Aqours〜恋愛物語〜   作:ジャガピー

1 / 7
よろしくお願いします。



蜜柑色ダイアリー #高海千歌

心地よい 日差しが 窓から差し込む。ずっと鳴り続ける 目覚まし時計の横で、朝の日差しに顔を照らされ やっとその少女は 起き上がった。

オレンジの髪をした その少女は まだ虚ろな目でその目覚まし時計を見る。

 

「うそ?!やっばい 遅刻だ!」

 

その少女こと 高海千歌は 大慌てで 壁に掛けてある制服に着替え、支度をし、下で待っているであろう3人の元へ走り出す。

 

 

「千歌〜〜 朝ごはん食べないの?」

 

 

そんな姉の声が聞こえるが それどころではない彼女は いらないと 大声で返し 家を飛び出した。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

いつものように 俺 柏木悠斗は ひとりの幼馴染を 待っていた。

 

「遅っいねー 千歌ちゃん。起こしに行った方がいいかなぁ。。」

 

そんな風に眉を潜めて心配する銀髪の少女 渡辺曜の横で俺は またか、と呟いた。

 

「最近は早起きできるようになったとか 言ってたのにね」

 

 

ワインレッドの真っ直ぐな髪を持つ 桜内梨子という女性は苦笑いしながらそう言った。

 

「こればっかりは 治らないんだな。もう 一種の才能だな」

 

そんなこんなで 最終乗らないと遅刻してしまう 時間のバスがバス停に着いた。

 

「仕方ない もう行こう」

 

俺はそう言い バス停の方に歩く。

 

「ダイヤさんに もう遅刻しませんって 約束してたのになぁ」

 

「え 千歌って そんな約束 ダイヤさんにしてたの?」

 

バスに乗りながらそんな会話をしていると 待ったぁー!っと一人の少女が大きな声で乗り込んで来た。

 

「ぎ、ぎりぎりセーフだ。」

 

「さっすが 千歌ちゃん!こういう所は 運がいいね!」

 

「まぁね! 寝坊しても 遅刻はしてないからね!」

 

へへん!と踏ん反り返っている千歌は俺の方を向いた。

 

「ゆーくん!おはよう!」

 

「おはよう 千歌」

 

こんな 危なっかしい少女とは もうかなり長い付き合いになる。

 

こんな子供っぽい彼女だが、ついこの間まで aqours という名前のグループで スクールアイドル活動をしていた。俺も少しばかり お手伝いさせて貰った。先輩達が卒業を迎え、解散となったのだが、全国に名を轟かせたグループであり、それなりの有名人である。

 

 

そして 俺の好きな人でもある。

 

 

「寝坊する癖は 治らないんだな 相変わらず」

 

「ゆーくんよ、人間というものは 欲望には勝てないのだよ。睡魔も同じなのさ」

 

「そんなポジティブ思考は 羨ましくない」

 

 

こんな 中身のない会話をしながら いつもの後ろの席に着く。

 

「私は 曜ちゃんの よこー!」

 

そう言い 千歌は 曜の横に腰かけたので 俺は桜内の横に座る。

 

「高校3年になって どうだ? 果南さんとか卒業しちゃったけど、うまくいってるのか?」

 

「前とあまり変わらないわよ 千歌ちゃんもずーっと 教室であんな感じだし、曜ちゃんは 飛び込みの部活に戻ったって言ってたし」

 

果南さん ダイヤさん 鞠莉さん 3年が卒業して すでに2ヶ月が経っていた。グループが解散して 卒業した後 どうなったか 気になっていた。

 

「今の2年生ちゃんは?今なにしてるの?」

 

「ルビィちゃんと花丸ちゃんはいつも通りな感じよ まぁ善子ちゃんも、、、相変わらずだし」

 

おい 桜内よ、津島の時だけ 変な間があったぞ。

 

「まあ、大方の予想はついた。」

 

 

「ああ そうだ 今度借りてた 本の件なんだけど 全部 読み終わりそうなんだけど、もうちょっと待って欲しいの。今度何か 奢るから」

 

「別にいいよ、本一冊くらい」

 

「そうはいかないよ。なにか欲しい物ある?」

 

「いいって、律儀だなぁ 桜内は」

 

「貸し借りは公平にしないとね。なにが欲しい?今度一緒になにか買いに行く?」

 

 

そんなこんな話を桜内としているが、前まではこうはいかなかった。転校して来た一年前の時は 内気でおどおどして 全然話してくれなかったが、ここ最近では バスの席二人でも なんの問題もなく 話せるようなった。

 

「あの内気な桜内が、俺に買い物に誘ってくれるなんて、一年で人は成長するもんなんだなあ」

 

「ねぇ なんか バカにしてない?」

 

「全くしてない してない」

 

そんな会話をしていると ふと 横から視線を感じ、見てみると 千歌とバッチリ目があった。

 

 

なんとも読み取りづらいというか、冷たさや 怖さを感じるような そんな表情をして 彼女は目をそらし 曜との会話に 戻った。

 

「どうしたの?外になにか見えた?」

 

「いや、そういう訳ではないんだけど、」

 

一体 何だ 千歌のやつ そう考えていると、浦の星にバスが着いた。

 

 

「じゃあね 柏木くん」

 

「おう 気をつけて」

 

「ゆうくん ヨーソロー!行ってきます!」

 

「ヨーソロー いってら〜」

 

最後に千歌の方に目をやると

 

「ゆーくん 遅刻しちゃダメだよ〜 じゃあねー!」

 

いや、遅刻しそうなのはお前の原因なんだが。千歌はいつも通りに戻っていた。

 

「気のせいかな?」

 

そう自分で答えを出し。一人寂しくなったバスの中 イヤホンを嵌めて 窓の外の海を眺めた。

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

沈みかけた太陽が 水平線上を 幻想的な色に染め上げている。俺はそんな海の上を 定期船から見ていた。学校が終わり、ある人物に会うために、とあるダイビングショップに向かっている。

 

「やっ 悠斗 遅かったね」

 

「日直だったもんで」

 

海色の髪を後ろで縛り、ウエットスーツに身を包んだこのダイビングショップの店員が 会おうとしていた人 松浦果南である。

 

彼女は卒業して 大学には行かず、家督であるこのダイビングショップを継いだのだ。

 

「平日は お客さん あまり来ないんだよねー。だから早く暇だから 悠斗に来て かまって欲しくて待ってたんだよ」

 

「それで 話ってなんですか?」

 

「あぁ 千歌達の現状を知りたくてね、それから 敬語禁止ってずっと前から言ってるのに治してくれないね」

 

そう言い 冷たい目で俺を睨みつけてくる

 

「そう言うけど、果南さんは年上ですし。」

 

 

「あーあ。昔はあんなに 果南ちゃん 果南ちゃんって 呼んでくれてたのになぁ」

 

小学生くらいまで 特に 気にする事も無かったのだが、中学生という思春期が到来してから、周りの男友達とかに 冷やかされたりして、色々気にしたっけなぁ。

 

「悠斗に敬語使われると なんか 傷つくんだよ。なんか距離を取られてるみたいでさ」

 

「傷つく? そ、そんなに?」

 

「なーんか 意識しちゃってるみたいだけど、そんな事気にしてないし。千歌や曜ちゃんも 悠斗が前みたいに一緒に遊んでくれなくなったって 本気で悩んでたり するんだからね。」

 

「悩むって言ったって 今日もあいつのせいで 俺たち遅刻しそうになったところですよ?」

 

「女の子の悩みは 複雑なの 悠斗が思ってる以上に色々考えてるんだから。そ、れ、と、敬語禁止 さん付け禁止 。次したら 思いっきり 人前でハグしてやる」

 

 

「わかったよ。果南さん」

 

つーん。そんな効果音が聞こえるくらい あからさまにそっぽを向いた。

 

「返事しませーん」

 

子供みたいだな

 

「わっかったよ 果南」

 

「はい よろしい。それで 千歌達はどーなのさ」

 

「本人に聞いたら?そっちの方が詳しく知れるでしょ」

 

「こういうのは いつも横から見てる 第三者に聞くのが1番なの」

 

「いつもと変わらずだよ。なにも変わり映えしないし」

 

「ほんとうに?変わらない?」

 

果南が 真っ直ぐ俺の目を見つめて言ってきた。

 

「ほ、ほんとだって」

 

「ま、そういうのは 期待してないから いいけどね」

 

「なんの話してるんだ」

 

「ほんとうに気づかないの?」

 

 

それを聞いて 今日の千歌と目があった時のことを思い出した。

 

「いや、まぁ いいんだけどね、 悠斗の方はどーなの? 千歌達とうまくやってる?」

 

「それも 普通というか いつも通りというか、、、」

 

「いつ 千歌に告白するの?」

 

「ちょっ!なに言ってんのさ 果南」

 

「いやぁ まぁ 今は2人だし いいじゃない〜 こういう時にしか 悠斗をいじれないんだからさ〜」

 

果南は俺が千歌のことを好きだという事を 知ってる人でもある

 

「何というか、もう そこの所は いいんだよ。諦めてるというか そもそも 俺は 千歌とは 釣り合うわけないし。」

 

「そんなこと無いと思うけどなぁ?」

 

「諦めてるから 良いんだよ 」

 

「なんにせよ 悠斗は優しすぎるから、そういう意味で 周りが見えないっていうか、」

 

「なんの話?」

 

「鈍感だって事」

 

そういう 後味悪い会話をしていると 空がもう暗くなってきた。

 

「さ、もうお店も閉めるし、悠斗は帰る?晩御飯食べてく?」

 

「いや、いいよ 今日 恵 部活なくて 家で1人だから 帰るよ」

 

「そっか、恵ちゃんに宜しくね」

 

そう言い店の中に消えていく果南を後ろに 定期船乗り場に 足を動かす。忘れかけていた 今日の千歌と、彼女への気持ちを思い出し、はぁぁ っと 大きなため息を一つついた。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「あっ お帰り 兄ちゃん」

 

玄関に着くと リビングから1人の少女が顔をひょっこり出す。黒髪を肩のあたりまで伸ばし、スパッと切り揃え、動きやすそうなジャージに身を包んだ少女こそ 妹である 柏木恵だ。

 

「今日は俺が作るよ。夜ご飯何食べたい?」

 

「おっ 兄ちゃんが選択肢くれるとは、そーだなぁ やっぱりお肉かな」

 

「肉ね、生姜焼きでもいい?」

 

「もっちの ろーんよ」

 

舌を出して Vサインを俺の前で作る 恵の横をすり抜け、奥の和室へと向かう。そこには 仏壇があり、ある人の写真が飾ってある。朝出る時と、家に帰ってきた時 行ってきます と ただいまを言うのが 俺たちの日課である。

 

「ただいま 父さん」

 

父は俺が 中学生の時に死んだ。交通事故だった。都会に2人で買い物へ出かけていた時、スピードを出し過ぎた車から 俺を守る為に 死んでしまった。

 

「さっ、晩御飯作るか」

 

「はやくー はやくー」

 

「うるさいから 風呂でも入ってな」

 

 

横で騒ぐ妹にバスタオルを投げつけ、キッチンに向かった。

 

 

 

 

食卓に着き 食事を始める。

 

 

「新しい高校生活どーよ?楽しいか?」

 

「楽しいよ!友達もいっぱいできたしね」

 

「部活は?」

 

「あんまり 強い部活ではないけど、やっぱ充実するよね」

 

妹の恵は剣道をしている。そこまで目立った成績を残しているわけではないが。妹が中学1年の時、急に剣道やりたいと 母に言い出した。そういや、父さんが死んだあとだっけな。なぜ急に始めたかの理由を聞いても、「兄ちゃんには 教えなーい」との一点張りなのだ。

 

「兄ちゃんは どーなの 千歌ちゃんと」

 

「またそれか、変わらないっつーの」

 

「えー 面白くないなぁ もっとアピールしなきゃだよ」

 

「なんか デジャブを感じるぞ 今日の恵との会話」

 

「告っちゃいなよー」

 

「しないよ。そもそも あいつと俺とでは 住む世界が天と地ほど違うんだよ。俺が 手を出していいような人間じゃない」

 

「またそんな事言ってるー。あ、そういや 今日 夕方どこ行ってたの?」

 

「あぁ 果南のところに 顔出してたんだ。宜しく言ってたぞ」

 

「夏になったら ダイビング行かなきゃだね!」

 

箸で生姜焼きをつつきながら 恵は そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

彼を好きだと気づいたのは つい最近だ。

 

 

 

 

 

元々特別な人だとか 大切な人だとかそういうのは感じていたが、これが恋愛感情だとは分からなかった。スクールアイドル活動で 作詞をしたりする為に 色々な本を読んだり 友達から話を聞いたりして、今 彼に対して抱いている気持ちが 恋心だという事に 気づいた。

 

小さい頃から 一緒に遊んだり 中学生くらいの時に 距離感を感じた時に 悲しい気持ちになったり。他の女の子と 話していると機嫌が悪くなったり 後々考えれば、かなり前から 小学生とかの頃から 彼が好きだったのかもしれない。

 

 

「メールしていいかなぁ 今大丈夫かなぁ。でも忙しいとかで 断られたらやだなぁ。

 

自室のベッドの上で エビのぬいぐるみを抱えながら 携帯を見つめる。最近では メールひとつするのにも 悩み悩んでしまう。

 

「今日、梨子ちゃんと 朝楽しそうに話してたなぁ。。一緒に買い物がどーとかって、あーあぁ 私も ゆーくんと 買い物とか行きたいなぁ」

 

もっと ゆーくんと 親密な関係になるにはどうすればいいのか、幼馴染という利点が 逆手になって それを邪魔している気がする。

 

 

「こんな時こそ 果南ちゃんに相談しよう」

 

 

最近 果南ちゃんに この手のことで 相談に乗って貰っている。周りがよく見えている人であり、ゆーくんと 近しい関係という うってつけの人物だからだ。

 

電話を掛けると 3コール目で もしもし と返事がした。

 

「果南ちゃん。いつもの相談いい?」

 

 

「あぁ 千歌か いいよー」

 

 

まずはどうすれば 彼に近づけるか

 

 

「ど、どうすれば ゆーくんと もっと お近づきになれるかな」

 

「うーん。アピールしても いつもの感じじゃ ただの仲良しさんの幼馴染にしかならないだろうからねぇ」

 

「た、たしかに」

 

「千歌を女の子として意識させるにはどうすれば良いかってことだよね」

 

「う、うん」

 

「そーだなあ。うーん。。」

 

電話の奥で唸っている果南ちゃんのいう通り、いつも通りでは駄目な気がする。私も何かいい方法無いかなと 考えていると 果南ちゃんが、

 

 

 

 

「色仕掛け、、、とかは?」

 

「なぁ!何言ってるの 果南ちゃん!出来るわけないじゃん!」

 

突然の提案に 思わず 声を上げてしまう

 

「ちょっ、電話で大声やめてよ 耳がびっくりしちゃった」

 

襖の奥からも うるさい!と姉が怒鳴っている

 

「ご、ごめん。でも果南ちゃんが変なこと言うからだよ!」

 

「まぁまぁ 一つの案としてだよ。そうしなくても、軽くボディタッチとか 女の子として意識させる行動すればいいんじゃない?思い切って告白してみるとかさ」

 

「わかった 頑張ってみるよ」

 

「はーい また 報告してね」

 

切れたスマホを眺めながら 今度の休みに 遊びに誘ってみようかなと考えながら 布団に潜り込んだ。

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

「おっはよー!ゆーくん!」

 

「おう おはよう 今日は 早いのな、まだ2人は来てないし 雨でも降るのかな」

 

いつも1番早く 家の前で待っていてくれるのは知っている。だから 今日は 携帯のアラームも何重にも掛けて起きたのだ

 

「あ、あのさ ゆーくんに 聞きたいことがあるんだけど」

 

「んー?どーしたー?」

 

家の前で 我が家の犬 しいたけを 撫でている彼が そう聞き返して来た。

 

「しゅ、週末って なんか予定ある?」

 

しいたけと戯れる彼が、こっちを見て不思議そうに答えた。

 

「空いてるけど、なんで?」

 

よし、第一関門突破だ。本題はここから

 

「一緒に お出掛けしたいなぁって 思ったもんでして、その、、」

 

ああ、もう デートしようって 言えばそれで万事解決じゃん!何してるの私!

 

「あぁ そういう事なら みんなを誘うか、最近あんまり 遊べてなかったしな」

 

違ーう!そうじゃないの!もう この鈍感!

 

「どこいく?やっぱ沼津で買い物とか?」

 

もうこうなったら!もうヤケクソだ

 

「その皆んなで遊びたいのは遊びたいんだけど、今回はそうじゃなくて、、」

 

「そうじゃなくて?」

 

「ふ、2人きりで デートしたいなって…」

 

しいたけを撫でていた手が空中で止まった。もっと撫でて欲しそうに しいたけは 彼を見る。返事を待つ間 ずっと ドキドキしているのだが、彼は動かない。

 

「あのー、聞こえて『おはヨーソロー!』」

 

「おはよう 千歌ちゃん 柏木くん」

 

私が ゆーくんに 返事を聞こうとしたら うまい具合に 2人がやってきた。

 

「あれ、なんか取り込み中だった?え?」

 

そう言うと曜ちゃんは 小声で聞いて来た。

 

「まさかだけど、邪魔しちゃった感じ?」

 

こくりと頷くと

 

「ごめん ほんとにごめん」

 

ちらっと梨子ちゃんを見ると 彼女も 申し訳なさそうな顔をしていた。

 

改めて彼を見ると まだ固まったままだ。失敗したなこりゃ、

 

「バ、バス来たし、行こうか」

 

「そ、そうね」

 

「ほら、悠斗もいつまで そうしてるの?置いてっちゃううよー」

 

曜ちゃんが そう諭すと フラフラと彼は立ち上がり 後ろからついて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあー 失敗したなぁ。あれ完全に引かれてたやつだよ」

 

昼休みに 元スクールアイドルの部室で皆んなでご飯を食べている。

 

「そんな事無いと思うけど。」

 

「だってさ ゆーくんってば、バスの中で 呪

文みたいに独り言呟いてたんだよ?」

 

「確かに 変ではあったけど、引いてるとかでは無い気がするけど…」

 

「千歌ちゃん 悠斗君と何かあったの?」

 

一つ下の後輩である ルビィちゃんが 心配そうな顔をして 聞いて来た。

 

「デートに誘ったんだけど…」

 

数秒の沈黙の後 えぇーー!っと後輩3人組が騒ぎ始めた

 

「千歌ちゃん ついにやったズラか?」

 

「で、悠斗は?私のリトルデーモンは何て言ったのよ?返答次第では 悠斗に ジャーマンスープレックス掛けてやる!」

 

ワーワー ギャーギャー はしゃいでいる後輩たちを 落ち着かせてから 話を再開した。

 

「まぁ 断られた訳では無いんだけど、なんか その後のゆーくんがおかしくなちゃって」

 

「あぁ それで ブツブツ呪文呟いてたってことね」

 

「なんで おかしくなっちゃったずらかね?」

 

うーん。と唸る皆んなの 横でルビィちゃんがボソッと呟いた。

 

「意識してるっていうことじゃないのかな」

 

はっと みんなが顔を上げて

 

「そうだよ!千歌ちゃん!悠斗は意識してくれてるんだよ!」

 

「ついに 千歌ちゃんにも 春が来たずらーー!」

 

「そうかな?そーなら嬉しいな。」

 

私は、そういう淡い期待を込め 冷めたお弁当を 食べた。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

思春期は必ず何かしらで誰にでも来ると思う。

 

俺は父がずっと嫌いだった。父はずっと仕事していて 家にも 夜遅くにしか帰って来なかった。恵が 遊びたいと 休日に 父に頼んでも、父は休日も仕事があると 出掛けてしまう。

 

 

俺はそんな父が ずっと嫌いだった。

 

 

思春期の反抗期真っ只中の中学の時、母が 仕事先で倒れてしまった。元々貧血持ちの母だったが、今回は 検査入院も掛けて 1ヶ月入院するらしい。その時は流石に 父は1日だけ 病院に 居てれたのだが、また仕事に出かけてしまった。 家には 恵と俺2人で 小学生の恵は ずっと寂しそうに 泣いたりしていた。

 

母の入院が終わり 日常が戻ってきたある日 父が珍しく 休日に休みで、2人で 街へ買い物を頼まれた。大雨の中 2人で無言で歩いていたが、こんな機会は無いと 言いたいことを 父に言った。

 

「なぁ、恵や母さんと 仕事 どっちが大切?」

 

父は 急に 質問られた事に目を見開いたが すぐに答えてくれた。

 

「家族だ。家族の方が大切だ」

 

その答えに なぜが イラッとしてしまった。

 

「じゃあ、じゃあ なんで 母さん 入院してた時、俺と恵 2人しか 家に居なかったのに、休日も 仕事行ったりしてんだよ!おかしいだろそれ」

 

「すまない。」

 

「謝って終わりかよ サイテーだな あんた。もう知るか、帰る。」

 

そう言って 下を向きながら 早足で帰ろうと歩いたのだが、数秒後に 父に突き飛ばされた。殴られたのかと思い、

 

「いってぇな なんだよ」

 

振り向くと そこには 急ブレーキで転倒したトラックと、数メートル先に 飛ばされた ドス黒い血を流した 父が倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葬式や通夜を終え、自室で一人で篭る。

 

前に母が言っていた事を思い出す。父は共働きにさせてしまった事を反省していて、休日も夜遅くまで 仕事をしていたんだと。いつか 俺や恵が 大学に必要なお金まで貯めていたと。それを頭の中で分かっていながら 父にあんな事を、言ってしまった。

 

いや、待てよ。あそこで俺が 父さんの話をもっとしっかり聞こうとしていれば 俺が 信号を無視して走って来る車に気づけていたのでは、そもそも、あそこで怒鳴り、帰るなんて事をしなければ こんな事にはならなかったのでは?

 

葬式のときや 通夜のときの 母や妹の顔を思い出す。虚ろな目をして 涙なんて出尽くすくらい泣き 腫れた目。恵の泣き顔。

 

俺は 涙すら出なかった。

 

 

そして 自分の中で 一つの結論を出した。

 

 

 

父は 俺が 殺してしまったんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、俺は、外に出なくなった。学校にも行かず、ましてや、窓を開けることもしなかった。心配した母や妹、千歌や曜や果南、学校の友達までが 何度も何度も扉越しから 話し掛けて来てくれたが、そんな事もどーでも良かった。

 

眠れず、眠れたとしても 父の倒れた姿、母や妹の絶望した顔。それが夢で出てくる。食事も喉を通らず 身体も心もどんどん衰弱していくのが 自分でも分かった。

 

病院に行こうと 扉を叩く母や妹、千歌達の声も無視して、3週間が経過した。

 

いっそ死のうかな。そんな事を考えたとき 扉ではなく、窓から コンコンと妙な音がして聞こえた。

 

ついに耳や頭まで狂ったか、そう思い 無視したが、やはりおかしいと思い、窓を開けると 突然視界が 真っ暗になる。それと同時に襲って来た衝撃に おもわず 床に倒れ込む。

 

その時、何故か落ち着く香りがして 心地よい温かさが 顔を覆った。何故かとても懐かしく感じた。

 

一体何なのか 分からないでいると 「ゆーくん ゆーくん」という 泣きじゃくる 声が聞こえた。

 

千歌が 部屋に入って来て 俺の頭を抱えたのだ。 おかしいぞ、ここは二階のはず と思い、千歌の体の隙間から身体を覗かせると はしごの 先端部分が見えた。

 

何危ない事をしてるんだと思い 何週間ぶりかに 人に話しかけた。

 

 

「何しに来たんだ。こんな人殺しの部屋に」

 

 

そう言うと 千歌の抱きしめる力が 強くなり、泣きながら 千歌は答えた

 

「人殺しなんかじゃない!そんなこと言わないで」

 

「俺は、俺は 本当の父さんの気持ちを知ってながら、子供みたいに意地はったせいで、父さんを死なせたんだ!そのせいで 母さんや恵が 悲しい思いをしてしまった、こんな人間を身を呈して守ってくれた人を…俺は 生きている 意味なんて無い ただの人殺しなんだよ!何もわからないくせに!帰れよ!」

 

危ない思いをさせてまで こうして会いに来てくれた人にさえ こんな事しか言えない 自分に 本当に情けなくなった。

 

もうこれで 俺は 本当の意味で サイテーな 人間になったと 思った時、千歌が 怒鳴りながら言った。

 

「ゆーくんは 人殺しなんかじゃ無い!ゆーくんは こんな おバカな 私に 嫌な顔一つせず 遊んでくれたり、勉強教えてくれたり、相手や 世話をしてくれる!この クローバーの髪飾りも、ゆーくんが くれたから ずっと付けてるんだよ!私は、私にとって ゆーくんは 大切な人だから、そんな人のことを 人殺しなんて言わないでよ!」

 

「でも、それでも、取り返しのつかない事を俺はしたんだ、母さんも 恵も きっと俺を恨んでるはず。もう俺は、1人でしか、生きていけない」

 

「私は、私はずっと ゆーくんの味方だよ?例え、本当に 取り返しのつかない事をしたとしても、私はずっと ゆーくんの側に居続ける。約束する」

 

嘘だとしても。それがただ 慰めてくれているだけだとしても、こんなに 危ない事をしてまで 味方だと 大切な人だと そう言ってくれる事が 凄く嬉しかった。

 

そして 父が死んで 一度も出なかった涙が溢れ出て来た。

 

 

俺は 千歌の胸で 長い時間 ずっと 泣き続けた。

 

 

 

 

 

この時に 俺は 千歌の事が 好きになったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

それからというもの、永遠と泣き続けた後、窓のはしごの下を覗くと 曜が 心配そうな顔をして立っていた。はしごを 支えてくれていたんだろう。

 

扉を開け、千歌に支えられながら リビングに出る。恵が 俺の顔を見るなり ワンワン泣きながら 抱きついてきた。母も 泣きながら 良かった 良かったと 言ってくれていた。

 

 

俺は ごめんなさいと 一言に 全ての意味を込めて 呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバッと目を覚ますと そこは 昼休みの教室だった。クラスメイトに ヨダレ出てるよと 笑われ、それをぐいっと拭う。

 

「懐かしい 夢見たな」

 

 

思い出したく無いが 忘れてはならない出来事。そんな出来事を夢で見るとは、しかも昼休みの時間に。

 

「なんでまた」

 

そこで はっとする。そうか わかったぞ!あの千歌の デートしよう宣言も 夢だ。なーんだ。やっぱり おかしいと思ったんだよなぁ。そう思いながら 携帯を開けると

 

高海千歌からのメッセージ

 

 

『デートの返事 早くきかせてね』

 

「夢じゃないだとぉぉぉ」

 

ぬぉぉぉ なんなんだ一体 と唸っていると、柏木くん 気持ち悪いよ と 本気で 隣の席の女の子に言われてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ オラは この デラックスパフェと オレンジジュース一つずら!」

 

「ふっ、私はこの 悪魔が食す 暗黒なる デザート チョコレートケーキと コーヒーを一つ」

 

「私は チーズケーキと カルピスで」

 

「俺は アイスコーヒーで」

 

放課後、モヤモヤする気持ちを晴らしに 沼津を歩いていると、久しく 花丸ちゃん 善子 ルビィちゃんの 3人と ばったり 遭遇した。久しぶり 話でもしようということになり、近くの カフェに入ったのだ。

 

「悠斗くん 本当に奢って貰って いいずらか?!」

 

「うん なんでも 頼んでいいよ」

 

「さすがは 私のリトルデーモン第1号ね 分かってるじゃない」

 

「俺は お前の リトルデーモンになった覚えはないぞ しかも第1号て なんだ」

 

「悠斗くん、奢って貰っちゃって ごめんね」

 

ルビィちゃんが 申し訳なさそうな顔をして言った。

 

「こうして たまたま会う事でしか お前達と 話す機会 無いんだし 遠慮はいらないよ」

 

「オラ達は いつでも 暇ずら 話す機会は作れるずら」

 

「いつでも 会いに来てもいいわよ。堕天使が許可します」

 

「私達も 悠斗くんと 話すの楽しいしね」

 

「可愛いこと 言ってくれるねぇ お兄さん嬉しいよ」

 

そんなこんなで 注文した品が届き、みんな それぞれの物を パクつき始めた。

 

「それで 悠斗くん 千歌ちゃんと デートどこ行くずらか?」

 

急に 花丸ちゃんが パフェを食べながら そんな事を言い出した。アイスコーヒーを飲んでいた 俺は思わず 吹き出しそうになってしまい、むせてしまった。

 

「な、何故それを」

 

そう聞くと ニタァと 笑った 一つ下の後輩達が言った。

 

「千歌ちゃんから 聞いたずらよ〜」

 

「リトルデーモンも 青春してるわね〜いい事よ」

 

そう騒ぐ2人の横で ルビィちゃんが苦笑いしながら、聞いて来た。

 

「それで どこ行くんですか?ふつうにお買い物とか?」

 

「それが、まだ返事してなくて」

 

そう言った瞬間 騒いでいた2人が ピタッと静かになった。まるで 凍りついたかのように

 

「「えええぇぇぇぇ?」」

 

大声で 叫び出した。

 

「おい 声がでかい 周りに迷惑だろ?」

 

「だって、そんなこと言ってる場合じゃないずら」

 

「悠斗、なんでまだ返事してないの?!返事しなさい!今すぐ!ここで!」

 

「ふ、2人とも 落ち着こうよ」

 

ルビィちゃん、大人だなぁ。見た目とは裏腹に 1番 精神年齢が大人だ。

 

「なんで 返事してないのよ!」

 

善子が 少し 荒めに聞いて来た

 

「いや、だって 皆んなで 遊びに行くとかなら 分かるけど、2人きりで しかも デートって言うし、」

 

「いやずらか?」

 

「そういう訳ではないんだけど」

 

「悠斗くんは 千歌さんのこと 嫌いなの?」

 

「違うよ、むしろ その逆っていうか、、」

 

そう答えると 獣のような目で 質問して来ていた 善子と花丸ちゃんが 目を見開いて

 

「わぁ!ほんとずらか?! 青春ずら〜」

 

「いい 漆黒の世界から 恋という名のヘルフレイムが聞こえる」

 

「だったら なんで 返事しないの?」

 

痛いところをついてくる。

 

「なんていうか、申し訳なくて。千歌みたいな 高嶺の華が 俺なんかと。しかも デ、デートなんて。あいつは、スクールアイドルでもそうだし、常に 輝いて 光ってるような そんな人だし。身分違いというか、住む世界が違うというか、そんな感じ」

 

「めんどくさいわねー あんた」

 

 

「そんなこと考えるのは お門違いずら」

 

「考えすぎだと思うけど」

 

「それに 千歌の考えてることが 最近わからんというか、デートって なんだよ お出かけじゃないのか?」

 

「まぁ それは 自分で気づくべきね、しかも千歌が あんたのこと 身分違いとか 住んでる世界が 違うとか そんなこと思う人だと思う?」

 

「お、思わないけどさ、なんというか 俺の問題である訳で、」

 

「大丈夫だよ 悠斗くん。そういうことも含めて 話し合える 機会でも あるんだよ?だから 早く返事してあげて」

 

そういうルビィちゃん の言葉に うんうんと 他の2人は頷く。

 

「わかった。なんていうか ありがとうな」

 

ニッコリと笑った3人は 別の話に変わり ワイワイ話し出した。

 

俺は 少しぬるくなった アイスコーヒーを飲み、 行くと 一言だけ 千歌に メッセージを飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

「うわっ、危ない」

 

「なにかあったの?」

 

バスの中 家に帰る途中 ずっと ゆーくんの メッセージを開いていた。返事遅いなぁっと メッセージを落とそうとした時 行く という返事が来た。ギリギリ 既読にはならなかった。

 

「いや、ゆーくんから 返事来たんだけど、危なく 既読つけそうになった。送ってすぐ既読ついたら 完全に 変な奴だと思われる」

 

「それで 柏木くんは なんて?」

 

「行くって 返事してくれた」

 

「良かったじゃない!どこ行くつもりなの?」

 

「普通に沼津で 買い物をと、」

 

「しっかりね 自分の気持ちをぶつけて来てね」

 

私は 一つ 気になったことがあったので 梨子ちゃんに聞いてみた。

 

「梨子ちゃんは ゆーくんの事 どー思ってる?」

 

「え?」

 

この間 仲よさそうに話してたから気になったのだ。突然の質問に戸惑う。そりゃそうだ。こんな事 急に聞かれたら。すると梨子ちゃんは すんなりと答えてくれた。

 

「私が 好きって 言ったら どーするつもりなの?それで諦める?」

 

「嫌だ」

 

「でしょ?だから 今はそういう事は 考えなくていいのよ。心配しないで。彼は 友達として、人として 信頼してる上での 好きだから。

異性って意味では 無いから」

 

「振られたら、もし ゆーくんに 好きな人が居て、どーしたらいいかな?私、そんなの嫌だよ。告白して振られたら、今みたいに仲のいい関係で居られるのかな」

 

考えるだけで 辛くなる。もしダメだったとしても 彼とは 今のような関係で居たい。もしそれが 叶わなかったら そう考えると 胸が痛くなる。

 

「千歌ちゃん」

 

「なに?」

 

「柏木くんは 千歌ちゃんを振ったとして、こんな関係は終わりだって そんな事 言ったり、考えたりする人だと思う?」

 

「それは、」

 

「それは 千歌ちゃんが 1番よく分かるんじゃない?」

 

「うん。、」

 

「だから、頑張って来てね」

 

 

梨子ちゃんは そう言って ニコッと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

本日は日曜日である。天気は快晴。まるで 今日という日を 神様が見ていてくれてるかのように。

 

千歌の家の前のバス停からバスに乗り 揺られている。集合は沼津駅前になっている。千歌の家の前での集合でいいじゃ無いかとおもうかもしれないが、こういうのは 雰囲気や、いつもと違う事をするのが いいらしい。と 千歌が言っていた。

 

席に座って 携帯をつけたり 消したりしている。つまりは 緊張しているのだ。

 

今日の俺の服装は 黒のパーカーに 黒のチノパン 黒のスニーカーである。全身黒ずくめじゃ無いかと 思う人もいるのでは無いか?実は ファンションには疎く、服というものをあまり持っていなく、買うとしても、無難に黒か白かくらい。

そんなこんなで 沼津駅にバスが着き、降りる。

今は集合時間の10時の15分前である9時45分だ。

 

千歌は 朝弱いから 若干遅刻気味に来るだろ。そんな事考えながら 歩いてると、

 

「おおーい!ゆーくん ゆーくん!」

 

俺を見つけた 千歌が ブンブンと大きく手を振る。その千歌を 周りの人たちが見ている。俺は思わず小走りで 駆け寄る

 

「来た来た! 待ってたよ!」

 

「大声で ゆーくんは 辞めてくれ。さすがに この年になると恥ずかしい」

 

「えー。でも すぐ私だって分かったでしょ?」

 

「まぁ そりゃそうだが」

 

千歌の服装を見ると 水色柄のチェックのワンピースを着ている。スラっとした足が スカートから出ている。

 

「服、似合ってるな それ」

 

「あ、ありがとう。。

 

なんか こう、可愛いすぎて 目のやり場に困る。しかも 千歌も何故か モジモジして 気まずい空気になる。こんな事 昔は無かったのだが、何を喋ろうか そう考えていると 千歌が 先に口を開いた。

 

「それにしても、相変わらず おじさんみたいな 格好してるね ゆーくんは」

 

「仕方ないだろ ファッションとか 分からんし、家にはこんなのしか無いんだし」

 

「まあ それも含めて 今日の デート 誘ったんだけどね」

 

デート、デートという言葉が いちいち 調子を狂わす。だから俺は思い切って聞いてみた。

 

「デートって その、カップルとかがやるやつだよな? お出掛けとかじゃなく?」

 

ピクッと 肩を少しだけ 跳ねさせた千歌が 急に俺の腕を掴んで 歩き出した。

 

「そんな事は 今はいいの。早く 買い物行こーよ!」

 

「お、おい」

 

そう言って 俺は千歌に 引っ張られて そこからデートと言う 名のものが 始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「服屋?千歌が買うのか?」

 

「うーん。私も服欲しいけど、今日は違うよ。ゆーくんの服買いに来たの」

 

「俺?!俺の服?」

 

「その おじさん臭い格好 どーにかしなきゃ」

 

「いいよ そんなの」

 

「良くないの」

 

なんか こう洒落た服屋ってのは 落ち着かない。服なんて チェーン店の安さ重視の店が1番 俺の性に合ってる。と言おうとしたが、ノリノリの千歌を見ていると まぁいいかとなってしまう。

 

なんか俺って 千歌に甘いな

 

「こんなのはどー?ピンクとか!」

 

「そんな派手なの着れんよ。俺には合わない」

 

「そんなの着てみなきゃ わかんないでしょー?」

 

「この犯罪者みたいな顔に 似合うわけが無い」

 

「顔が ちょっと 濃いだけでしょ?目元とかクリッとしてるから こういう色似合うかもだよ?」

 

「うーん。他の案を求む」

 

「ぶー。わかったよー」

 

なんか申し訳ないな けど 悪いがそれは却下でお願いします。千歌さん

 

「あ!これは?」

 

そう言って出して着たのは ネックレスだ。指輪のような リングが重なったような

 

「ネックレスかぁ、うーん」

 

「これなら 夏とか ゆーくんが着る 白シャツ1枚に 付けるだけで かなりお洒落感が出るよ!」

 

ピョンピョン飛び跳ねる千歌を見ながら考える。まぁネックレスくらいなら いいか そう決断した。

 

「ネックレスなら まぁ 試してみようかな」

 

「よし決まりだね」

 

そう言って 千歌が レジに向かう。俺は思わず止めた。

 

「待て待て。千歌が払うのか?俺のなのに?」

 

「うん まぁ 私が 連れてきたんだしさ」

 

「いや、いい 流石にそれは悪い」

 

「いいの こういうのは 黙って奢られるべき」

 

そうして強引に 持って行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昼飯って ここなの?」

 

 

ネックレスを買った店を出て 昼ご飯を食べに来た俺たちだが、千歌が 安くていいお店を知っているというので ついて来てみると、これまたお洒落な 高そうなお店だった。

 

「待て、本当に 安いのかここ。そうは見えないんだが」

 

「本当だって まぁ ランチタイムの時だけだけどね。夜来たら とんでも無く 高くなるから」

 

そう言って入った店で ランチセットという物を2人で頼んだ。

 

「ここね ランチセットって言って すっごく美味しい ハンバーグが出て来るんだよ!」

 

嬉しそうに話す千歌に 今、素直に 思ってることを伝えた。

 

「千歌って こんなに お洒落な店とかって 知ってたんだな。今日の服装といい さっきの服屋といい、前からこんなんだっけ?」

 

そう言うと さっきまで嬉しそうだった顔が、ムスッとした顔に変わってしまった。

 

「なんか バカにしてない?」

 

「違う違う 本当に 純粋な気持ちで聞いたんだ」

 

はぁぁ っとため息をついた千歌が 俺の目を冷たい目で見ながら言った。

 

「服装とかファッションとかは スクールアイドルの研究とかしてた時、どんな服装とかが みんなの目を惹くかとかで 知ったり学んだりしたんだよ。お洒落な店とかは 安くてお洒落で美味しいとかって 学校の友達とかから聞いたりしたり、ネットで調べたりしたの!」

 

「な、なるほど」

 

「ゆーくんって 未だに 私のこと 子供扱いするよね」

 

「そんな事ないけどなぁ」

 

少し顔を赤らめた千歌が 目を逸らしながら 俺に聞いて来た

 

「私を 女の子として見てくれてる?」

 

「そりゃあ もちろん」

 

「その、異性として、だよ?」

 

「も、もちろん」

 

「そっか 良かった」

 

嬉しそうに笑う千歌にドキッとした時、料理が届いた。

 

「わぁぁ!美味しそう!いっただきまーす!」

 

美味しそうに 口いっぱいにハンバーグを頬張る千歌。とても嬉しそうな 笑顔。俺はやっぱり 千歌が 好きだ。そう改めて 感じた 時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本屋行っていいか?」

 

「いいよ!小説コーナーでしょ? 私漫画のところいるから!」

 

昼ご飯を食べて、特にすることもなかったので たまたま通りかかった大きな本屋さんで 好きな小説家の 新しい作品を買うことにした。

 

「えっと どこだ」

 

広い本屋の小説コーナーだけあって、かなりの量があった。

 

「あら、悠斗さんじゃないですか?」

 

どこか どこかと 探していると 聞き覚えのある声が後ろから聞こえたので 振り返ると、ダイヤさんと その横に鞠莉さんが 立っていた。

 

「悠斗ー!シャイニー!」

 

鞠莉さんは そう言って 抱きついて来た。

 

「人前ですよ!何してるんです?!鞠莉さん!」

 

この人はいつもこうだ。所構わず 抱きついてくる。初めは 恥ずかしさのあまり 気絶しそうになったりしたが、最近 ようやく慣れてきて、引き剥がしたり 出来るようになってきた。

 

ダイヤさんも 最近では この行為を ガミガミ言うのも 呆れて 落ち着くまで 見ている感じだ。

 

「こんな所で会うとは やっぱり 私と悠斗は シャイニーな関係なのね!」

 

「鞠莉さん 声がでかいですわよ。」

 

「ダイヤさん達も 久しぶりですね。大学生活はどうですか?」

 

「ようやく慣れてきてますわ。友達もできましたし」

 

この人たちは 果南と同じ 元aqours のメンバーで 今は 高校を卒業し、大学へと進学した。2人とも かなりの偏差値の同じ大学へと進んだ。会うのは2ヶ月ぶりくらいかな。

 

「悠斗さんも 本を探しに?」

 

「ええまぁ 好きな小説家の新作を探しに」

 

「お一人で?」

 

「いえ、千歌が 漫画のところで 待ってます」

 

そう答えた瞬間 2人が 急に後ろを向いて ヒソヒソ話始めた。

 

「あのぉ どーしました?」

 

「いえ、そういうことなら お邪魔しちゃいけないので、これで」

 

「グッバイ悠斗!またね!」

 

「また ルビィを宜しくお願いしますね」

 

そう言って 2人は そそくさと 行ってしまった。

 

「なんだったんだ 今の」

 

そう独り言を呟くと

 

「何が?」

 

「うぉぉ なんだ千歌か」

 

千歌が後ろから 急に声をかけてきたので 後ろに 飛んでしまった。

 

「本は 見つかったの?」

 

「あ、忘れてた」

 

「一緒にさがしてあげるよ!」

 

さっきの ダイヤさんと鞠莉さんの事に 疑問を感じながら 続きの本探しを始めた。

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

 

夕方になり、遅くなっては 迷惑と バスに乗り私の 家の前まで来た。

 

「今日はなんていうか、ありがとうな。ネックレスも買ってもらったし。」

 

そう彼が 言ったので、気になることを聞く事にした。

 

「いいよ、それより、今日 楽しかった?」

 

「うん すごく 楽しかった」

 

「そっか、良かった。」

 

じゃあと 言い ゆーくんが 家に帰ろうとする。私は 彼の 服の袖を クイっと 掴んだ。

 

「どーした?」

 

「あのね、今日 遊びに誘ったのは、私から 言いたい事があったからなの」

 

「言いたい事?」

 

コクっと頷いた。

 

今日、言おうと思ってた。日に日に好きになる彼に。

 

「言いたい事って?」

 

5月の心地よい風が そよそよと吹く中、少しの沈黙が訪れる。

 

真っ直ぐ目を見て私は言った。

 

「昔から こんな おバカな私に ニッコリ微笑んで 遊びとか お勉強とか 色々付き合ってくれてありがとう。

スクールアイドルやるとか 突拍子のない事 今考えると ほんと何言ってんだって言いたくなるけど、そんな私を 嫌な顔せず 見守ってくれてありがとう。

今のaqours のメンバーとの楽しい時間や、思い出、そんなのも全て含めて、ゆーくんが 色々手助けしてくれたお陰で、あそこまでの物を完成させる事ができた。これはaqours の皆んなが思ってることでもある。」

 

彼は 身を見開いて こっちを見ている。突然こんな事を言われたら そりゃあ 誰でもびっくりするだろう。

 

それでも 私は 伝えたい。私の彼に対する 思いを。

 

「だから、私は そんな 悠斗くんが、、、、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      「大好きです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静寂した 空間。風の音だけが心地良く聞こえる時。彼の目を見ることも恥ずかしくなった私は、下を俯く。返事を待っていると 彼が口を開いた。

 

 

「命の恩人って その人にとって きっと忘れられないものを 教えたり 気付かせてくれたり、本当に命を救ってくれたり、忘れられない人の事だと思う。そして、救ってもらった人にとって 大切で 忘れる事のない事を 胸に刻んでくれる人の事だと思う。」

 

 

彼の言っている事が 理解できなかった。話を晒されたのかな そう思ったが、彼は続けた

 

「俺にとっての その人は 昔から 危なっかしくて、子供っぽくて 後ろから見ていて ヒヤヒヤするような そんな人だった。」

 

顔を上げると ニッコリ微笑んだ 彼が私の目を見て 口を開く。

 

「けれど、今では キラキラ輝いて 大人っぽくなり、もう別の世界に行ってしまった。

もう 俺なんかが 手の届かない人だと思っていた。

けど それは 間違ってるって たくさんの人が 教えてくれた。

なんとなくだけど、その意味が 今わかった気がする。」

 

遠まわしに 断られてるのかな。そんなことも頭をよぎった。彼は今 彼の好きな人の話をしているのだと。絶望感が押し寄せてきて 胸が痛くなる。けど、最後まで聞こう そう思って 彼を見続ける。

 

「俺は 俺の全てを 救ってくれた千歌が 大好きです。こんな俺だけど 宜しくお願いします。」

 

 

 

え?

 

 

 

夢を見てるんじゃないか?これは 妄想が肥大化して 現実世界との区別がつかなくなってるんじゃないか?そう思った。

 

けど 目の前にいる 愛しい人の笑顔。これを見ると 何故か 無性に 抱きしめたくなった。

 

「ゆーくん!」

 

 

この匂い、この感触 夢じゃない。私は ゆーくんに 選んでもらえたんだ。そう思うと 涙が溢れ出てきた。

 

「ち、千歌、泣いてるのか?なぁぁ どーすれば 、ハンカチとかないかな」

 

あたふたする 彼を 見て さらに愛おしくなった。

 

「ありがとう。ゆーくん。そして これからも 宜しくね」

 

ニコッと笑うと 慌てていた彼は ニッコリ笑い返し、彼も スッと 抱きしめてくれた。

 

この匂いも 感触も 笑顔も もう 私のものになった。そう思った矢先、さっきの命の恩人とやらの事を聞きたくなった。

 

「そういえば、ゆーくん 命の恩人ってなに?」

 

彼は 笑いながら 答えてくれた

 

「千歌には 未来永劫 分からないさ」

 

「むー!なにさ 気になるじゃん」

 

「いいんだよ 千歌は それで」

 

「えー!教えてよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心地よいそよ風が吹き付ける。五月の夕暮れが 海を 濃いオレンジ色に染めているいる。そんな色の光が 2人の事を 強く 照らす。

 

そして、恐らく これから もーすぐ 来るであろう 雨の季節へと変わって行く。

 

これから こんな季節のように 綺麗だったり 雨が降ったり、2人の周りでは 良し悪し 様々な事が起きるのだろう。

 

それでも この人となら そんな季節も 出来事も2人にとって 良い 思い出に変えていける。

 

 

そう この情景が 物語っているようだった。

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。