1981時は止まった 作:ぴのこ
「鈴音~!釣れたぞ~!グルクンだぁ~
早速唐揚げにでもしてくれ~」
「お帰り、父さん。お客様がいらっしゃるの。
お酒いける方のようだから、一緒にお食事してちょうだい」
「おう?久しぶりの客だな。学生か?」
「いいえ、研究者でいらっしゃる先生よ。今、お呼びするわね。」
聖哉の部屋の方に移動する鈴音。
「先生!すぐにお食事のご用意をしますけど、最初にお酒如何ですか?
父が帰ってまいりましたので」
2階にいる聖哉に、鈴音が階下から呼びかけた。
「ありがとうございます。今、行きます」
聖哉が降りて食卓に向かおうとした時に、鈴音の父と顔を合わせた。
「あい!木戸先生じゃないか!」
「え???僕をご存じで?」
「木戸勇哉先生であるね?」
「あ・・・勇哉は親戚で、僕は木戸聖哉といいます。」
「いやあ・・・そっくりなんでびっくりしたよ」
「勇哉をご存じで?」
鈴音の父、光悦と木戸勇哉がどうして知り合あったのか
晩酌しながら話を聞くことになった。
「父さんと先生のご親戚が知り合いだったなんて
なんて奇遇なのかしら」
酒を注ぎながら、鈴音が笑顔で二人の会話に加わる。
「あきちゃびよ~。驚いたよ。ボクがね、釣りをしていたときね
誰かが溺れているわけ。どうもこっちの人じゃないなってすぐに
わかって、海に飛び込んで、助けたさー。それが木戸先生ね」
「そうだったんですか!」
聖夜はこんな偶然があるものかと、驚いた。自分で設定した時代
自分で決めた場所なのに、まさか祖祖父の知り合いだったとは・・・
「勇哉先生もね、泡盛とまっこりがすきだったのね。」
どうりで研究室に「コーレーグースの作り方」という説明書きがあるはずだ。
なんとなく興味をそそられた聖夜は、材料を取り寄せコーレーグースを作ってみたところ
はまってしまったのだった。
「私も大好きなんですよ。それでよく取り寄せていたんです」
「あい、めずらしいね?内地に送るのには、送料すごく高いよ?」
(今の時代はネットですぐ注文できるし、この時代よりは頻繁にご当地みやげなどを
簡単に送付できるからな・・・それを言ってもわからないだろうし)
「あ、そうなんです。研究室仲間で、沖縄出張に行った人に
直接お店から送ってもらうようお願いしたりしていたんですよ」
「あ~。そうだったのね。今度から、うちに頼んでいいよ。送ってあげるから」
「あ、ありがとうございます!」
「勇哉先生は元気かな?こっちで一緒に飲んだときいろいろ話しをしてね。
ボクがね、SF好きって言ったら、持ってた小説を置いてってくれて
自分とこ戻ったら、たくさん本を送ってくれたんだよ」
「そうだったんですか・・・」
「うん。八瀬ふたたびとかすきでさぁ~。NNNでドラマもやってたのね。
でさ、あれはテレパスの話だけど、タイムトラベラーも出てくるわけ。
将来、タイムマシンとかできちゃったりしてね、って先生に話したら
『いつの時代に行ってみたいですか?』って聞くから、
昭和25年がいいなって言ったのね。」
「どうして昭和25年なんですか?」
「ん?ボクのにーちゃんがね、いてね。亡くなっちゃったの。
子供の時に馬の後ろにリアカー付けて走ってたんだけど、にーちゃん
そのリアカーに乗ってて。リアカー古かったわけ。
杭が出ていたのわからず、振動でそれが頭に突き刺さってしまって。
亡くなったの」
「・・・・・そうだったんですか・・・・」
「ボク、それ見ちゃってね。まだ小1だったんだけど。
あまりのショックで勉強も手に付かなくて、学校いかなくなっちゃって
1年落第したのね。
でもね、この子の母親が救ってくれたのよ」
「鈴音さんの、お母さんですか?」
「うん。弓音(ゆずね)って言ってね、すごく前向きで強い女なのね。
ボクがね、『この世の終わり』って顔してたら
『おにいさんはいつもあなたのそばにいるわ。
肩にのっかっているよ。私には見える。赤い髪色のキジムナーは
あなたのにいさん。森に行けば、いつでも会えるわ。』
そう言うからね、ボクはいつも森にいったの。そしたら
赤い髪の男の子がボクの前に現れて
『がんばれ』
って笑顔で言うから、ボクは、ああ、弓音が言った事は
ほんとだったって。そう思って強く生きることができたわけ」
「素敵な方に巡り会えたんですね」
「そうね。一生の宝物だったね。でね、海で勇哉先生が
溺れてたとき、一瞬兄に見えたのよ。それで
なにがなんでも助けなきゃって思ったわけ」
「ありがとうございます!お父さんが助けてくれたおかげで
今の私があるんです」
「え?」
「あ、いや、その、勇哉の研究に影響されて、僕も学者の道を選んだんです」
「そっかー。人助けしといて、よかったな~」
聖哉はタイムマシンに光悦を乗せて、兄に会わせてあげたいと思ったが
時空の法則を破ることはできない。また、今のこのタイムマシンのクオリティでは
タイムトラベルできるのはせいぜい5、6回がいいところだ。
開発を重ねて、強度をあげていく必要があるが
今はDNA採取が優先だ。マシンの開発にまでは手が回らない。
とにかく、聖哉はM県に移動しなければいけなかった。
虹色の魚、グルクンの唐揚げをつまみながら、早々に出発する手筈を考える聖哉だった。
慎重に迅速に次の行動に移さねばならない。
時は待ってはくれない。