Lily on Battlefield[更新停止中]   作:畑渚

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お手柔らかによろしくお願いします。


0001 ファーストコンタクト

 

 「ははは、そりゃ最高に笑えんな!」

 

 

 「だろ?もうリアルだったらちびってんじゃないかってくらいに震えやがってさぁ!」

 

 

 柄の悪い男達が瓦礫に座って下品に話す。その手には銃が握られており、話の内容も誰かを脅したときの話のようだ。治安のいい国と名高い日本ではありえないといっていい状況だが、それも仕方あるまい。ここはゲームの中であり、彼らは運営から許された範囲でPKするプレイヤーなのだ。誰も彼らを咎める者はいない。

 

 

 「おい、獲物が来たぞ。集中しろ」

 

 

 リーダー格の男がそう言うと、さっきまでのヘラヘラ笑っていた顔がさらに笑いで歪む。それは狩りを楽しむもの達の目でもあった。

 

 

 

 ※

 

 

 

 「ここが近道か……」

 

 

 まだ少女といってもいいくらいの外見をもつ彼女は、一つの廃墟街に入ろうとしていた。ナビ端末を片手に持ちながら歩いているところをみると最近始めたばっかりの初心者だろうか。廃墟街というのがPKの多発地帯という常識すら知らないようだ。

 

 

 「おっとっと」

 

 

 偶然足元の瓦礫に躓く。それは偶然だったが、恐ろしく幸運でもあった。長く伸びた髪を何かが掠める。少女はその瞬間近くの物の陰に飛び込んだ。

 初心者の彼女であったが、撃たれたことに気付き物陰に隠れるくらいの頭脳は流石に持ち合わせていたようだ。

 

 少女は身を隠したまま場所を移動する。幸い敵の大まかな方向は先程の弾丸で把握できたようで、その足取りはやたらと軽い。そして……

 

 

 「やっぱゲームはこうじゃなくっちゃね」

 

 

 彼女もまた、この殺伐としたゲームに自ら足を踏み入れた、狂人達の一人であった。

 

 

 ※

 

 

 「っち、外したか」

 

 

 「やっぱりあんなところに瓦礫なんか置くからですよ」

 

 

 「うっせえ、何か目印が必要だったんだよ」

 

 

 「お前ら、無駄口叩いてないで探すぞ」

 

 

 男達は物陰から姿を表し、少女の捜索にうつる。

 

 

 「スナイパー、聞こえるか?」

 

 

 「ああ、はずしてすまん」

 

 

 「それはいい。どっちに逃げた?」

 

 

 「物陰に隠れてからまだ姿を見ていない。恐らくそこか、若しくは周辺だろう」

 

 

 「了解、引き続き監視しろ」

 

 

 「了解」

 

 

 男が通信を切りゆっくりと物陰に近づく。

 

 

 「流石にいないか」

 

 

 逃した少女の姿はそこにはなかった。

 

 

 「お前ら散開しろ、地理的優位はまだ俺たちにある。見つけたら即刻殺せ」

 

 

 「「了解」」

 

 

 獲物を探しに男達は分散して行動を開始した……否、してしまった。

 

 

 

 ※

 

 

 

 「敵は歩兵三人にスナイパーか」

 

 

 廃墟の一つに隠れた少女はこの付近のマップを床に投影して考える。数はともかく地理的優位をとられているこの状況はかなりまずい。それはまだ初心者の彼女ですら分かることだ。

 

 

 「もう、初日にこれとかついてないわ」

 

 

 そういいながら銃を手に取る。この少女、昔から頭だけはそこそこ良く、こういった状況分析はさらに得意としていた。

 

 

 「さて、狩りに行きますか」

 

 

 少女は全くといっていいほど警戒もなしに扉を開ける。

 次の瞬間ピンっと軽い音がして、そのあとにゴトリと床になにか重いものが落ちる音がした。

 

 

 「ほんとついてない!」

 

 

 手榴弾の奏でる破裂音は静まり返った町中に響き渡る。

 

 

 「はあ、ひどい目に遭った」

 

 

 とっさにソファーを乗り越え身を隠した少女は更なる絶望に陥る。

 

 

 「まじ?」

 

 

 目の前には複数の銃口、胸のあたりにはドットサイトの赤い点が複数。それが意味するのは明確な死だった。

 

 

 「まて、撃つな」

 

 

 すぐ近くの部屋から声と足音が近づいてくる。先ほどスナイパーに指示をだしていた男だ。

 

 

 「やあやあ初心者ちゃん。楽しんでもらえたかな?」

 

 

 「はん!最低のお出迎えね」

 

 

 「喜んでもらえたようで何よりだよ。ところでだ、私は取引に来た」

 

 

 「ふーん、一応聞かせてもらえるかしら」

 

 

 「ボックス内のものと装備してるもの、それから所持金の8割を差し出せば命だけは助けてあげよう」

 

 

 「……もちろん断るわ」

 

 

 「そうか……撃て」

 

 

 一発の弾丸が少女の太股に吸い込まれる。鮮血のエフェクトをだし、部位欠損のデバフがかかる。左足の支えを失い少女は床に倒れこむ。

 

 

 「かなりいい腕のスナイパーがいるのね」

 

 

 「自慢のメンバーの一人さ」

 

 

 少女の顔は歪んでいる。左足の継続的なダメージフィードバックは意志を弱らせるためには十分なものだった。

 

 

 「それで、どうするんだい?死んだらどうなるか知っているだろう?」

 

 

 (くっここまでか……殺されたら無一文でステータスにデバフが付く……それに比べたら……)

 

 

 少女は諦めかける。冷静ではない脳内は、ここで拒否したときのデメリットばかりを計算し始める。

 

 

 しかし、ふとした拍子に自分の銃が目にはいる。うつむきかけていた顔を上げ、満面の笑みでこう言う。

 

 

 「お断りよ、何度いってもね!」

 

 

 「そうか……撃て」

 

 

 少女は衝撃に備える。

 しかしいつまで経っても来ない。

 

 

 「おい、撃てといってるだろう?おい、応答しろ!」

 

 

 目の前の男が喚く。今がチャンスとばかりに少女は銃のもとへ這うが、男に気づかれ右足を3発撃ち抜かれる。

 

 脳内がぐちゃぐちゃになるような感覚に耐えながら男を睨み付ける。そしてその顔は驚きの表情へ変わる。

 

 

 「キルマークは出てねえな……おい、あいつの様子をみtブベラァ」

 

 

 漫画のような奇声をあげながら男が空中で1回転し、床に叩きつけられ気絶したのだ。

 いや、正確に言うならばそれは今目に前に佇む一人の女プレイヤーのやったことなのだ。その重力を無視するかのような動きに見惚れてしまったというのもあるだろう。

 その女プレイヤーはそのまんま男の仲間たちも同じ要領で投げていく。あっという間にフロアを制圧してしまった。

 

 

 「大丈夫ですか?」

 

 

 美女といっても過言ではないだろう。長い黒髪をポニーテールにしており、魅力的な体を防具などで遮らず堂々とだしている。少女は危機を救ってもらったお礼を言おうとした。……のだが声に出たのはそれとは違う、本音に近い言葉だった。

 

 

 「つ、付き合ってください」

 

 

 「えっはっ?」

 

 

 これが今後、このゲーム内を騒がせていく二人の女プレイヤー達の出会いだった。

 

 

 




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