俺がジャンゴに憑依した時の話   作:月夜鴉

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下書き「事件当日」
本書き「海賊船での一幕」

一章増えました。
合わせて次の章のタイトルも変わりそうです。「開幕」辺りかと思われます。

改稿箇所
20180530
タイトルを追記
前書きに書いてタイトルをつけ忘れるとはなんたるうっかり。

20180701
・あとがきの表記を統一しました。

20190820
・サブタイトルの遠し番号を1つ減らしました。



05 海賊船での一幕

「見覚えのある天井だ」

 

 けたたましいスマホのアラームで目を覚ました俺の目に入ったのは見慣れた白い天井だった。

 

 横になったまま部屋を見ても自分の部屋だ。

 

 

 

「……というリアルな夢を見たんだ」

 

「すげー楽しそうじゃん」

 

 学校の昼休み、友人にジャンゴになる夢を見たとその内容を話す。

 

「楽しむ余裕なんて……や、少しはあったか。けど、大変だったんだぞ」

 

「はは、まぁ夢だって気付いてないんだから大変だったかもな」

 

「夢で良かったとは思うけど、正直続きがすげー気になる」

 

「続けて見られるといいな。そうだ、ジャンゴになってたんならこんなこと言われたんじゃね?」

 

 楽しげに話していた友人が急に真剣な顔になる。

 

 

「ジャンゴ船長! 起きてください」

 

 

 次にその友人の口から聞こえてきたのは、野太い男の声だった。

 

 

 

 

 

「……夢かよ」

 

 ガバッと体を起こした俺は薄暗く揺れている部屋にいた。言わずもがなクロネコ海賊船の船長室である。

 

 現実を夢に見て別世界で目を覚ますって、それなんて夢幻三剣士? 夢と現実を入れ換えるスイッチどこだよ。

 

 はー、安心させた後に突き放すとかひっどい夢だわ。

 

 

 

 これから、か。

 

 持ち物を確認した後、一度目を閉じて深呼吸をする。

 俺ならやれる。演劇部だろ。脚本とか小道具、大道具とか裏方メインだけど。部員の練習風景は見てきた。ちょい役だってこなして来たじゃないか。

 

 

「よし」

 

 キャプテンローブを羽織ると帽子を押さえて船長室を出る。

 

「野郎ども! おはよう。出航だ!!」

 

 集まる注目、上がる雄叫び。

 

 

 船員が持場に向かい、船が動き出す。俺はそんな船員たちを見ながら二階へ上がって甲板の様子を見る。

 

 さぁ、ここからシロップ村まで耐えられるのか俺!?

 

 即行で船長室に引きこもりたい! 出港命令も出したし、もういいんじゃないか?

 

「船長」

 

 フラグかよ。

 呼ばれたので声のした方を見ると、そこには名前を知っている数少ないキャラがいた。

 

「何だ、シャム」

 

「キャプテン・クロはどんな様子でしたか?」

 

 じっと俺を見ながらそう聞いてくるシャムさんの表情は思いのほか真剣で、思わず見つめたまま返答に詰まってしまった。

 

「……そうだな。執事服に身を包んじゃいたが、あの癖と凄みは相変わらずだ。三年経っているとはいえ、あのキャプテン・クロだと実感したぜ」

 

 そういえば、シャムさんはスピードに自信があったんだったか。でなきゃ馬鹿にされたとはいえクロに向かっていくこともないだろう。

 

「……シャム、ブチを呼んで俺の部屋まで来い。少し話そう」

 

「わかりました」

 

 真剣な表情で静かに言うとシャムさんも返事をしたので、ここでの話は終わりと打ち切るつもりで船長室へ向かう。

 船長室へ入り一息つく。これで自然に船長室へは戻れた。どう話すか考えつつ、椅子に座って二人が来るのを待つ。

 

「船長、お呼びで?」

 

 少しして扉がノックされたと思うとシャムさんでない声が聞こえる。

 

「入れ」

 

 扉が開きブチさんとシャムさんが入ってくる。

 

「ブチ、シャム。言うまでもなく、てめぇら二人がうちの最大戦力だ。予定外のことが起きない限り、今日は船にいてもらうが」

 

「突然どうしたんです?」

 

 ブチさんが怪訝そうに言う。まぁ、当日に話すことじゃないよな。

 

「これから上陸する村の北にある海岸に二隻の小舟があった。一隻は印もなく普通の小舟、もう一隻は道化のバギーの旗印がついた小舟だ」

 

 同じ海域で海賊なんだから名前くらいは知っているはず。

 

「道化のバギーって言ったら妙な技を使うっていう?」

 

 やはり知ってはいるようでシャムさんが反応する。

 

「あぁ。村でそれらしい一味は見ていないが、目的がわからない以上、計画に横槍が入るかもしれねぇ。お前らを呼ぶとしたらその時だ」

 

 なんと言うか、見て話してコミュニケーション取ってると愛着がわくっていうのか? 漫画の登場人物としてじゃなく、一人の人間として見てしまう。原作にない船内での話だから尚更。

 ここまでは原作通りでも戦闘はどうなるか。大きな怪我をしないでくれたらと思う。

 けど、二人のやる気を出させ過ぎたらゾロがキャット・ザ・フンジャッタを食らう羽目になるかもしれない。この葛藤が辛い。

 

「と、らしくもなくマジになっちまったか。まぁ、いざという時には頼りにしてるぜっていう話だ」

 

 これまでと違って少し明るく、らしくないと言われる前に自分で言ってしまう。

 

「邪魔者が現れてもおれたちニャーバンブラザーズに任せてくだせぇ!」

 

「その通りだブチ、切り刻んでやろうぜ!」

 

「あぁ、任せた」

 

 既に原作に無いことを言っている自覚はある。

 それに加えてあともう一つ。

 

「……キャプテン・クロはこの三年間、海から離れていた。戦いとは無縁な長閑な村にいた」

 

 一人言でもあるかのように静かに話し、間を開けつつ二人を見る。

 

「だがよ、あのキャプテン・クロが平和ボケするようなタマか? そこをよく考えて行動してくれ」

 

 だから馬鹿にされてもクロに突っかかるのは止めて欲しい。

 そんな思いを込めてシャムさんを見る。スピードに特化するにはブチさんのような筋肉は重荷になる。鍛えていたとしても、ゾロの重い攻撃は細身のシャムさんにはひとたまりもない。

 

 二人はクロに突っかかった後、焦ってゾロを倒そうとした結果、返り討ちにあったような気がする。焦らなければ少しは傷も浅く済むかもしれない。

 

「船長、キャプテン・クロはこの計画で動かないんじゃ?」

 

「あぁ、奴は依頼人であって計画を実行するのは俺たちだ。……少し気になる夢を見たから念のためだ」

 

 ビビってると思われるかもしれない。

 

「俺からは以上だ。てめぇらからは何かあるか?」

 

「計画が無事遂行できて分け前をもらったら、どっかの町で騒ぎましょうぜ」

 

「美味い食い物に酒。楽しみだ」

 

 二人に頷き、持ち場へ戻るよう言って見送った後、小さく息をつく。

 

 原作をなぞるということは運命とも言うべき流れを受け入れるということ。俺はその流れを変えるようなことをしている。

 さて、この行動が吉と出るか凶と出るか。

 

 

 

 ついに動き出すキャプテン・クロの恐ろしい計画。

 クロネコ海賊団がいる以上、下手な行動は取れないわ。人を傷付けられないのにどう乗り切るっていうの?

 戦いはもう始まってる。今こそ打ってきた布石が活きる時よ!

 

 次回、『原作改変の代償』 デュエルスタンバイ!

 

 

 

「船長、目的地が見えてきました!」

 

 とか考えてる場合じゃない。

 

 船長室から出て進行方向を見る。遠くには海岸とその海岸を挟むように反り立っている対の崖が見えた。




気付いたこと、気になったこと

〈ブチとシャム〉
 この小説を書く前はシャムとブチだと思っていました。ですが、原作を確認するとブチとシャムの順番でした。
 ブチの方が兄貴分なのかもしれないですね。

 作中でも書きましたが、自信が無ければクロに向かって行かないわけで、速さに自信があるだろうシャムの目標はクロだったのではという考察。
 クロを越えてやるという意気込みも彼に向かっていった要因だったのではないかなぁ。足りない力はブチと協力することによって補っていると。

 下書きには「ブチとシャムと話す」くらいしか書かれていなかったんですけどね。


〈道化のバギーの旗印の小舟〉
 原作、アニメではクロネコ海賊団が海岸に到着した時に停泊している小舟に気付いていますが、旗印については何も触れていません。
 オリ主も実際に旗印を見ているわけではないので原作知識からの言葉になります。
 停泊している小舟の帆は畳まれているので旗印はわからないはずですから。


 こうやって書いていて初めて気がつくことがあるので楽しいです。
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