仮面ライダー響鬼のその後   作:いしかわらいだー

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13話

学校からの帰り道。並んで下校する明日夢とあきら。

今日は時間割りの関係上、文系クラスよりもはやい下校時間である。そのため、ひとみは今日は一緒ではない。

「桐谷くん、久しぶりの登校でしたね。」

「なんか前の天美さんより学校に来てない気がするね。」

あきらは頷いた。明日夢は思い出したように続けた。

「持田、土日何してたのか結局教えてくれなかったなぁ。教えてくれないから逆に気になっちゃう。」

あきらは一瞬ビクッとしたが、表面には出さなかった。

「そうですね。今朝も答えてもらえませんでしたもんね。」

「そうなんだよ。ああいう時は大抵なんか隠してるんだけどね。」

明日夢は子供っぽく笑った。あきらは明日夢とひとみの関係性が羨ましくなった。やっぱり二人の間に絆を感じずにはいられなかった。

「ねえ天美さん。ひとつ聞いていい?」

「はい、なんですか?」

急に真剣な表情になった明日夢に少し身構えて答えるあきら。

「もし答えたくなかったらいいからね。天美さん、どうして鬼の修行をやめたの?」

突然の質問で驚いた。明日夢はこれまであまりあきらの鬼の修行について話題に出すことが少なかったからだ。それはあきらに対する気遣いからだったが、あきらにはそれはありがたかった。

なので、今回明日夢が聞いてきたのは彼なりにすごく迷って選んだことだとあきらにはわかった。そのため、あきらも正直に話すことにした。

「わかりました。少し長くなりますけどいいですか?」

明日夢は頷いた。明日夢の提案で二人は喫茶店に入ることにした。これもあえてたちばなを避けた明日夢の気遣いだった。

 

その頃学校では、文系クラスがようやく授業が終わったところだった。

「桐谷くん!」

「なんだ、持田か。もう体調は大丈夫なのかい?」

「うん。あの…、本当にありがとう、助けてくれて。」

お辞儀をするひとみ。京介は視線を合わせずに帰り支度をしながら応える。

「人を助けるのが僕の仕事だからね。また何かあったらいつでも助けてあげるよ。」

上からな物言いのまま、そう言って京介は立ち上がり、教室を出ていった。

 

その頃、たちばなの地下室では轟鬼と威吹鬼、そして響鬼が勢地朗と座っていた。

「なんですかおやっさん、話って。最近多いですね。」

「昨日轟鬼くんからある報告を受けてね。二人には話しておこうと思ったんだよ。」

「何があったんですか?」

響鬼と威吹鬼が尋ねる。轟鬼は3人の会話を真剣な表情で、黙って聞いていた。

「いや、実はね…。」

勢地朗は二人にひとみの顔をした姫のことを話した。昨日轟鬼から聞いた報告に加えて、弾鬼や鋭鬼もおそらく目撃していること、まだ関東圏だけでしか確認されていないこと、関東圏でも通常通り童子と姫が活動している事例も多いことなどが話された。勢地朗は昨日轟鬼から報告を受けてから、吉野や周辺の地域と連絡を取り合って情報を収集していたのだ。

「そんな、そんなバカな…。」

響鬼はなんとか絞り出したように声を出した。威吹鬼は声には出さずとも、目を見開いて呆気にとられていた。

「これからどうなっていくのか、これまでとどんな違いがあるのかまったくまだわかっていない状況だ。」

「実物と合間見えないとなんとも言えないところはありますけど、かなりやりにくそうですね。」

「ほんとだよ。姫と童子なんかあの顔しかイメージできないもん。」

「外見以外にも違うことはあるんだよ。」

「そうだ、傀儡みたいな金縛りの力もあるんだもんな。どう闘えばいいんだろうな。」

「もしすべての童子と姫がその力を持ったらぅて考えたら相当脅威ですね。」

「ひとまず、吉野にも対応を仰いでみるさ。現段階では如何せん情報が少なすぎるからね。」

響鬼たちはさらに警戒を強め、緊張感を高くしていた。

 

一方、どこかにある人気のない洋館では。

「あの新しいの、すごい力ね。」

身なりのいい女が男に声をかけた。ひとみよりも一回り以上年齢は上に見える顔だ。

「そうだろう。期待以上だよ。」

身なりのいい男は得意気に応えた。

「不都合なところは何かあるの?」

「正直まだ色々とあるよ。」

「見た感じ消費が激しそうね。」

「そうなんだ。ウニなんていくつあっても足りないよ。」

「もう鬼たちが闘ったのはいるの?」

「いないよ。そもそも闘う必要なんてないからね。」

男は女に向かって微笑み、女も同様に微笑み返した。

「まだまだ面白くなるのはこれからさ。」

 

明日夢とあきらは喫茶店に入った。

二人でコーヒーをひとつずつ頼んだ。

コーヒーが来るまでは二人は無言だったが、あきらが堰を切ったように話し始めた。

「私、ずっと魔化魍が憎かったんです…。昔両親を魔化魍に殺されて、それからずっと憎んでいたんです。」

「そうだったんだ…。」

明日夢は真剣な表情で聞いていた。必要以上に頷きもせず、表情も変えず、ただ真剣に話を聞いていた。

「憎いから、魔化魍を倒すために鬼になりたいと思いました。でもそれを威吹鬼さんや斬鬼さんに否定されて。二人は私のことをわかってくれない、二人に私の気持ちなんてわかるはずがないと思いました。両親を殺された私の気持ちなんて。」

あきらのつぶらなひとみは潤んできていた。

「そんなとき、私と同じように魔化魍を憎んでいた朱鬼さんという方に会ったんです。その人は自分の仇である魔化魍を倒すために、かつて斬鬼さんを犠牲にしようとして鬼をやめさせられた人です。でもその人なら私の気持ちをわかってくれると思いました。出会ったときに同じ匂いを感じたんです。」

あきらの透き通った頬を、一粒の涙が流れた。

「この人なら自分の気持ちをわかってくれる、そう思って朱鬼さんについていったんです。しかし、朱鬼さんは結局その魔化魍を倒すために、今度は私を犠牲にしようとしたんです。結局斬鬼さんが助けてくれはしたんですけど、私はもう誰を信じていいのかわからなくなってしまったんです。」

あきらはもう涙をとめることができなかった。

「それから数日、どうしたらその憎しみから解放されるか、自分は鬼になっていいのか、本当に鬼になりたいのか、ずっと考えていたんです。」

明日夢はあきらの目をずっと見ていた。

「そして、鬼にならないことを決めて、音笛を返したんです。」

あきらは少し落ち着いて、明日夢をじっと見つめた。

明日夢はあきらの瞳に吸い込まれるかと思った。

「まだこの選択が正しかったのかはわかりません。鬼の修行をやめて、私には何が残ったのかもわかりません。でも今、こうして安達くんや持田さんと過ごす時間は本当に充実していると思えているんです。そして、やっと私も、鍛える意味が見つかってきたんです。」

明日夢は大きく頷いた。あきらはにこっと笑った。

明日夢にはその笑顔が本当にかわいく愛しく見えた。

「ありがとうございます。話せて、真剣に聞いてもらえて、すごく嬉しかったです。」


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