ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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接敵【増殖の世界樹】

―――『脈動する大豊の森』にて。

 

 その異変の森の周囲を『石槌』が辺りを監視する様に周回している。

 そんな敵地の目前である。

 

「―――えぇ事前の打ち合わせ通りここで陽動を、仮揃えに魔物を惹きつけます」

「はっ!」

【紅衣の騎士:団長】【指揮者】【カリスマ!】

 幾人かの騎士を切り離して、簡易的な野営地として彼等は陣形を組み上げてた。

 彼等の役割は、十分なバックアップだ。

 目的はとにかく精鋭が消耗なく、既に観測されたこの異変の"中心核"(コア)と推測される『大樹』を叩けばよいのだから。

 

 この世界の悪趣味な現象の、

―――ある種に行儀が良いならば、法則性に則るならばそれで収まるはずだ。

 

 鏑矢に。

 限界まで振絞られた幾多の弦が孤高の響き音を鳴らす。

 

「弓手っ、タイミングを併せっ」

「………放てええ!!」

【紅衣の騎士団】【正規兵】【一意専心】

 呼吸にして胆力を練り上げる、煌めく幾筋の矢の流星が、空を斬り裂いて蟲畜生を撃墜した。

 それは無名なれど、積み上げた専心たる一矢である。

 それを鏑矢として、鍛錬を重ねた弓兵の群れが続く様に矢の雨を撃ち放つ。

 

 対して。

 もちろん、増殖の侵略者もそのちょっかいに森の全体が反応する。

 それが今この異形に満ちた森の機能だった。まるで抗体の如く一つの生命体めいて。

 

【【【蟲の騒めき】】】

 黒点が一斉に飛び立つ。

 耳をつんざく、警音しがたき、歯や翅を擦り断てる異形の騒めき。

 森全体が騒ぎ立てて、木々の枝枝に留まっていた蟲畜生が一斉に飛び立って。空の色を下品な黒に染めていく。

 

 その数は数百は優に超えるか、生理的嫌悪感を掻き立てるそれに澄み渡る空が汚される。 

 

【碑文八相:増殖】【新緑の閃光】【天に等しき者】

キュ、ウウウウウン。

 伴ってその石槌は姿勢を制御し、幾何学文様を展開、その幾多の光たる偏向場を向けて。

 陽の中にあってもなお輝く閃光が煌めく。

 哨戒に廻る幾柱の周囲の輝きを収奪し、集積した光線として砲撃戦に撃ち放つのである。

 その物理的な現象、人類が到達しえない速度に担保された必中の閃光であるだろう。

 

「うおおおお!?大丈夫なんだよなこの結界術式、真面に喰らえば鎧も溶けるんだぞ!!!」

「昴様と再現した術師隊を信じろ!今更どうこう言っても結果は変わらん!ダメなら蒸発できるだけいっそ気が楽だろ!」

「そりゃそうだけどよ!」

 その圧倒的な光景を見た騎士団全体に動揺が走る。

 数という単純な威容、群れる蟲畜生という本能に根差す生理的嫌悪感、対処不能の理不尽。

 それらはたとえ良く訓練された兵士であろうと、動揺は拡がる伝播する。

 彼等とて人の子だ、恐怖をまるで行き過ぎて踏み越えられるのは一部の突き抜けた例外(修羅)である。

 

ドォン!!

 斧が大地に突き立てられた音が響き注目を集める

 だからこそ、まやかしであろうと輝かしき者が象徴が先導する者が必要なのだ。

「すぅ」

【戦姫に近しき者】【指揮者】【我が身は民の為に】

 改めて碧姫は大きく息を吸う。

 肺腑の全てを吐き出す。水を打ち鳴らす如く鶴の一声が響き渡る。

 

「―――臆してはなりません!我らが背には力なき民がいる事を胸に踏みとどまりなさい!」

バチィ!!

『ラピスハート:準竜具』【陰陽術】【酔紛たる胡蝶】

 ある境界を弾けて解けて彼等の周囲に満ちる霧が迫る光が拡散し、色彩に変わって七色の虹に変わる。

 

 ただし外部要因に干渉されやすいのも、本質が波長である物理的光の特性である。

 

 この世界に蔓延るマナは、物理法則にさえ干渉する。不可解な現象を引き起こすのだ。

 

「今ここに旗の下に正義はあり!!たとえ斃れようと背後に残るもの全てに威容を示し、立ち続けて証明としましょう!!」

「「「―――うおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 戦姫に近しいと噂される少女は、その着飾った立場を。

 人々が求める"輝かしき私"を演じ続けて、色彩を操って精神高揚の鼓舞とする。

 その声呼応して騎士たちは一斉に獲物を引き抜いて、迫りくる大群に向ける。

 彼等は正規兵である。

 事前に情報と準備さえ整っていれば、結界によって有利な陣容を構築することは容易い。

 

 激しい交戦、迎撃に、積み上げた矢が放たれる。砲撃戦の様相を呈して、互いの戦力を削っていった。

 殺到する蟲畜生と、鉄の塊の穂先に弾きならして血飛沫に大地を汚すだろう。

 

【衝撃の杖】【増殖の波動】

 その傍に石槌の杖が、首を傾けて。

 それを察知した現場指揮官が声を上げた。

 

「石槌の墜落の兆候を確認!」

「弓兵っ、最優先で対処せよ!各隊散開のち、速やかに陣形を戻せ数に圧殺される!」

「あぁクソ何でもいいがバラけて蟲の餌だけは嫌だぞ!!」

【部隊指揮】【正義執行】

 大気に減衰される、閃光が効果的ではないと判断したのか。

 森を衛星の様に周回する一部の石槌が。その首を向けて質量弾として墜落せんとしていた。

 

 直撃すれば町の一角をも摺り飛ばす重力撃だった。

 

 

「――― 一意専心、我が意は筒ら星が如く、星霜を貫き陽さえ届かせん ―――」

【我が血肉は弓である】【流派・弓我日景】【旋律宣誓:(ギアス)明鏡止水】

 そして、この場で一の腕を誇る精鋭射手が、弓を振り絞り切っ先を向ける。

 それは紡がれる流派に受け継がれる"宣誓"(ギアス)目標()は見えているその軌道は二度も目にしたのだ。

【夢幻羅道】

ガ ゴ ン!!

 それを迎え撃ち、放物線を描く矢の流れ星。ガラスの割れ、貫きく徹す異様な破砕音。

 例え息継ぎなしの三連射であろうと、彼等の領域にとって外す道理はない。

 

 それをなすのは純粋な武威(カラテ)である。

 力場の崩壊による空力特性の喪失、引き裂いて軌道が見当違いな場所へと落下させた。

 

「……良く中てましたっ、"銀漢"本隊指揮を引き継ぎ、"ローウェル"は騎兵を率いて後詰めをアレを完全に無力化します!!」

「はっ!」

【紅衣の騎士団:部隊長】【正道愚直】【正義執行】

 墜ち行く槌に大地蹴り砕いて追撃、フィジカル任せに空に舞い上がる一つの影。

 反撃のその先頭を水祁を纏った大斧の姫が行くのである。

 最高戦力であり指揮官でもある歪みから、騎兵隊を供回りに墜落時点に駆けだしたのだ。

 

 踏み込みに、派手に砂ぼこりが舞う。

【超人】【水の練気】【竜具の器:俊足】

 その姫は元より不具である。地を踏みしめたのも最近の事、故に歩法には習熟していない。

 故に、力任せ、戦士としての全ては力任せのままに。

 砕かれ軌道を曲げて落下しつつあるそれに迫り。

 

「唸りなさい『水都斯魂櫛』ッ」

―――ドォォォオオオオン!!

【水都斯魂櫛】(ミトノミタマ)【重斧技:水車】(ガンズ・パニッシュ)【超人:怪力・偽】

 宙で回転し、水気を纏った大斧を地に叩き付ける。

 偽物とはいえ、超人と評される身体能力は大地を砕きて、粉塵と間欠泉の如く飛沫が吹きあがる。

 

【碑文八相:端末】【プロテクト】【超頑強】

 石槌の一部は砕けた。なお、その機能に斥力に抑えつけ碧の姫を吹き飛ばす。

 

「っく、相変わらず硬い上に数が」

【滝壺の構え】【半身不随】【竜具の器】

 戦士として完成しえない青の姫はそれを流せない。武具の重さに振り回されながらもやはり力任せに。

 力み、巡る水の力脈のまま踏み出し爆発的な追撃を掛ける。

 

 全ての槌が墜落したわけではない。その頭上を、光が降り注ぎ。

【適応進化思考】【新緑の閃光】

 森を中心に衛星に廻る石槌は、役割分担に閃光をさざれ雨の如く、突き刺しにかかる。

 半分巡る水脈を注いで色彩が分解し、騎兵の供回りがモンスターの相手をしながら、撹乱を成す。

 

 正規兵とはいえ、リソースには限りがある。いつまでも持ちこたえられる訳はない。

 故に、成否は別の所に、中心核の攻略に掛かっている。

 

 

 

 

一方その頃。

 

 森の深くに踏み入れる一党の視点である。

 選抜された攻略班の事。

 

 鬱蒼と茂る森の中を、息を潜めて歩みを進める十名少しの一団があった。

「よし、始まったな」

「紅衣の騎士団が引き寄せてくれてるうちに急ぎましょう」

『環境適応装備』【秩序の騎士団】【特殊軽装猟兵】

 特殊な軽装備の鎧を纏った一団が動き出す。

 数は十程、彼等は無名なれど、『アーカルム』の地の外周部を間引きする精鋭である。

 

【フィールドワーカー】・【アーカルム踏破者】

 木々の根が複雑に絡まった悪整地を、彼等は先導に寄り、物ともせずに進んでいく。

 事前の調査によるマッピングと、未知に踏破する経験者が先導による生態系を蹴散らしての文字通りの露払いである。

 

 本物の『隔離領域』(ボックス・ヘル)であれば……

 『隔離障壁』という破壊困難な隔たりによって開ける孔の大きさ、投入できる戦力は限られるはずだった。

 

 しかし、この森にはそれがない、それ故に全方位に無造作に氾濫する難点もあるが……。

 この有事に対して全戦力を、数の暴力をもって持って対処が可能である。

 

 だからこそ、この派手な軍隊を用いた陽動が通用する。

 

―――【碑文八相:増殖】(メイガス)】【世界樹の方程式】

 

 そこに人型の蟲畜生が群れを成して襲い掛かる。

 特に目立つはその行動、拙いながらも感染したデザインに影響されて技巧を凝らして、侵入者を捕食しようと迫りくるだろう。

 

「っ、また見つかった。北西に"人モドキ"の一群、数は十とちょっと!!」

【苛烈なる萌芽】【世界樹の方程式】【円環の蛇:人の因子(ヒューマンデザイン)

 傾向としての、"人モドキ"という意図された感染種―――。

 それと並行して環境ホルモンによる繁殖活動の加速、伴う交雑によって生まれた混血種の方向性(デザイン)を導かれている。

 

 

「げーまたかよ!さっき一団を蹴散らしたばかりだろ!しつこいっての!!」

「慌てるな事前調査では報告がなかったがここはそういう場所でそういう機能があるのだろう。隠れて進むは無意味のようだ駆け抜けるぞ!」

【野狩人Lv3/5】【狩人の心得:生命感知】

 襲い掛かるそれらに大した知性はない。神経節による反射行動である。

 拙い真似事でしかなくそれでもその顎に、その大鎌に、その尾針に技巧の陰りを込めて襲い掛かるのだ。

 

【ハイランダー】

 しかし先掛けて、その先陣を合間を閃く小さな影があった。

 

「ふむ」

バリィ!!

 すれ違いざまに両断される。

「これが報告にあった"人モドキ"というやつか確かに人の真似事が見えるな」

【ソードマスタリー】【紫電増幅:Lv1】【魔法剣Lv2/5:覇旋雷閃】 

 その鬱屈した森の暗闇と空気を。

 切裂く様に一陣の風、紫電の奔りが供に先陣を駆け抜ける。

 風を斬り裂く加速感。それは、目に留まらぬという程の速度ではない。

 しかし確かに重く無駄なく、その剣は一秒一秒を斬り裂いて、血祭りにあげていくのだ。

 

「だがしかし!少しの技巧で個はただ無力と学べぬ付け焼刃、それでは届かん!!」

ビュンッ!!

 引き締まった小柄な肉体が脈動し一刀が閃き、連鎖するたび複数のモンスターを解体する。

 彼女は先陣を切る者(ハイランダー)、誰にも届かせない、常に戦端を斬り穿つ者の字名である。

 高速戦闘を旨にする戦士称号、速度の乗り手、軌道操作及び速度操作の技能を取得している。

 

ズドォン!!

 その背後から援護射撃が響く。

「うっひょー相変わらずモニカの嬢ちゃんはえーかっけぇ!」

【秩序の騎士団:特殊猟兵団】・【インタラプト】

 感嘆の声を上げるはフォレストレンジャー、構えるのは、クロスボウ次弾を装填しながら。

 

「おっと大物だな、援護するぜぇ!」

『火薬式クロスボウ』【フォレストレンジャー】【ホロウショット】

 響く射撃音に邪魔にならぬよう足を留める。少しばかり高速機動にぶれていたその姿が定まった。

 轟いた先に、大物の首を四肢を寸分たがわずに射抜き、姿勢を崩して。

 併せる様に、大きな提督帽にマントを羽織った小柄な戦乙女が、タイミングを居合わせてテンポを変えて踏み出した。

 

蠢動加速、俊雷の如く。

【ソードマスタリー】【魔法剣】【阿修羅姫】

 通りすがりに姿勢を崩した、巨大な牙を持った蜻蛉が両断される。

 彼等は交戦は最低限に、駆け抜け続けている。狙いは一つ、この拡大し続ける森の中心核に外ならない。

 故に彼等は、陽動の効いているうちにほぼ駆け抜けると言っていい速度で、森を進んでいった。

 

「お嬢と呼ぶなウェルダー、これでも貴公より二回り年上なのだぞ!」

「おっとすまねえ!なんかつい癖でよ!」

 その後もクロスボウの矢が駆け抜ける者(ハイランダー)の死角を狙って、多数を叩き落す。

 援護射撃にバランスの崩れた所をすかさず、その澄み切った空の如く刃が四肢を刈り取っていく。

 彼等は一つの所に留まれず、小走りでモンスターを蹴散らしながら進む。

 

 背に闘炎の少女を背負いながら、青の少年は追いついて、その最中に会話を交わす。

 

「モニカさん、無遠慮に前に出過ぎです!」

「なぁに、立場に気にする必要はないぞ。私の事はただの鉄砲玉として扱えといっただろう」

「そういう問題じゃなくて、ここは貴方が責任者(リーダー)でしょう!」

 弾丸の様な振る舞いをする彼女を諫める様な苦言の言葉。

 彼女は『聖錬32将』という立場を無視して、自身の適性のまま切り込み隊長として振舞っていた。

 不測の事態は避けられぬだから、指揮官が真っ先に突撃していくのは歓迎できないだろう。

 

「貴公は心配性だな。この程度でどうにかなるほど腕はにぶってはいない」

「まったくもう」

【秩序の剣】【阿修羅姫】

 しかし、その苦言に対して、そう言って笑って憚らない。

 その戦乙女の気風は根っからの勇気ある者であり、困難は力を合わせ乗り越える。

 そのための全霊を尽くすのが自然の事だと、王者の気風に威風堂々に構えるのである。

 

ぴっく。

 

「っ、前方から大物がくる!気を付けてください」

「心得た!進路反転、各々に対処せよ!!」

【御業の継承:ホークアイ】【アーカルム踏破者】【狩人の心得:生命感知】

 青の少年が、反応を森属性由来の環境に対する生命感知を交えていち早く察知して声を上げた。

どぉん!

 その言葉の通りに遠くから大破壊、樹木がひしゃぎあげ。

 節足に蹴散らされ、樹木が弾かれて散弾となり襲い掛かる。

 

 

―――ギググググッ!!

【王蟲】(オーム)【万象踏破】【大地の怒り】

 質量自体が軋む鈍き音、それは障害物である樹木を容易く粉砕し破って現れた。

 人が鍛え上げた大概の鋼を凌駕する、装甲を身に纏った装甲蟲である。

 幾多に輝く深紅の瞳、その全長は二十mは優に超えて居ようか、突撃の化身、ド級の質量万象を踏み潰す脅威だった。

 

【王に等しき者】

 とある翡翠の天使に撃滅された生態系の埋め合わせに、小型の蟲畜生が幅を利かせているが。

 元々その地に生態系の王として君臨していた大型種の、その全てが全滅したわけではない。

 これは大地を悉くを踏み潰す、王に等しき者、地の覇者である。 

 

「とにかく勢いを殺さないと」 

『精霊巫器:ティアマト・ボルト』【偉大なる加護(マグナ・ブレス)】【嵐竜方陣】=【精霊術Lv4】(・・・・・・・・・)

 青の少年グランが、その銃口を向けて祈りの弾丸を込める。

 リィンと鈴なるような声、それに宿るはかつて交戦し気にいられた、風の大精霊の分け身である。

 突如に翡翠色の大風が吹き荒れて正面からぶつかり合い、突撃する大甲虫の勢いを真っ向から削ぎ落した。

 

 『精霊術』とはそもそも、精霊の力を借りマナによる行使させる他力に寄った技術体系である。

 大精霊規模の発生は大自然に寄る、本来に人の身にて対峙する事は無謀とされるだろう。

 もし、仮に素の精神力で従える者がいるとすれば、それは決定的に人に似た何か可能性が高い。

 

 しかし、ここに"裏技"がある。

 大自然の化身でありながら人を形どった故に、言葉を交わし得る"精人"の存在である。

 言葉に通じれば、共感も出来る。個人的に気に入られれば大自然の化身すら従える事も可能だ。

 青の少年が握るこの『精霊巫器』は、ティアマトという荒ぶる嵐竜を鎮め、下賜された者である。

 

 故に、例えば若葉の双剣士の握る小さな器だけある『絆の双刃』とは"格"の違う。

 むしろ、これこそが偉大なる者の加護。本来これこそが『巫器』といえる。

 

 多少の才あれど否、才があるからこそ意志を侵食する、若葉の双剣士には決して辿り着く事のない。

 『精霊術』が究極、『深奥』にいたる為の"初歩"である。

 

 しかし、暴風を受けながらその壁の如く巨体は鈍く唸り声をあげて迫りくる。

 

「いい風だ借りるぞ!」

だっ!

【魔法剣Lv2:雷俊閃】【白翼の風:スカイコマンド】【阿修羅姫】

 巨体に引き潰さんとされた小柄な戦乙女が立ち上る風に舞い上がり、突進の勢いを飛び越えて躱す。

 宙返り、回避、居合抜刀(カウンター)

 その背に単純な弾ける雷の魔法剣を振るうが、それは容易に弾かれた。

 

「うおおおおお!まじかよあの竜巻が足止めにしかなんねぇ!!」

「まだ小型な方だがこれは "王蟲"(オーム)か、私の刃では容易に装甲が抜けん相性が悪い相手だな」

 徒党は侵攻を方向を変え、駆け抜ける速度を引き上げて。

 しかし巨体の速度差から、徐々に距離を詰められる。

 その突進は、"大地の怒り"と評される万物を粉砕しながら呑み込む津波である。

 

「投げてグラン、これは私が、如何にかする」

「何とかできるならお願い"コロナ"!」

 そう、"コロナ"と呼ばれた小柄白髪の少女が呟いた。

 鈍足故に青の少年の背後に背負われて移動していた闘炎の少女だ。

 

 後押しを受け、宙に舞う、自身の兵器としての機能を回帰して。

 

 彼女もまた人の胚にて鍛えられた再誕した、偉大なる者(マグナ)である。

 深紅に熱を灯して質量が増す、放り投げられたボールがその質量を増すなど不合理な現象だろう。

 しかしマナという無地に満ちた事世界では、起こりうる事である。

 

【超重炎刀】【武装化】(アームド)【隕鉄の化身:重力倍加】・【生命活性:レイジⅢ】

 

 ゴスロリをひらひらと、白髪を靡かせて優雅に。

「ただ字名(アザナ)のままに―――我が心拍は、星の熱を」

【旋律詠唱:自己回帰】

 それは自己暗示による詠唱、謳う。炎に顕れるのは小柄な巨大な刀、具現化する。

 そのまま体現する疑似質量、現れるかつての彼女の殻の一欠片、外部機関にて稼働する兵器としての闘炎の神秘。

 

「我狂骨似て刃を鍛えん、ここに炎熱地獄を越えここに顕現せよ―――!」

【超々頑強】【王蟲の甲殻】【王に等しき者】

【陰陽・炎熱機関】(プロミネンスリアクター)【炎熱地獄を越えて】【フォースグラウンド】

 燃え滾る刃、形容しがたき甲高い硬質破音が森を響き渡る。

 空中落下、空から振り下ろされる大刀、炸裂する闘炎は周囲を砕き、衝撃に大地を砕けまるでクレーターとなる。

 落下と慣性を伴った単純な質量と、質量のぶつかり合いである。

 

 暴威にその王蟲は、飢餓であっても力尽きるまで決して進路を変える事のないはずの進撃は。

 そして目標と制御を喪い、強引に曲げられ木々へし砕き、埋もれたのである。

 

「いよっし!あの糞硬い殻に罅が入った。借りるぜぇ!」

「対属性災害対策用の鐵鋼榴弾準備、叩き込め!」

『火薬式フレシェット弾』【秩序の騎士団】【火薬知識】

 それを見届け瞬時に判断、緑の少年と兵士は発射台に固定されたミサイル如く携帯装備をぶっ放した。

 これは、持ち込んだ対属性災害用の特殊な榴弾である。

 この世界に一つ、属性災害に対する方法論として一つ確かに確立しているのが火薬だった。

 科学的な爆発はマナを吹き散らす、それを手軽に起こせるのが火薬や爆薬なのだ。

 

ズゥン……!

 突き刺さる。

 想定した用途は違うが、硬い甲殻故に衝撃を逃さずに、音を閉じ込めて炸裂し。

 

「とにかく引くぞ、少なくとも追ってこれまい。アレを抜くのは手間だ。真っ当にやり合う道理はない」

「わかった」

 その成果を見届けることもなく。

 小柄な戦乙女、モニカは空の如く澄み切ったサーベルを鞘に収める。

 その大装甲蟲の遺骸を放置してまた森の中心核への進度を探って、彼等は駆け抜けていく。

 

「うおおおおお!相変わらずコロナは武器を溶かしたばっかだと重い!!」

「……!、むー!むー!」

 なお、抱え直した闘炎の少女の見た目にそぐわぬ重さに悲鳴を上げて。

 それを不服と抗議を示す様にぽかぽかと背から叩く様子が見られたが、些細な事だろう。

 少女は己色の炎を媒体に疑似質量を宿していた。炎は熱はすぐには引きはしない。

 故に、余熱の様に重さが残ってしまっているのである。

 

 それはともかく、走って走って。

 彼等はいく、森を奥底へと大反乱の中心核へと一目散に。

ザ………ザザザッ

 しかし。

 周囲の空間がみだれる。

 

「おい、グランどうやら急ぐ必要はなくなったみたいだ」

【野狩人Lv3】【フォレストレジャー】【虫の知らせ】

 マントを振り回しながら、緑の少年の声がして、空を指さした。

 

「大ボスから来てくれたようだぜ」

【碑文八相:増殖】【仮想巨体】【飛翔】

 そこにあったのは、蛇の如く尾を靡かせた影、巨大な仮想の巨体だった。

 其れでありながら、環境を制圧した事で馴染んだ故に接近に気が付かなかった。

 浮かぶのは幾多の文様を描いた葉の群れ(リーフ)と『黄金の双胴』を従えた、虚無の仮面を纏いし大蛇である。

 

―――ザ………ザザッザザザザ………

 

『―――侵入者、第三ラインの突破を確認』

『観測進路通リ、接触。進行速度カラ、隔離領域に対する特化戦力ト推定』

【超絶魔力】【領域作成:禍々シキ波】【天に等しき者】

 途端に存在感を増す、不快感、五感に騒めくノイズ。

 大蛇を取り巻く紋章と呼応する様に、大地から湧き上がってくる疑似粒子の奔流が惑わる。

 息苦しい、五感にそもそも身体に干渉する異音の嵐である。

 

『観測対象、担い手及ビ反存在ヲ未確認。ナラバ試練二能ワズ、速ヤカナ排除ヲ実行スル』

【苛烈なる萌芽】【権能:高次たる視覚】

 それは浸食した大地全てを観測する、端末を通した視野にてその侵入者を追跡していた。

 単独にて環境を制圧、法定する程の存在、間違えなく報告にあった魔王級の存在である。

 

「っち、環境に存在を隠蔽したか!総員退避っ!」

 開幕、蝕の如く空の輝きが収奪される。

 明らかな攻勢の予兆、既に歴戦の戦士たる彼等は速やかに散開、離脱をなして。

 

『消シ去サルベシ』(デリート)

【新緑の雫腕】【新緑の閃光:コロナエプリクス】【世界樹の方定式】

 薙ぎ払うように。

 そして、森を斬り裂く様にその光槌刃は振り回された。

 網の様に大地を焼き、両断、破砕、炎上。

 

 異形の森の一角が豆腐の如く焼き斬られる。

 本体であり、葉の端末(リーフ)の多いその出力は、今外で活動する"石槌の杖"の末の比ではない。

 

 能面の仮面に眼下を見渡して。

「無駄遣いするなよ!第一射、放てえええええ!!」

『火薬式フレシェット弾』【秩序の騎士団:特殊猟兵】【制圧射撃】

―――小人の、確かな反撃を観測した。

 炸裂する、そしてばらまかれる宙に舞う粉塵輝く、金属粉の粒子である。

 

「バーかッ!それは対策済みだっつうの!」

「援護を絶やすな。継続的に打ち込め!!」

 先の光線に報告があった。故に対策をする。

 無能でなければ当たり前の事、勝ち誇ったように緑の少年が言い放ったのである。

 それは光の集積を妨害する単純なチャフである。閉鎖空間ではない空中に維持するのは至難だろう。

 

「こういうのはリーシャの方が得意なのだがな……っ!秩序に受け継がれし白翼の風よ!!」

「ティアマット!力を借りるよ!!」

『スカイエース:A級魔道具』【白翼の風】【風の担い手】

『ティアマトボルト:精霊巫器』【継承の御業】【嵐竜方陣】

 そこに宙に躍り出た卓越した風使いがいなければだが、風による力業に寄り無理やりと捉える。

 片や、象徴たる鏡面のように磨きぬかれた刀身、澄み渡る蒼空の如き輝きの魔剣に風を手繰り寄せ。

 片や下賜された巫器に感応して力を借り受ける。

 

『――――――……』

【円環魔術】【適応進化思考】【常世裂き咲く花】

 収奪する光は、チャフに乱反射する。

 風使いを相手にするというのに電脳に嫌なデジャブをよぎらせながら、無機質にそれに対処せんとする。

 

 従える黄金の双胴を、直掩機として効率よく動かすよう。

 碑文八相たる電脳が稼働して、その妨害を無効化せんとして演算を―――

 

「容赦はしない!!」

【ハイランダー】【電磁抜剣術】【スカイコマンド】・【援護射撃:ホロウショット】

 しかし畳み掛ける様に、小さな戦乙女は宙でありながら、確かに踏む痕で抜刀術に切り掛かる。

 確かに、落雷の如く。

 

【新緑の雫腕】【増殖の波動】【飛翔】・【黄昏の守護者】【黄金推】

 その力場を纏った両腕を振るい落雷の抜刀を弾き飛ばす。

 からめとらんと『黄金の円環』が錐を放つ。

 数には数で対処できるのが、増殖が増殖たる機能である、なお、それは空に踏み込みで潜り抜けられた。

 

『突起戦力ト推定、英雄ノ類カ』

 難敵である。排除の優先度を上げる。

 先駆ける者が稼いだ時間に、空中戦の可能な魔具を纏った特殊猟兵も空へと上がってくのを観測した。

 ここに正規兵である事の装備の質の良さが現れるだろう。

 その号令と共に幾多幾多もの浮き上がる浮き上がる、地に伏せられていた葉の端末(リーフ)

 

『決議ヲ、増殖タル全機能ヲモッテ排除スル』

【衝撃の杖】【常世裂き咲く花:応龍の疵跡(トラウマ)

 歪な腕に握られる、外で猛威を振るう『杖の石槌』そのまま握りしめ武器とした。

 本来、こういった形での武装化は想定されてない事である。長柄の利など原始的と蔑んだだろう。

 しかし、植え付けられた自己柄の執着から、こう言った機能拡張に戸惑わないのが今の『増殖』である。

 

 森での戦いは激しさを増してそう続くのであった。

 




精霊の庭などで、精霊使いの諸々が設定されていく中で
こちらだけの設定として、以前からちょくちょく勝手に記載しててそう言えば、説明なかったなと今更掲示。

【精霊巫器】について。
 精霊術の媒体・補助具となる魔道具の呼称・分類の一つ。
 原始的故に、古くから存在し装飾や塗布や意味ある文字(ルーンなど)が研究された。
 本来、宿る精霊の生きていた素材(霊木)で作るのが適しており、武具に向く金属で作り出すのは職人の腕が試されるだろう。
 『魔具』が普及した現在にあっては廃れつつあり、属性・環境によって左右される為、地域での方法論の差が大きい。
 優れた巫器の条件としては
・その強度はもちろん、マナ浸透率・伝導率(巫器の容量に繋がる)。
・肉体を持たない精霊を保護する殻としての機能
(適さぬ環境でも力を発揮させる縁、精霊に単純に住み心地の良い住居として)
・武具であれば強度はもちろん、内と外を区別する祝福の有無。
 (交信(トランス)状態での同化の抑止・結界術の媒体としての適性・宿った属性現象に干渉する強度)
・強力な祝福の場合、別属性を斬りつけたら拒絶反応起こして殺傷力が高まる。
 または浸食反応を起こす。精霊巫器と契約している精霊の中には、優れた戦士と契約し疑似的咀嚼・消化器官(生贄)として己の位階を上げる目論見もいる。
 なお、そう言うやつは契約者ごと討伐されやすい。
 人の味(生命力)を覚えてるの多いからやめられない、止まらない。
 交信状態(トランス)で契約者を唆す事もある。
・弱点は竜闘気、強固な殻でなければ生体磁気でお釈迦になる可能性が高い。
 というか並の素材だと物理的に溶ける、やめてください死んでしまいます。
・これは例外的になるが無色であるほど純粋に貴重で、多分四属性の大精霊をバラバラで宿せる『カスタムソード』は最高級な想定です。
 (ミスリル&オリハルコンな高級品ではなく、一般品は霊木やその装飾に宝石などの生きてる素材や属性金属で鍛える想定、だからその属性に近い者しか宿せない)

・『ソウルメタル』(金属のように振舞う精霊)を鍛えた武具は、精霊自体を加工するようなものなので、
 おそらく別カテゴリー、別系統の技術が必要となると想定しています。

 せっかくなのでグラブル的に考えて。
・大精霊からの下賜品である偉大なる加護がある
 大精霊の分け身を宿した『ティアマトボルトマグナ』が完凸SSRだとすれば。
・2級品を鍛え素材も2級品が現状の『絆の双刃』がSR相当である。
 ただし、使い手と同属性で更にリコリス(同属性)が宿ってる異常仕様なので。
 この双剣ほぼ感覚器の延長になっている。
・なお『カスタムソード』は完凸石油武器だと思われる。

 なお、『精霊の庭』などの設定が追いきれてないので呼び方の一つだと考えていただければ…。間違えてても多用しすぎて差し替えるのがめんどry
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