カンピオーネ 吸血公   作:ノムリ

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黄泉の女王

 イザナミ。

 日本神話の中で最初に生まれた片割れの女神。日本という大陸を無から生み出し、数多くの山や海、森羅万象からなる神々を産み落とした大地母神。火の神であるヒノカグツチを産み落とした際に、陰部に火傷を負って命を落とした。

 死したイザナミは、黄泉の国の食べ物を口にしてしまう行為黄泉戸喫(ヨモツヘグヒ)をしてしまいイザナミは黄泉の住人になってしまった。

 イザナミを追って黄泉にきたイザナギに、黄泉神に地上への帰還が可能か相談しに行き、イザナギに待つように告げたが一向に返事が返ってこないことを不安に駆られてイザナギは、約束を破ってイザナミの姿を見てしまった。

 その姿は腐乱して蛆がたかり、蛇の姿をした8柱の雷神の八雷神が纏わりついていた。

 姿を見られたイザナミは、黄泉醜女(よもつしこめ)黄泉軍(よもついくさ)、八雷神に逃げるイザナギを追いかけさせるが身に付けているものを投げ、葡萄とタケノコを囮にして黄泉醜女から逃げ。黄泉軍と八雷神をヒノカグツチを殺すのに使った十拳剣で振り払いながら黄泉比良坂(よもつひらさか)にあった桃の実を三つ投げたところ、黄泉の国の悪霊たちは逃げ帰った。

 この神話によってイザナミは『生命の祖神』でありながら『死の神』という世界中の神話における大地の神にあてまはり、自然物の生成と消滅、生と死の循環を象徴するものでもある。

 

「カンピオーネになって最初に戦うのが、大地母神なのは運が悪すぎるよな」

 呼吸を整えて、聖句を口にする。 

「《悪を選び、この身は悪に染まった。ああ、香ばしい血の香りだ。敵の血で喉を潤わせるとしよう。我が国に足を踏み入れた罪はその血で贖うがいい》」

 《鮮血の威光》の聖句を唱えたことで、自分の体が人間から吸血鬼へ変わっていくのが分かる。

 肉が、血が、骨が、形を変えて全身が変化を遂げた。

 

「面妖なものだ、西洋の物の怪か。ふむ、まずは小手調べとしようか」

 口元を着物で隠しながら、俺を舐めるように見つめ。ふぅ~、と黒い吐息は吐き出した。すると、イザナミの足元に転がってる死体がゆっくりと動き始めた。

 その動きは糸で吊るされた人形のようにぎこちなかったが、自分の足で立ち上がり、精気の無い瞳が此方を見ていた。

 アーッとB級のゾンビ映画さながらの動きをしながら迫ってきた。

 黄泉の女神はやっぱり死体を操れるのか。

 

 近づいてくるゾンビに向かって意識を集中する。そして、ゾンビの足元の床から黒い"杭"が生まれ、胸を貫いた。串刺しにしたのだ。

次々に杭を生み出しゾンビを串刺しにしている。伝説に語られるヴラドの異名を「串刺し公」を示すように。

 

 

「ほう、杭か、面妖な。ならば人間でダメなら鬼とするか。来たれ、黄泉の通路!」

 高らかに叫んだイザナミの足元から広がる黒い渦。

 黒い渦は徐々に壁を伝い、部屋を飲み込んでいく。

「流石に逃げないとヤバイか」

 黒い渦のヤバさに警戒して、後ろに数歩後退りする。

 黒い渦はやがて、建物全体を飲み込んでいた。形こそ建物の原型を留めているものの、それはもう違う何かだ。

 

「黄泉軍を呼び出すには黄泉と繋げる扉が必要でな。これでやっと呼び出せる。敵を捕らえよ黄泉軍よ!」

 イザナミの声に導かれ、黒い渦から赤い目を輝かせながら出て来たのは鬼。

 姿形は様々、角が一本の鬼や二本の鬼。赤色や青色など統一感はない。

 

 ギャー!やグギー!と奇声を上げながら迫ってくる黄泉軍の数は二十を超え、今も増え続けている。

 

 迫ってくる黄泉軍に向かって杭を生み出し貫き。貫かずとも杭は、それだけで壁やスパイクの役目を果たす。

 黄泉軍の数が減れば増え、また杭で数を減らすを繰り返していくうちに、黄泉軍の居る間にうまれた隙間から槍のように細く鋭い杭を生み出し、槍投げの要領でイザナミの顔目掛けて投げつけた。

 

「ほっ!」

 黄泉軍の顔の間を抜けて真っすぐに突き進む槍杭。

 飛んできた槍杭にイザナミは気づいたが、もう穂先が当たる直前だ。

 当たると思われた瞬間、射線に飛び込んできた黄泉軍がイザナミに当たりそうだった槍杭に串刺しにされ、穂先はイザナミの頬を掠めるだけで終わった。

 

 頬から流れる血を手で拭い取り、自分が傷つけられたことを認識したイザナミ。

「まさか傷をつけられるとは侮っていたか。故に本気を出そう」

 イザナミの纏う空気が一層、濃密差を増した。

 体から漏れ出るものは、黄泉の空気ではなく雷。

 頭、胸、腹、女陰、左手、右手、左脚、右足の八つから迸る雷、イザナミが黄泉に来た後に生まれた雷の神々、火雷大神(ほのいかづちのおおかみ)

 

「我が子たちよ、童の敵を殺すのだ」

 イザナミの指示に従い、姿を稲妻へと変えて向かってきた。

 

 

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