俺がジャンゴに憑依した時の話   作:月夜鴉

8 / 11
今更ですが、後書にはネタバレを含みます。今回は時になので、いつも後書きから読んでいる方はご注意ください。


前回のあらすじ
 坂道へとやってきたカヤとメリー、ウソップ海賊団、そこには特殊な武器を付けた屋敷の執事、クラハドールがいた。

 クラハドールことキャプテン・クロはその本性を表しカヤへと暴言を吐き、遺書を書かせてからカヤを消せとジャンゴに指示を出す。

 命令に従いカヤたちを追うジャンゴ(に憑依したオリ主)だった。



次回について
 下書きの展開を変えるかもしれないので遅くなるかもしれません。

改稿箇所
20180812
 頂いた誤字報告を適用しました。誤字報告ありがとうございます。
 ×パッピーエンド 〇ハッピーエンド

20180813
 頂いた誤字報告を適用しました。誤字報告ありがとうございます。
 ×斜線上 〇射線上

20190820
・サブタイトルの遠し番号を1つ減らしました。



08 林の中にて

 あ、メリーさんてカヤさんを抱えてたよな。一緒に倒れたんじゃ……。うん、そうだったとしても不可抗力だ。危なくないように倒れるように言っておいたし、大丈夫だと信じよう。

 

 立ち止まって耳を澄ませてみるも何も聞こえない。とりあえず進んでカヤさんたちを探す。自分の居場所を知らせてしまうので声を出さず歩きながら周囲を見渡す。

 

 

「……ろ……だん……!」

 

 進んでいたら何やら声が聞こえてきた。

 声の聞こえた方へ進むと座り込んでいるカヤさんとメリーさん、ちびっ子三人組が話している姿が見えた。慌てて木の後ろに隠れる。

 

 メリーさんが起きてるぅ!? 効かなかったのか? いや、よく見ればメリーさんの服は土で汚れている。眠ったのを起こしたのかもしれない。眠らせただけじゃ簡単に起こせるから。

 

 焦るな。今一番警戒すべきは恐らく銃を持っているメリーさんだ。彼をまた眠らせれて、起こされる前に済ませればいい。寝なかったらチャクラムをぶつけて、メリーさんが怯んでる間に接近して銃を奪い取る。

 

 そうと決まれば再度声を上げよう。これっきりにさせてくれよ。

 

「羊の大行進!」

 

 木の後ろからメリーさんへ向かって声を上げる。メリーさんが倒れたので紐付きチャクラムを取り出し、カヤさんたちのいる方へ進む。

 

「「「うわああああ!」」」

 

 ちびっ子たちが俺を見て悲鳴を上げる。声を上げながらもカヤさんをかばうように彼女の前に立つちびっ子たち。凄い覚悟と度胸と男気だ。

 

「め、メリーに何をしたの?」

 

「邪魔されそうだったんで眠ってもらっただけだ」

 

 ちびっ子たちの前で紐付きチャクラムを左右に揺らす。

 

「ワン・ツー・ジャンゴでお前らは眠くなる。ワン・ツー・ジャンゴ!」

 

 帽子で視界からチャクラムを隠して暗示を唱える。次に帽子を上げた時には倒れて眠っているちびっ子たちがいた。

 

 原作から考えるとちびっ子たちは眠った振りをしているだけだろう。だから不意打ちにさえ気をつければいい。

 ここで反撃されて逃げられるわけにはいかない。メリーさんがいるから逃げられないかもしれないけど。

 

「さて、これで……」

 

「来ないでください!」

 

 カヤさんを説得しようと向き直った時、カヤさんは震える手で俺に銃を向けていた。

 

 うおっ!? カヤさんが持ってるのかよ! 撃たないよな? 大丈夫だよな?

 やばいどうしよう。彼女に撃つ気はなくても何がきっかけで引き金を引くとも限らない。

 

 安心した所に銃を向けられ、頭の中が真っ白になった。

 

 やっばい、何するか飛んだ。この土壇場で何してんだよ俺っ!

 

 

 

 

 

「お嬢様に撃てるか? それを撃ったり抵抗すればこの執事とチビどもを殺す。大人しく遺書を書いてもらおうか。それがありゃ他の連中は見逃してやってもいい」

 

 

 

 ……おや? 俺喋ってないんだけど。今、喋ったよな?

 え、は!? ちょっと待って体も動かない!

 

 そして浮かぶのはある可能性について。

 

 いや、そんなわけは……いやいやまさか……ジャンゴさんご存命!?

 ここでモノホンのジャンゴさんすか!? つか本人いるのかよ! ここまで来てなんもできない? じゃなくて、この状況ヤバくないか!? 

 

 いや待て落ち着け。

 ジャンゴさんの意識はいつからあった?

 ジャンゴさんも俺が動いてる間に意識あった感じだよな。じゃないとまず状況を確認するはず。

 そうじゃないなら、ここまで自然に振る舞えるはずがない。

 

 

「……本当に、私が大人しく遺書を書けば、彼らは見逃してくれるんですか?」

 

「あぁ。約束する。これでもおれは正直者で通ってるんだ」

 

 カヤさんの銃をそっと取って羽ペンと紙を渡すジャンゴさん。

 

「書く場所がねェな」

 

 そう言って懐の左ポケットから切れるチャクラムを取り出し近くの木を切る。大きな音を立てて木は倒れ、切り株が出来上がった。

 

 ジャンゴさんの視界を通して見ることしか出来ず、ハラハラしている俺を置きざりにして、ジャンゴさんは紙とペンをカヤさんに渡した。カヤさんが切り株を台にして遺書を書き始める。

 

 これ、まずいんじゃないか?

 

 どうにか体を動かそうとしてみたり、ジャンゴさんに伝わることを祈って強く思考して話し掛けてみる。

 

 

 

「執事クラハドールに私の全財産を譲る。よし、確かにお前の遺書だ。これでお前の役目は終わったわけだ」

 

 遺書を確認した後、ジャンゴさんはそれを懐に入れてカヤさんを見る。

 

 ジャンゴさん! 聞こえてるならカヤさんを殺さないでくれ!!

 

 聞こえているかなんて分からない。

 だが、体を動かそうにも動かせないのだから、聞こえると信じて訴えかけるしか出来ない。

 

 

 

「あんたは、クラハドールに言いたいことはねェのか?」

 

 次に聞こえてきたのは、俺がカヤさんに言おうと思っていた最初の言葉だった。

 

 

「え?」

 

 予想していなかったのかカヤさんはきょとんとしている。

 俺も驚いた。驚きはしたが、その言葉のお陰でやらなきゃいけないことを思い出せた。

 

 よし一度深呼吸を……て、体が動くようになってる!?

 

 小さく息をつくと屈んでカヤさんに視線を合わせる。

 

 どうやらジャンゴさんはカヤさんの説得を任せてくれたらしい。

 イケメン(タル)過ぎて俺のテンションがやばい。そうだな、ジャンゴさん。ここで俺が頑張らないでどうする。

 

 怯えさせないように気を付けながら、俺はゆっくりと口を開いた。

 

 

「嬢ちゃんはこれでいいのかって聞いてるんだよ。嘘ですって言われてはいそうですかって納得できるのか? 三年間、あの男と一緒に居たんだろ?」

 

 無理矢理連れて行っても駄目なんだ。カヤさん自身で動いてくれなきゃ意味がない。

 

「……納得なんて出来ていません。止められるなら止めたいと思っています」

 

 持っていたチャクラムをカヤさんの首元へ突き付ける。

 

 

「それは……」

 

「カヤっ!!」

 

 

 話している途中、突然の大声に思わずそちらを見るとウソップさんを抱えたゾロさんがいた。

 ゾロさんはウソップさんを落とすとこちらへ駆けてくる。

 

 鬼タイミングだな全く!

 

 原作同様ゾロさんが俺とウソップさんの射線上にある枝を切り落とす。

 

 体は問題なく動かせた。

 すぐに立ち上がった俺は帽子に手をかけ、それを外すと顔の前に突き出した。

 

 ウソップさんの撃った火薬星が帽子に当たって爆発する。

 熱と衝撃はそれなりにあったがそれだけだ。

 

「なっ……」

 

 まさか防がれると思っていなかったのかウソップさんが驚いている。

 

 さて、俺が知っているのはここまでだ。原作なら、今の一撃を顔面に食らってジャンゴさんは気絶するんだから。

 つまり、こっからどうなるか不明で、俺のアドバンテージは無くなった訳だ。

 

 もしゾロさんに切られたらどうなるんだ?

 一瞬浮かんだ考えを振り払う。バカ言え。逃げてたまるか。ここで踏ん張らないでいつ踏ん張るんだよ。ジャンゴさんが許してくれるのなら、ここは俺自身の力で乗り切りたい。いや、乗り切らなきゃいけないところなんだ。

 

 ゾロさんが来るまでまだ距離はある。

 帽子を手放し懐から切れないチャクラムを取り出す。カヤさんに突き付けていた切れる方のチャクラムをウソップさんの前方にある木に向かって投げた。少し遅れて切れないチャクラムをその木の外側に当てる。そのチャクラムが当たったことで、木はウソップさんの真ん前に倒れ、その視界を塞いだ。これでウソップさんは撃てないはず。

 

「あんたはどうしたい! このままここにいたら、きっとあんたは助かる。戻れば殺されるかもしれない。それでもあの男を止めたいか!?」

 

 カヤさんに向き直り最終確認をする。

 

「私は……もう一度クラハドールに会いたいです! 彼を止めたいっ!」

 

 じっと俺を見返しながらカヤさんは力強く答えた。

 

「その覚悟があるならおぶってでも連れて行ってやるよ。あの男を説得出来るとしたらあんただけだろうからな」

 

 カヤさんがもう一度クロに会うことを決めてくれたことで思わず口角が上がった。

 

 

 

 再び体が勝手に動いた。ゾロさんのたちの方へ向きながら、懐からは切れるチャクラムを取り出そうとしている。眼前にはゾロさんがいて、その刀が俺に降り下ろされーーーーなかった。

 

「何を企んでやがる」

 

 抜き身の刀を突き付け、ゾロさんが睨みながら問う。

 

「おれはある奴の計画を利用してるだけだ。おっと、クロじゃねェからな? そいつはハッピーエンドが見たいんだと。あまっちょろくて、詰まで甘い杜撰な計画だが、目はある。だからおれはお嬢様を殺さない。やるつもりならてめェらが来る前にやってる」

 

 ゆっくりと懐から手を出し戦意がないことを表しながらジャンゴさんは言った。

 

「お嬢様は死ぬかもしれねェってのを分かっていてクロを止めたいと言っている。てめェらは、そんなお嬢様の覚悟に水を差すつもりか?」

 

 ゾロさんを見ながらそう言ったジャンゴさんの声は低く、流れる空気が重くなった。

 




ジャンゴ「いつからおれが居ないと錯覚していた?」
オリ主「なん……だと?」

 転生ではなく憑依なのでこの展開になりました。本人がいることは下書きから決まっていたことです。

 ジャンゴが動けるようになったのは、オリ主の「誰でもいいから助けて欲しい」(07 開幕の最後の方)がフラグだったりします。そこから動けるようになったという設定です。


〈カヤが銃を持っていた理由〉
 突然眠りに落ちる人が銃を持っていても。という理由です。


〈本編と下書き間の裏話〉
 どうでもいいって方は飛ばしちゃってください

下書きでの流れ
 カヤ説得
 林から坂道へゴー
 ゾロたちと遭遇(短い一章)

でした

本編の流れ
 カヤ説得中
 ゾロたちと遭遇
 林から坂道へゴー

です

本編執筆中
 カヤに対しての説得が納得いかない。

 殺されるかもしれないがクロに会いたいかと問うことの無意味さ
 断ったらその時点でジャンゴに殺されるかもしれないような状況だと問いかける必要なくない? ということ

私「説得どうするかな。でもこの問いは入れたいよな。あー、次の章(ゾロたちと遭遇)のシーンも短いな。今回の章にまとめるか。うーん、大したことしてないし、グダるくらいなら遭遇のシーンはカットもありか」

ひらめき「そこをカットするなんてとんでもない! ユー、説得シーンにゾロたちの遭遇を挟んじゃないなよ! そうすれば、カヤが生き残れる可能性がある状態で、その可能性を棄ててまでクロに会いたいかかって聞けるじゃないか!」

私「その手があったか!」

 というひらめきがあり、めでたく好みの展開にすることが出来ました。

 諦めてカットして投稿しなくて良かったです。

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