どうやら本気でひとみは明日夢が好きみたいだ。
いや、前からそれには気づいていたはずだった。
きっといや、たぶん明日夢もひとみのことが好きだ。
恋愛経験のないあきらにもわかるぐらい、それは明白だった。
でもそれを初めて言葉として聞いて、少し二人が遠くに行った気がして寂しかった。
あきらは明日夢との出会いを思い出していた。
今思えば、出会ってすぐにあの一言は相当ひどかったな。その後にコーヒーを出してくれた安達くんは、本当によくできた人だと今なら思う。桐谷くんが修行をやめた私を「落ちこぼれ」と呼んだとき、初めて心から怒っている彼を見た気がする。実は昨日安達くんがひとみちゃんを助けたって聞いたとき、私がされわれていても助けにきてくれたのかなと一瞬思ってしまった。
二人は付き合ってもきっと今までのようにお互いに思い続けるのだろう。安達くんはどんな表情で愛情を伝えるんだろう。私は二人を素直に応援できるだろうか。二人は私の友達だ。きっと生まれて初めての。その二人が好きな人と結ばれようとしている。こんなおめでたいことはないだろう。
あきらは自己嫌悪に陥りながら、作り笑いをしてひとみの話を聞いて頷いた。
ちょうどそのとき、明日夢が帰ってきた。
「お待たせ~。コーヒー買おうと思ってたんだけど、持田寝れなくなったら困ると思って暖かいココアにした!」
あきらは、明日夢が空気を変えてくれたことにほっとしたのと同時に、飲み物を買いに行っている時もひとみのことを考えていたことに少し落ち込み、ここで落ち込む自分がいたのに動揺し、複雑な気持ちになった。
「来てくれてありがとうね。明日の午前中には退院できると思うから、また明日学校でね~。」
病院からの帰り道。あきらは明日夢と並ぶことに少し抵抗を感じた。
「元気そうでよかったですね。」
明日夢の様子をうかがいながら言ってみた。
「そうだね~。天美さんが来たからだよきっと。」
明日夢は笑顔で振り向いて答えた。不意に二人は目が合い、あきらは目をそらしてしまった。
「安達くんは持田さんをどう思ってるんですか?」
聞かずにおこうかと決めていたのだが、どうしても我慢できずに聞いてしまった。
「えええっ、どうしたのいきなり!」
急に焦る明日夢の様子に、あきらの心も焦っていた。
「うーん、ただの幼馴染みだよ。」
こっちを見ずに答える明日夢。きっと自分の中の恋愛の感情にまだ気づいてないんだなとあきらは思った。
「もし持田さんに彼氏ができたらどう思うんですか?」
言った後にこんなことを言って私はどうしたいんだろうと思った。自分でもどうして言ったのかわからなかった。でも明日夢がひとみのことで思い悩んでいる顔を見るのは心が締め付けられた。
「別におれは持田の彼氏でもなんでもないからさ、持田が好きなんならいいんじゃないかな。」
全然いいとは思ってなさそうな表情で明日夢は答えた。
その表情を見ると、また何かが心を重たくした。もう何も言葉は出てこなかった。何も聞きたくなかった。
「すみません。私よるところがあるので、失礼します。」
なんとかその一言を絞り出して、明日夢の方を見ないまま踵を変えた。去り際に、背中から「今日はありがとう、楽しかったよ!」と声が聞こえた。嬉しさと寂しさが、同時に心を包んだ。