カンピオーネ 吸血公   作:ノムリ

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プロローグ

【新たに確認されたカンピオーネについての報告書より抜粋】

 

 極東の島国、日本より生まれた新たな王。カンピオーネが誕生されました。

 名は、矢崎(やざき)修斗(しゅうと)

 魔術や呪などに関わった履歴なく、武術などに対しても知識は無いに等しく、何処にでもいる一般の高校生。

 

 殺した二柱の神の名は"まつろわぬヴラド"と”まつろわぬケルヌンノス”

 

 簒奪した権能は、《鮮血の威光》と《静寂たる狭間の森》

 

 

 《鮮血の威光》ヴラドは吸血鬼の始まりともいえる人物。串刺し公という呼び名で呼ばれていたという伝承も存在する。

 吸血鬼は生命の根源である血を吸い、蘇った死人または不死の存在とも言われる。狼男やフランケンシュタイの怪物と並び、世界中で知られている怪物の一体でもある。

 吸血鬼は、銀を恐れ。心臓に杭を打ち込むことで殺すことができる。十字架や聖水、ニンニクや流水、日光や炎が弱点だと言われているなど、数多くの弱点が知られているものの。中には、書物を書く際に勝手に追加されてものの存在してるため、必ずしも弱点とはなりえない。

 その姿をコウモリや狼などの動物、霧や蒸気に変身でき、人を魅了する力を持っているとも言われている。

 

 《静寂たる狭間の森》狩猟の神にして冥府の神。獣王・動物の王ともされている。

 頭に二本の角、手には山羊、蛇の頭を持っている。足を組み座っている姿で描かれ、その姿勢は瞑想しているシャーマンが呪術を行おうとしている姿だと言われている。

 

 

 

 

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 個室の中に二人。

「これが貴方の資料の一部です」

 修斗の向かいに座って茶を啜るスーツを着たツリ目の男皿木(さらき)(けい)が、渡してきた資料に目を通す。

 

 日本の魔術結社、正史編纂委員会の一員であると同時に日本に生まれたカンピオーネである修斗とやり取りをする役人。

 少しでも言葉を間違えれば怒りに任せて殺されるやもしれない程に危険な役目に、ただ、愛知担当だったという理由で白羽の矢が立った不運な男。

 

「呼び名は『吸血公』で頼むね。ヴラドに選別として渡された名前だから使っておきたい」

「承知しております。それと、学校に居る巫女を通して情報を渡すことがこれからあると思いますので。明日の朝、屋上に行き顔合わせだけでもお願いします」

 羊羹を口に放り込み、返した資料をカバンにしまい。お茶を飲み干し、先に席を立った。

 

「では、仕事がありますのでこれにて。あ、会計は済ませておきますので、ごゆっくりどうぞ」

 ささっと、準備を済ませて出ていく皿木さんを見送りながら、残った羊羹を頬張りながら数日前の旅行で起こった事件を思い出す。

 

 だだっ広いだけの空き地に広がっていた緑溢れる森に地面や木から突き出た杭。

 空や大地を埋め尽くす大量の鳥、ネズミ、コウモリ、狼、虎、鹿などの獣の群れ。

 そんな異様な光景の中で、もっとも異質に存在感を放つものが二つ。頭から角の生えた神と黒いマントを纏い赤い目の怪物。

 

 不運にも、二柱の戦いに迷い込んだ人間()が二柱の決闘を壊し、そして二柱を殺した。

 

 


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