ポンコツ世界異聞=【終幕を切り刻む者達《ハッカーズ》】   作:きちきちきち

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その頃【増殖の世界樹】

―――郊外、異変の森から離れた谷間。

 

 空は晴れ渡り、憂いも一つもないような空色である。

 反面に空気は土臭く漂うマナも騒がしい。

 

 魔物の大反乱により、人の気配が全く失われたこの場所にボクはいた。

 『紅衣の騎士団』の補助団員として言い渡された命令、報告に上がった在野の懸念事項―――

 調査を行った冒険者徒党に接触した"ヘルバ"と名乗る不審者、その接触監視に沿って。

 

「ふぅ……」

 目の前に進む冒険者を眺めて、ため息をついた。

 とりあえずの蚊帳の外扱いである。

 仮にも『紅衣の騎士団』に所属する身が、この緊急時にこんなことを言えば、ほぼコネで所属し役割の騎乗獣の世話ばかり、周囲に馴染もうとしない変人の厄介払いかもしれない。

 

 少なくとも、己の"感応体質"の有用性は、対象である"昴"が知っている。

 それでもこう役回りが来たのは、また彼女が危険から遠ざけようとしたのだろうと憂鬱に考える。

 

 そんな都合はさておいて、今はやることをやらねばならない。

 

「案内して、"ぽち"」

『バウッ!』

【使役闘争士】(トレーナー)・【ハイエナの嗅覚】

 付き従う使役獣、幼い頃に出会ったパートナーに指示を飛ばして。

 いつも通りに応える。つややかな黒毛、白毛のアクセントを湛えた犬の如く獣が先導していった。

 

(……大丈夫、"ぽち"もみんなもいる)

【男装少女】【ペルソナセット】

 ふと不安になり髪に触れて確認する。

 いつも通りの男装の出来を、襟元を嗅いで薬草で匂いを誤魔化しに安心する。

 知らぬ冒険者の徒党である。

 女は弱いと決めつけ、そしてなにも持ち合わせてなくとも奪われる(けがされる)事もあるだろう。

 

 それを泥に生まれた経験、『スラム育ち』の経験からよく知っている。

 塵芥でもその血に価値があるらしい、と下品な笑みであの糞が言っていたからなおさらに。

 血の繋がった糞野郎をいつも通り汚される中、自身の体質に縊り殺したのが自身の放浪の始まりであるのだから。

 

 

「これで不意の遭遇は避けられる、と思う」

「ふむ、助かる。牙獣種の"グラエナ"か使役闘争士(トレーナー)の手持ちとしてはよく見る魔物だな」

 長い金髪、金木犀の如く雰囲気を纏った槍使いがその後ろに続く。

 名目上、監視を命じられた冒険者の徒党(パーティ)は嗅覚頼りの道案内に、接敵をできる限り避けて続いていった。

 

 未だ半信半疑である"ヘルバ"と呼ばれた接触者、その戯言を考えれば。

 

(あいつらは、少なくとも嘘言ってなかった、昴の役に立つきっと成果はある)

【サイキッカー】

 愛杖を抱えて歩く歩く。

 ゴミ貯めに育った経験も併せ目を合わせれば大体、相手が嘘をついているか位は判断できる。

 

(こんな所で誰が死のうが誰が傷つこうが、ほんとどうでもいいけど)

 危険から遠ざけられたと察しつつその接触者が何であろうとも、己の愛しい人の憂いを少しは払えるかもしれない。 

 そう考えて集団行動に向いていない。人見知りを押して監視の役割についてきたのである。

 

 俯きながら、気合を入れつつもそれはそれとして。

 

(―――吐きそう)

【この糞みたいな世界】【自己中心・逃避】

 心の中でつぶやく、その心は全方位を警戒して逆立っている。

 それは恐怖ではなく、愛を得ても拭いきれぬ、取り巻く世界に対する嫌悪である。

 

 そんな泥の内心など冒険者は露と知らず、遠慮なくに話しかけてくる。

 

「"ぽち"ってあの鬚犬の事?歩き方からこっちを気遣ってくれてるのかな。賢いんだね」

「……当然、ボクの友達(パートナー)だもの」

【男装少■】【ぼくっ子】

 気軽に話しかけてきたのは文様を塗布した軽装皮鎧に、双剣を帯刀した同世代だろう少年だった。

 最初に挨拶を拒絶したのも気にせずに、ただの世間話のように。

 たいして、よせばいいのにパートナーを褒められたからか、つい応えてしまうってからハッとする。

 

『―――ばう?』

【統率獣】

 それに自分の話だと察したのか、その鬚犬は振り返って尻尾を振るい立ててこちらに寄ってきた。

 もともと社会性の強いグラエナ種は、人間の話をなんとなく察せ得る。

 

 一度、距離を詰めてから拒絶するのは、より悪印象だろう。

 もういいやと。最低限は流しながら会話する。

 

「ねぇ、ねぇ!触ってもいい?」

「別に、ぽちがいいなら勝手にすれば?」

 続いて白耳帽子の魔術師、ミストラルと名乗った女が興奮しながら聞いてきた。

 嫌がらない限り特段静止する理由もない、気だるげに傍観する。

「気持ちはわかるけど、手の甲で自分の匂いで嗅がせてから、それが大体の鼻がいい奴の挨拶だから無遠慮だとびっくりして嚙まれるよ」

「わかったー!ありがとーね」

【理性蒸発】【無縫の妖精】

 白耳帽子の魔術師が、無邪気に手を伸ばす。

 たいして双剣士は多少扱いが分かるらしい。家畜でも世話していたのだろうか、そういう田舎上がりの冒険者は珍しくない。

 

 そして鬚犬は鼻先を近づいて、差し出された小さな手の甲をふんすと嗅いだ。

 それで悪意がないと分かったか耳と尻尾を落ち着けて。

 ミストラルも満面の笑みで姿勢を低く身を寄せて、恐れ知らず、耳の後ろを辺りを撫でつけ体全体で抱きよせた。

 

「よしよしよし、わーやわっこーい。毛並みもキレイで大事にされてるんだね☆」

「ふふっ、随分と人慣れしているのね。うち故郷(ハイランド)に"竜使い"がいたけどさ。あいつ等は雛の頃から躾けてだから、融通効かずで主人以外には暴れるのよねぇ」

 そのままモフるモフる。

 鬚犬は若干、強引なそれに困惑しながらも嫌ではないのか、されるがままにモフられていた。

 

 ひとしきりやって満足したのか。

 振り返って白耳の術師は、変わらず無邪気さでグイグイと迫ってきた。

「ねぇねぇ!そのモンスターボールの数、きっとまだほかの使役獣はいるんだよね!他にどんな子がいるのかな?」

「……いるけど教えない。特にアンタ口が軽そう」

「えー、そんなイジワルぅ」

 あまりに遠慮ないそれを、にべもなく断った。

 冒険者を信用してはいない。手の内は隠しておきたいのが本音なのである。

【コノハナ】・【バルジーナ】

 あと、後の手持ちは気難しいのも多いのも理由としてある。

 

 そんなこんなのくだらないやり取りもありながら。

 

 人間は嫌いだ。最低限に仕事を務めていつも距離を取り続ける。

 しかし、そのやり取りで足取りが少しだけ軽くなった事に、少女は気が付かない。

 

 

 

 

●●●

 

 

 

 

 

 相変わらず、彼等とは多少の距離間を保ちながら進んでいく。

 

 雲が流れ、大反乱に踏み荒らされた大地を観察しながら急ぎ足に。

 

『―――バウッバウ!!』

【威嚇】【ハイエナの嗅覚】【牙獣種の如く】

 突然に使役された鬚犬(ハイエナ)が吠えたくる。

 外敵の接近の合図である。

 使役者が仕込んだとおりに、その方向を鼻先で示して敵の数だけの吠え正確に伝えるのだ。

 

「北東からきた。今度は結構大物の群れ」

「あいよーっと出番ね!」

【使役闘争士】【精霊術Lv2/5】・【阿修羅姫】

 その仕込まれた点呼を読み取って、声に出す。

 戦闘態勢に使役獣を呼び寄せて身を固めて、抱えた杖を構え魔石に宿した精霊を臨界に、必要最低限を呟く。

 その言葉に応じて槍使いが懐から、使い込まれた遠眼鏡を取り出して眺めた。

 

 視線の先にいたのは。

 

【蛇螻蛄】(ヘビケラ)【装甲長尾】【蟲の騒めき】

―――キシキシキシキシッ!!

 顎をかみ合わせるけたたましい音。

 風の流れを淀ませ、おおよそ重力を無視し、翅をせわしなく動かして空を浮かぶ大百足がいた。

 森の外周部からの偵察役か、こちらを発見して迫りくる。

 

「視認した。距離は千程度か、甲虫類の大物だ。射撃で撃ち落してから対処するとしよう」

「よしきた。相手空飛んでるからねー。あたしは後衛に雑魚が取り付かれないように背後のカバーに廻るわ」

【ディフェンダー】・【カバームーブ】

 金木犀の髪を揺らす戦乙女が、最前線に構えて先導する。

 対して騒ぐこともなく。

 徒党(パーティ)が、手慣れた様に前衛がそれぞれに適したポジションに移動する。

 

「うんわかったー!叩き落すのはまっかせてー(>_<)」

「さて視界を慣らさないと」

【アイテム知識】【魔術知識Lv(3)/5:蓄積化】【ターゲットサイト】

『黄昏の腕輪:六花の弓』【腕輪の担い手】【レンジャー:弓術の心得】

 白耳帽の魔術師がお茶目に、ウィンクとともにその愛杖を振り回して目標に向けて。

 若葉の双剣士は息を吸う。吐いて心音とリズムを揃える。

 腕輪の電子装甲を投影した弓を構え、矢を番える体幹を固定して、正眼に構えて弦を引き絞る。

 

 なお、未だに若葉の少年の視力は戻りきってはいない。

 そのぼやけた視界の中に、光の強弱が分かる程度の事である。

 

 しかし。

「リコ、お願い"眼"を貸して」

「ん、わかった」

【腕輪の担い手:電制感覚】【精霊術Lv2/5:呪印術(ウェーブ)】・【憑依具:憑霊術】【アサルトサージ】

 しかし、足りないならどこかから持ってくればいい。

 借りる。代替えする。

 途端に拡がる記号化した腕輪の適応者を示す電制の電磁波に満たされた感覚、そのままでは役に立たないそれを、憑霊による解析とフィードバック、同属性という条件下にて有効化する。

 本来ならば、精霊使いとしては深く交わった相手のみに有効な憑霊現象。

 元々、双剣士の彼を依り代にしがみついている、『円環精霊』たるリコリスの演算能力にて可能になる疑似視界(ヴァーチャル)である。

 

 視野、削ぎ堕ちた輪郭に、感覚を指先の焔を輪に広げ標準を併せて。

「―――おちろっ!」

 すべては呼吸と同一化する。

 息を吐き指を離す、反動に大気が押し出される。しっかり礼を踏んで限界まで引き絞られたその一矢は―――

 歪みの方程式のままの発条に、矢が塗布に速度に剥されず炎を纏う。

 双剣に主眼を置く為に、渾身の一矢に拘ったそれは、威力だけは折り紙付きである。

 

バ ギャン!!

【超頑強】【風操遊】

 ガラスをぶつけ合った如く破音が響き渡る。

 その装甲を貫き、炸裂し速度を殺して大地にゆっくりと高度が下がっていく。

 

 それに叩き込む様に。

「よし、カイト君のおかげで羽搏きが遅くなった!これなら羽を狙える続いていくよー♪」

【魔具使い】『星の血証』(エーテライト)『オウム貝の杖』

 空に巡り描かれる。

 白耳の魔術師の腕から解ける金糸、魔具に繕われた簡易的な砲撃の筒の溝だ。

 

 そこに臨界待機する煌めく、いくつもの光の小精霊があった。

 

「"浸りなぞるは一摘は火花、染み出せ混ざりて次を写せよ"」

【魔術知識Lv2(3)/5】【祈りの矢:ライン・レイザス】【デュアルキャスト】

 空を幾筋も描く。

 その翅に連続して、光の矢が突き刺さって焼いた。

 白耳の呪文師が続いて、周囲に待機させた七支もの光矢を連続で打ち放ったのである。

 

 彼女の扱う『魔具』の特殊上、一つあればオドの限りに工程を短縮して複製できるのだ。

 

『―――ギィィイイイイ!』

【超頑強】

 減速による空力の低下、翅の損壊。

 響き渡る轟音、その大百足は堪え切れずに大地に墜落した。

 大地が揺れた。あの質量が宙を羽搏いていたとは信じられぬほどの衝撃だった。

 普通の生物なら内臓からぐちゃぐちゃに潰れるだろう。しかし未だ暴れる、やはりモンスターという存在は理不尽の権化である。

 

「ふん堕ちてきやがったが、まだまだ元気そうだなぁおい。あの装甲と巨体をたたき割るのは手間だな」

「なら半殺しでいい、二度と羽搏けぬ様にしてやれば後は暴れまわる獣に勝手喰われるさ」

『黒蜘蛛の鎧』【重■装】・『グランシースピア・改』【阿修羅姫】

 金木犀の槍使いは気軽に変形槍を構えて、魔具の力に踏み込み距離を詰める。

 ついでとばかりに、迫る小判サメの如く小蟲をすれ違い様に斬り捨てて。

 彼女は変形魔具のギミックに担保された、卓越した魔力撃使いである。

 

 たいして大ムカデは蜷局巻きその百脚力づくに盛んに動かして回転運動、巨体を振りかざして。

 

【あばれる】【風繰遊】【装甲具足】

 その長き巨体を振り回して、迫る外敵に回転運動と共に暴風を振りかざす。

 尾が大地を削る、流転する風属性が、質量の暴力が、更にまともに受ければ全身ヨロイだろうと容易に潰されるだろう。

 

「っち、この程度の風なんぞなれたもんだがぶち当たるの分がわりぃ、体制を崩すぞ!」

 ぶぉん!

【疑似魔法剣:アンゾット】【暗黒瘴気】【孤独者の流儀】

 正面から風を裂く、切り込みの黒鎧の戦士はまだ活きが良い様子に、急くのを放棄した。

 暗き水の濁り、暗黒剣の延長たる疑似魔法剣を起動する。

 精度を投げ捨てた全力の魔法剣、遠心と手首のフリップの到達点によるオドの投擲の技術である。

バちゃぁ

 文字通り水をばら撒いたような音。

 闇・水属性の生成、それを遠心力で振り回して巨体の周囲に"溝"を振りまく。

 

『―――ギギギギィィイ!』

ずるッ、ズズズズズッズ!!!!

 振りまかれた属性の押し付けに、一瞬に回転運動が崩れる。

 足場に刻まれたその溝は、対象の忌避感を煽り回転運動を滑らせて一時に体制を崩したのだ。

 

 さらに追撃として……。

「上が、がら空きだぞ大百足」

【ガゼルフッド】【阿修羅姫】

 一足で飛び越えて空中に、槍を背を叩き付け反動に回転運動をおこしながらその頭蓋へと迫る。

 彼女が持つこの『技巧槍』は元々に人の身で水中で活動する為に設計された改造品。

 成形した魔力撃に、足場なき空にて反作用に推進を得る事は容易であり。

 

「無様にその首を垂れるといい!」

【ランスマスタリー】【魔力撃・改】【洟槍月:刃槌】

ギッィ! ガ ゴ ン!!

 弧を描く、魔力撃の整形と瞬間的解放、空転のタイミングを併せて鉄槌として振り落とした。

 

 再び、装甲顎が大地に叩き付けられ余波にひび割れる。

 それほどの衝撃とオド特性による生体磁気を、直接に頭にぶち込んだのだ。

 しびれる、たまらず大百足は立ち眩む、続いて黒剣士マーローは牽制の勢いのまま踏み込んだ。

 

「へっ鈍ったなァ!その血を咬み切ってやる!!」

【暗黒剣Lv?/5:暗の剣】【是空】【防具習熟:重■装】

 鎧の駆動を同一化、その重量と刃の動きに乗せて、鈍った翅を突き刺して傷跡を抉る。

 

『ギャシャアアアアア』

 大量に飛び散る紫色のリンパ液が大地を汚す。

 暗黒剣と呼ばれる生物特攻の流儀、それが構造上に翅脈が集まる巡りから生命力を収奪する。

 その後も力の限り、鎧の重さを乗せて剣を振りぬいた。

 

 

 結果として。

「片翅は捥いでそっから生命力はごっそり削った、これでずらかるぞ!」

「はーい。後は野となれ山となれぇ♪」

 それを見届けた瞬間に、彼等は速やかに撤退する。

 これで追っては来れまいと、いくら巨体を誇ったといえ、自然は弱者に優しくはない。

 本能で暴走していれば猶更であり、アレは弱り目を喰われて死ぬだろう。

 律儀に止めを刺してやるほど余裕は無いのだから。

 

「おーい、こっちの雑魚も片付いたわよ!!」

「お疲れ、ぽちよく頑張った」

【カバームーブ】【剛剣技:薙ぎ払い】【錬気法:マッスルベアー】・【精霊術師】【グラエナ】【牙獣種の如く】

 重剣士、ローズはその鈍器の如く大剣を地に突き立てて、快活に手を振る。

 戦闘音に引き寄せられた魔術師狙いの雑多な蟲系モンスターは、既に重剣士と鬣犬に後方で蹴散らされている。

 

 元々、あの大甲虫の排泄物を食うコバンザメ染みた生態の蟲畜生である。

 大した脅威にはならない。

 

 手振りで移動を指示する。

 すぐ察して、鬚犬は地面を空を鼻を鳴らして、周囲を探った。

 

『―――バウッ!』

「こっちなら蟲畜生はいない、らしいよ。今の所は」

「んあ、そう助かる。軽く匂いを混ぜるから抵抗しないで」

【レンジャー】【精霊術Lv2】・【統率獣】【ハイエナの嗅覚】【牙獣種の如く】

 そして尻尾を揺らし鼻を鳴らして、方角を指し示した。

 己等がぶちまけた血飛沫を、誤魔化す為に土をつまみ上げて己の炎に焦がして空気に混ぜた。

 

 そのままに、走り出す。

 調査対象"ヘルバ"に指定された目的地その座標に、である。

 そんな中。

 

 白髪の使役者はため息を付いた。一息ついて杖から緊張に汗ばんだ左手を離す。

 反射で生きる蟲畜生には相性が悪い、蹂躙されて死ぬ可能性も頭によぎっていたのだから。

 

 だから。

 

「……よかった。意外とやるじゃん」

「えへへー凄いでしょ司ちゃん。これでも私たちラインセドナ(地元)じゃ一端なんだからね☆」

 安心して、零れた呟きを耳ざとく聞かれた。

 聞かれた使役闘争士は、プイと照れ隠しか顔をそむけて黙り込んでしまう。

 

「勘違いしないで、監視の名目もあるけどボクも"昴"の助けになる為にここにいるから。これくらい出来てもらわないと困る」

【スラム育ち】【比翼の鳥】

 昏く俯いた顔を上げ、誤魔化すように使役闘争士が言った。

 大型の魔物、襲撃の対処に費やした戦闘時間は、大雑把に五分にも満たない。

 きっかり無力化し、見切りをつけて撤退したのは聖錬の戦闘特化の冒険者の徒党としては信頼できる方になるだろう。

 

 というより、大型分類の端くれたる大甲蟲に、余裕をもって対処できる在野の徒党は多くない。

 少なくとも彼らにとって装甲を真面に抜いたのは初撃の弓と、変形槍の刃槌のみであるが。

 なにより、それで殺しきれないと見切りが早いのが評価が高いだろう。

 

 『聖錬』は複数の国から構成される"連合国家"であり、それぞれに諍いも絶えず戦争も時折起こる。

 故に『紅衣の騎士団』が対人、対軍に寄っているとはいえ平均して正規団員に匹敵する練度だろう。

 対魔物の急場の対応力に関しては、上回っているようにさえ見て取れる。

 

「放っといて、最低限仕事はする」

「っけやめとけ理性蒸発女、その坊主は俺に依頼を持ち掛けた時からずっとこんな感じだぜ、これで良く騎士補佐をやってられるもんだ」

「んーう、残念。女の子の精霊術師っぽいから、いっぱい仲良くしたいのになぁ」

 

 さらりと白耳の魔術師の呟きに周囲の反応が一瞬止まった。

「は?なにいってやがるんだ」

【商いの才】【陽気の嗅覚】

 黒騎士のそんな訳ないだろうとあきれた声、ずばりと中てられた本人すら一瞬思考が留まる。

 それは割と念の入った男装(ロールプレイ)である。

 体系を隠す様な分厚いローブに、乱雑に切りそろえられた短髪、声だって演技し薬草で匂いを騙している。

 

 さすがに、固まった空気に気まずくなったか、ミストラルが重ねて聞いた。

「え、ごめん。女の子だよね……?間違ってたらごめんね司ちゃん」

「―――何言ってるのボクは、男だ」

【男装少女】【汚された体】

 言葉の詰まったその露骨な拒絶で、大体事情は察せる。

 少女が自身の性別を隠す理由もだ。

 この世界は弱者に厳しい、もともとの人見知り癖、大体事情は分かるだろう。

 

「そっかだから手を振り払ったのねー、なんかおびえた猫みたいなんて言ってごめん」

「知らない。勝手に人の事を察した気になるな」

「ん、わかった。もう触れない、とにかく男の子なんだよね」

 焦点の合わない目で、そういう名前も性も振る舞いのまま受け入れた。

 そもそも若葉の双剣士が割と気安く話かけていたのは、同世代の男の子だと思っていたからだ。

 その手癖から、もともと冒険者上がりであると推測できた。

 国の騎士団への士官と言えば、一般的な在野の冒険者の目標であり夢(なりあがり)である。

 若いうちにそれを叶えたのだと、ある意味の敬意をもって接していたのである。

 

 まさか、ある意味のコネ、依怙贔屓されているとは夢にも思っていない。

 

「マジかよ」

「んあ、見ればすぐわかるよね?どこか癖が女の子っぽいし」

「普通にわかんねーよ。どうなってんだその嗅覚、変なところで鋭いなおめぇよ」

「はいはい、もう触れないの。実力あれば割と別にどっちでもいい事でしょ。頼りにしてるかんねー」

 周りも特に強く反応をすることもなく、流れていく。

 実力は確かなことは確認した。そして使役獣の毛並みから根は悪い相手ではない。

 だから特に問題はない。踏み込まれたくない秘密など、生きているなら誰でも一つは抱えているのだから。

 

「………」

 そのサバサバとした空気感に少し戸惑う。

 男装の少女は過去に放浪していた頃は、警戒心をむき出しに一時の留まり屋根をしぶとく生きていた。

 暴力を安易に選択する輩、弱者を見下し優越し、時にそれをもって支配しようとする輩。

 女を消耗品、装飾品としか思っていないそんな連中。

 

 スラム生まれからそんな連中しか知らずに故に、それに近づいて寄す香に、利用して生きていたのだ。

 その頃は今よりずっと弱く、町に迷い込んだポチエナを自身に重ね拾ったのも相まって、必死になりふり構わず生きてくしかなかった。

 

【精神感応者】【メンタルフィールド】【ペルソナセット】

 今は喪った力、かつてそうしていた生き方、自分が上だと己惚れるならず者、底辺を焚き付けて。

 時に、血意味に力を煽って、誘導して。支配され、逆に支配した。

 真に命の危機の時は、危機感を麻痺させ特攻させて己だけ逃げ出した事もあっただろう。

 

 そうやって生きていくしかなかった。

 それを誰よりも賢しく上手に泳げてるつもりで、思っていた。

 結局、悪目立ちして素体として目を付けられ、誰からも追われて放浪し続けるハメになったのは当然の結末である。

 

【比翼の鳥】

 それを掬われた。

 興味本位に首を突っ込んだ、そこから発展するお節介に焼き達に。

 あの頃、ただの一人の少女として誰よりも優しく、それによって誰よりも居場所を認められないあの人。

 悲しんでくれた慈しんでくれた少女に救われた。 

 

(―――ぽちも懐いた悪い連中じゃない、けどそれだけ)

【スラム育ち】【この糞みたいな世界】【自己中心・逃避】

 無限に続く泥の中に光を見た。だから、男装の少女は、その閉じた世界の身を尊ぶだろう。

 ただ善良と言われる誰かより、必要なのは"都合の良い誰か"、その方が彼女にとって価値がある。

 極論、己の愛の為になるならと、ここにいるのだから。

 

 それはそれとして。

『―――バう!』

「……なに、嬉しそう。なんでさ」

【統率獣】

 跳ね上がるように、どこか嬉し気に尻尾を振る己のパートナーを、怪訝なジト目で眺める。

 彼は病気で街に迷い込んだはぐれである。

 単純に他種族を群れの一部として認識している。

 故に、彼は空気の読める。

 明らかに合わない群れに紛れ込んで嫌な臭いを集めて、孤独にただ一人でいるご主人を心配していた。

 

『―――ばう、ばう!』

「なに、訳わかんない。何言ってるのさ」

 くるくると周囲を回って、言葉が通じずともご主人に主張する。

 ご主人の"群れ"を増やすチャンスだと、歩幅の併せられないダメなご主人に距離を合わせてくれる貴重な人の群れだ。

 群れれば安心だと、それが一番強い事を鬚犬の本能から強く根付いているのだから。

 

 ある意味、純粋な忠臣である。

 変わらず、話しかけてくる冒険者辟易としながら。

 歩いて、歩いて。

 

―――そんな中、遥か彼方の空が強烈に光った。

「っ、なんだ」

 時間は真昼間である、その中でも異彩を放って主張する連続した閃光が空を彩る。

 それとは距離がある。発信元は影としてしか見えないだろう。

 

「……始まった」

「ん、何どういうことさ?」

 事前に伝えられた作戦行動にぽつりとつぶやいた。

 

「"本命"が動いた。作戦行動中、『隔離領域』の専門家とそれを中心に届ける為の陽動。多分交戦中」

「もう。やりあってるのか。あれは見た"葉っぱ"の、『石槌の杖』が閃光かしら」

「何事もなければいいけどさ、真昼間なのに、暗くなったり明るくなったり忙しいわね」

 『聖錬32将』も動いていると聞いている。

 国が算段が付いたと判断し動いた順当に行けば、討伐し解放できるだろう。

 しかし、反面心がざわめく。

 

「……急ごう待ってるのが何か知らないけど、きっともう時間がない」

「うん、もちろん。一刻も早く、侵略者風情が悠々としてるのは気に食わない」

 使役闘争士が周りを急かして、若葉の双剣士が応じる。

 拒絶していた為に、その焦りは目立って、意外とその内実は分かりやすいかもしれないと思わせた。

 

(頼むから、無理はしないで昴……っ)

 ただ、らしくなく真摯に祈る。

 すべては己が、己らしくいられない居場所の為、中身なんて何もなくて最後は死ぬのだろう。

 そう悲観的に破滅を静観していた泥はもういない。

 釣り合わない秤の上に、二度と慈悲(あい)を置かない様になるまで、せめてせめて。

 

 愚かな人魚姫の娘は、その母親と同じように愛に破滅することなど厭わしないのだから。

 

 




話が進まない。
 『増殖』終わったら、無花果紋目さんの様に、短く章をまとめられるように意識したいなぁ(願望)。

 とりあえず司君は使役闘争士としては悪タイプ使いです。
 経歴から、ガチポケの類は持ってません。
 手持ち6匹は食費とか場所とか大変そうだなと、勝手に設定してませんがどうなんだろう。


NAME:「グラエナ」(原作:ポケモン)
属性:地・冥     タイプ:悪
種族:「モンスター」

想定LV:29

【称号スキル】
>「グラエナ」:大陸では一般的な牙獣種モンスターの一種、
        様々な環境に生息しており、群れでの狩りを得意とする。
        だか、モンスターの中ではかなり貧弱な存在であり、
        一匹一匹のフィジカルは大したことがないと。
        基本的に分断して狩ることを推奨されている。
        また強い存在へ従順な存在であり、
        人類種が従えていることも珍しくないという。
        その幼体の「ポチエナ」は、
        闘争士の初歩のパートナーとして選ばれる事も多い。
>「影を駆け抜ける獣」:闇に潜む存在であり、隠密行動が可能になる
>「統率獣」:群れのリーダーとしての自覚と矜持、
       経験に伴いそれに付随したスキルを獲得するだろう。

【所持スキル】
>「ファストアクション」:敵の存在を確認し、相手が気付いてない場合、
             先制攻撃が確実になる。【不意打ち】
>「牙獣種の如く」:使役獣の中でも鍛えられた体躯を持つ証、
【かみつく】【突進】などのフィジカルを活かした攻撃を可能する。
>「姑息な手癖」:その戦闘経験により、対人への流儀への多少の理解を有する。
         人類種というのは道具に頼り、
         特に目を潰されれば木偶になりやすい事、経験により理解している。
         ………しかしなお、それには例外も多い事もその身に刻まれている。
         【どろぼう】【すなかけ】。
>「野生の鼓咆」:元々の種族特性、群れでの狩りを得意とするグラエナ種による
         鼓法に似た群れへの戦意の鼓舞。
         多種族のポケモン群れと認識しうり、連携を可能にする。
         闘争士の指示で【遠吠え】、【パークアウト】、
        【ほえる】、【威張る】等のを用いて場を?き割すだろう
>「三鋭牙」:"かみつきポケモン"と呼ばれるグラエナが習得しうる3種の牙の総称。
       彼はその全てを既に習得している。
       純粋な顎撃である、冥属性の浸透を持つ「かみくだく」に、
       闘争士からの付与、またはジュエルという物質を砕くことで、
       牙の冥属性が浸透しており。
       【雷の牙】、【氷の牙】、【氷の牙】の派生使用を可能にする
>「心眼(偽)」:戦闘経験によって修得した、
         視覚・嗅覚に頼らない先を見抜く目。
         戦闘経験と論理に基づく先読みを、
         感覚と技術によって補正し、技量と速度に劣る相手へと一撃を叩き込む。


【特徴スキル】
>「ハイエナの嗅覚」:グラエナ種の種族特性により、狼に比類する。
           鋭い嗅覚を有する。
>「いかく」:相手を圧倒する鋭き眼光を持つ証、
       敵対するものをその恐怖で縛り付ける。
>「はやあし」:恵まれた俊敏性で、他の獣よりかなり早く駆ける事が出来る
        【超俊足】。
        死肉漁りとしての特性を持つグラエナ種は、
        同時に状態異常への耐性を持ち合わせ、その脚が鈍る事はない。
>「仲間意識」:群れに属する多種族に対する強い仲間意識、
        それが傷つけられることに我慢ならず、強い奮起を促すだろう。
        例え、戦況が不利になろうとその戦意は衰えない。
>「綺麗な毛並み」:闘争士による手入れにより、
          凛々しく整えられた毛並みを持つ。
          確かな愛情に恵まれた証。
          それは何よりの彼の誇りであり、自信が凛々しささえ放つだろう。
        
【称号】
>「最初の仲間」:誰かのオリジン、付き添う想い出。
>「かみつきポケモン」:鋭き牙を主に用いて戦うポケモンとしての異名。
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