ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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輝く【超人】のスキルィ!
(正面から殴り掛かるようになったの見ながら)
作者は中世の軍事関係は素人ですのでゆるーく流していくれると幸いです。


数対数【増殖の世界樹】

―――『田舎町:クラウス』

 その郊外の事。

 ざわめく、群れの行進が大地を揺らし、蟲の嫌な臭いが掘り返された土に混ぜっ返される。

 それは異常を示す、傍目にも分かりやすい光景である。

 

『『『―――ギギギギギィ!!』』』

 "脈動する大豊の森"より本能に騒ぎ立てられて、理性を失ったモンスターがあふれ出すのが見えた。

 あの衝撃と共に、まるで張りつめた水風船が弾けたか如く、森全体をひっくり返されたかのように続々と現れる。

 

―――【碑文八相:増殖】【世界樹の方程式】【円環の蛇】

 それは確かに"増殖"が権能の一つである。

 環境から汲み上げ蛇の使い魔を既存の生物に寄生、情報に感染させ、目的に運用される生態系を生み出す能力だ。

 

『『『ガアアアアアアアアアアアア!!』』』

【世界樹の方程式】【天の等しき者】

 時は満ちた、その頂点に立つ者の号令により。、

 それによりモンスター共は狂い猛ける。"人類を害せよ"との本能を煽られ露にである。

 

 まさにそれは"増殖"たる物量の具現である。

 一度、傷ついた『応竜』との交戦に塵殺されていたとはいえ、森と共に拡大した生態系そのもの物量は途方もない。

 少なくとも、この一角に観測される限りでも五百を優超えるだろう。

 

「ふん数は数だが報告通り、蟲畜生共ばかりだ予定通り一当てといくか!!」

【紅衣の騎士団:正規兵】

 しかしそれに臆するものはいない。

 そんな事、この世界では四年毎の大襲撃(スタンピード)であり溢れた事なのだから。

 

「へへ逆に、一番でけぇの獣はやはり足が速いか突出してやがる」

「まともに相手にすると厄介だ。俺らで各個撃破するぞ、両翼に二騎はカバーに入れ」

ブゥゥン!!

【騎乗主】(ライダー)【槍使い】【機先の穂先】

 真っ先に駆け抜けるは騎兵隊その数は五騎、戦場の把握に、試金石である。

 彼等は草原を蹄の音が高らかに鳴り響く。

 

「さぁいくぞ!!」

「「おぅ」」

【我ら精鋭なれば】

 馬上の槍が振るわれるそのたびに、迫りくる蟲畜生の甲殻を地に叩き落とされる。

 速度と遠心力の乗った槍の一撃は、大抵の生物を地に叩き伏せる威力を持つだろう。速度こそが騎兵の攻撃力である。

 その程度で速度は落ちはしない。優れた騎兵とは残骸を花道とするものである。

 

『ぐるるるるっるる!!』

【森の破壊者】【血の断裂爪】(ダブルクロー)【巨大獣:超俊足】

 そしてすぐに目的のターゲット、長く鋭い爪と、全身を覆う鎧のような筋肉を持つクマに辿り着く。

 先行して森に分け入った冒険者達が相手にした"満月熊"(リングマ)より二回り大きく体格は比ではだろう。

 それは迫る騎兵に本能を満たす獲物に歓喜の叫び声を上げて、待ち構えて鋭い爪を向け振るい。 

 

 しかしその剛爪は空を切る。

 

「真っ向勝負やる訳ねーだろバーカ!!」

『騎乗槍:ダマスカス製』【ランスマスタリー】【打芯鞭】

 進路の軸を、ひっかける様にその槍を振るい。

 迫るその爪からすれ違い様に、その遠心力の機先に脚を叩き裂いてそのまま離脱する。

 

『グルォウ!』

【バインドボイス】【荒れ狂う爪牙】【巨大獣:俊足】

だッダッッ!! 

 槍に、片足を強打した巨熊は姿勢を傾ける。

 それでも溢れ出る人類への敵愾心のまま、姿勢を低く唸り片手片足を軸に土煙を上げて追い縋る。

 

【破壊の一撃】【F・O・E】

 闇雲に振るわれる腕、筋肉と腕を活かした一撃は木を粉砕してしまうほど強烈だった。

 怒りと共に砕ける大地、その散弾、その爪に掠れば即死だろう。

 しかし、それに畏れることなく彼等は距離は切り替え、速度を載せて馬上槍が交差していく。

 

「よくやった畳み掛ける隊列を崩すな、順々解体してやる!!」

【正規兵】【連携:時間差攻撃】

 巨獣に破壊をもたらす両腕が大地を砕いて、なお一方的に騎兵が削り続けた。

 片爪が飛んだ、体制が崩れたそのタイミングに。

 軍馬は駆け、主の意志に応じて、次々に入れ替わり立ち代る。

 

 そしてその巨大な獣は両足が膝をつく。

 

「崩れたな、これで終わりにするぞ!」

『ヒヒィィン!!』

『公馬宣撃』(シルヴェント)【魔法剣Lv3/5:空属性】【人馬一対】=【ランスチャージ】

 一人の騎兵が勝負を決めんと騎手は愛馬の名を呼び手綱に魔力を込め、魔具を起動する。

 途端奔る雷の閃光。これは騎乗獣を単純に保護する、B級相応の魔具である。

 其れの応用として騎手のオドに調整して、突撃動作に"魔法剣"そのものを付与纏わせる為の補助具とするのである。

 

『がっ……ぐぉ』

……ドォオン!!

 果たして騎兵の突撃に。その巨獣は半身を砕かれ力なく崩れ去る。

 五大流儀を纏ったランスチャージ。

 これで陣形を取る際に、脅威となる攻撃性の突出したモンスターはいなくなった。

 

「へへ、厄介なのは殺せたか」

「一応焼いとけ、原因が分からないんだ汚染の原因になっても困る」

「了解」

 騎兵隊はついでとばかりに、火炎瓶を投げかけて簡易的な処理して。

 行進するモンスターの群れに背を向けて、まるで波が引くように引いていく。

 

 ふと空を見れば水紛の色彩が、空を彩った事を見て取れるだろう。

 それは『紅衣の騎士団』の全体指揮の合図である。

 

指令(オーダー)は"強行偵察後は、合流し予備兵力として待機せよ"か」

「あぁ当初の予定通りだ。他に出張っている兵団も確認できなかった。後は"本隊"で押し上げるだろうさ」

 彼等の役割は強行偵察の斥候もかねて、伝令役でもある。

 仮に大魔法使用するような存在があれば、機動力で対処するが一番損害が少ない。

 まず、一当てして情報を得る。

 また、他国の兵団、または騎士団が動いているならばそれと接触し情報の共有を行う。

 

―――【指揮者】【戦闘指揮】【酔紛たる胡蝶】

 その両方に当てはまらない故に、一旦に彼等は引いた。

 余裕もないが故に、一当て後はいつでも動ける彼等を予備兵力に回すのがいつもの事だった。

 敵が統制された騎兵や騎乗獣を持っていない場合には、大体これでリカバリーが効く。

 

 高い維持費に相応して騎兵という兵種は強い。

 誰かが言う、軍の戦力は速度×二乗だと言える、それが正規の物であればなお更に。

 

 

ざっざっ!!

 代わって、後に続く歩兵視点。

 平原に展開する鎧を纏った集団が、平原を駆ける。

 

 彼等の当初の予定では、それは観測に適した丘陵に陣取る予定だった。

 予定通り順調に進行しているといえるだろう。

 

 現在の陣形は、まばらに薄く展開された突撃の"魚鱗の陣"である。

 

 そして前方に、モンスターの群れを発見する。

「見えた、距離200、10秒後に接敵、前列速度落とすなよ!!」

「相手は蟲畜生だ、水か・氷属性使えるやつはいるか、叩きつけて機先を挫いちまえ!」

『Bランク魔具:紅衣甲冑』【ソードマスタリー】【防具習熟:金属鎧】

 剣を抜いて、盾を構えて。飛んでくる針や種子を丸みに流して……。

 魚鱗の陣形が、行進のまま群れを呑み込んで、その刃先に斬り刻んでいく。

 その身体能力は量産品の魔具に強化されており、重装甲ながらの乱れぬ行進を可能にする。

 

 平均した質の強さ、鎧の装甲を抜けぬ蟲畜生など脅威にならない。

 仮に抜ける程の牙を備えようと、先に届く前に解体していく程度の教練は重ねている。

 

 その騒々しい中に、一際異なった凛と水奏でる声が響き渡る。

「背後に一匹たりとも徹してなりません、ここで撃滅してください!!」

【我が身は民の為に】【カリスマ!】

 モンスターはここで数多くを撃滅する必要がある。故に薄く広く"魚鱗の陣"を取っていた。

 部隊長の一人である"銀漢"が率いる一隊を街に残しているとはいえ。

 一般人にとって雑多なモンスターでも脅威だ。薄く広く展開して、殲滅する他ない。

 

 仮に武名を鳴らす"王国"であれば……。

 小走りの速度に"横陣"からの蛮族フェスティバルで分断されてもそれぞれが食い破り、塵殺するだろうが。

 あれはモンスターパニックに培われた例外である。

 『聖錬』は基本的に平和だ、兵一つ一つを遊兵として機能させれるほどの練度は普通はない。

 

 巨大な蜻蛉が、アリが、蝙蝠が斬り落とされた残骸を重量で踏み潰し止めを刺しながら。

 『紅衣の騎士団』は進軍する。

 

「昴様っ、前方の目的に丘陵が見えてまいりました」

「えぇ、"ローウェル"さんの騎兵隊はうまくやってるようですね。到着後、全体鶴翼でモンスターの迎撃に専念してください!」

【魔術知識Lv3/5】

 "観測地点"の引き上げ、当初の暫定目標の達成である。

 そして高地から件の見渡す、件の"脈動する大豊の森"の方を見徹せば。

 先には影も形もなかった。その枝葉を天に掲げる圧倒的な『大樹』の存在が見えるだろう。

 

「―――!、あれが、件の原因ですか」

 変わらず、散発的にモンスターとの交戦は続いている。

 地の利も併せて、安定して迎撃を成すその合間に碧姫は件の森を目を向けた。

 

 幾つも幾つも、森からの飛来物と思われる"石槌の杖"がクレーターを形成して。

 大地に突き刺さっているのが見てとれる。

 

 そして何より目を引くのは、森の中心に鎮座する"大樹"であろう。

 

「で、でけぇ……、あんなの今までどこで隠れてたんだよ」

【世界樹の方程式】

 思わず漏れた誰かの声、その巨大すぎる迫力に息を呑んだ。

 藍の少女は冒険者からの報告にあった内容から繋げ推論し、判断する。

 遠征に出ている『紅衣の騎士団』全隊併せて、おおよそ百騎、彼女が率いるはその程度しかない。

 仮にこの戦力で"隔離領域"に近しいと推測されるあの森を踏破して、中心である『大樹』にたどり着くのは到底無理である。

 

(他国の伝令の合流を、話はそれからですね。今は目の前の脅威を…ッ?!)

 元々に、騎兵も重装兵も悪性地の踏破には向いていない。

 町の防衛、現状維持が精々である。

 他国の騎士団または兵団と協調して包囲し、または『専門家』の到着を待って動くほかない。

 

 そう定めて、団長として次の号令を発しようとする。

 その瞬間に。

 しかし、その合間に今の今まで、大地に突き刺さったままに沈黙していた。

 その"石槌の杖"が起動し、唸り声をあげる。その従える石葉が光を略奪して……。

 

「魔力の反応ッ、南西方向!」

「なっ?!」

【碑文八相:端末】【新緑の閃光】【センスオーラ】

ジュア

 撃ち放たれた。思考を纏める中に、遠方から幾筋の閃光が過る。

 文字通りの瞬く間、それは鶴翼に展開するそれらに撃ち抜かれて、一角の重装隊の鎧を焼いたのである。

 

「ほ、報告ッ!先ほどの地震の原因と思わしき"飛来物"をクレーターをより複数……以前活動が確認されます!!」

「……各隊、迎撃準備っ!」

 町の近くにあった墜落したそれは調査した。

 弓兵に撃墜された際に機能を失ったかスンとも言わなかった為、見逃してしまったが。

 しかし、あれはただ投射された砲弾ではなかったらしい。

 其れの墜落は大地を揺るがす程の衝撃だった。

 その単純な槌の様な外見も相まって、ただそういう"質量弾"の類と勘違いしても仕方ない事であった。

 

 

【苛烈たる萌芽】【二四の蛇瞳】【新緑の閃光】

 

 一呼吸おいて、第二射が迫る。

「っち」

【紅衣の騎士団:正規兵】【盾習熟:傾斜の構え】【連携行動:カバームーブ】

ざっ

 負傷した重装兵の間に立ちふさがる様に、盾を構えた歩兵がカバーに入る。

 盾の塗装と反射面にてそれを打ち払って。

 幸いなことに、被弾した兵士も鎧は貫通したが大した負傷ではないらしい。

 その閃光は物理現象の為、距離によって遥かに減衰される。

 

 そして―――。

 戦衣装と象徴である大斧を翻して、碧の戦姫が動く。

 

「"バースタ"さん隊を分けて、現場指揮を委譲―――あれらは私が対処します」

「す、昴様ッ?」

 あの"石槌の杖"は、クレーターの中心に広い平原の点在している。

 例えて平地での固定砲台など、手早く潰さなければ動きづらくて仕方がない。

 彼女は指揮官でもあるが、現状の騎士団の最高戦力である一極集中の歪みがここで出る。

 

 先に、下げた予備戦力である騎兵を、霧の色彩にて指揮を描いて、招集して。

 事前に想定される即応の体制に彼等は動き出した。

 

「ローウェルさんっ、訓練の通り"供回り"は任せました!」

「―――野郎ども行くぞ!姫様のエスコートだ、疵一つを末代までの恥と思え!」

「あぁくそしかたねぇか無理はしないでくだせぇよ!」

【偽りの戦才】【水の錬気】【竜具の器:超人・俊足】

 それは歩法というより、力任せの連続する跳躍の如く。

 "準竜具の器”、戦姫に近しきと評される、その身体能力に相応の速度で駆け抜けた。

 その背後より騎兵が追い抜いて、その突破力で、雑多なモンスターを露払いする。

 

【新緑の閃光】【苛烈ナル萌芽(メイガスリーフ):六葉】

キュウン!

 それを『石槌の杖』も黙ってみてはいない。

 追随する、幾多の葉の孔が力場を収束して、第三射たる閃光を撃ち放って……。

 

「―――啓け、水都斯魂櫛(みとのみたま)

【水都斯魂櫛】【滝壺の構え】【魔術知識Lv2/5:水陣壁】

 対して彼女は水を纏いそれを足場に滑る。

 彼女の身体能力なら走った方が早いが、並行して魔術を展開する器用さはないのである。

 先に魔力の垂れ流しにて挑発した。投影される水気の渦、分化する魂の業。

 水は何にでもなれるとし、害意への自動迎撃能力に、実際それに沿った精霊が形成される。

 

 集中する、碧姫に四方八方から襲い掛かる光の網。

 距離も迫った。故に直撃すれば鎧を容易く貫通するだろうそれは。

 水で形取られた凹レンズにて蒸発しながら曲げて、霧の色彩へと変えてしまう。

 

(属性値に大きな変動はない、物理現象ですか厄介、です)

 色彩を突き破る様に。

 その隙にまた大斧を振るい水気を身に寄り戻し、再度大地を蹴った。

 

 刻々と迫る距離、碧の戦姫は踏破したその距離にモンスターを相手にする事はなかった。

 全霊にて呼吸に活を普段使わぬ器官を再鼓伏して。

 

【過負荷装甲】(プロテクト)【超頑強】

 

 迫った距離に、飛び不格好に大斧を振りかぶる。

「やあああぁ!!」

【重斧技:ガンズパニッシュ(水車)】【怪力・偽】【偽りの戦才】

剛ッ!!

 力任せに目前の『石槌の杖』に一回転に大斧を振り落す。

 水中に見立てて自らの動きに巻き込み払う、障壁に阻まれながらも力業に衝撃を叩きこもうとする剛の技である。

 

 そのマナの障壁は果たして通りに割れた。

 衝撃が石の器を叩き揺らして、しかし一撃に壊すに至らないらしい。

 

るぅおん。

【適応進化思考】【飛翔】【増殖の波動】

 その『石槌の杖』は起き上がる、地属性の力場に反作用を周囲に押し付け飛翔する。

 

【滝壺の構え―――】

 ずざっ。

 水の足場を纏いに踏ん張る、それに耐えれてしまう。

 それは反射的な行動だ。彼女に本来、戦士としての才覚はない。

 

「上、ですか!」

 

カシャン。

 見上げれば、石槌がその首(こうべ)を下げて見下ろしている。

 水を巻き起こす、正面から対処しようとして

 

『―――ダメ昴後ろに、"避けて"』

「!」

【比翼の鳥:感応】【四式六令】【サイキッカー】

 文字通りの頭の中に声が響く、そしてその中に流れる息吹に、意志に反して身体が動かされる。

 それでは例えて"破壊槌"の直撃コースである。

 いかに"戦姫に近しき者"と評されようと彼女は人間の範疇、正面からは賢いとは言えないのだから。

 

ドォオオン!!

 再びの落下に衝撃跡、クレーターがより深く大地が散弾となり砕けて……。

 

「司、君?!」

 馴染んだ声に、驚きながらも流石に我を忘れない。

  反動に吹き飛ばされ開いた距離に、両の手を打ち合わせて、自身の生脈たる流れを閉じて巡らせる。

 

【魔術知識Lv2:水陣壁→大瀑布】【超人】

 近くに感じる比翼の翼に、脈の上ずりを感じながら周囲を感応―――。

 無詠唱の水の壁にて押し流すのである。

 彼女は仮にも準竜具の適合者、その出力は余波であれば押し流す事など造作もない。

 その衝撃の凹みに水を吹き寄せて、飛沫が宙を舞い溜まる留まる。

 

―――もはや包囲したと同意義の事。

 身を翻して、身体全体を発条に色彩の霧を纏いて偽りたる戦の姫が閃く。

 

「ふぅぅうううう!!」

『ラピスハート:魔器所持』【重斧技】【水都斯魂櫛】=【奥義:飛水八首落】

 それは自在たる水の御業、分割する魂の業と評される一つの至宝である。

 うねる龍の如く刃を回転させながらの連撃に飛散する水飛沫が、それぞれに意思を指揮して。

 それぞれが、形を成し敵対者に襲い掛かる。

 

【超頑強】

 『石槌の杖』は包囲を抜け出せない。先にその障壁は先にひび割れた。

 その隙間に入り込む様に叩きつけては水刃の万物を焼き付ける"竜闘気"に響かせ、付随する"葉"を刻み。

 本命たる至宝たる大斧がその石造の器を砕いた。

 先代が聖錬にて伝説たる『黒騎士』になぞり、結実させた奥義である【逢魔八岐八首落】。

 ……その模倣である。

 

 自信を動かす方程式を焼かれ、その器もバラバラになり、崩れ落ちる。

 "碧の姫"は大斧を構えなおして、その場から周囲全体を見回した。

 

「まずは、一つ」

【水の練気】【我が身は民の為に】

 

 その飛来した『石槌の杖』は、まだ一つを圧し折ったに過ぎないのだから。

 同じ脅威はこの草原の一角にもまだ点在している。

 

 【紅衣の騎士団』の団長として、己が責務を果たさなければならない。

 

(まったくもう)

 己の比翼が、この近くにいる。

 その身を案じて、安全な場所にと願っていた。しかし、彼女は出てきてしまったらしい。

 その理由は間違えなく己にあるのだろうと、嬉しいような心配な様な複雑な感情を抱えながら、高揚に頬を染めて。

 

「次の目標は距離に北西の、でしょうね」

【超人】【竜具の器:俊足】

 碧の姫は空に色彩を纏いて、全体の指揮として。

 再度、至宝たる大斧を構えて、大地を蹴り開けた平原を駆け抜けるのであった。

 

 

 

 

―――平原の、一角。

 

 そこにいたのは、古風のローブを纏った魔術師と、黒鎧を纏った戦士が2人である。

 そして鬚犬の獣が一匹である。

 

「おい、坊主。好き好んでこんな鉄火場に出張ってきてどうするつもりだ」

「……どうって?」

【男装少女】

 不機嫌に"黒鎧の男"……マーロー・ディアスは問いかけて。

 対して不愛想にその魔術師は、応える。

 

「俺を冒険者として雇うって言うから着いていてやってんだ。早く目的(オーダー)を言いやがれって事だよ」

【B級冒険者】【黒剣士】【孤独者の矜持】

 今の彼と彼女の関係は、単純な雇用関係である。

 突如大地が揺れ、騒然とする街の中で、早く外の様子を窺おうとした彼等は遭遇した。

 

 そのまま、魔術師の提案によりこうして同行することになった。

 

「どうするも何も、アンタは無防備な僕を護ってくれればいい。それだけ」

「ふん、護衛付きで騎士団の活躍の野次馬か随分と悠長なことだな」

「そんなんじゃない。近くにいれば、昴の力になれるから」

【比翼の鳥】【感応者】

 彼女は聖錬の魔術師の延長であり、"使役闘争士"(トレーナー)としてモンスターを従えているが多数のモンスターに襲われれば一溜りもない。

 だから、偶然見かけた反応の良い冒険者を護衛として前衛として雇うと提案したのだ。

 一応に彼女の正規雇用である、戦闘特化の冒険者を雇う、そのくらいのゴルはある。

 

「"昴"……って、あのこむ…団長かよ。呼び捨てたぁ太え坊主だなどういう関係だ?」

「別に関係ないでしょ。オジサン」

「まぁそうだがよ」

 相変わらず不愛想に、魔術師は従えた鬚犬の獣を宥めて遠方に注意を向ける。

 魔術師など単独で動こうとこの状況で、どうともならない。

 むしろ邪魔になるだろう。

 だから、後ろから支えられればいい、その血の繋がりが『比翼の鳥』たる彼女等にはある。

 

【愚かな人魚姫の子】

 彼女の母は九十九機関で作られた"奉納巫女"だった、一時の恋に惑い逃げる様に下野した愚かな人魚姫。

 その娘である少女はその"感応体質"を継いでいるのである。

 

「あの小娘が、今や立派に団長とはな。向いてねえと思ったんだが、世の中わからねぇもんだ」

「っ、……オジサンこそ昴を、知ってるの」

「それこそ関係ないだろ坊主」

【元騎士候補】

 彼とて古巣の現状が少し気にかかっただけだ。

 数年前に動かなかった脚を引き摺るか弱い小娘だったとしても……。

 目に映った振る舞いを見れば、華開いた事は間違いないのだから。

 今更に未練もない、関係のない事だろう。ただ、少しの感慨と懐かしさがあるだけだ。

 

「ちっ、あいつ等はうまくやっているか、簡単にくたばる連中じゃねぇがよ」

 過る苛立ちをぽつりとつぶやいて。

 

 ぴくっ

「―――!グルルルル、バうバウ!!」

【グラエナ種】【ハイエナの嗅覚】

 寛いでいた黒凛々の鬣犬が、いきなり立ち上がり吠えたくる。

 牙獣種が威嚇する、その意味は戦士であれば、容易に察せられるだろう。

 

【迎撃態勢:孤独】

 黒鎧が長剣を抜いて構える。どことなく感じる、生命の呼吸の感覚に向けて。

 その数舜後に……。

 

 黒い影が大地を割り飛び出してくる。

【ひっかきもぐら:人もどき】【乱れひっかき】【土中襲撃】(あなをほる)

【暗黒剣士】【ソードマスタリー】【生命感知】

 抜き打って大地から飛び出たそれを殴りつけて弾き飛ばす。

 奇襲に全霊を掛けて姿勢を崩した其れは、潰れたカエルの如く大地にへばり付いて。

 

【重装】【防具習熟】

ザがッ!

 すかさずに、その頚を踏み抜いて、鎧の重量にて圧し折った。

 きゅっと、潰れた気道の窄む様な高い音が、聞こえただろう。

 

「ふん、土竜(モグラ)の類か、でけえがそれだけだな。わかっちまえばなんともない」

「やるじゃん。でもまだおかわり来るよ」

「っち、へーへー群れ相手か、モグラ叩きと行くかね」

『黒蜘蛛の鎧』

 黒鎧は再度ガチャリと、長剣を構えた。

 マーロー・ディアスは重装の戦士である、その装甲を抜けぬ相手は脅威度が落ちるのである。

 既に旧友と立ち合って、直接過去の写しと交わった彼の勘はずいぶんと戻ってきている。

 

【魔法剣】【是空】

 襲い掛かる傍から、爪腕を振るう余地もない距離の踏み込みに、叩き落していくのである。

 鎧の重量が傾いて、重心と共に移動、剣技の先触れがそれと同一化する。

 その戦技の一端を、既にものにしつつある。

 

 暗黒剣の使い手たる感覚にて、タイミングでのみ剣で凪いで鎧の質量で叩き落とす。

 

 その裏で―――

 

【精霊術師:使役妖精】

 魔術師の少女は精霊術の使い魔にて、遠方を覗き込んでいた。

 少女は仮にも使役闘争士として、局地的な状況を見切るのは慣れている。

 

 碧姫は、水の飛沫を纏いてその不気味な構造物(オブジェクト)の放つ閃光を弾き飛ばして。

 単身ながら肉薄して、剛斧を叩き込んだ様子が見えるだろう。

 

 それは、準とはいえ最強の魔具とも評される"竜具"……。

 『聖錬』にて一般常識な"魔具幻想"に相応しい、煌びやかな異能たる光景である。

 しかし、その内実を知る故に、時に脆く崩れ去りうることを知っている。

 

 『石槌の杖』は反動を周囲に押し付けて、反作用にて飛翔したか首を垂れて。

 それは先に飛来してきた光景を思い起こさせる。

 このままでは再び墜落して天を摩す波の如く、その槌の如く頭にて大地砕ける、彼女が受け止められるともわからない。

 

「―――ダメ昴後ろに、"避けて"」

【比翼の鳥:感応】【四式六令】【サイキッカー】

 声を乗せる以心伝心、歪んだ脳の変形野に発現したサイキッカーと呼ばれる資質である。

 感応者としての血の繋がりはある。今なお碧姫に巡っている。

 

 それに伝わって、半強制的に身体を動かさせたのである。

 

「うまく、いった」

 魔術師の予想通り『石槌の杖』は再び墜落し鉄槌となり。

 碧姫は吹き飛ばされながらも、足場にせんとした水量にて大地の散弾を押し流したのが見えた。

 

 その後は、押し流した怒涛たる水刃を操り削り崩したのが決着となる。

 まずは一柱、討伐である。

 

 再びに空に色彩が描かれた、マナに透過される『紅衣の騎士団』の指揮のサインだった。

 分担して動かされているそれぞれが、統制されまた動き出した。

 その効果はすぐさま対応して、騎兵が土煙尾を巻き上げ、陣形がそれを示すだろう。

 その踏破力で、碧姫の露払いとして駆け巡る。

 

「一柱やった。移動するよ、着いてきてオジサン」

「ふん、さっきからなんだがおらぁおじさん呼ばわり年でもねぇぞ坊主」

 彼等も移動しようとする。

 己の半翼の背に眼が届く様に、その弱きを隠して強く振舞う背を支えると己が血の意味を捧げて―――

 一般には知られていない事であるが。

 碧姫を人を越えた『超人』と足らしめているのは、その"準竜具"と合いまった少女の血(感応能力)……である。

 

 雑多なモンスターを堰き止めるは両翼に分散した重・軽装歩兵、六十五騎。

 露払いに突破力に優れた騎兵、一二騎。

 そして突破力であり、戦姫に等しき者と評される碧姫が一騎である。

 

 

 

 順調にいけばこの平原を掃討し、襲撃の状況を五分に戻せるめどが見えてきた。

 しかし。

 

 

 

 その遠方にて……。

「ふはあはは、派手にやってるなぁ!!」

『カオティックPK』【AIDA】【勇気凛々】(ブレイブハート)

―――しかし、それに文字通りの横矢を射る存在があった。

 

「こんだけ多けりゃ狙う必要もねぇ!景気付けだ!!」

【AIDA】

 男は笑う笑う。

 この異変ですら己が活躍する為の舞台にしか思えない。

 その位に、黒泡に執りつかれた彼の頭は、その程度には茹っていた。

 

 調査に参加した冒険者の一人、魔具を盗み出し失踪した罠師の男だ。

 全能感に身を任せて、その形成されたマナに形取られた巨大な巨大な矢を形成してつがえて。

 引き絞る適当に狙いを付けて、撃ち放たれた。

 

『バウンサーグローブ』【滅却師】【神聖滅矢】

シュュァアア!

 果たして周囲のマナさえ吸着させて放たれたそれは、平原の一角を焼き飛ばして。

 複数のモンスターを吹き飛ばしたのである。 

 

 それを眺めて。

「くはっ、すげぇ!すげえぞこれが上級魔具使いの世界か!!」

 急速に満たされていく承認欲求、愉悦に表情を歪める。

 それは今までの一介の底辺冒険者であった"罠師の男"からは、考えられない破壊力である。

 例え、素面であっても何処か酔いしれていただろう。

 

【観察眼:無効化】

 罠師の男に悪意はない、ただその眼が濁っている。

 ましては今は頭が茹っている。体の負担も気にもかけずに、次の矢を番えて―――

 

 マナが集いまた巨大な矢が投影される。

 

 

 

 

―――なお、その前線では。

 

 

 

「ちっ、モンスターの進路が変わっちまった、何処の馬鹿だ!!」

「あの"英雄気取り"に誰か魔法でも何でもいいからぶち込め、鉄床が機能しなくなるぞ!」

 草原を駆け抜ける騎兵の一人が叫ぶ。

 速度に担保された騎兵は突破力は何処かで限界がくる。

 だから、休めるその呼吸を進路取りで、カバーしていたのを無節操な射撃でモンスターが散らばり崩してしまった。

 

 しかも、追い立てられた相手が昆虫系のモンスターである事を利用した追い込みに、挟み撃ち。

 鉄床の戦術にも影響が出始めていた。

 

「……っ!前に出張っていては全体の状況が見えません。いったん引いてタイミングを」

【重斧技:ギリウ・ランページ《水面斬り》】【怪力・(偽)】【超人】

 大斧の力技で、取り囲もうとするモンスターを薙ぎ払いながら状況を判断する。

 当然に、騎兵という供回りの動きが鈍った事で。

 現状の最大戦力たる碧姫の脚を鈍り、二本目の柱を折るのに時間をかけてしまった。

 これでは一端に仕切りなおす為に退かざるを得ない。

 

 下手に威力がある事が災いした。

 モンスターの頭数をただ減らすだけでは、この状況では有益にならないのである。

 

「高所だそんな余裕は、くそ届かない!」

「馬鹿者とはいえ市民だ、流石に善意の冒険者は殺すまでできん。まずは目の前の事に集中しろ!!」

 動揺する騎乗獣を宥めて……。

 しかし、更に状況を揺るがす新手が現れる。

 

―――ルルルル♪

【黄昏の守護者】【鋼帯の錨】【月衣】

 珪素で形成された黄金色に輝く器を輝かせて浮遊する。

、そうこの『碑文八相』の出現に必ず伴う滴り 新たなる波の現出する、拡散の先兵である。

 

「っち、こんな糞忙しい中で新手か!どっから顕れやがった、遅れたら死ぬぞ退けえええ!!」

「ローウェルさん、丘陵に退きます私の号令に併せて!」

 

【カリスマ!】【指揮官】【酔紛たる胡蝶】

 

【魔術兵】【旋律詠唱:七節】【魔術知識Lv3:トキシック・ブリーズ】

 事前の教練の通りぶちまけられた。

 水壁を凍らせて退路の障害物を作り出して、簡易的な足止めとして。

 

【円環魔術:犠牲詠唱】【四章魔法:メライローム】

 

 なお、その氷壁はその身を費やした雷撃の複数の上級魔法にて打ち砕かれた。

 特攻を持つ『腕輪の担い手』には容易に解体されたが

 犠牲詠唱により大精霊並みの出力を得たこれは、一般の兵士にとっては十分な脅威である。

 

 状況は回る。目まぐるしくそれぞれの奮闘と都合を回して……。

 

 

 

 

 




 戦争らー。
 『超人』は本編キャラからヤバいのしかいないので動かすとこうなる。
 (マサルダイモン・覚醒ハルちゃん・スパイダーマン・サイタマ・アンノウン)
 というか準竜具の範疇越えてる気がするので、感応者の血の相乗効果を想定してます。

 仮に比較した場合の『紅衣の騎士団』32将『ドラメラーズ』との戦力比(同数)。
 一当てで『騎士団』が壊滅するレベルで戦力差がある想定です。
 騎兵の維持費高い()と言ってる小国に、精鋭騎兵の群れが!これだけで死ぬ。
 ついでに、平地で地形の変更可能な土木部隊抱えているので、戦術レベルで不利が付く割と機能不全になる想定になります。


一応、想定している 都市国家の設定をば……。
『水の都 古都マク・アヌ』
地理情報:聖錬南部 パリス同盟の北東に存在する古き都市国家の一つ。
     地形としてはクラン川とベル川が交わる湖畔にある水上都市であり、
     必然的に水属性に比率が偏る。
     都市部分は割と古く、水上都市という地理関係上、
     土地が限られ石作りの増築を重ねている。
     その歪ながら歴史を重ねた古都としての造形と、
     水の風情から観光需要を生んでいる。
政治体系:代議員制、貴族の中から選出される有権者による多数決である。
     一部に水エルフと呼ばれる長命種による保守派と、
     純人種の革新派で分かれている。
     故に、権力の拮抗は図られるが、過半数という議決の関係上
     意思決定が遅い傾向がある。
     国宝として準竜具『ラピスハート』を有しており、
     突出した担い手先代である"逢魔八伐"の世代から
     (王国との戦争で再起不能となり引退)勇名を鳴らした。
     上層部(革新派)の一部は今代により正式な竜具への昇格を期待し望んでいる。
主な産業:観光産業、漁業、河川貿易の中継地、
     糸と水を編んで作られると謳い文句の繊維産業が有名。
     近年、一部に水を汚さぬマナによる蒸気技術の研究と導入が見られる。
軍事関係:『紅衣の騎士団』という兵団を所持している。
     規模にして大体一個大隊であり練度としては中の下と言われる。
     背後に湖を抱えてる関係上、防衛戦は不向き、
     近年団長の提言により、無理やり少数騎兵を抱えたという。
周辺関係:"パリス同盟"とは友好的であり、聖錬本国からは少し距離を置いている
     (水上都市の関係から独立気風が多少強い)。
     食料自給の為、周囲の村々からの協力が必須で、
     ある程度周辺に影響力を持っている。

 ちょっと急ごしらえなので、後々舞台になるとき変更があるかもです。
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