編入試験翌日、学園側が用意したカラオケボックスの狭い部屋並の広さの教室に集まった高原と佐倉は美遊講師の授業を聞いていた。
高原「今日からご指南よろしくお願いします。」
佐倉「よろしく頼む。……とはいえ、同じ寮の者と何回かデュエルした事でエラーは起こしにくくなっている。説明書を読み込んだ成果は出せているな。」
美遊「……なら簡単な事だけ説明する。高原に渡した【ジェムナイト】はともかく、佐倉の【スターターデッキ】はエクストラデッキが少なすぎる。」
佐倉「……確かに6枚というのはキツいな。それに使いにくい物も多いな……。」
美遊「この学園にはDPというシステムが存在している。1DP=1円の扱いだけど、DPから円には替えられない。……で、デュエルすればする程増える感じだった様な説明あったなぁ……。ここを借りるのにも5DPくらい使用したし。」
DPは弧美都学園が誰でも積極的にデュエルできるように、誰でも好きなカードが手に入れられる様にと作り上げたシステムである。支給されるDPもあるがランク毎に差がある為上位ランクを目指す物を増やす要員にもなっている。
美遊「……カードを増やすためにはいくつか方法がある。取り敢えず佐倉のデッキを強化するついでに回っていこうか。」
そう言って最初に向かったのは学園内敷地にあるカードショップの1つ、《マッドフォレスト》だった。ここはあまり人が来るような場所では無く、カードショップというよりはゾンビ映画に出てくる様な廃墟を思わせる風貌である。
美遊「……ここはあまり人が来ない事もあって使いやすいカードショップだね。展示されているのは古いカードが多いけど最新パックも用意されているよ。」
??「おっ、分かってるねぇ。ここには卒業していった奴等が来ていたんだが最近学園の内部に《ワールドキングダム》弧美都学園店ができてみんなそっちに行っちまったからなぁ……。まぁ、最新パックならあそこが入荷早いが、ここではレアなパックにマニアックな奴もある。それがここの魅力だな。」
そう話しているのは《マッドフォレスト》店主の森川 拓蔵である。彼はボディビルダーの様な筋肉質な体でポーズを決めながら店内の案内を始めた。
森川「まずは展示カードだな。中古品ではあるが状態は綺麗な物を集めている。《ワールドキングダム》はパックを開封して置いている新品を1枚1枚置いているんだが……そのせいで売り切れになりやすいという弊害がある。」
美遊「…まぁ、一点買いは急ぎの時以外は使わなくても問題ない。当たったカードでデッキを作り出すのが吉だよ。」
高原「そうなんですね~。あっ、でも可愛いモンスターいますよ!……でも高いです……。」
佐倉「……今はパックを開けた方が多くカードを集められそうですね。」
森川「ならばこれはどうだ?頑張ればよりカードが手に入るぞ!」
美遊「……デュエルターミナルに近い筐体……デュエリスト・ダンス・カーニバルかぁ……。まぁ、ワンプレイ100DPだからやり過ぎなければ大丈夫かな。」
佐倉「なんなんですか?そのデュエリスト・ダンス・カーニバルというのは?」
美遊「簡単に言うとダンサーであるデュエリストと背景又はパートナーとなるモンスターを組み合わせたアーケードゲーム。パフォーマンスデュエルが流行りだした頃に出てきたけど普通にプレイする人が少ないカード券売機になってた。」
森川「《キングダムワールド》に置いてある奴もそんな扱いだな。ただこっちは改造してプレイし終われば特別5枚入りパックとゲーム用のカード1枚が出てくる様にしている。プレイ時間も短縮しているしな。公式に許可取ってるから違法にはならないしな。」
森川がそう言った事、堂々とアーケードゲームができる高原とカードが必要と感じた佐倉は早速プレイを始めていた。彼等はフリーランクの寮で寮に来ていた小学生や管理人達とデュエルしてDPがそこそこ溜まっていた為、早速ゲームを開始していたのだった。
森川「……ところで、嬢ちゃん。本当にこのパックを開封するのか?」
美遊「2人には必要なカード。まぁ、ネタの力に掛かれば不要カードなんぞ存在しなくなる。」
森川「言うねぇ。まぁ、ここにわざわざ来るデュエリストならそう言うと思ったよ。とゆーわけで早速開けてみると良い。」
森川がそう言って渡したカードパックを開けた美遊は、そのカードを使用してデッキを作り上げ、森川に渡していた。ただ、2人に渡すカードはキッチリと確保していたのだが。
美遊「このデッキで佐倉とデュエルして貰いたい。」
森川「もう1人の嬢ちゃんの相手は良いのかい?」
美遊「あの子は完全に初心者という訳じゃ無い。カードを渡せばどうにかなる。勝てなくなればまた指南を受けに来ると思うから。」
それから数十分後、何回かプレイした2人はパックを開封し、いるカードと要らないカードを照らし合わせていた。そして数枚ほどお互いの利害が一致したカードをトレードし、デッキに組み込んだ所で美遊が佐倉に話しかけていた。
森川「……という事だ。俺も昔はプロ目指していたんだが、当時とんでもなく強いのがいてな……俺はプロを諦めて第二の夢だったカードショップ店長になったんだ。まぁ、だからといって鈍っている訳じゃ無い。という事で改良したデッキのテストプレイの相手になろうじゃ無いか。」
佐倉「分かりました。……では……早速……」
森川「まぁ待て。今デュエルコートに連れて行くから。一応アクションデュエルも体験させておこうと思ってな。それに俺はこっち専門だからな。」
そう言って店の地下にあるデュエルコートへと降りていった2人をモニターで見ながら店番する事となった美遊と高原の事は気にせず、2人はデュエルを開始するのだった。
佐倉・森川「「デュエル!」」
2人がそう叫んだ瞬間、ソリッドビジョンが起動して店の地下室を森へと変化させる。それに佐倉は驚いた物の、すぐに冷静さを取り戻してデュエルに意識を集中させていた。
佐倉 LP 4000
森川 LP 4000 ★
森川「今回のAフィールドは《シンプル・ジャングル》。登場Aマジックは5つだな。」
登場Aマジック
〖回避〗
・
〖奇跡〗
・ACCを5つ消費して発動する。モンスターの戦闘破壊を無効にしダメージを半分にする。
〖森林浴〗
・フィールドに存在するカードの数だけ自分のACCを増やす。発動後、このカードはゲームから消滅する。
〖森の鳴き声〗
・自分の墓地に存在するモンスターの数だけACCを増やす。発動後、このカードはゲームから消滅する。
〖大木倒壊〗
・ACCを全て使用して発動する。相手の1番攻撃力の高いモンスターを全て破壊する。発動後、このカードはゲームから消滅する。このカードは1回のデュエルで1度しか使用できない。
森川「本来のアクションデュエルはカードは自由に使えたんだが……色々と文句を言われてこの様な形になった。まぁ、好きに動き回ると良いぞ。……今は俺のターンだがな。俺は〖予想GUY〗を発動し、【戦士ダイ・グレファー】を特殊召喚する。」
【戦士ダイ・グレファー】★4 AT 1700
森川「そして俺は墓地の〖予想GUY〗を除外して手札から【筋肉魔法師 グレイプバイン】を特殊召喚する。」
【筋肉魔法師 グレイプバイン】★4 AT 1700
森川「俺は【ダイ・グレファー】と【グレイプパイン】でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!【
【筋肉戦記 アル・ボーレ】☆4-o2 AT 2800
森川がそう叫びながら呼びだしたモンスター、アル・ボーレは大樹の様に焼けた肌と美しくも見える程調和した筋肉を見せつけながら叫んでいた。それに怯えてしまい、手にしていたAカードを落としそうになる佐倉だったが、どうにかカードを手放す事無く踏みとどまれていた。
佐倉「俺はアクションマジック〖森林浴〗を発動。ACCが1つ増えた後、このカードはゲームから消滅する。」
その後〖森林浴〗のカードは墓地にも除外ゾーンにも行かず、光の粒子となって消え去っていった。これはソリッドビジョン内だからこそできる現象である。
佐倉 ACC 0 → 1
森川「……エクシーズ召喚の前にやってりゃ2つだったんだろうけどな!俺は【アル・ボーレ】のオーバーレイユニット(ダイ・グレファー)を1つ使い効果発動。【アル・ボーレ】の攻撃力を永続的に1000アップする。」
【筋肉戦記 アル・ボーレ】
o2 →o1
AT 2800 → 3800
森川「この効果を使用した時、【アル・ボーレ】は攻撃できない。だが、1ターン目だからあまり関係ないな。……そしてこのカードはオーバーレイユニットが存在する限り魔法・罠では破壊されない!俺はカードを1枚伏せてターンエンド。」
森川
LP 4000
【筋肉戦記 アル・ボーレ】
☆4-o1 AT 3800
伏せカード 1枚
手札 1枚
佐倉「俺のターン、ドロー!……魔法が効かないならこのカードは悪手だな……。」
佐倉は手札に存在する〖ライトニング・ボルテックス〗を見てそう呟いた。彼の持つスターターデッキは所謂除去ガジェットと言う魔法や罠で相手モンスターを破壊してからガジェット達で殴るという物であり、パワーが足りない状態でもあった。
佐倉「……ここでさっき渡されたカードを使うべきか……。だがその前に〖サイクロン〗を発動し伏せカードを破壊。」
森川「……破壊されたのは{筋肉戦記 ラストリベンジ}だな……。」
佐倉「そして俺は【イエロー・ガジェット】を召喚し、【イエロー・ガジェット】の効果でデッキから【グリーン・ガジェット】を手札に加える。そしてレベル4のモンスターの通常召喚に成功した為、俺は【カゲトカゲ】を特殊召喚する。」
【イエロー・ガジェット】★4 AT 1200
【カゲトカゲ】★4 AT 1100
佐倉「俺はこの2体でオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!【ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン】!」
【ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン】
☆4-o2 AT 2500
佐倉「【ダークリベリオン】の効果発動!オーバーレイユニットを2つ使用して【アル・ボーレ】の攻撃力を半分にし、その数値を【ダークリベリオン】に与える。」
【筋肉戦記 アル・ボーレ】AT 3800 → 1900
【ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン】
AT 2500 → 4400
佐倉「さらに俺は速効魔法〖虚栄巨影〗発動!このバトルの間だけ【ダークリベリオン】の攻撃力を1000アップする!」
【ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン】
AT 4400 → 5400
佐倉「バトルだ!【ダークリベリオン】で【アル・ボーレ】を攻撃!」
森川「くそっ!【アル・ボーレ】!俺をあの木の上まで飛ばせ!」
森川の一言で【アル・ボーレ】は【ダークリベリオン】のブレスが来る前に森川をアクションカードが挟まっている木の枝に向けて森川を投げ飛ばした。その後、【アル・ボーレ】はブレスにより爆散してしまったが、森川はAカードを手に入れたのだった。
森川 LP 4000 - 3500 = 500
森川「Aマジック〖森の鳴き声〗発動。俺の墓地のモンスターは3枚。これでACCは3つ増える。」
森川 ACC 0 → 3
佐倉「……バトルが修了したので【虚栄巨影】の効果が終了し、【ダークリベリオン】の攻撃力は4400に戻る。俺はこのままターンエンドだ。」
佐倉
LP 4000
【ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン】
☆4-o0 AT 4400
伏せカード 無し
手札 3枚
高原「……これなら佐倉さんが勝ちそうですよね…。」
美遊「まぁ、既にミスしているし、ミスしていなくてもネタの力には適わないと思う。…ここで勝てたら上出来だったけど、そうもいかないか……。」
高原「え?でもこの状態なら……。」
困惑する高原を見てため息を付きながら美遊は2人のデュエルを見まもるのだった。
森川「俺のターン、ドロー。と同時にさっき見つけたAカードを使用しようか。流石に初心者に相手を妨害しろとは言わないが、相手からAカードを奪うとか妨害する事に目がいっていないな。俺はアクションマジック〖大木倒壊〗を発動!」
森川 ACC 3 → 0
森川のその言葉と供に、森の木が【ダークリベリオン】を押し潰す様に倒れ、【ダークリベリオン】は為す術無く破壊された。
森川「そして俺は〖負傷兵の手土産〗を発動して墓地の【ダイ・グレファー】の攻撃力を200ダウンさせて特殊召喚。それと同時に〖負傷兵の手土産〗の効果で2枚ドローする。」
【戦士ダイ・グレファー】 AT 1700 → 1500
森川「そして俺は【ダイ・グレファー】でダイレクトアタック!」
佐倉「グハッ!」
佐倉 LP 4000 - 1500 = 2500
森川「この瞬間、俺は速効魔法〖狂戦士の魂〗を発動。発動条件として俺は手札を全て捨てる。」
森川がそう言いながら2枚のカードを捨てた。そのカードは〖地割れ〗と{強制脱出装置}であり、それを見ていた美遊はモニター越しにため息をついていた。
森川「〖狂戦士の魂〗はデッキからカードを1枚をめくりそれがモンスターカードなら墓地に送ることで500ポイントのダメージを与える事が出来る。まず1枚目……【バーバリアン2号】。モンスターカードなので墓地へ送り500ポイントのダメージ。」
佐倉「……っぐ……。」
佐倉 LP 2500 - 500 = 2000
森川「ここからは一気に行くぞ。2枚目【火之迦具土】。3枚目【バーバリアン・キング】、4枚目………【コマンダー】だ。」
佐倉「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
佐倉 LP 2000 - 500 - 500 - 500 - 500 = 0
勝者 森川
この後、地下から戻ってきた佐倉はかなり憔悴していた。ただ、自分の手札にあった【ブリキンギョ】を確認すると余計に惨めだと感じたのだった。
美遊「まぁ、【ブリキンギョ】から出していたら勝ててたかもね。」
佐倉「……まぁ、そうなんですけど……。」
反省点を色々と話しあっている所で対戦相手だった森川は驚いていた。まぁ、佐倉が初心者だった事もあるが……ただ、一言だけ言って店番をしていた2人にパックを渡していた。それは美遊が森川が使ったデッキに使用したパックだった。
《遊戯王OCG 今日から君もマッチョマン》
このネーミングセンスと封入されているカードが一部を除いてマッチョな体形である事に佐倉は完全に敗北したと認識して倒れてしまった。だが、この敗北がいずれ彼の成長に繋がれば良いと思いながら美遊と森川はこのネタデッキの魔改造を始めるのだった。
高原「……なんで【ブリキンギョ】から出せば勝てたんですか?」
佐倉「【ブリキンギョ】の召喚時の効果で【ガジェット】を出し、その後に【カゲトカゲ】を出すという形で3体召喚していれば森川さんが〖回避〗を使わない限りワンターンキルできたんだよ……。そこまで頭が回らなかった。」
森川「まぁ、先を読む前に落ち着くことや油断しない、慢心しない事が勝ちへの近道だからな……。」
2人はその言葉を真摯に受け止めた後、戦力強化の為にアーケードゲームの方へと向かうのだった。