第1話 博麗の巫女の式神
『やあ。ここに泊めてくれ。』
『……誰よあんた。』
とある1日、神社にやって来た一人の者。その者が掃除をしている巫女に話かける。
『おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名前は柳。苗字はさっき捨てた。宜しくな。』
『誰があんたをここに泊めるなんて言ったのよ。しかも、あんた妖怪でしょ?』
その者は頭から角と兎の耳のような物が生えており、人間ではないということが分かる。
『金なら払う。食事代でも、家賃でも、なんならある程度の家事だってやってやる。俺は妖怪だが、それぐらいなら出来る。』
『……あんた本気?良く、知らない相手にそこまで言えるわね。』
妖怪が出した提案。それは巫女にとって、破格の提案だった。何故ならその神社は神社として機能してなく、巫女は妖怪退場等で金を稼ぐしか無かった。更に、妖怪が悪さを起こすことも少なくなっており、金を稼ぐ事が困難になっていたからだ。別に生活には困ってるわけでは無かったので稼ぎが悪くなっても良かったのだが、あるに越したことはない。
『こっちが頼んでるんだ、当たり前だろ。で、どうだ?』
『……答えは無理よ。神社になんの関係も無い、しかも妖怪をずっと泊めるなんて無理に決まってるでしょ?』
巫女が断った理由は至極真っ当な理由だった。しかし、その妖怪は引かない。
『なら、理由があれば良いのか?』
『いや、そうかもしれないけど……理由なんてあるわけ無いじゃない。』
巫女はまだ諦めないのかと思いながらその返答を切り捨てる。しかし、妖怪は続ける。
『いいや、あんたが良ければあるさ。』
そしてその妖怪は少し笑いながらこう言った。
『あんた……俺を式神にしてみないか?』
「霊夢様、異変です。空が紅く染まっています。」
「えぇ……久しぶりに休めるかと思ったのに……。」
……何言ってるんだ霊夢様は。
「霊夢様、休めるとは一体なんでしょうか?毎日がほぼ休みのあなたにそんな事を言う資格は無いと思いますが。」
「いや、昨日お札作ったじゃない。」
「ああ、そうでしたね。でも、久しぶりに休めるはおかしいじゃないですか。」
確かに昨日、霊夢様は俺と一緒にお札を作ったが……それ以外働いてないだろ。
「いや、毎日掃除してるでしょ?」
「霊夢様、お言葉ですがそれは働くには入りません。」
自分の家を自分で掃除するのが仕事ってどういう事なんだよ。それが仕事だったら子供ももっと金貰っとるわ。
「神社の掃除だって巫女の仕事よ。」
「ですが、給料は出ません。何故ならそれが仕事じゃないからです。」
「……仕方ないわね。ほら、柳も準備しなさい。」
霊夢様はやっと動く気になったようだ。なんか俺も動く事になったが、式神なので仕方ないだろう。俺はとある畳を上に上げ、地下室に入る。地下室とはいっても、横1丈3尺、縦6尺、程度の長方体の大きさだ。俺はそこからある程度の札と封魔針を取り出し腰巾着に入れる。そのあと狐の仮面を被り、また神社の方へ出て、畳を戻す。
「準備は出来た?」
「はい。では、行きましょう。」
そんな会話を終わらした後、俺達は神社の外に出て、ここじゃないどこかへと向かって行く。途中で、なんか妖怪がちょっかいをかけてきたがとりあえず俺がお札で追い払った。静かな夜の中、誰にも会わず、どんどん先に進んでいく。
「……でも、夜の境内裏はロマンティックね……いや、何言ってるんだこいつって目で見てるのよ。」
「急に変な独り言を呟かれたらそうなります。で、どうしたんですか?何が、でもなのか全く分からないんですが。」
「柳、私の話ちゃんと聞いてた?」
「いえ、全く。」
正直、何も聞いて無い。だからさっきのセリフだけだとのんきすぎるとしか思えない。けど、俺は悪くない筈だ。
「何、話してるの?」
「話てるというか、こいつが聞いてな……ってあんた誰よ。」
「いや、さっき見たじゃないですか。もしかして、鳥目ですか?」
突然会話に入ってきたのはさっき俺達にちょっかいをかけてきた妖怪。その見た目は人間なら寺子屋に通っている位のサイズだ。
「うるさいわね。人は暗いところじゃ物が良く見えないのよ。」
「あら?夜にしか活動しない人も人も見たことがある気がするわ。」
「それは取って食べてもいいのよ。」
「何さらっと嘘ついてるんですか。」
夜仕事している人達が可哀想だろうが‼ていうか、人を食う行動を普通に許容するとか、俺の主の霊夢様は本当に巫女なのか?まあ、人里の外に居た人間で俺の目の前で食わなければ俺も許容するけども。
「目の前が取って食べれる人類?」
「良薬は口に苦しって知ってる?」
そうしてその二人の弾幕ごっこが始まった……夜にあの妖怪に会うかもしれない人、御愁傷様です……俺、どうしようか。スッゴい暇なんだけど。霊夢様を置いて先に行くとか出来ないしなぁ……。
「おっ、柳。お前がいるってことはもしかして霊夢も異変解決に来てるのか?」
後ろからそんな声が聞こえて、後ろを振り返るとそこには箒にまたがって空中にふわふわ浮く少女……霧雨魔理沙が居た。
「おっ、魔理沙じゃん。なんでこんなところに居るんだ?」
「異変解決だよ、異変解決。で、霊夢も来ているのか?」
「霊夢様も来てるよ。あそこで妖怪と仲良く弾幕ごっこをやってる。」
俺はそういいながら霊夢様と妖怪が戦いあってる所を指差す。
「なるほどな。じゃあ、今のうちに進んどけば霊夢より先に異変解決が出来るってもんだ。」
「あ~あ、もう行くのか。」
「なんだ?この魔理沙様がここから離れるのが寂しいのか?」
「霊夢様が戦い終わるまで暇だなって思っただけだ。」
こいつ、ことあるごとに俺をからかおうとしてくるんだよなぉ……まあ、仲良くやれてるってことの証明になるんだろうけど。
「全く、そこは嘘でも[はい]って言っておこうぜ。」
「そこで俺が[はい]って言ったら魔理沙は満足すんのか?」
「いいや、全然。全くしないぜ。」
「やっぱりな。」
そのまま魔理沙のからかいに乗っても、それがからかいのネタになるだけなのだ。だったら最初から乗らない方が早い。俺は効率主義なのだ(自称)
「じゃあ、私は先に行くぜ。」
「ああ、速く解決してきて俺らの仕事を無くしてくれ。」
「……式神がそれで良いのかよ。」
「大丈夫だ、問題無い。」
どうせ、霊夢様もそう思ってるに決まってる。これまで式神として働いてきた俺だからこそ分かる。
「……まあ、霊夢もそう言いそうだしな。式神がそう言うのも仕方ないのか?」
「良く、分かってるな。じゃあ、さっさと行け。」
「急に辛辣だな……まあ、いいや。今度こそ行かせてもらうぜ。じゃあな。」
「ああ、またな。」
そんな挨拶を終わらした後、魔理沙は箒を加速させて何処かへ行ってしまった……そういや、魔理沙は異変の黒幕が何処かにいるのか知ってるのだろうか……聞いとけば良かった。
「柳、終わったわよ。さっきの妖怪から聞いたんだけど、最近向こう辺りに新しく紅い館ができたらしいのよ。……怪しいと思わない?」
「そうですね。空の霧も紅く染まっていますし、関係はありそうですね。良く分からないまま、飛び回るよりは良いんじゃないでしょうか。」
「そうよね。じゃあ、その館の方向へ行くわよ。」
「御意。」
霊夢様が指した方向は魔理沙が行った方向と同じ向き……やっぱあいつ黒幕の場所知ってたんじゃね?とりあえず俺達はその館へ向かって飛んで行った。途中で魔理沙が妖精と弾幕ごっこをしてる所を見たがスルーした……いや、関係無いから別に良くね。まあ、知り合いが頑張っている所をスルーするということはまあ、いけない行為かもしれないが……そんなことしてる暇あったら異変解決に向かうよな。ほら、俺効率主義だし(二回目)
「霊夢様、着いたようです。」
「そりゃあ、見たら分かるわよ……で、あいつ誰?寝てるみたいだけど……。」
「恐らくこの館の門番でしょう。寝てるように見えて起きているようです。」
「……気づかれてましたか……。」
そう言ってその女は目を開け、こちらを見てくる。
「で、あなた、何者?」
「えー、普通の人よ。」
「門番の癖に寝ようとしてたでしょ?」
「それは、暇だったの。でも、誰も来ないからだったし。私以外の門番が普通以外なのよ。」
……この門番、すげぇ開き直ってるな。逆に尊敬できそう。
「で、あなたこそ誰なの?」
「私は、巫女をしている普通の人よ。」
「それはよかった。たしか……巫女は食べてもいい人類って言い伝えが……。」
「言い伝えるなよ‼……と言いたい所だけど霊夢様は今、夜に活動してるしなぁ……。」
普通の人の考えなら駄目だろうがうちの主の霊夢様の考えでは夜に活動してる人は食べてもいい人類に入るというからな……。
「いや、そこは言い伝えるな‼って言い切りなさいよ。それに巫女が夜に活動してたって何もおかしく無いじゃない。」
「……とりあえずやつが霊夢様の邪魔をするようなので倒してしまってください。」
どうやら、霊夢様は自分が言った事を覚えてないようだ。霊夢様は発言に責任を持たないタイプだし仕方ないのかもしれない。
「柳はいつ働くのよ……。」
「私は霊夢様の式神ですので、ここに居るだけで働いています。私は弾幕ごっこが苦手ですので、やりたくありません。まあ、もし次にボス以外の敵が出たとしたら戦いますよ。」
弾幕ごっこって女性の遊びだからな、俺が苦手なのも仕方ない。一応、式神なのでルールは頭に叩き込んでるし、スペルカードもあるけども、やりたく無いものはやりたくない。まあ、敵に能力を使えばどんな相手でも戦える自信はあるが……戦闘狂じゃないので御免被りたい。俺はサポートキャラでは、あるが戦闘用キャラではないのだ。
「柳、言ったわね?」
「はい。と言うことで今回は頑張ってください。」
「はいはい、分かったわ……と言うことで勝負よ、門番。」
「……簡単に通れると思うなよ‼巫女‼」
そして今、二人の弾幕ごっこが開始された。その間、俺は周りを観察する。空は紅く染められており、目の前には紅い館があり、他は木で埋め尽くされている……良くこんな森のど真ん中に建てたな。いや、まあ人里の近くに建てられても、こんな異変を起こせるやつらが人里の近くにいたら困るからここで良かったのかもしれないが。
「また、柳だな。いつの間に私を追い越したんだ?」
しかし、あの門番を人里で見たことは無いが……誰が買い物に行ってるのだろうか。しかし、最近新しい妖怪が人里に通うようになったとも聞いた事が無い。人間よ人里に居れば妖怪に襲われないからと言って別に妖怪に対しての危機感が無くなっている訳では筈だ。さすがに新しい妖怪が通うような事が起きれば噂位にはなる筈だ……俺の時もそうだったし。まあ、今は歓迎されてるけども。
「おーい、柳聞いてるかぁ?」
とにかく、新しい妖怪が人里に通うようになれば噂は流れる筈。それなのにその噂は流れていないと言うことは……この館に人間が居るのか?でも、人間にこんな異変が起こせるとは考えにくいし……まさか、まだ館にボス以外が居るのか?えっ、じゃあ俺働かないといけないんじゃあ……マジか。
「おい‼柳‼」
「うわっ、魔理沙。先に声かけろよ。」
「何回もかけたぜ。」
突然耳元から声がしたので横を見るとそこには魔理沙が居た……ここに来るの速くね?
「もう妖精は倒したのか?」
「なんだ、見てたのかよ。」
「弾幕ごっこ中だったし、声をかける訳にはいかないだろ?それにめんどくさい。」
「絶対、後者の方が本音だろ。」
何故分かったし……。
「で、どういう状況なんだ?」
「どんな状況って、怪しい館がある事が分かったから、ここに来てその後あそこの門番と霊夢様が戦う事になったんだよ。」
「今のうちに入れるんじゃないか?」
「止めとけ、姑息なことに門以外は謎のトラップが仕掛けられてる。解除はしにくい模様だな。門の前も霊夢様が戦ってるし。」
俺の【限界を操る程度の能力】で観察したところ、それはもう大量のトラップが。限界は高かったから解除もしにくいし、破壊もしにくい。まあ、限界を下げればなんとかなるけど、今は自分の限界しか操れない。それが俺の能力の限界なのだ。
「無理に突破するよりも霊夢を待てってか?」
「そう言うことだ。ほら、今霊夢様の勝利が決まった。」
霊夢様の放った弾幕がその門番に当たり、門番が倒れる。そして、こちらに霊夢様が向かってきた。
「柳、倒し……って魔理沙じゃない。」
「よっ、霊夢。私も異変解決に来たぜ。」
「……まあ、人手が増えるなら増えるに越したことはないわ。入るわよ柳。」
「了解しました。」
「おい、ちょっと待てよ。」
そうして、俺達は門を越える。目の前には大きな館がそびえ立っていた。まあいい……俺達の異変解決はこれからだ‼