デュエル専門の仮想現実世界等が開発されたり、デュエルのプロリーグが整備されたりする様な世界での物語である。
デュエルを学ぶ為の弧美都学園は初等部からプロ育成の為の大学までもが1つになった学園である。初等部入学の時点で難関校であるが、その分入学すればエリートになれると噂があり、入学希望者は後を絶たなかった。今回は編入する最後のチャンスとなる高等部編入試験であり、とある少女も入試会場へと向かっていた。
警備A「……試験は最後の一組がプレイ中だが……参ったな。この試験に遅刻してくる者が少ないから組み合わせが決まってしまっているぞ……」
警備B「取り敢えず学園長に報告を……。」
高等部は試験者同士でデュエルを行い、勝者は確定合格、敗者でも素質があれば入学する事が出来る比較的ゆるゆるな基準だった。だが、今年は入学希望者が奇数であったものの、1人が遅れていた事により偶数と勘違いしたのだろう。
警備A「……どうやら対戦相手はゴールドクラスの海橋に決まったらしい。残したライフ=成績に加点だから希望者が殺到したが、彼が脅して黙らせたという…。」
美遊「……ゴールドクラス……か。ならネタデッキでも問題ないかな。」
警備B「いやいや、流石に舐めすぎだろ。そんなんで不合格になったら恥ずかしいぞ~。」
美遊「……問題ない。ネタデッキでも勝てるから。」
怠そうな表情で暗樹 美遊という少女は試験会場へと向かう。するとそこに立っていたのは金色のプレートを制服の胸ポケットに付けた生意気そうな少年であった。彼の名前は海橋 聖人、高等部1年のゴールドクラスである。
下からフリー、アイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、マスター、ゼノというクラスがある中で上から4番目……ゼノクラスはチャンピオン用に取り敢えず用意された物とされているため実質上から3番目
である彼にとって、高等部からの編入希望者等恐るるに足らずと思っているのだろう。
海橋「さぁ、さっさとサレンダーしなよ編入生!この俺のデュエルタクティクスで無様に散る前になぁ!どうせお前もさっきまでデュエルしていた奴と同レベルなんだろう!」
初等部からシルバーランクを勝ち取り、高等部に上がる前にゴールドランクとなった彼は自信に満ちあふていた。今回も得点稼ぎの為に編入希望者である美遊とデュエルしようとしていたのだ。実際先程最後のデュエルをしていた2名のレベルは低かった。1人はエクシーズ召喚のやり方を熟知しておらずエラーを何度も起こし、もう1人はそんな彼にすらまともにダメージを与える事が出来ていなかった。
教官A「海橋、罵声を浴びせるのは辞めなさい。……今回は特殊なアバターを使いViz空間でのデュエルとする。では2人とも構えて。」
美遊・海橋「「Viz-フルダイブ」」
2人がそう言って入った空間はVizという仮想現実世界である。この世界ではリンク召喚が発見された時に改正されたルールで闘う事となっている。その為現実とViz空間の中ではデッキを変えるプロも結構な数いるのだ。
また、Viz空間の中では自分で好きなデザインのアバターでプレイできる。だが今回は試験という名目の為、見た目はそのままでViz空間へと飛ばされた。
教官A「それではデュエルを開始する!」
教官の合図と供に海橋のデュエルディスクが反応した。これは先攻が海橋に決まった合図で有り、彼は自信満々な顔で手札のカードを確認していた。
美遊・海橋「「デュエル!」」
美遊 LP 4000
海橋 LP 4000 ★
海橋「先攻は貰った!俺は手札の【青眼の白龍】を見せることで【青眼の亜白龍】をメインCに攻撃表示で特殊召喚!」
【青眼の亜白龍】 ★8 AT 3000
海橋「さらに手札から〖トレード・イン〗を発動!手札の【青眼の白龍】を墓地に送りデッキからカードを2枚ドロー!」
ドローカード 【青眼の白龍】
〖死者蘇生〗
海橋「よっしゃ良いカード!俺は〖古のルール〗で【青眼の白龍】をメインR1に攻撃表示で特殊召喚!」
【青眼の白龍】 ★8 AT 3000
海橋「そして〖死者蘇生〗を発動し墓地に存在する【青眼の白龍】をメインL1に攻撃表示で特殊召喚!さぁ、これで3体の【青眼の白龍】が揃ったぜ!」
【青眼の白龍】 ★8 AT 3000
美遊「……で?それが何か?」
海橋「ちっ、普通ならもっと絶望するだろーが!俺はこれでターンエンドだ!」
海橋 R1【青眼の白龍】AT 3000
C 【青眼の白龍】AT 3000
L1 【青眼の白龍】AT 3000
手札 1枚
エクストラからの連続展開が難しい中でこの様な展開をする事を編入生達の一部とシルバーランク迄の生徒達はおおっ!と歓声を上げていた。だが、そんな状況でも眉1つ動かさない美遊に海橋は段々と苛ついてきていた。
海橋「まぁどうせ俺の最強コンボに手も足も出なくてサレンダーしたがってるんだろ?」
美遊「……呆れてるだけ。私のターン、ドロー。」
美遊 手札 5 → 6
美遊「私は手札から【おジャマ・レモン】をメインCに召喚。そしてカードを2枚伏せてターンエンド。」
【おジャマ・レモン】 ★2 AT 0
海橋は現れたモンスターを見て唖然としていた。そこにいたのは【おジャマ・イエロー】の着ぐるみを着た美少女だったからだ。口の部分から顔を出している為髪型は分からないが恐らく美少女なのだろうという雰囲気が漂っていた。しかし……海橋はすぐに立ち直るとやはり彼女は諦めているのだなと察していた。
美遊 C【おジャマ・レモン】
MC 伏せ
MR1 伏せ
手札 2枚
海橋「俺のターン!ドロー!」
海橋は勝利を確信していた。リバースカードがどうであれ、自分はこのターンで勝利を得られると信じていた。ドローカードは【カイザー・シーホース】、残る手札が【龍の鏡】である事も気にせず彼は美遊のモンスターに狙いを定めた。
海橋「へっ、これで俺は勝利する!圧倒的な力でなぁ!【青眼の亜白龍】で【おジャマ・レモン】を攻撃!」
【青眼の亜白龍】のブレスがか弱い少女である【おジャマ・レモン】に向けられたその時だった。美遊はため息を付きながらリバースカードを発動していた。
美遊「私はMCのトラップカード{ドキドキ★脱出だおジャマ隊!}を発動。このカードの最初の効果発動。【おジャマ・レモン】をリリースしてこのターンのバトルフェイズを終了する。」
海橋「なっ、なんだその巫山戯た名前のカードは!だが次は無い!俺はこれでターンエン……。」
海橋はバトルフェイズが終了した事でサッサとターンエンドしようとしたが、エラーが起きる。何度もボタンを押すがターンエンドに出来ない。ついには警告アラームまで出てくる始末だ。その様子を見て美遊はまた呆れていた。
美遊「まだ効果が終わってないんだけどなぁ…。自分に都合が悪くなればすぐさまターンエンドして効果無効にしようとしてない?」
海橋「そ、そ、そそそそそそんな訳ないだろう!だが次の俺のターンで今度こそケチョンケチョンに……。」
美遊「……いや、このターンで終わると思うけど。私は{ドキドキ★脱出だおジャマ隊!}のさらなる効果発動。このカードがおジャマと名の付くカードをリリース素材としたとき、デッキ又は墓地から【おジャマ・イエロー】、【おジャマ・グリーン】、【おジャマ・ブラック】を特殊召喚できる。」
海橋「……そんな雑魚カードで何が出来るんだ!さぁ、サレンダーしろ!今すぐに!やらないとお前のカードを全て燃やし尽くしてやる!」
海橋の度が過ぎた脅しを全く気にせずに美遊はカード効果の処理を行っていた。自分に都合が悪くなればサレンダーを強要する……ボス猿にはなれてもプロになれないデュエリストだなと感じながら彼女は効果の処理を始めたのだった。
美遊「私は墓地から【おジャマ・イエロー】扱いの【おジャマ・レモン】をメインCに攻撃表示で特殊召喚。」
【おジャマ・レモン】 AT 0
美遊「そしてさらにデッキから【おジャマ・グリーン】扱いの【おジャマ・メロン】をメインR1に攻撃表示で特殊召喚。さらに【おジャマ・ブラック】扱いの【おジャマ・グレープ】をメインL1に攻撃表示で特殊召喚。」
【おジャマ・メロン】 ★2 AT 0
【おジャマ・グレープ】 ★2 AT 0
海橋「な、なんでそんな雑魚カードを!だがもう良いだろう!ターンエン……」
美遊「さらにトラップカード{おジャマ・デルタ・メテオバーン}を発動。このカードは【おジャマ・イエロー】、【おジャマ・グリーン】、【おジャマ・ブラック】がフィールドにいる時に手札を1枚捨てる事で発動できる。私は手札から〖おジャマッスル〗を墓地へと送り効果発動。相手プレイヤーのモンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える。私は【青眼の亜白龍】を選択。」
3人で三角になるように手を繋いだ美遊のモンスター達が繰り出した隕石でアッサリと【青眼の亜白龍】が破壊された。
海橋「な、なんだとぉ!グハッ!クソッ!なんで最強のカードがこんなにアッサリと……。」
海橋 LP 4000 - 3000 = 1000
海橋「だがこれでターンエンドができ……ない……だと?」
美遊「……この効果で【おジャマ】と名の付くカードを捨てた時、このターンでもう一度同じ効果を発動できる。私は手札の〖おジャマ・フュージョン〗を墓地に送り効果発動。【青眼の白龍】を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える。」
海橋「や、やめろ……。そ、そうだ!俺の親って金持ちなんだ~。だ、だだだだだだからもうサレンダーしても良いよな?してくれよ!しろよ!この糞雑魚編入生がぁぁぁぁぁ!!粋がるんじゃねぇ!ランクにおける上下関係すら分からないのかァァァァ!!」
海橋 LP1000 - 3000 = -2000
勝者 暗樹 美遊
教官A「デュエル終了……だな。取り敢えず暗樹 美遊……君は試験合格だ。ただ、今日はランク章を渡すことが出来ないので後日取りに来てくれ。流石に海橋の物をそのまま流用する訳にはいかないからな……。」
教官はそう言った後、自分に付けていたデュエルディスクを操作して海橋の処分内容を伝えていた。それを聞いた海橋はそもそもの原因である美遊に掴み掛かろうとしたが警備Bにより止められていた。
教官A「……取り敢えずお前はペナルティで-2000点だ。これによりゴールドランクからフリーランクまで下がる事になる。取り敢えずゴールドランク章はこの場で処分させてもらおう。」
海橋「や、やめろ!俺がここまで来るのにどれだけの金を支払ったと思っているんだ……。」
教官A「……そんな態度だからプラチナに上がる機会さえ与えられないんだよ。試験用で無いお前のデュエルディスクも改造していたそうだしな……。それとカードは没収だ。これからはこのスターターで頑張るんだな。」
教官Aはそう言いながら海橋からデッキを取り上げていた。それを見て海橋は教官Aに向けて罵声を浴びせていたが、教官Aは海橋を一喝した。
教官A「お前、このデュエルの中で発言した事を覚えているか?サレンダーの強要……まぁ、これはヒール役のプロデュエリストもやる事があるからまだ目を瞑れた。しかし……お前はカードを燃やすと発言したな?」
海橋「それのどこが悪いんだ?俺がデッキを取り上げられる事と関係があるのか!?」
教官A「大ありだバカモン!お前は他人のデッキを侮辱する事は愚か、カードを奪おうとしていた。それがどれだけ後ろめたい事なのか分かっていないみたいだな。」
海橋はそう言われても自分が勝ち続けたデッキを取り上げられている事にイライラしていた。つまり、全く反省していないのである。そんな様子を見て教官Aはさらに憤慨しており、さっさと帰りたい美遊はうんざりしていた。
教官A「そもそもそのデッキはお前の物で無く、お前のプロデュエリストであった兄が残した物だ!それをこんな使い方をされるとは……恥を知ると良い。もうこの学園から出て行っても良いぞ。ただし、デッキは返す事は無い。お前が自分で発言したように燃やしてやっても良いだろうよ。」
教官Aはそう言いながらデッキを美遊に渡した。取り敢えず海橋が強引にアンティルールを持ちかけたという事で処分したのだ。入学試験であるのにも関わらずこうしたのは一応海橋の兄が魂を込めて作ったデッキを自分の手で燃やしたくなかったからなのだろう。
美遊「………いい加減帰らせてくれないかなぁ…。」
会場がアンチ海橋になりかけている中、当事者の1人である美遊はさっさと帰らせてくれないかとため息を付くのであった。