「明日夢、いい加減起きなさい!」
今日もいつもの声で目が覚めた。
昨日は響鬼さんと久しぶりに話した興奮であまり寝付けなかったが、気持ちのいい朝を迎えた。
「おはよう!」
「どうしたのそんなすっきりした顔して。はやく朝御飯食べないと遅刻するよ。」
確かに母郁子の言う通りすごくすっきりしている。
響鬼さんに厳しく叱咤されてから一年間、自分なりに努力はしてきたつもりだった。自分にできることを、精一杯やってきた。
だが、自分の努力が人に誇れるものなのかは自信がなかった。
昨日響鬼さんの「鍛えたな、明日夢。」という言葉を聞いたときは目頭が熱くなった。
「行ってきまーす!」
今日もしっかり鍛えよう。達成感とやる気に溢れて家を出た。
「昨日は大変でしたね。香須美さんから聞きました。」
登校後すぐに声をかけられた。
明日夢と天美あきらは昨年度に続き、今年度も同じクラスだ。
文系の持田とは違うクラスになったため、明日夢と一緒にいる時間は一番長い人間かもしれない。
「ありがとう、でも京介にも助けられたし、天美さんがたちばなに連絡してくれたからだよ。」
明日夢は照れくさそうに頭を掻きながら、はにかんで答えた。
「持田さんも順調に回復してるそうです。明日には退院できるみたいです。」
あきらは少し小声で伝え、明日夢は安堵した表情を見せた。
昨日の持田ひとみが魔化魍に襲われた一件は内密に、
そして迅速に処理され、ひとみの意識が回復した後に
勢地朗から魔化魍について、猛士について、鬼について説明がひとみに行われた。
ひとみは時折混乱した様子を見せたものの、
その都度横で一緒に聞いていた明日夢を
チラチラ見ながら頷いていた。
昼食時、明日夢とあきらはベンチに並んで昼食を食べていた。
あきらが鬼の修行を引退してからはひとみも含めた3人だったが、
クラス替えからは2人で食べることが増えている。
桐谷京介が変身したこと、響鬼に認めてもらったこと、これからも響鬼が自分にとって人生の師匠であること、昨日あったことを明日夢は嬉しそうに話し、あきらはそれを真剣そうな眼差しで聞いていた。
「今日ちょっと付き合ってよ。」
明日夢からの急な誘いに、あきらは少し目を見開いた。
「持田もきっと天美さんに会いたいと思うからさ。
一緒に病院に行こうよ。」
あきらは動揺を隠しながら、少し口に入っているものを飲み込んだ。
「いいですね、行きましょう。」
にっこり笑いながら答えた。
放課後、病院にて。
「だいぶ元気そうになったじゃん。」
持田ひとみはだいぶ混乱がとけ、落ち着いた様子になっていた。
「本当にありがとうね、安達くん。」
持田はいつもよりやや真剣に、でもいつものおだやかさも含んだ表情で、頭を下げた。
「いいよいいよ、気にしないでよ。逆に恥ずかしくなっちゃうじゃん。」
明日夢は照れくさそうに笑った。
あきらはそれを微笑みながら眺めていた。
はっと思ってあきらが声をかけた。
「ちょっと私飲み物買ってきます。少し待っててください。」
「えっいいよ、おれが行ってくるよ。実はトイレも行ってきたいしさ。」
明日夢はそう言い、返事も聞かずに半ば強引に出ていった。
ひとみちゃんと二人きりで話すことはあまりなかったから少し緊張するなぁ。
あきらは申し訳なさそうに話しかけた。
「せっかく安達くんと二人きりになれるチャンスだったのに、ごめんなさい。」
ひとみからも明日夢からもお互いが好きだと言葉にしているのは聞いたことはないが、あきらは二人にある絆を感じとっていた。だが、二人とも同じように「自分たちはそんな関係じゃない」と否定していた。あきらにとってはそれが逆に二人の絆を実感する部分でもあった。
しかし…
「えー、私そんな残念そうな顔しちゃってた?ごめんね。」
思わぬひとみの反応に、あきらは驚いた。
「あのね、あきらちゃんに話したいことがあるんだけどぉ。私ね、安達くんのことが好きみたい。」
ひとみは本当に嬉しそうな表情であきらに言った。
「まだよく理解はできてないんだけど、魔化魍?に連れ去られて気がついたときには安達くんが私のこと支えてくれてて、そのときまだほんとはすごく不安だったけど、きっと大丈夫って思えたんだよねぇ。それで昨日の夜たちばなの店長さん?から話聞いてたときも安達くんがいたから、なんとか落ち着いていられたの!それで昨日の夜ずっと安達くんのこと考えてて、これはきっと恋なんだなって思ったんだぁ~。」
ひとみは斜め上を見上げながら、幸せそうに一気に話した。