俺がジャンゴに憑依した時の話   作:月夜鴉

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ゴールデンウィーク中に上げる予定だったはずが気が付けば終わっていたという不思議。

改稿箇所
20190820
・サブタイトルの遠し番号を1つ減らしました。


03 明日への仕込み

 海岸からダッシュで村まで戻り、カヤの屋敷を目指す。

 流石海賊と言うべきことに体力が切れることなく、足がもつれることもなく走ることが出来た。

 

 体が軽い。こんな気持ち良く走れるなんて初めて。もう何も……。

 

 止めよう。覚えのある台詞だと思ったら死亡フラグだったか。

 

 ともかく、これが運動の出来る体か。楽しいな。

 こんなのどかな村で全力疾走とか見られたらすげー目立つってのはわかってるけど、こちとら走らずにいられない状況だ。わかっていても気にしていられない。

 

 

 さて、主観では誰にも見られずにカヤの屋敷に着いた。息すら乱れていない。半端ねぇ。

 

 門番の姿はない。間に合わなかったのか? 屋敷の中を覗いて状況を把握したいところだが、ウソップと鉢合わせたら最悪だ。ややこしい自体になる予感しかしない。

 柵やら木、生垣があるせいで一階部分はあまり見えない。ただ、微かに声が聞こえているので生垣の角に隠れつつ耳を澄ませてみる。 

 

 パーンと一度の銃声が響いた。それは屋敷の敷地内から聞こえた。

 

 そこへちょうどやってきた村人たちがウソップを追い立てている。村人たちはウソップを追って屋敷を離れていった。

 

 海賊の襲撃を知らせているのに信じてもらえず追い立てられる。血の流れる腕を押さえて逃げるウソップの姿が痛々しくて悲しくなる。

 怪我までさせられているのにそれでもカヤや村人を助けようとクロネコ海賊団に立ち向かい、海賊の襲撃を嘘にしようとする。ウソップは凄い。ルフィが言っていた器が大きいっていうのもそういうことなのかもしれないな。

 

 銃声はウソップがメリーに撃たれた時のものだろう。

 どうやら間に合ったようだ。俺は護衛のいない門をくぐり庭へと向かった。庭にはウソップにやられたらしい護衛たちが倒れている。頼むから起きてくれるなよ。

 

 勘ぐられる前に、このパニックから覚めて冷静になる前に計画を押し通す。何だか詐欺師っぽい手口だな。

 

 庭には意識のないカヤを支えているメリーがいた。この二人も見た感じ原作とかアニメのまんまだ。メリーは羊っぽい髪型に執事服で、カヤは病的に白い肌で髪の薄い色素も相まって儚い印象を受ける。体はもちろん、手足だって細い。

 

 メリーは意識のないカヤに気を取られていて俺に気付いていない。

 

「おいあんた。俺は旅の占い師なんだが、良くない相が見えるぞ」

 

 我ながら胡散臭さ爆発だな! ええい、男は度胸だ!

 

「勝手に何ですかあなたは。不吉なことを言わないでください」

 

「近くを通ったら立派なお屋敷なのに門番一人いない。屋敷の中からは銃声まで聞こえてくるもんだから、すわ、強盗か!? って思って様子を見に来たんだ」

 

 不審げなメリーに怪しまれないように答える。

 

「ご心配ありがとうございます。騒ぎはありましたが、落ち着いたので大丈夫です」

 

 それは暗に出ていけって言ってる? まぁ、見た目からしてジャンゴは怪しいもんなぁ。いや、見た目よりも第一声が駄目だったか?

 

「まぁ聞いてくれよ。悪い気配を感じたんだ。近いうちにもっと良くないことが起こる。逃れるためには……先にその嬢ちゃんを運んだ方がいいか。俺はここで待ってるからよ」

 

 カヤを抱えたままのメリーに催眠術をかけてカヤを落としたら大変だ。俺ももうちょっと考える時間が欲しい。

 

「聞くとは言っていないのですが」

 

「別に金なんてとりゃしねーよ。何かを売り付けるつもりもない。親切心だ。タダなんだから聞いても損はねーと思うぜ」

 

 うん、嘘は言ってない。本当でもないけどな。

 

 メリーがカヤをお姫様抱っこして運んでいく。メリーでもカヤを抱えることは出来るのか。この世界の住人は侮れないな。

 

 一階にある部屋の窓は閉じられたままだ。俺は屋敷を見上げた。高い木の近くにある二階の部屋の窓が開いている。

 なるほど、少なくともカヤの部屋はアニメ基準みたいだ。原作の漫画ではカヤの部屋は一階でアニメでは二階だったし。原作でもアニメでもウソップがカヤを連れ出そうとしていたから窓が開いてる方がカヤの部屋のはず。

 

 メリーにどんな催眠術をかけるか考えながら待っていると、しばらくしてメリーが戻ってきた。ひも付きのチャクラムを取り出す。

 

「詳しく占うからこのわっかをよーく見てくれ。集中して見てもらう必要がある」

 

 そう言いながらチャクラムを左右に揺らす。

 

「俺がワン、ツー、ジャンゴと言ったらあんたは疑問に思わず俺の言葉に従う。ワン、ツー、ジャンゴ!」

 

 もちろん、自分は見ないようにハットでガードする。

 

「明日、あんたが自由に動ける状態かつ、お嬢様が悩んでいるようだったら心配事を確認するように後押しする。もし話の通り海賊が襲ってくるなら一人じゃ無理だ。お嬢様と一緒に北の海岸を見に行くべきだろう。『羊の大行進』という言葉を聞いたらあんたは眠る。倒れる時は危なくないように倒れるようにな」

 

 ええと後は。

 

「この後聞く占い師の占いと助言は当たるから従わなきゃならない。俺がワン、ツー、ジャンゴと言ったら話の内容は覚えていてその通り行動しなきゃならない。ただし、俺が言ったということは忘れて意識がはっきりする。ワン、ツー、ジャンゴ!」

 

 原作にはないくらいの長文を詰め込んでるが大丈夫か?

 緊張と不安を抱えながら改めてメリーを見るとキョトンとしていた。これは成功したのか?

 

「よし。占いの結果を言うぞ。近々誰かが贈り物をするだろ? 贈り物はその相手に見つからないように当日まで隠しておくのがいい。そして贈り物は、用意した本人が直接渡すべきだ。じゃないと贈り物は失敗する可能性が高い。そして贈り物が失敗した時、あんたは不幸に襲われる。分かったか?」

 

「え、えぇ。分かりました」

 

「あぁそれと、さっき海賊がどうのって聞こえてたが、そのことは本人には言わない方がいいぜ。嘘だったとしても言われた方も嫌だろうからな。記念日が近いんだろ? わざわざ嫌な思いをさせる必要もない」

 

「そうですね。分かりました」

 

 若干の間。催眠中の内容に触れられないってことは上手くいっているはず。上手くいってることを祈る。

 

「じゃ、そういうわけだから」

 

 何か言われる前にさっさと行こう。ボロが出る前に。

 来てくれよカヤ! ほんとマジで頼むから! メリーも無事でいてくれ!

 それに眼鏡も割られないで欲しい。

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