには悪くないと、そう思うしかないっす」

【エッジハンター】【夢幻羅道】

 あぁ、そうなるだろう、想定内である。

 遠距離から先の『枝葉の石槌』の戦闘を観察して機を探していたのだから。

 

「私が今回は誘ったからっすからねー。責任は取らないと」

 結論から言えば機械人形の彼女には何ともならない。

 実質的な光速を回避が可能性としてあるのは修羅とて、極わずかな例外を除いていないのだから。

 しかもそれの影響範囲は束ね、先と比べようがないほど威力と熱量である。

 

 自身の"拡張パッケージ"であるそのサーフボードを蹴り、手を離した。

 当然その慣性囚われていた彼等は宙に投げ出され、制御を喪って慣性のままにそれは宙に軌道を描いて。

 

―――ジュア!!―――

 その鉄の朔舟は容易く蒸発した。

 しかし囮である。乗り手は宙に投げ出され落ちていた。

 貴重な残存する『人形凌駕種』(エクスマキナ)の拡張パッケージを、容易く明後日方向に捨てたのである。

 

 

「着地は自分で何とかしてくださいね知らない人!私は一人を庇うの(カバー)で精一杯っす!」

「おうさ、その程度余裕だとも」

 

 それぞれに落下中の対処に声を掛け合う中。

 若葉の少年は、射角の右腕を確かに世界樹の大蛇の方に向けていた。

 

「みつ、けた」

『黄昏の腕輪:電制感覚』【腕輪の担い手】【錬精調息:見切り】

 半端に展開されていた電子装甲が展開される、ぶちまけられた己の血潮に感応する。

 狭い自己因子により感化された精霊の群れ、焼かれた感覚を拾い痛みと共に反応するのだ。

 その閃光は直線にしかなり得ないのだから、焼ける方向にこそ。

 

【円環紋章砲】(データドレイン)

 故に、その方向を辿れば敵は確かにいる。浮遊感に塗れの困惑よりも怨敵への報復を優先する。

 

 落ち行く中に六輪の花が今度こそ咲いて……。

 

「溶けて消えろ」

 創痍の中に撃ち放つ。

 反撃に、光帯の怒涛の奔流(サーカス)が空を彩るのだった……っ

 

 

 

 




 ソーラービーム。
 絶賛逃走体制、光の速度に反応できるわけないだろうと思いながら。
 けど、勇者先輩レベルなら2割以上の確率で対処するからそこまで理不尽じゃない、魔王級ってそういう存在だよなよし!(現場猫)する。

 勇者っていうのはやべー奴の称号である。

 一話何とか仕上げる間に、本殿様で1スレ消費して新しいの立ってるのやばいなーと思う今日この頃。
 とりあえずこのペース維持できないかなぁ…と駄作者頑張ります。
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