仮面ライダー響鬼のその後   作:いしかわらいだー

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8話

「悩みが2つあるって言ってたけど、ひとつはわかったけど、もうひとつはなんなの?」

「それは…内緒です。」

「えぇぇ、なんで?」

あきらは嬉しそうな笑顔で、明日夢の方に振り返った。

「そうですねぇ、今はまだ秘密です!今日はありがとうございました。また学校で。」

頭を下げて、機嫌よく歩いていくあきらを、明日夢は立ち止まって眺めていた。

 

吉野までのバスではひとみと栞、香須美と威吹鬼が並んで座った。

吉野の本殿は山に囲まれており、一般の参拝者や観光客には見つからないようになっている。また、浄めの力が非常に強く、魔化魍などの被害が出ることはない。そのため、猛士以外の者では、まず入ることも見ることもできない。バスを下りてからは猛士の車での移動になる。

「今回は特別とのことです。確認ですが、決して口外しないようにしてください。」

「わかってます。」

ひとみは自分が信頼されていないようで少し苛立った。ひとみにしては珍しいことである。それぐらい非日常な機会であり、緊張しているのだ。

「私も仕事なので確認したんです。気を悪くされたのならごめんなさい。」

真剣な表情で謝る栞に、ひとみは笑顔で首を左右に振った。

「うん大丈夫だよ。ありがとう。」

 

たちばなの地下では勢地朗と轟鬼が二人で話していた。

「今日もおつかれさま。」

「いえいえ~、いくらでも働くっす!」

一度再起不能と診断されてから、轟鬼は鬼として活動できることへの情熱が、さらに加熱していた。

「サポーターとして、京介くんはどうだった?」

「がんばってましたよ!今日なんか、一緒にアミキリを倒したんですけど、童子をけっこう引き付けてくれてたんで、すごい闘いやすかったです。」

轟鬼は嬉しそうに京介の様子を話した。

「鬼として一人で闘うのは、まだ厳しいかな?」

「それはまだもう少しかかると思います。でもあいつなら、きっとすぐにそこまでいけますよ。」

予想と言うよりも願望に近い言葉だと勢地朗は感じた。

あきらや明日夢が修行をやめた今、京介は未来を担う重要な人材なのだ。しかもただでさえ鬼は慢性的に人材不足である。なので、響鬼だけでなく轟鬼や威吹鬼など、様々な鬼と組むことで、鬼としても人間としても成長することを勢地朗たちは願っているのだ。

 

その日の夕方、あきらは家でトレーニングをしていた。

鬼の修行はやめたが、それまで継続して続けていたトレーニングは習慣となっており、あきらの体力は修行をやめたときよりも向上していた。また、笛の練習もしており、それも依然よりもかなり上達していた。

無意識に修行を続けていることが、あきらが鬼になることを再び悩ませるきっかけにもなっていた。

また、今になってひとみに申し訳ないことをしたように思えていた。今日の一件で、明日夢が自分を好きになったなどとは思えないが、自分が明日夢の行動に心を踊らせ、顔を赤らめていたのは、ひとみに対する裏切りのように感じた。

 

ひとみたちは無事に吉野の本殿についた。

バスを下りてからは30分ほど歩いたが、ひとみは特別厳しい道のりのようには感じなかった。ただ、自分だけで帰るのは難しいような、複雑な道筋ではあったように思えた。

吉野の本殿は、真っ黒に塗られた木の外壁で囲まれ、中には神社のような建築の建物が5、6棟と、さらに大きなアパートのような建物が見えた。面積はかなり広く、ひとみは全体像を把握しきれなかった。

「みなさん、いらっしゃい。」

門をくぐって早々、年配の男性が話しかけていた。

「お久し振りです、お父さん。」

その男性は威吹鬼の父親のようだった。

背は威吹鬼よりもやや高く、がっちりしたような体型だったが、表情は柔らかく、人を落ち着かせることができる雰囲気があった。

栞がその人を見た瞬間、身体中に電流が流れたように背筋をのばしたのを見て、ひとみはこの人は偉い人だとわかった。

「こんにちは、立花香須美です。」

「お久し振りです。いつも威吹鬼がお世話になっています。」

香須美はいつも通り礼儀正しく振る舞っていたが、いつもより緊張しているように見えた。

「持田ひとみです。よろしくお願いします。」

続いてひとみも挨拶をした。

「君が持田さんか、事情は聞いています。巻き込んでしまって申し訳ない。ゆっくりと、休んでいってください。」

威吹鬼の父親は、優しく温かい表情だった。

 

明日夢はあきらと同じように、トレーニングに勤しんでいた。明日夢も鬼の修行後も鍛え続けており、それが先日京介との共闘を可能にしたのだった。

そして、明日夢はあきらのことを考えていた。

「天美さん、また鬼を目指すのかな…。」

あきらと出会ってから、明日夢はあきらのことを尊敬していた。自分の将来を決め、それに向けてがんばっている姿は、将来に不安を抱える明日夢にとってそれは眩い姿だった。そして、あまり明日夢にはよく理由が知らされてはいないが、あきらは鬼という目標を捨てた。あきらなりに考えぬいた末の決断であることは明日夢にでもわかった。なので、あきらに対する尊敬は変わることがなかった。そんな同級生が、初めて自分に悩みを打ち明けてくれた。それが素直に嬉しかったのだ。

「鬼の修行を再開したら、またあんまり学校来れなくなるのかな…。」

明日夢はなにかを振り払うかのように顔を左右に振った。

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