職場体験3日目、僕達は今小柄なお爺さんヒーロー“グラントリノ(GT)”と戦闘訓練をしている。
GT「ほい終了‼️」
出久「はぁ…はぁ…ふぅ。」
心操「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…。」
ずっと戦闘訓練なのである。初日に事務所に到着した時、誰もいないのかと思ったけど、床に倒れているグラントリノを見つけて発狂しかけたのは記憶に新しい。
声を掛けると起き上がり、とりあえず自己紹介を終えると“実力がみたい”ということで模擬戦をすることになった。
グラントリノ:個性“ジェット”
自身が吸い込んだ空気量の分に応じて足の裏の噴出口からジェットを噴射する。爆発的な加速力と機動力を発揮し、屋内外問わず縦横無尽に動き回ることが出来る。
その速さを活かした蹴りはコンクリートを叩き割る威力を誇る。肺活量次第では空中を飛ぶことも可能。
GT「俊則のバカが推薦した“無個性”の緑谷出久、その緑谷が推薦した“洗脳”の心操人使。お前さん達のことは大体聞いていたが、まず基礎的な戦闘力は比較的高い。緑谷の坊主が異世界でどれ程の経験をしてきたか分からんが、お前さんのヒーローとしての戦闘力、相手に対する分析力、そしてそれらを充分に活用する応用力はそこら辺のプロヒーロー達より格段に高い。そのまま慢心せずに鍛練を続けろ。わしが教えられるのはこれだけじゃ。」
出久「はい。」
戦闘訓練をする前に、僕はグラントリノに“ライダーワールド”のことについて説明して、僕の力が“個性”ではないことを伝えた。最初は半信半疑で聞いていたけど、話の冒頭でオールマイトのことを話したとき、
GT『あの馬鹿者が…‼️』
とかなり怒っていた。そのまま話を続けると少しずつではあるが信じてくれた。ちなみに戦闘訓練では変身せずに生身で戦った。
これは“もし変身を封じられたら”という時の対応と“変身に頼る”というものに対するもので、グラントリノから要請された。この世界で変身を封じられることはそうそうないと思うが万が一ということもある。そして、変身に頼ることで基礎的な肉体訓練を疎かにすると、その反動がくるかららしい。
GT「次に心操の坊主じゃ。お前さんは緑谷の坊主まではいかんが、プロヒーロー達とも充分に渡り合える戦闘力を持っとる。わしの速さについてこれたのも緑谷の坊主の指南があってこそだろうが、如何せんまだ体が追い付いてきておらん。重点的に肉体訓練をしていけば、お前さんもまた上に上がれるはずじゃ。」
心操「はぁ…はぁ…、ありがとう…ございます…。」
心操君はまだ呼吸が落ち着かないようだが、話を聞いていた。グラントリノの個性は、高速移動だけでなくその高速から放たれる蹴り技が主流。初見ではなかなか対応できず、僕も心操君も初撃を諸に喰らってしまった。その後、僕はなんとか対応することができたけど、心操君は少し動揺することが多く動きに無駄があった。
GT「しかしまさか3日でわしの動きに付いてこれるか。緑谷の坊主はともかく、心操の坊主も目を見張るものがあるのぉ。」
心操「初日の戦闘の後に、緑谷が対策を教えてくれたんです。」
GT「対策じゃと?」
緑谷「グラントリノの個性を使った高速移動は、消えるように見えると言っても実際に消えた訳ではなく、“目で追えない程の速さで移動してる”というものです。実体そのものがなくなったわけではないので、空気を切る音や地面を蹴る足の音で次の行動を把握したんです。」
心操「緑谷には、“肉体だけじゃなく五感も鍛えるといい”と教わっていたので。」
GT「なるほどのぉ、肉体だけでなく五感の鍛練か。それはなかなか思い付かんな。」
僕達の説明を聞いてグラントリノは顎に手を当てながら感心していた。
僕達は現在、東京都保須市へ向かっている。僕と心操君ならバイクで向かえるけど、グラントリノも一緒なのでキャプテンゴーストを使うことにした。心操君は以前の勉強会の時に少し話を聞いていたからあまり驚きはなかったけど、初めてライダーアイテムを披露したグラントリノは驚いた顔をしていた。
心操「ところでグラントリノ、どうして東京に行くんですか?」
東京に行かなくても事務所の県内でもヒーロー活動はできる。なのに、何故東京へ向かうのか疑問に思った心操君がグラントリノに質問した。
GT「確かにヒーロー活動ならわしの事務所の近くでもできるが、東京のような都心のほうが事件の規模がでかい。そんな事件だからこそいい経験ができるし、慣れることができる。」
心操「経験は戦闘訓練とかで、慣れっていうのは?」
GT「“現場の空気”と“強い覚悟”じゃ。お前さんなら分かるだろ緑谷の坊主。」
グラントリノの言いたいこと、考えていることはよく分かる。
出久「“現場の空気”、テレビやネットを通して見るより、直接現場に行くことで被害の大きさや状況を肌で感じることができる。画像やニュースなんかより自分の目で視ることで、事件の悲惨さや深刻さ、緊張感を体が覚えようとする。」
GT「その通りじゃ。いくら頭ん中で理解しようとしても実際に現場に到着した時、事件現場の空気に当てられ体が思うように動かなくなる。これは恐怖心からくるもので根元的なものじゃ。しかし、その恐怖心により訓練で着けた実力を発揮できん。だからこそ、ヒーローとして本格的に活動する前に現場の空気とそれに伴う恐怖心を覚えることが大事なんじゃ。」
心操「なるほど。じゃあ“強い覚悟”というのは?敵と戦うことを指してるわけではないですよね?」
GT「もちろん心操の坊主が言ったように、敵と戦うための覚悟も重要じゃがもう1つ知っておかねばならん覚悟がある。」
心操「もう1つの覚悟?」
GT「犠牲者や被害者をみることじゃ。」
心・出「「…。」」
GT「どんな事件においてもヒーローが動き出すのは“事件や事故が起きてから”なんじゃ。敵に襲われたり、巻き込まれたりする一般人は多くいる。そして犠牲者の親族や被害者から苦情もある。
“なんでもっと早く来てくれなかった。”
“なんで家の人が巻き込まれなきゃならない。”
“この怪我で将来に影響したらどうしてくれる。”
と言ったもんがな。」
ヒーローは万能ではない。ヒーローも1人の人間であるために、何かが起きなければ動くことはできない。未然に防ぐためにパトロールを行うけど、その隙をついて事件を起こすことがある。そして巻き込まれた被害者の親族や犠牲者から文句をもらうこともある。
GT「ヒーローは必ずしも綺麗なものではない。中にはヒーローの到着が間に合わず、命を落とす者達もおる。これに後悔や罪悪感が混ざり合い、ヒーロー活動を辞める新人も多い。どんなに辛いことや苦しいことになろうとも、それらを背負い罪のない者を救い、前に進んで行くのがヒーローじゃ。それが“強い覚悟”、“心の覚悟”じゃ。」
グラントリノの話を聞いているとヒーローとしての重みを感じることができる。どんなヒーローだって間に合わず、犠牲になってしまった人達は少なからずいる。その後悔や自責の念に囚われて、活動できなくなるヒーローもいる。
“綺麗ごとでヒーローはできない”
でも、その綺麗ごとを成し遂げたいからヒーローを目指す。それがどんなに険しくても、“誰かを救う”ために必死で前を見なくちゃいけない。そんなことを考えていると、
ドオォォォォォォォォォォン
前方から破壊音が聞こえ見てみると、
エンデヴァーとステイン、飯田君と轟君、そして晴君が脳無と戦っていたが、その脳無は違和感を感じるが
どこか“ウィザードに似ていた”
次こそ、次こそは戦います‼️