魔法少女リリカルなのは~転生者達の波瀾万丈な物語~ 作:白銀の勇者
さて、今回は繋ぎ回です
「ん……ぅ……」
夢咲は唐突に目が覚めた
重い瞼をゆっくりと上げていく
「確か……私……」
額に手を乗せ、足を少し曲げ、気持ち楽な姿勢を取る
「……負けたんだっけ。みっともなく」
額に乗せてた手を目の上に移動させる。また寝たい気分だった
が、一つ異変に気付いた
「ってここどこよ」
ガバッ!と体を無理矢理起こす
周りは……何と言うか明るい色の絵の具をぐちゃっと混ぜたような……かと言って全ての色が混ざりあって汚い色になってるのではなく、一つ一つの色がちゃんと独立している。そして、桃色が基調の何とも不思議な空間だった
「ここ……前に来たことが……」
頭に手を当てて何時ここに来たか思い出す
そう……あれは、シャマルお手製クッキーを食べて生死の境目をさ迷ってるときに……
「円環の理!!」
そうだ。円環の理だ
立ち上がり、周りを見渡す
そう、ここが円環の理なら、あの子がいる筈なのだ。優しく、そして強いあの神様が
「そんなにキョロキョロしなくてもここにいるよ?」
その、優しい声は自分の後ろから聞こえた
振り向き、その声の主を確認する
長い桃色の髪の毛の一部をツインテールにし、金色の吸い込まれそうな瞳を持ち、純白の、胸元が少し開いた派手なドレスを着ている、自分より年上の少女
名を
「鹿目……まどか」
「えへへ、数カ月ぶりだね?如月夢咲ちゃん?」
その少女……まどかは真っ白なテーブルを前に真っ白なイスに座って湯気の立っている紅茶の入ったティーカップとソーサーを持っている
「……そう、私、死んで……」
「死んでないよ?ちょっと意識だけこっちに来てもらっただけ」
金色の瞳を夢咲に向けながら、紅茶を少し飲む
「……どう?皆の魔女は。力になった?」
「えぇ、それはもう……」
「うん。よかった」
コトン。とソーサーに乗っけたティーカップをテーブルの上に置く
「でも……U-Dには勝てなかった……」
「……そうだね。あの子は強いよ。もしかしたら、ワルプルギスの夜よりも」
その何気ない一言に言葉が出ない
「次元世界を一つや二つ、ポンと消し飛ばしちゃえる過去の負の遺産……それがあの子だからね」
彼女は椅子から立ち上がり、夢咲とは別の方向に目を合わす
「……そうね」
その言葉を捻り出すだけで精一杯だった
「言うのなら……あの子は絶望の塊。そして、あの子も絶望している」
「え?」
「これを見て」
まどかは胸元のソウルジェムを取り外し、鏡のようなものに変化させる
それの表面に何かの映像が浮かび上がる
その映像を見た瞬間、夢咲は目を見開いた
「これは……こいつは!」
「わたしがあなたの世界を見て一番に見つけた……まさに負そのものを持つ人物」
その映像にはゲスい人を見下したような顔をしているその人物。そして、その人物の発する黒いモヤのようなものを当てられ、苦しむU-Dが映し出されていた
「そんな……死んだ筈じゃ……闇倉!!」
吐き気を催すような顔を浮かべる人物……それはかつて玲音とシャロが二人がかりで倒した闇倉だった
「あの子はこの人に半ば強制的にシステムを暴走させられてるの。史実よりも質が悪いくらいに……」
「史実……?何のこと?」
「何でもないよ……ただ、この子をどうにかできる対の力を持つ人も……今は」
まどかがさらに他の映像を見せる
そこには、祈梨と知らない人物に攻撃を仕掛けている玲音が映されていた
玲音の使ってる力……それは、あの闇倉と同じような物に見えた
あの、金色や青緑色の正義の力とは違う……どす黒く、血のように赤い力
「そんな……玲音が……」
闇倉に対し絶対的な力を持つ玲音が既に敵の手に落ちている
最早U-Dをなんとかするには……
「でも、夢咲ちゃんにも出来る」
「……え?」
思わずまどかに聞き返す
「わたしの力……ちょっとだけだけど……夢咲ちゃんにあげるね」
まどかの手のひらに現れた小さな……けれども大きな力を持つ白く光る球体
それを夢咲のソウルジェムを無理矢理具現化させ、そのソウルジェムにくっつけ、同化させる
「わたしが魔法少女を救うための力……これなら、あの子を助けれるかもしれない」
自身のソウルジェムを胸元に戻し、にっこりと人懐っこそうな笑みを浮かべるまどか
「これで、助けてあげて。わたしの代わりに」
「……私に……出来るの?」
「諦めちゃダメ。魔法少女は条理を覆す存在なんだから」
ソウルジェムごと夢咲の手を自分の手で包み込む
「……分かった。やってみるわ」
「うん。それじゃあ、頑張ってね」
まどかが夢咲の額にチョン。と手を当てると、夢咲はスーッ……と足元から消えていき、円環の理から消えていった
「……で、何時まで見てるのかな?」
まどかはさっきまでの笑みとは別に、険しい表情を浮かべ、自身の武器である弓を召喚する
「いいや?最強の魔法少女サマが一体全体何するのか気になったから見学してただけだ」
「……答えになってない気がするよ」
まどかは魔力で作り出した矢を魔力の弦に当て、引き絞りながらくるりと踵を返す
「闇倉君……だったかな。君は一度死んでるのに懲りないね」
後ろにいたのは闇倉だった
円環の理の一部がどす黒く染まっている
「ア?懲りる?何にだ?」
「地獄で体を作りそこに自分の魂を無理矢理詰めて……そうまでして生に執着する?」
自分のやろうとした事に何の罪悪感も無いのか。逆に関心してしまう
「人を殺して女を奪って気に入らない人をまた殺す……一度死んでもそれに懲りないの?」
「……テメェ、俺のやり方にケチ付ける気か」
「人として。人として……その考え方は終わってるよ?」
段々と口調がキツくなっているのが自分でもわかる
「お前……分かんねぇのか?俺がここにいる時点でもう人の域越してるって事によォ」
「でも、君は人だよ。現人神でも無い。ただの人」
「ならよォ……」
闇倉がニヤリ。と人の感情を刺激するような笑みを浮かべる
「テメェを殺せば俺は神と名乗れるか?いや、その場合は神殺しか?」
「……分かった。君はわたしがここで仕留める」
話しても無駄だ。闇倉は自分のやることは全て咎められず、正しい事だと思っている
人殺し?万引き?強姦?強盗?そんなの関係無い。自分のやることは悪くない
狂っている
明らかに考え方が狂っている
人の事なんてこれっぽっちも思っていない
世界は自分を中心に回っている?そんな考え方なんかじゃない
自分の満足するように生きる。人なんて知らない。善悪なんて関係無い。自分が満足するように生きていく
人が殺したくなった。なら殺す。何か欲しくなった。なら盗む。女に飢えてきた。ならそこら辺の女を犯す。金が欲しくなった。なら盗ってくる
そんな人間、他の神が許しても元人間である自分が許さない
「え?テメェのような小娘が俺に勝てるとでも?」
円環の理……自分の空間を少しでありなから侵食する力
かつて、親友が自分を裂いて新たな世界を作った……その時と同じ位の力……いや、もしかしたらそれよりも強い力を目の前の男は持っている。そう考えても良かった
自分が負ければ自分の世界の魔法少女は……考えるのはそこで止めた
「……かかってくるんならわたしも全力を出すよ?」
世界を作り変える程の魔力。その半分程を一気に開放する
その瞬間、闇倉の顔が歪む
「……チッ、ここは引くか」
ここで引く……つまり、闇倉は自分に勝てない
「逃がさない!」
因果の糸を矢に束ね、解き放つ
放たれた矢は闇倉の頬を掠った
(外した!?)
自分の弓の腕はそこまで悪くはない
しかも魔法の矢だからある程度のコントロールは放ったあとでも出来る
数秒後、闇倉の周囲の空間が歪み、一人の少年が現れた
「テメェに助けられたか……まぁいい。引くぞ」
闇倉が円環の理から消えた
「光……玲音君だね」
現れた少年……玲音に声をかける
「そうだ」
「……君をここで救う」
逃げられるだろう……けれど、挑発に乗ってくれたなら、チャンスはある
「君程度、楽勝だしね」
嫌味ったらしく言う
実際、今の玲音になら楽勝だろう。何時もの玲音ならカウンター技から必殺技を駆使して互角以上に渡り合うだろうが
「……俺は時が来るまでは戦わないことにしている」
「じゃあ……闇倉君を倒しに行くって言ったら?」
「ここから出られないんだろう?いや、お前の世界には行けるのか。だが、他の世界に行けるほどお前の力は万能じゃない」
そうでなければ夢咲をわざわざここに呼び出す意図が分らない。と加えて
「……」
「精々あいつらが絶望していく様をそこで眺めていろ」
玲音の後ろに黒いもやが発生する
「ッ!」
それを見た瞬間、反射的に矢を発射する
が、玲音はその前にもやの中に入り、消えていった
矢はどこまでも飛んでいく
「……もうわたしには出来る事が無いけど」
イスに座り、すっかりぬるくなった紅茶に口をつける
「頑張って……」
何となく上を見て、紅茶を一気に飲み干した
テーブルの上に置いたソーサーとカップがカチャン。と陶器独特の音を立てた
「……ハッ!」
現実の夢咲が目を覚まし、上半身を勢い良く起こす
「……ただの……夢?」
左手で視界を邪魔する前髪を少しだけかき上げる
その時、指輪となっている自身のソウルジェムが白く、淡く光っているのが分かった
「夢……じゃない」
ソウルジェムを実体化させると、確かに自分の物とは何か別の力が感じ取れた
「行かないと……U-Dを助けに!」
そのまま下半身を寝かされていたベットから出し、立ち上がろうとする
が、下半身に力が入らず、ドサッ……と床に沈む
「この程度で……」
散々体に風穴を開けられたからだろうか?死にかけたからだろうか?
力が入らない理由が分からないが、魔力で無理矢理体を動かし、立ち上がる
「皆にも知らせないと……闇倉の事……」
窓からでも飛び立とう。そう思い、窓のさんに足をかける
が、
「なぁあんた……何急いでるんだ?」
後ろから声をかけられ、足を止める
「……あの子を助けるの」
「そうか……だけど、もうちょっとゆっくりでもいいんじゃないか?」
声をかけた人物はコトン。と机の上に何かを置く
チャポン。と音がしたことから、入ってるのは水かお湯。もしくは飲み物だろう
「……そうね。急ぐなんて私らしくないわね」
まどかと会ったことで心の中に熱い炎でも灯ったのか。そんな事を思いながらも深呼吸をする
急ぐなんてめんどくさがりの自分に似合わない。そう思って
振り返ると、そこには見知らぬ、自分より少し年上であろう少年がいた
「俺は秋山直人。直るって漢字に人って漢字で直人だ」
「……如月夢咲よ。夢が咲くと書いて夢咲」
「へぇ、いい名前だな。ほら、タオルでも使うか?濡らそうか?」
湯気が立ってない所を見ると冷水だろう。じゃあちょっと濡らして。と頼むと、直人は水にタオルをつけ、すぐに持ち上げて絞った
その間にベッドの上に座りなおす。魔法も解くと、体にほとんど力が入らない
「ほら」
「ありがと」
受け取ったタオルは少し湿ってる程度だった
それを広げて顔に当てる。冷たいタオルが心地いい
だが、まだ九月に入ったばかり。それなりに熱い
顔の汗を拭き終わったらそれを首にかけた。ひんやりとしたタオルが首筋に当たり、体全体に冷たさが染み渡る
「それにしても君……ここに運ばれてきた時は心臓に風穴あいてたぞ。大丈夫なのか?」
「えぇ……現に生きてるわ」
自分の左胸に手を当てる。トクン、トクン。と規則正しく心臓は動いている
「……で、ここはどこなの?」
「アースラスタッフが住んでるアパートの内の一室。エイミィさんの部屋だとよ」
「あぁ、あの人の……」
アースラの中にいた情報処理担当であろう茶髪の人物を思い出す
「で、あなたは?」
「……信じてもらえないかもしれないけど、異世界人ってやつだな」
異世界人。俄には信じ難いが、転生者なんてものがいるんだ。何とか信じられる
「……信じるわ」
「マジか」
ビックリしたのか、直人は目をちょっと大きく開いている
そして、ふと思った。もしかしたら目の前の人物も転生者なのかと
なんでそう思ったのかは分からないが、言うならば直感だろう
「あなた……転生者って言葉に聞き覚えない?」
まぁ、無いだろう。そう思ってたが、直人は目を見開いた
「……まさか、お前も」
「……そのまさか……って事はあなたは転生者なのね」
「あ、あぁ。俺は転生者だ」
夢咲の言葉を肯定する直人
「まぁ、特典とかは聞くつもりはないけど……私、どれくらい寝てた?」
「二時間と経ってねぇよ。呆れる程の回復力だ」
「そう…………ハッ!そうだ!」
夢咲はソウルジェムを取り出し、変身する
「お、おい!?」
そして、左手に時を止めるための盾を出現させる
盾は……原型をとどめて居なかった
歯車は幾つか欠け、無くなり、砂時計の部分の砂は漏れてしまったのか、無くなっている
「そんな……」
時を止めるため、魔力を流し込む。が、カチッという音は鳴らず、歯車は虚しく空回りする
盾の中の収納空間に手を突っ込む。幸い、そこは無事だったようで、リボルバー型拳銃、44マグナムを試しに取り出した
慣れた手付きでシリンダーを取り出し、ロッドを叩き弾を排出する
「そ、それ……本物か?」
「えぇ……まぁ、使う機会なんて滅多にないんだけどね……持ってみる?」
「良いのか?」
「減るもんじゃないしね。弾は入ってないわよ」
シリンダーを手首をスナップさせて戻し、直人にマグナムを投げ渡す
うわっ!と言いながらマグナムを手にし、鑑賞する
夢咲は排出した弾を盾に戻し、AN-94……通称アバカンを取り出し、マガジンを取り外して中身を確認し、弾があることを確認してマガジンを戻してレバーをガチャッと引き、盾の中に戻す
「サンキュ。もういいよ」
「そう。そのまま返して」
直人がマグナムを夢咲に投げ返す
夢咲はマグナムを受け取り、クイックローダーを取り出してシリンダーを取り出し、弾を詰め込みクイックローダーを戻して手首をスナップさせてシリンダーを元に戻す
そして、窓の外に銃口を向け一発放つ
ドン!!という音と共に硝煙が銃口から上がる。それと同時に夢咲の肩からゴキッ!と音が鳴った
「……マグナムなんて片手で撃つものじゃないしね」
本来はその衝撃故に両手でしっかりと拳銃を握り、力を入れてから撃つような銃だ。子供の体である夢咲が片手でマグナムなんて撃ったら肩が外れるのは当たり前だろう。いや、外れるだけで済んだのは幸運だったのか
痛覚を消し、片手で無理矢理肩をはめる
「ん……治った」
「おま……いきなり撃つ奴がいるか……」
「動作確認よ。動作確認」
マグナムを盾の中に戻す
「……っつか、マグナムってそんなに反動強かったのか……」
「片手で撃ったら肩が丈夫じゃない人間ならまず肩が外れるわ」
さっきの私がいい例だ。と付け加えた
盾を振ってもバラバラと中のものは落ちてこない。壊れたのは時間停止機能だけのようだ
ただ、時間停止を菱形の盾でしか出来なくなったのはちょっと痛手だ
「直るかしら……これ……」
「ん~……スペアパーツとか無いのか?」
「えぇ、完全にワンオフの……」
そこまで言った時、バン!!と扉が開いた
「な、直人くん!今のって銃声に聞こえたけど大丈夫やった!?」
「お、おう。何にも無かったよ」
入ってきたのははやて……なのだが、直人の世界のはやてだった
まぁ、夢咲はそんな事いざ知らず
「はやて……?あ、さっきは大丈夫だった?」
と、こっちの世界のはやてと勘違いして話しかけた
結果
「えっと……どなた?」
「え゛……」
ピキッ!と夢咲が固まる
「あ、えっとな……こいつは俺の世界のはやてなんだよ。巻き込まれてさ」
「そ、そう……あなたの世界の……」
ホッとしながら盾を消す
「で、直人くん。さっきの銃声は?」
「あいつのマグナムだよ……」
「……え?マグナム?」
「これよ。試し撃ちで弾丸を外に発射しただけよ」
もう一度盾を出してマグナムを取り出し、すぐに盾に仕舞う
「まぁ、そう使わないから安心して」
「そう簡単に使ったら死人が出るもんな……」
「で、如月……」
「夢咲でいいわよ。はやても」
「じゃあ、夢咲。暫くは休め。U-Dってやつは消えてからまだ見つかっていない」
「そう……」
夢咲はソウルジェムを取り出し、それを見つめる
ソウルジェムは密かに点滅していた
この反応はU-Dの物……なのだが、何か違和感があった
何か、別の空間にいるような、変な違和感
「じゃあ、暫くは身体の至る所を治しておくわ……力が全く入らないもの」
「そうか。じゃあ、タオル濡らすための水はここ。後で飲み物持ってくる」
「わたしが残ろか?」
「いいわ。一人でも大丈夫よ」
「らしい。行こうぜ、はやて」
「せやね。お大事にな」
そう言って、直人とはやて(異世界)は部屋から出ていった
それを確認し、未来予知でこの部屋に暫く来ないことを確認し、ベッドを降り、立ち上がった
「方角すら分からない……けど、行かなきゃ。闇の書には私がケリをつける……そして、玲音がいたなら、玲音も助ける。この力で」
まともに動かない体を無理矢理動かし、窓から飛び出そうとする
が、飛び出したと思った瞬間、夢咲はベッドの上にいた
「……え?」
何が起こった。自分は窓から飛び出したのに、なんでまたベッドで寝ている
そう思って立ち上がろうとし、上半身を起こすと、ベッドの横に見知らぬ三人組がいた
「お兄ちゃんから夢咲さんを見ててくれって言われたから来てみたけど……」
「自分の体の心配しないところが夢咲さんらしいと言うか……」
その三人はそんな談笑をしていた
夢咲はマグナムを取り出し、その内の一人、ピンクの髪の少女の眉間に照準を合わせる
「何者……?闇倉の手先って言うなら……」
「し、質量兵器……お、落ち着いて……」
ピンクの髪の少女はマグナムを見て、落ち着いてくれと説得するが、夢咲はトリガーに当てた人差し指に力を込める
狙いは眉間……ではなく、髪の毛を数本掠める程度の所
そして、トリガーを引く。ドン!!という銃声と共に少女の顔の横に向かって弾丸が飛んでいく
「ッ!」
弾丸が少女の髪を掠める前に、弾丸は空中で止まった
まるで、見えない何かに阻まれたかのように
「じ、実弾……」
弾丸が少女の手の平に移動し、その弾丸を少女は見る
流石に麻酔弾かなんかだろうと思っていたのか、冷や汗がたらりとたれる
「いっつ……」
またマグナムを片手で撃った事で肩が外れたが、すぐに治し、両手でマグナムを握り少女に向けて構える
「ちょっと落ち着いてください!」
ピンクの髪の少女の横にいた赤髪の少年が夢咲に呼びかける
「ほ、ほら、こっちには敵意はないから落ち着いて……あはは……」
赤髪の少年とは逆の隣側にいた紫髪の少女も苦笑いを浮かべて夢咲を止める
「やかましいわよ……あんたら……何が目的?」
「だから夢咲さんの様子を……」
「にしては妙な技を使うわね……」
夢咲は照準をピンク髪の少女の太もも辺りに合わせる
「取り敢えず……地に伏せてて貰うわよ!」
ドンドンドン!!と三発のマグナム弾を少女の足に向けて発射する
「無駄!」
弾丸はチュイン!と跳弾するような音と共に窓の外へと飛んでいく
少女はその間に一気に夢咲に近付き、マグナムを蹴りあげる
そして、夢咲の両手を外側に向けて弾き、鳩尾に拳を一発
「かはっ……!」
予想以上の一撃にくの字に体が曲がる
「当て身」
少女の冷静な声と共に振り下ろされた手刀が首筋に当たり、夢咲の意識を刈り取った
「ふぅ……」
「キャロ!大丈夫!?」
「大丈夫だよ、エリオくん」
「いいから夢咲さんをベッドの上に戻しましょう」
「じゃあ手伝って。ルーちゃん」
三人組……キャロ、エリオ、ルーテシアは夢咲をベッドの上に寝かせる
回復力は誰よりも凄い夢咲の事だ。一時間もすれば先の戦闘での負傷も全て治ってまた戦えるだろう
三人はそれを知っている
「せめて完全回復するまでここにいよっか」
「そうだね。夢咲さんの事だからまた一人で行っちゃうかもだし」
「條助さんにも頼まれたし……あ~、はやく玲音さん見つからないかな~」
この三人は玲音が敵の手に落ちてるとは、まだ知らない
「ハァァ!」
「ぐっ!」
「ふっ、貴様、中々やるな」
「じゃあ逃げてもいいですか?正直早く逃げたいですマジで」
「逃がさん!」
「ちくせう!!」
『頑張って、トーマ!』
海鳴の上空。そこではシグナムとトーマが戦っていた
何故こうなったかと言うと、まずシグナムがトーマの闇の欠片を見つける
そしてそれを粉砕玉砕大喝さ……ではなく叩っ斬った
さらに遠くから見ていたトーマを発見。もしやはやてが逃した異世界からの来訪者かと思い、話しかけたところしどろもどろしたため、取り敢えず斬って気絶させて連れていこうという謎の結論に至ったからだ
「あはは!攻撃は通らねぇ、ディバイドは効かねぇ、通用する魔法もねぇ!」
『いけない!トーマが壊れ始めた!』
「駆逐してやる……この世から、一匹残ら……」
『トーマ!それは中の人のネタだよ!』
なんだか愉快なことになってるが、ちゃんと戦っているトーマであった
そんな中、シグナムに念話が飛んできた
『シグナム、ピンクの人……キリエさんだったかしら?その人を捕まえたわ』
『そうか。こっちでも何だか愉快な事になってる黒騎士を見つけた』
『それって……はやてちゃんが逃がしたっていう?』
『そうだ。何とかして捕まえる』
『頑張ってね』
念話を終了する
その間、トーマは
「うぉぉぉ!星龍斬!!」
『トーマ!それも違う!!』
(……ツッコミが居ないとこうなるのか)
少なくとも自分はツッコミを身につけてないのでどうにもできないと思うシグナムだった
と、その時
「うぉっ!?」
空間が揺れた
「な、なんだか知らないけど退散!!」
その隙に脱兎の如くトーマは逃げ出した
「む……逃げられたか……」
仕方なくレヴァンティンを鞘に収めるシグナム
「……一旦皆と合流するか。先程の揺れも気になる」
シグナムは他のヴォルケンリッターと合流するため、念話で会話しながら動き始めた
そして、シャマルがキリエを逃がした事を聞くのは数分後の話
「ねぇ、さっきの揺れ、なんだろ?」
「僕にもよく分からないけど……」
三人で顔を見合わせる
「……どうやらあっちみたい」
ルーテシアが懐から白と青の長方形の物体を取り出し、そう呟いた
「え?」
「この子達がそう言ってる」
また三人で顔を見合わせる
「……行ってみよっか」
「けど夢咲さんが……」
「じゃあ……」
キャロが立ち上がり、夢咲の鳩尾に狙いをつけて、
「ごめんなさい!!」
拳を思いっきり振りおろした
「げふぅっ!!」
血でも出そうなくらいの勢いで殴られた夢咲は数秒手を上に伸ばして痙攣した後、パタリと力なく手を下ろした
口からは胃液なのかよだれなのかそれとも混ざった物なのか分からない液体が垂れている
「……やり過ぎちゃった」
「行こっか。ルーテシア」
「そうね、エリオ」
「共犯者確保!!」
「されるか!」
「三十六計逃げるにしかず!!」
慌ただしく窓から飛びさっていく三人であった
夢咲は放置された。哀れ
数分後、キャロ、エリオ、ルーテシアの三人はルーテシアの案内で海鳴の海から少し離れたところにたどり着いた
そこでは、アミタがボロボロのキリエを守りながら辛そうに戦っていた
「キリエ……!逃げな……さい!」
アミタの手にはU-Dから伸びる、夢咲を突き刺したのと同じような小さな槍が刺さっていた
「姉妹もろとも逃さない。ここで消えてしまった方が君達にとってもいいだろう」
「そんな訳……無い!痛かろうが苦しかろうが辛かろうが……前を向いて歩いて行けるようにに人の心は出来ているんです!!」
アミタが右手に持った銃をU-Dへと突きつける
「あれ、もう決着が……」
「って、あれユーリさんじゃ……」
「ユーリさんだったらあの魔法でも多分倒しきれない!」
ユーリ。それはU-Dの事をさしているのだろうか
そして、アミタが渾身の術式を発動する
「ヴァリアントザッパー!オーバーブラスト!!」
アミタが放ったその術式は
「なら、その人の心と共にこの場で潰れろ」
U-Dのその冷徹な一言と共に打ち消された
が、
「やるしかない……ザ・ワールド!!」
アミタの放った魔法をU-Dが打ち消し、U-Dがアミタへ反撃する僅かな時間でキャロが動いた
距離は百メートル程。全力で飛んだら三秒もかからない
そして、キャロから黄色の鎧の人……いや、黄色の『スタンド』が現れた
名前はザ・ワールド
その能力は
「時を……止めて!!」
世界を支配する能力
キャロの声と共に世界はキャロの支配下となる
U-Dが気付いた時には、アミタとキリエはキャロのザ・ワールドが両脇に抱えていた
ザ・ワールドは二人を離し、キャロの隣へと行く
「ユーリさんのその格好……見た事ない……」
「世界を支配する能力か……」
「まさか、本当はわたし達の知らないところで何か事件が起こってたんじゃ……いや、起こってるみたい……」
キャロは自身のデバイス、ケリュケイオンを起動する
未来で作られた自分専用のデバイス、ケリュケイオン
近距離から遠距離まで形状を変えることでどの距離からでも戦える万能デバイスだ
その中で近距離用の形状、両刃刀を選択。両刃刀を構える
「君はこの時間の人間ではない……」
「そうだよ。それで、ユーリさんはどうするの?」
「ただ、潰すだけ……!」
U-Dの翼が巨大な手となり、キャロを捕まえようと迫ってくる
「ザ・ワールド!時を……止めて!!」
魔法少女まどか☆マギカより、鹿目まどかでした
最後のに関しては次回の後書きで元ネタを入れます
そんな訳でキャロさん軽くチートになってます。仕方ないね
次回はキャロ&エリオ&ルーテシアVSU-Dです