「おっと、霖助居る?」
「……僕の事をそう呼ぶのはこれまでもこれからも君だけだろうね。」
俺が声をかけながら店の中に入ると霖助が苦笑いした様子でこちらに反応する……そんなに霖助という呼び方が嫌なのだろうか?まあ、変える気は無いが。
「布と針金、この二つが入荷してないか?」
「布と針金ね……おっ、あった。で、また何か考えたのかい?」
「ああ。この前のやつは手と足の部分に石を入れて、それを妖力で操るという粗末物だったからな。操りにくかったんだが……今回は体に軸を入れてそれを操ろうと思ってる。」
「ああ、人間で言う骨と肉みたいなものか。」
「そういうことだ。まあ、針金だけだし骨だけみたいなもんだけどな。」
俺がやろうとしていること、それは人形の遠隔操作である。これの大きな問題は遠隔操作というところである。つまり、糸で操ったりはできずどうやって人形を操るかを悩んでいた所、思い付いたのが人形を妖力で操作する事だ。自分の妖力を馴染ませて置けば、どこにあるか位は分かるし、まあ後は河童の技術なんとかなると思う。声をその人形に届けたり、その人形が見ている景色を俺と共有するとか。天狗はカメラという物を持ってたし、それを少し改造すれば俺の望む物になりそうだよな。
「で、何円だ?」
「いつも通りだよ。あっ、針金の方か。針金は結構多いけど君は唯一に近い客だし、合わせて二千円でいいよ。」
「おっ、二千円札があった。これはラッキーだな。」
俺はそう言いながら財布の中から二千円札を渡す。そして、霖助は「確かに受け取ったよ。」と言いながら、布と針金を受け取った。そして俺はすぐさま針金に妖力を込め始める。
「しかし、もうちょい早く思い付けたんじゃないか?あまり、飛び抜けた発想ではないし。」
「最近、別の術を作っててな。それで考える時間が無かったのさ。」
「……どんな術を作ってたんだい?」
「式神の方から契約を解除する術だ。普通なら主からじゃないと破棄できないから結構大変だったがな。」
式神の方から契約を破棄する……言葉で言うことは簡単だが、実際にやってみようとすると難しい。何故なら式神よりその主の方が立場が上。上が無理と言ってしまえば、式神はそれを断ることはできない。通常なら。
「それは凄い術を作ってたみたいだね……。一体どういう仕掛けでそれを成功させたんだい?」
「簡単だよ。主だけ持ってる権限を式神にも持てるようにしただけだし。まあ、契約の改変って言ったら分かりやすいか?」
「……契約の改変はそんなに簡単じゃなかった筈だけど。」
「まあ、確かにそうだな。だから俺も時間がかかったんだし。」
俺もまさか作るのに三百年かかるとか思わなかったし。大変だったんだよなぁ……。あっ、そうだ。
「なあ、霖助。今日異変解決した祝いに宴会があるけど来ないか?」
「宴会か……で、実際のところは?」
「どうせ準備と片付けするの俺と霊夢様だけだろうし、手伝ってくれ。」
「やはり、そっちの方の理由か。」
いや、仕方ないだろ。いつも結構な人が来るのに毎回毎回、準備は俺と霊夢様のみ。さすがの俺も不満に思う。だが、そんなことを宴会に来ている人たちに言える訳もなく、こうして霖助に頼んでいるわけだ。まあ、普段は頼まないけど、ちょうど来たしいいかなって思って、声をかけてみた。多分失敗する可能性の方が高い。ほら、何か考えてる。顔だし。絶対断る理由考えてるだろ。
「……まあ、別にいいよ。」
「……えっ?」
「何で君が驚いるんだい?」
「いや、断わられるかと思ってたし、お前宴会とか苦手そうだし。」
霖助が宴会を盛り上げる所を想像してみようとはするが全く出来ない……俺は悪くねぇ‼
「そんなに宴会が苦手そうに見えるのかい?」
「少なくとも得意そうには見えん。」
「……僕だってそういう気分の時もあるさ。それに困った時はお互い様だろう?」
「……俺に何させる気だ。」
「僕はそんなに信用が無いのか⁉」
声を荒げて、聞いてくる、霖助。……こいつ本当に霖助か?でも、見た目は霖助そのものだし……一体何が起こっているんだ⁉
「なあ、本当に霖助なんだよな?霖助に化けて俺をからかう妖怪じゃないよな?」
「なんでそんな結論に至ったのか分からないけど、僕は霖之助だよ。まさか、君にこんなことで本物かどうか聞かれるとは思わなかったよ。」
……恐らく本物だ。本物の霖助だ……なら何故あんな簡単に承諾したんだ?まあ、霖助の好意として受け取っておこう。
「まあ、来てくれるならありがたい。時間になったら案内するから付いてきてくれ……まあ、博麗神社の場所位知ってるだろうがな。」
「分かったよ。そういえばその人形、もう完成してないかい?」
「……まあ、試作品ならこんなもんか。でも、もう少し凝っておきたいような……。」
俺の手元にある人形を見ながら俺は呟く。だって、リボンもつけてねぇし、服の柄も適当だ。髪ももう少し短めにしておきたい。中途半端は嫌いなのだ。
「それでも結構な出来だとは思うけど……まあ、とりあえず動かしてみたらどうだい?」
「それもそうだな……ほらよ。」
人形の右手部分にある針金を妖力で上に上げていく。すると人形の右手も上に上がっていった。これで、操る方法はできた。
「動かす方法はこれで良さそうだな……どうせだし、霖助の分も作ってやろうか?」
「ん?いいのかい?」
「今日、宴会の準備を手伝ってくれるんだろ?流石にツケとかにするわけにはいか無いだろ。」
「……出来ればその考えを霊夢にも伝えてくれ。」
「無理。」
霊夢様の昔からの考えを二年前に霊夢様の式神になった俺が変える?無理に決まってるだろ。
「まあ、あれが霊夢様という人間なのだ。良くも悪くもな……まあ、諦めてくれ。その分なんか持ってきたり、買いにきたりするから。」
「……やはりここに定期的に来るまともな客は君ぐらいだったか。」
「まあ、俺以外にもまともな客位来るようになるだろ。最近の幻想郷はいろいろ受け入れてるし、人も増えれば客も増えるだろ?」
「そうだといいんだけどね。」
まあ、流石に霖助だって、商品を勝手に持ってかれるのは嫌なのだろう……まあ、正確には一部の非売品が勝手に持ってかれるのが嫌なだけだろうが……そんなん事を思うなら、店なんか開かなければいいのに……まあ、開いてなかったら俺も色々な物の材料に困ってだろうけどな‼
「ん?なんだこれ?」
俺は近くにあった謎の置物について聞いてみる。二つ同じような物が重なっている構造であり、上側が透明、下側は……ちょっと訳わかんねぇなこれ。
「ああ、それかい?それは『カプセルトイ』という物らしいよ。用途は『中の物を飛び出させる』らしいけど……何か分かるかい?」
「中の物を飛び出させる?中に何も無いみたいだが。」
「そこなんだよ。中には何も無い。入れる場所も分からない。飛び出させる方法も分からない。まあ、飛び出す場所位は分かるんだが……。」
「この手を入れるマークっぽいやつがあるところだろ?」
俺はそう言いながら手をそこに突っ込む。カパカパ音を鳴らしながら、開いたり、閉じたりした……なんだこれ?
「で、その真ん中にある物なんだが……どうやら回せそうなんだ。でも、ある程度で止められるから、力づくで回そうとしたら壊れるだろうね。」
「……この変な小さい穴はなんなんだろうな。」
俺が見つけた穴は小さく、硬貨がちょうど入りそうなほどの大きさだった。そういえば霖助は用途さえ分かれば何とかなると言っていたような気がするが……この様子だと無理そうだな。まあ、外の世界の道具なんて良く分からない物の方が多いが。
「……まあ、この変なやつについては置いておこう。それにちょうど人形も完成したし。ほら。」
「……そこまで時間が経っていないような気がするけど……確かに出来上がってるね。試しに動かしてみていいかい?」
「別にいいぞ。霖助の物なんだし。」
「なら、さっそく……おお、動いた。」
目の前の机の上で人形が腰を後ろに下げなおかつ顔はこちらを向いたまま両手を上に上げている……何そのポーズ。
「ふむ……使いこなせるには時間がかかりそうだね。」
「なるほどね。まあ、そろそろ宴会の準備をする時間だし、付いてきてくれ。」
「分かったよ。」
そうして俺達は博麗神社へと向かった。
「おっ、柳じゃない。じゃあ準備を始めるわ……霖之助さん?」
「久しぶりだね霊夢。宴会の準備とやらを手伝いに来たよ。」
「ということで助っ人の霖助だ。」
「いや、どういうことよ……まあ、柳が手伝いを頼んだだけって所でしょうけど。まあ、人手が増えるならそれに越したことはないわ。」
霊夢様は別に手伝いが増えたことに感謝はしてもそこまで……という感じのスタイルのようだ。霖助が手伝うと言ったとき、とても驚いた表情をしていたのは気のせいじゃないだろう。俺も立場がそっちだったら絶対に驚く。
「じゃあ、さっそく取りかかるわよ。柳は料理とかの準備を宜しく。霖之助さんはシートとかを引いてて。後、机ね。倉にある筈だから。」
「分かったよ。霊夢はどうするんだい?」
「私は酒の準備でもしてくるわ。じゃあ、宜しく頼むわね。」
「ああ、分かったよ。」
二人がそんな事を話ている間に俺は台所に向かう。そして、包丁、まな板、具材を用意し、様々な料理を作り始める。ピーマンの肉詰め、ご飯、きんぴらごぼう、味噌汁、酒のつまみ等々……機械的な事をやるのは得意なのだ。恐らく、それを霊夢様も知っているのだろう。て言うか、宴会で毎回俺は料理を作る係なのだし知ってて当然か。とりあえず俺がしている事は簡単。切る、煮込む、炊く、焼く、詰める、味見、それだけである……うん、簡単。まあ、霖助もシート敷くだけだし、霊夢様も酒の準備するだけなんだけどね。まあ、本当に恐ろしいのは宴会終了後だから。掃除とシートの片付け、酒の在庫確認、洗い物が俺達を襲う。まあ、洗い物は毎回俺がやり、霊夢様がその他という感じだったから霖助が入った今は霊夢様も少しは楽になるだろう……え?俺?前より増えないならなんの問題もない。式神だし……そんな事を考えていると料理が完成した。外からの声も騒がしくなっており、恐らく料理待ちか?そんなことを思いながら俺は料理を運び始めた。
「あっ、料理も来たみたいだな。」
「ふっ、私を待たせておいて平気でいられるとは……やはり、巫女の式神と言ったところか。」
「おい、どういう意味よ吸血鬼。」
「つまり、あたいは最強ってことね‼」
「違うと思うよ?」
「お嬢様、本当に私のお付け目は大丈夫なんですか?」
「咲夜、私を誰だと思っている?太陽はすでに落ちているのだぞ?」
「騒がしいわね……落ち着いて本も読めないわ。」
「確かにその通りだね。君は魔法使いと、言ったところかい?」
「ええ、そうよ。」
「……眠い……です……ね。」
「起きてた方が良いんじゃない?ナイフが貴女を狙ってるわよ。」
「ご忠告ありがって狙ってるナイフって貴女が持ってる物じゃないですか⁉」
……色々とカオス。あとうるさい。て言うか、もう酒を飲んでんのかよ……まあ、いいや。色々と諦めた俺は料理を机の上に置いていく。勿論、お箸や食器等も。俺が最後の料理を置く頃にはもう、みんなは料理に手を出し始めていた。所々ではもう、一発芸等をやっている所もあるようだ。とりあえず俺はそんな連中から離れて一人でウイスキーを飲む……うめぇ。幻想郷にウイスキーが広がらないだろうか。一人で作るのは結構厳しい所があるのだ。前作ってた場所はもういけないし。行けるけど行ったらアイツにバレるだろうからな……。
「こんな所で何をしているの?」
「見たら分かるだろ?酒飲んでんだよ、酒を。」
「いや、何で一人で飲んでるのかを、聞いてるのだけど……。」
「あまり、ガヤガヤしている所が得意じゃないんだよ。本当は霖助と飲むつもりだったが霖助は向こう行ってやがるし……というか、お付け目役は大丈夫なのか?」
さっき見た光景だとあのチビッ子に、使えているようだが……まさか、あのチビッ子が今回の異変の黒幕だったりするのか?
「暇を貰ったのよ。で、それは何を飲んでいるの?日本の酒には見えないけど。」
「ウイスキーだよ。幻想郷じゃあ、俺の作ってる分しかない。」
「ウイスキーね……そういえば私たちが持ってきた酒にもウイスキーがあるけどいるかしら?」
……えっ?
「今……何て言ったんだ……?」
「いや、ウイスキーがあるけどどうでしょうかと聞いてみたのだけど……。」
「神だ……神が居る……。」
「……えっ?」
俺はこの日、神に出会った。
次回ついにフランドール登場……。